prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

2016年9月に読んだ本

2016年10月01日 | 
prisoner's books - 2016年09月 (19作品)
青い眼の人形
青い眼の人形
野口雨情
登録日:09月03日

YKK秘録
YKK秘録
山崎拓
登録日:09月09日

ロルカ詩集
ロルカ詩集
ロルカ
登録日:09月25日

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冒頭から五社自身が語っていた身の上話のウソが暴露される。ウケるためだったら平気でウソをつく見栄とハッタリの塊のような男の肖像が、丹念な裏取りで描かれる。テレビという当時見下されていたメディアから上から目線を見下していた映画界に殴り込みをかける気負いから、元からのハッタリ気質に磨きをかけ、映画の見世物としての原点に戻って成功していく。今のテレビ界と映画界の関係を見ると信じられないような状態で、ここ数十年の変化の大きさにほとんど嘆息する。一方で安定したサラリーマンというテレビ局員としての地位をなかなか捨てきれない小心さも描かれる。その地位を思いがけない形で放棄せざるをえなくなり、退路を断つつもりで背中に入れ墨を入れる。このあたりは、さすがに調べきれていない部分が多い。振幅の大きい、大胆さと小心さ、ハッタリと繊細さが混ざった一人の男の軌跡がそのまま作品に反映しているのが浮き彫りにされる。どの作品が誰に企画だったかといった原点にまで遡って調べてあるのが貴重。「鬼龍院花子の生涯」が梶芽衣子の、「薄化粧」が緒形拳の持ち込み企画だとは知らなかった。多くの人たちとの協力関係も描かれ、だから「鬼龍院」の起死回生のカムバックもできたのだろう。裏をかえすと、割と安直に頼まれると、あるいは思いつき程度でほいほい仕事を引き受けたので、特に晩年いささか仕事が荒れたところも「北の蛍」「十手舞」などの失敗として具体的に指摘している。映画・テレビ以外にもやっていた週刊誌の対談連載なども丹念に取り入れ、どうやって女優たちを脱がせたか、といった下世話にして大事な話も収録している。


この本が出たのが1984年なので、「最近」の記述には古くなっているところもあるだろうが、それ以前の黎明期の会社の成り立ちが面白かった。満鉄調査部や軍隊の出身者を積極的に採用したところから当然国との結びつきが強くなる。226事件の後、政府は国民新聞、朝日、毎日のトップを貴族院議員に推挙するのに続いて、電通の光永社長を貴族院議員に推挙して、情報統制を飴と鞭の飴の側からやっていたという。なるほどね。半世紀以上前、55年体制確立にあたって自民党の依頼で反共と日米安保体制擁護を宣伝する役に駆り出されたということで、当時の四代目の吉田社長が政治色を強めていたこともあるだろうが、今に至るも与党の情報管理に食い込んでいるだろうことは想像に難くない。オリンピックが電通の一手販売みたいになっているのは有名だが、実は博報堂が担当したこともあって、これがなんとモスクワ・オリンピック。なんだかできすぎだ。




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9月30日(金)のつぶやき

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