prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
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「ブラックボード - 背負う人 -」

2010年05月11日 | 映画
ブラックボード - 背負う人 - [DVD]

ハピネット・ピクチャーズ

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イラン・イラク国境付近を黒板を背負って、教える生徒を探して回る教師たち(といっても、学校には二年しか行ってなかったりする。日本にかつてあった代用教員みたいなの)の姿が、羽を広げた鳥とも幅広の凧とも見え、荒涼とした背景のリアリズムとはまた別の寓話性を感じさせる。
何も重たい思いをして黒板を運ばなくても、現地で調達するか、地面にでも描けばいいのだから。

果たせるかな、上空の爆撃機(にせよ、歩兵にせよ、姿は見せずもっぱら音として表現される)を怖れ、黒板のままでは目立つ、というので土を塗ってカムフラージュすると、予め描かれた文字や数字が文字通り「埋もれてしまう」図になる。

密輸品の運び屋として使われていたりする子供たちにとっては、教育の行商などまるでお呼びではない。それに対し、しつこく教えさせろと迫り続け、子供たちがまたしつこくいらないと言い続ける。押し問答というより平行線の主張を、両方ともその話のすれ違いにいらだつ様子でもなく平然とえんえん繰り返し続けるのが、途上国の物売りの付きまとい方みたいで、教師たちを描きながら上から目線などかけらもない。無力なのは女子供と老人と同様。

貧困と悲惨を今更ながら悲憤慷慨してみせるのではなく、感情が摩滅しながらなお滅びていないさまを見せていくとでもいうか。

黒板は難民の老人を運ぶ担架代わりにもなり、女性と結婚話をする時に直接顔を顔を合わさないためのついたてにもなる。ちょっと舞台劇的な小道具の使いまわしぶりが面白い。
(☆☆☆★★★)


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