万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

政府の仕事は企業の権利を保護すること

2009年04月30日 17時28分49秒 | 国際政治
中国、IT情報強制開示制度の導入発表…適用は来年5月(読売新聞) - goo ニュース
 日本企業から技術力という競争力を除いたら、一体、何が残るのでしょうか。天然資源に乏しく、人件費も高い日本国企業にとって、唯一の強みとは、長年培ってきた研究・技術開発力にあるのではないでしょうか。

 ところで、中国政府は、対象を政府調達分野に限り、実施を一年延期するとはいえ、IT情報開示制度の導入を本気で検討しているようです。もし、この制度が導入されることになりますと、日本企業は技術競争力を失い、中国企業の後塵を拝する可能性が高くなります。収集した情報は秘密とすると言いつつも、中国政府は、直接に企業に技術情報を供与せずとも、間接的な形で自国企業の技術支援に流用するかもしれません。中国企業は、政治力を利用して、労せずして最先端の技術を入手できるようになるとしますと、中国の一人勝ちの状況となりましょう。

 政府の仕事の一つには、企業の技術に関する知的財産を含め、国民の権利を保護することがあります。WTOに提訴して法的な解決を図る道も探りつつも、日本国政府は、中国政府に対して、政府の仕事とは、権利を他者から奪うことではなく、守ることにあることを、力説せねばならないと思うのです。

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競合する台湾の将来像

2009年04月29日 17時21分08秒 | アジア
「地位未定論」を否定=57年前に「移譲」と見解-台湾総統(時事通信) - goo ニュース
 先日、台湾の馬英九総統は、陳前総統が主張していた日華平和条約を根拠とした「地位未定論」を否定したと報じられています。台湾の地位は、極めてセンシティブな問題を含んでおりますが、おそらく、台湾の将来像については、三つの路線が競合しているように見受けられるのです。

(1)独立路線
 独立路線とは、台湾の地位を未定地とすることで、国民投票の実施に地位確定の効果を持たせ、台湾を完全に独立させようとする陳前総統の路線です。この路線を選択しますと、台湾は、中華民国にも、中国人民共和国にも属さない、一個の独立した国家として存在することになります。

(2)中華民国路線
 この路線は、国民党の馬総統が進めている路線であり、台湾の主権は中華民国に移譲されたと考えることで、中華人民共和国に対する台湾の独立性を主張するものです。しかしながら、仮に中華人民共和国において多党制が採用され、国民党が合法化されますと、台湾の独立性は危うくなります。つまり、この路線には、将来的に、台湾が大陸に飲み込まれる可能性があるのです。

(3)中華人民共和国路線
 中華人民共和国の政府は、台湾の主権は既に自らにあると主張しており、台湾を併合する形での”一つの中国”が、中華人民共和国路線と言えます。この路線ですと、台湾の独立性は失われ、中国の一部と見なされることになります。

 こうした路線対立は、国民党であれ、共産党であれ、政党が国家建設を担ってきた中国の歴史と無縁ではありません。願わくば、台湾が、充分な国民的な議論を尽くし、自由で民主的な国家としての将来を歩んでいっていただきたいと思うのです。

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日本の自動車産業は生き残れるのか

2009年04月28日 13時57分35秒 | 日本経済
「宝島」か、それとも「墓場」か?自動車各社が活路を求める中国の“落とし穴”(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 ダイアモンド・オンラインの”「宝島」か、それとも「墓場か」”というタイトルの記事によりますと、先進国の自動車産業の将来は暗いと言うことになりそうです。結局、今後、大幅な需要増が予測される新興国の自動車市場は、労働コストの低いインドや中国の自動車企業の独断場になりそうなのですから。それでは、日本国の自動車産業は、どのようにしたら生き残れるのでしょうか。生き残り策としては、以下のような方向性があります。

(1)その一つは、中国やインドにインフレが起こり、強みである労働コストや物価が先進国並みに上昇することです。ただし、この方法は、特に中国では為替操作に訴えてでも懸命に抑え込もうとしており、国際的な圧力なくして実現しそうにありません。

(2)第2の方法は、日本国側の技術力を頼みとした努力です。例えば、産業ロボットの導入による労働コストの削減や、新興国向けの小型自動車の開発、あるいは、エネルギー技術や新素材の開発による輸入資源への依存度の低下などを挙げることができます。この方法についても、日本国政府が技術流出に真剣に取り組まなければ、競争力を維持できません。

