三百本以上のピンク映画と、一般映画「第七官界彷徨 尾崎翠を探して」「百合祭」を監督した女性監督の自叙伝。
生い立ちとかはあまり描かれず、ひたすら監督になりたくて、しかし女性差別の壁にぶつかり悪戦苦闘しながら世界の女性映画人たち(男もいくらか含まれるが)と連帯していくまでを描く。
「神聖なカチンコを女なんかに叩かせるか」とか「映画は男のロマンだ」とかいった、えーっ、そんな古ぼけたこと言ってるのと思わせる映画界の女性差別・セクハラが具体的に描かれ、特にセックス描写における男性中心性が指摘される。女の目から見ると、名作とされている数々の巨匠作品も一面的でしかなく見えてくる。
若松孝二監督など、一般には数々の後進に道を開いてやった日本のロジャー・コーマンといった見方がされているが、筆者にとってはやはり女性差別者としての像が先に来ることになる。
男に媚を売る女たちのことを「バカ女の壁」と形容するのも愉快。
実言うと「浜野佐知」という名前は知っていたが、女だと思ったことなかった。それだけ「ピンクは男のもの」という先入観があったのだね。
ぱっと見、サングラスをしているので、知っていて見てもよくわからないこともある。
高野悦子岩波ホール支配人がどうしても監督になりたくてしかし挫折した思いを語る対談など、他では聞けない発言。