prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「スルース」

2009年06月15日 | 映画

ローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケイン主演、ジョゼフ・L・マンキヴィッツ監督による初映画化は二時間を越す長尺だが、これは一時間半で後半がまったく違う。アンソニー・シェイファーの原作・脚本をハロルド・ピンター(劇中のテレビに写る)がさらに脚色したわけだが、ホモセクシュアルを媒介に召使と主人の関係が逆転するピンターの「召使」ばりの展開。もちろんケインが主演した某スリラーのイメージも入っているだろう。

旧作の、初期の007を担当したケン・アダムによる美術セットは古式ゆかしい探偵小説趣味で、迷路の植え込みやら、小説の場面を人形で再現したジオラマやら、エドガー・アラン・ポー賞のトロフィーやらで埋め尽くされていたのが、今回はウルトラモダンなデザイン。ピエロの変装もカットされた。監督のケネス・ブラナーの、毎度のことながらあまりいいとはいえない美術趣味。

オリヴィエvsケインの対決は、特に労働者階級出身のケインによって「階級闘争」としての色合いを持ったが、今回のジュード・ロウの役は単純にイタリア系美容師ではなく、東欧系でもあるという設定で、いくらか変えている。
今や押しも押されぬ名優であるケイン自身の中で地位の逆転がに成立していて、その分、広がりは乏しい。
(☆☆☆★)