prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「摩天楼」

2007年01月12日 | 映画
絶対に信念を曲げない建築家ゲイリー・クーパーが、勝手に自分の設計を変えられた建築物を爆破するという凄い話。

映画の作り手(監督キング・ヴィドア)としては資本の論理に対抗しながらどこまで自分の意思を貫けるかという主人公に自分を重ねていたのだろう。
「天国の門」の製作で完全主義を貫いてユナイト映画を潰したマイケル・チミノ監督が夢見ていたのが、この「摩天楼」のリメイクだそうで、普通に考えてあまりに採算性や俗受けへの妥協を拒否していたら自爆するのは目に見えている。
妥協が即ち欠点になるとは限らないし、ヘタに権力と建築家の野心が一致したりすると、丹下健三設計の都庁みたいなグロい建物になるのではないか。

クーパーの風貌・演説ともに立派すぎてあんまり関係ないという気になるのは、如何ともし難い。

だもので、こちらとするとクーパーとパトリシア・ニールを挟んだ三角関係になるレイモンド・マッセイ扮する新聞社長の方が感情移入しやすいことになる。恋敵兼企業家代表として対立するのかと思うとまるで逆で助け船を出すというあたりが不思議と納得させられてしまう。企業家といっても同じ自主自立のセルフメイド・マンだからか。
マッセイの方は取締会で批判され失脚し、自殺するのだから、より劇的でもある。

ロバート・バークスのグレッグ・トーランド風にくっきりしたコントラストとディープ・フォーカスを多用した力強い画面が魅力。
(☆☆☆★)


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