(3)第3番目の方法は、環境規制や安全基準を貿易のルールに加え、新興国にも高い基準の達成を義務付けることです。これは、二酸化炭素のみならず、様々な有害物質についても、製造な使用の段階での排出量を抑えるというものです。地球環境の保全や公害防止の観点から見ますと必要な措置ではありますし、環境技術に強い日本国には有利ではありますが、新興国からの反対が起きる可能性があります。

 何れにしましても一長一短があり困難な側面を持ちます。しかしながら、小手先の対策ではなく、長期的な視野に立って戦略を講じませんと、結局、世界経済の変動の波に飲み込まれ、日本国の自動車産業は消えてしまうかもしれません。そうならないように、民間も政府も、困難を克服すべく戦略を考えるべきと思うのです。 
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IT情報強制開示―技術競争力を無意味にする中国

2009年04月27日 16時48分42秒 | アジア
中国が「IT情報強制開示」日本に通告 影響1兆円…WTO提訴も(産経新聞) - goo ニュース
 どの企業も、市場経済にあっては、研究・技術開発に莫大な投資と労力を注ぎ、技術競争力を維持するために、最大の努力を払うものです。しかしながら、もし、中国が、「IT情報強制開示」を強行するとしますと、市場における競争のメカニズムは、早晩働かなくなると思われるのです。

 何故ならば、企業の競争力の源泉となるべき先端の技術情報が、製造拠点としての最も優位な立場にある国に渡るとすれば、最も安い価格で当技術を用いた製品が大量生産され、世界市場を席捲してしまう可能性があるからです。安全性の審査が企業に対してコア技術の開示が強制する合理的な理由となるとは到底考えられず、企業は、多額の資金をつぎ込んでまで研究・技術開発を行うことに意味を見いだせなくなりましょう。中国政府による技術の開示の強要は、産業スパイの合法化のようなものです。

 結局、技術力で勝負をしている国の企業は、致命的な打撃を受けることが予想されますので、やむを得ず、中国市場への製品輸出を諦めることになりましょう。日米欧の反発が予測されながら、中国が、何故、国際的な貿易のルールを無視して一方的な”ルール”を押し付けようとしているのか、不思議なところです。一説によりますと、軍事技術への転用を狙う軍部の圧力の可能性もあるとのことですが、これでは、市場のメカニズムが壊されてしまいそうです。WTOに加盟した限り、中国は、国際ルールを順守し、無理難題を他国に押し付けてはならないと思うのです。

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国債発行は民間の金融機能を低下させる?

2009年04月26日 13時38分37秒 | 国際経済
【底流 ニュースの裏側】与謝野財務相が再始動 大盤振る舞いの後は大増税(産経新聞) - goo ニュース
 現在、国際協調の名のもとで、各国とも財政出動が求められており、日本国でも、赤字国債の発行額を増やしてでも、15兆円の追加経済対策が行われる予定です。市中で消化しなけばならない国債の額は10兆円規模に上るとされていますが、この政策は、金融機関を助けることになるのでしょうか。

 不思議なことに、ケインジアンは預金を目の敵にしているようで、民間の余剰資金は無駄と考えているようです。このため、国債発行は、民間で眠っている資金を政府が有効な公共投資に振り向ける手段として奨励しているのでしょう。しかしながら、考えてもみますと、国民から預金が集まらなくなれば、金融機関の貸出能力が低下することは目に見えています。そうして、国民が金融機関に預けた資金を、金融機関が国債に投資すれば、これと同じ現象が発生します。つまり、貸出資金としてのハイパワード・マネーは減少し、金融機関の事業は縮小せざるを得なくなるかもしれないのです。この結果、貸し渋りが再燃し、企業は、資金調達が難しくなるかもしれません。不況期での金融機能の低下は、景気の足を引っ張りそうです。

 景気対策として政府支出を増やしても、金融機能が弱体化し、市場のメカニズムが蝕まれては元も子も無くなります。不況の元凶である金融危機は、野放図な金融機関のマネー・ゲームが招いたものではありますが、政府が大量の資金を集めることもまた、金融機関にとっても、企業にとっても、望ましいことではないように思えるのです。

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ミサイル発射準備を”先制攻撃”と見なしては

2009年04月25日 13時17分38秒 | 日本政治
敵基地攻撃能力 安倍氏「検討を」(産経新聞) - goo ニュース
 もし、現代という時代に戦争が起きるとしますと、第二次世界大戦当時の日本人が見たこともない兵器が使われることになります。その筆頭に挙げられるのが、飛び道具であるミサイルではないかと思うのです。

