万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ダニエル・イノウエ氏-日米両国の誇り

2012年12月24日 13時07分09秒 | アメリカ
ハワイでイノウエ氏の告別式=オバマ大統領、首都葬儀に続き参列(時事通信) - goo ニュース
 先日、長年に亘り、米上院議員を努めたダニエル・イノウエ氏が逝去されました。イノウエ氏の棺は、ワシントンの連邦議会議事堂の中央大広間に安置され、大統領級の特別扱いであったとも報じられています。

 ダニエル・イノウエ氏は、アメリカの地で生を受けたものの、熊本県からハワイに移民した日本人の子孫でした。第二次世界大戦では、日米両国が敵味方に分かれたため、氏は、出身国と国籍国との狭間に置かれるとともに、米国では、日系人として警戒される立場ともなりました。この苦境にあって、氏は、アメリカ国民の一人としてアメリカに尽くすことを決意し、ヨーロッパ戦線では、深手を負いながらも敵を倒すといった、数々の武勇伝を残したのです。敵国出身でありながら、アメリカに忠誠を誓い、アメリカという国に貢献したダニエル・イノウエ氏は、移民国家であるアメリカにおいて、”理想的なアメリカ人”の姿を体現したとも言えます。氏の逝去に際してのアメリカ政府の厚遇は、こうした氏の生き方に対する敬意と尊敬を表していると考えられます。それでは、出身国である日本での氏の評価はどうでしょうか。日本国において、氏は、”祖国の裏切り者”として侮蔑の言葉を投げつけられてきたのでしょうか。日本国でも、実のところ、氏に対する評価は高く、日本人の名誉を高めた功労者として尊敬を集めています。その理由の一つは、日本の武士道精神に求めることができるかもしれません。日本国では、ヨーロッパの封建制度とは違い、”二君にまみえる”ことは御法度でした。一旦、他の国の領主に仕えた限りは、その国に忠誠を誓うことこそ、武士のあるべき姿であり、忠誠と奉仕の精神は、それが領主と家臣の間の主従関係から国と国民との関係に代わっても、基本的には、受け継がれたと言うことができます。戦時中、東条英機もまた、アメリカの日系人に対して、アメリカ人となった以上、アメリカのために闘うよう書簡を認めたとも伝わります。ダニエル・イノウエ氏は、日本人にとりましても、あっぱれな人物であったのです。

 両国の理想的な人間像が、ダニエル・イノウエ氏において焦点を結んだからこそ、日米両国の誇りとして、氏の足跡は歴史に刻まれることになりました。一方、世界的に移民が増加する傾向にありながらも、誰も、あるべき移民の姿に関して議論しようとも、触れようともしないことに、混沌と錯綜という名の危うさを感じます(今日では、敵国ではなく、自国民に危害を加える帰化系の国民が多い…)。ダニエル・イノウエ氏の潔い生き方には、深い霧を晴らす何かしらの力が潜んでいるように思えるのです。

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コメント (2)
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