prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「8月の家族たち」

2014年04月28日 | 映画
原作(舞台劇)・脚色がトレイシー・レッツ。前に「BUG/バグ」や「キラー・ジョー」がウィリアム・フリードキン監督で映画化されている。フリードキンが監督するくらいだから人間模様はまことに酷薄なのだが、それは今回も一緒。

メリル・ストリープの母親が口内癌と薬の飲みすぎでかなり頭に来ていて毒舌を絶え間なく吐き散らし、長女のジュリア・ロバーツと取っ組み合いも含む凄絶な対立を見せるのをはじめ、意外な人間同士が血縁だったのがわかるのを含めて、答えの出ようのない家族内部の対立をとことんまで見つめ続ける。
実に精神的なタフだと思うし、こういうタイプのドラマっていうのは少なくとも最近の日本には少ないと思う。

役者が実にみっちり芝居していて、ストリープやロバーツといった知名度の高い役者だけが悪目立ちすることはないのは立派。各地の映画祭でアンサンブル演技賞をとったというのも納得。
舞台と違って家の内外の生活感・空気の熱さまで感じさせる美術・撮影は映画ならでは。
ベネディクト・カンバーバッチがひどくおどおどした気の小さい青年役なのにびっくり。

三人姉妹なのが軸になっているのはチェーホフ以来のドラマの定型みたいなものだが、プラス使用人の女がかなり大きな役割を果たす、というか酷薄でない人間関係を他と結んでいるのはこのシャイアン族の女だけ、というあたりはベルイマンの「叫びとささやき」風でもある。
調べてみると舞台になっているカンサス州オーセージ郡(原題はAugust, Osage Country)のネイティヴ・アメリカン(この政治的に正しい言い方を使うかどうかで一悶着ある)の割合は0.65%だからすごく少ない。その少数派をある種の良心のシンボルに近い扱いで出しているわけ。

エンド・タイトルにステッペンウルフ・シアター・カンパニーの文字が見えたので調べてみるとトレイシー・レッツは2002年からこの劇団に参加しているのですね。
ゲイリー・シニーズなどがシカゴに設立した劇団で、ジョン・マルコビッチやウィリアム・ペーターゼンなどを輩出している。シニーズがテレビのCSI NYに出るようになったのは劇団仲間のペーターゼンが先にCSIで成功していたのと関係あるのかないのか。

劇中で14歳の娘が「オペラの怪人」(1925年のロン・チャニー主演版)のカラー版のテレビ放映を見るのを葬式他の用事より優先させて怒られる場面があるが、カラー版というのは元の2原色テクニカラーで撮影したパートカラーなのか、よくあるカラリゼーションなのか、ブラウン管に映っている限りでは前者のよう。
(☆☆☆★★)



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8月の家族たち@ぴあ映画生活

映画『8月の家族たち』 - シネマトゥデイ

4月27日(日)のつぶやき

2014年04月28日 | Weblog

【本棚登録】『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニングKC)』竜田 一人 booklog.jp/item/1/4063883…


【これ聴いてます】ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」(ロイヤル・コンセルトヘボウ管/ヤンソンス) ml.naxos.jp/album/RCO06002 #nmleg


どーでもいいけど、「トランセンデンス」ってクリストファー・ノーランが監督じゃないのね。これだけあからさまに勘違いする方が悪い的宣伝も最近珍しくないか。


【劣化コピー】ただし冷戦が終わって、日本の得になるとでも?  さんから河野談話を出した後も相変わらず慰安婦はなく大手の商売相手。 rekkacopy.com