prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「天はすべて許し給う」

2010年07月19日 | 映画
監督 ダグラス・サーク。日本劇場未公開。
これは1955年の製作だが、アメリカの郊外の取り澄まして保守的な生活環境の描写は今でも通じるところがあるだろう。中産階級の未亡人ジェーン・ワイマンと庭師ロック・ハドスン青年の身分違いをてこにしたメロドラマ。

息子があくまで母親の再婚に反対して親子の縁を切るとまで言い出す場面で、顔がほとんど影になっていたり、格子越しに撮っていたりで表情が見られないあたりの微妙なニュアンス。

水車小屋が初め荒廃して窓から外がまったく見えないのが、ロック・ハドソンとの仲が深まるにつれて改装してすっかりきれいになり、で窓の外にくっきりと遠くの雪景色まで見えるようになるのが映画的演出美。
ラストシーンで鹿が現れるのがなんともいえず印象的。「ディア・ハンター」もそうだったが鹿が出てくるとアメリカの原風景みたいになり、人智を超えた一種超越的な存在を感じさせる。
(☆☆☆★)