prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ドレスデン、運命の日」

2010年07月14日 | 映画

何十万もの人と何百年もの歴史を持った街が一夜にして瓦礫と化すというのはなかなか想像しきれるものではない。
無差別爆撃、というのは何しろ数限りない人間が殺されるわけで、その中のほんの数人をピックアップして代表させるという方法自体、木を見て森を見ず式になりがち。
そのピックアップしたキャラクターもの描き方も鳥の目からなのか虫の目からなのか曖昧。

爆撃する連中の描写が尻切れトンボ気味。撃墜され敵地に不時着した兵士個人は描いていても爆撃隊と司令官は姿をくらましてしまう。ドイツ映画なのだから、連合軍の非道をもっと訴えて良かった。これは日本映画にも言えること。

困ったことに爆撃の地獄図絵というのは映画になかなかなりきらない。炎の熱さは伝わらないし、黒焦げになると人は人に見えなくなる。

カート・ヴォネガット・ジュニアの「屠殺所五号」でアメリカ人の捕虜が連合軍の爆撃で殺されるというブラックユーモアの方が効いたりする。

千度もの熱で焼かれると、石がスポンジ状になってもろくなるというナレーションに慄然とする。
(☆☆☆)