prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「狩人と犬、最後の旅」

2010年05月20日 | 映画

ロッキー山脈の主に冬の過酷な自然の中で、50年以上続けてきた伝統的な狩猟生活を、森の伐採によって終わりに近づいてきたのを感じながらなお続けている狩人の姿を描く。
雪で埋まった野山を犬橇が走る姿を捉えた映像の魅力大。

狩人が適当に間引いているから自然が全体として調和していられると何度も語られるのが、自然は調和がとれているのに人間が調和を乱しているといった自然観と隔絶している。
狩人の奥さんが先住民だったり、一匹の犬にモホークなんて名前つけているから、自然に帰れというのかと思うと違うのね。考えてみると銃という文明の利器を使った段階ですでに後戻りできなくなっているわけだし。

新入りの犬が言うことをきかないために薄くなった氷を踏み抜いて川に落ちて死にかけるから、殺すのかと思ったら見逃すのが甘い。本多勝一の「カナダ・エスキモー」のエスキモーが犬を橇を引かせるためにびしびししごいて、ついていけない犬は殺してしまうといったくだりを思い出すと、かなりヌルくしてある(自然に生きる民族は自然に優しくはないのだね)。映画だからでしょうね。
(☆☆☆★★)