 戦後、我が国は専守防衛を旨とし、敵基地に対する攻撃能力は軽視、あるいは、不要とされてきました。しかしながら、核弾頭の小型化や中・長距離ミサイルの開発などにより、戦争におけるミサイルの破壊力が重みを増す中で、従来の方針を維持すべきか否かの重要な岐路に立たされていると思われるのです。

 ミサイルとは、相手国を攻撃するために存在する純粋な攻撃兵器であって、ミサイル基地において発射準備を行った時点で、他国に対する攻撃性が疑いの余地なく明らかとなります。攻撃以外に使用目的がないからです。国際法においても、已むを得ない場合には、先制攻撃は”侵略”とは認定されず、特に、ミサイル発射準備は、攻撃性が明白であるからこそ、防衛手段として許される可能性もあります。

 否、むしろ、攻撃性の高いミサイル発射準備こそ、侵略と認定される”先制攻撃”と見做されるべきなのかもしれません。戦争における攻撃のスタイルは変化してきているのですから、日本国も、その現状に合わせて防衛を考えるべきですし、国際社会において、”ミサイル発射準備を先制攻撃とみなす”、とする合意が成立すれば、戦争の抑止力にもなると思うのです。

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馬脚を露した”JAPANデビュー”

2009年04月24日 12時42分03秒 | アジア
「NHKが反日偏向番組」 台湾統治で町村派議員批判(産経新聞) - goo ニュース
 全ての国の歴史には光と影があり、日本国の近代史もまた、その影の部分だけを切り張りして繋げますと、暗黒の歴史として描くことができます。先日、NHKが報道した”JAPANデビュー”という番組もまた、意図的に歴史が編成されており、しかも、そこかしこに嘘や歪曲が混じっていたのです。

 番組製作者は、おそらく、この番組を視聴する人々に、日本国の近代の歩みは侵略の連続であり、現在に至るまでアジア諸国から恨みを買っているということを刷り込みたかったのでしょう。いわば、未来永劫にわたって、日本国には過去の罪があることを植え付けるための番組であったと言えそうです。しかしながら、番組の内容が、史実や現実とのかけ離れていたがために、番組製作者の目論見は外れることになりました。逆に、誰もが、この番組の製作者に不信感を持つようになってしまったのです。数人のインタビューで繋いだ”JAPANデビュー”では、台湾に、何故、親日の方々が多いのかを全く説明していません。また、この手の贖罪意識の押し付けは、もはや、使い古された陳腐な手法と化しており、誰もが素直に受け止めなくなってきていることも、番組への不信の原因として指摘できます。

 客観的な視点から我が国の来し方を回顧するというスタイルをとることで、巧妙に意図を隠そうとしたNHKの製作者は、自己の主張に無理やり歴史を合わせようとしたがために支離滅裂となり、馬脚を露してしまったようです。歴史を弄ぶことで日台関係の悪化を招くとするならば、NHKこそ、平和の破壊者となるのではないかと思うのです。

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条約法条約はチベットを救う

2009年04月23日 17時29分29秒 | アジア
「中国は子どものよう」 ダライ・ラマ、成田で会見(産経新聞) - goo ニュース
中国政府によるチベット併合は、人民解放軍の進駐という武力による威嚇を背景としつつも、「17条協定」という条約に法的な基礎を置いています。もしかしますと、この条約による併合という形態であればこそ、チベットには、法的に独立する道が開かれていると思われるのです。何故ならば、中国は、条約法条約の締約国であるからです。

(1)「17条協定」の無効
 条約法条約の規定によれば、国の代表に対する強制や武力による威嚇や武力の行使による条約締結は無効とされています(条約法条約第51・52条)。ダライ・ラマ14世は、かつて「17条協定」を否定しており、チベットは、この条文に基づいて協定の無効を主張することができます。

(2)「17条協定」違反による条約の終了又は運用停止
 当事国の一方の条約違反は、他方が条約を終了、あるいは、運用停止する正当な理由となります。「17条協定」第4条には、「中央当局はチベットに現存する政治制度を変更しない。中央当局は、ダライ・ラマの既存の地位、役割、権限も変更しない。・・・」とあり、現在の中国政府のチベット政策は、この条文に違反しております。 

 中国は、条約法条約の締約国としての義務がありますので(大人の国としての義務・・・)、チベット亡命政府との対話に応じるべきと言えましょう。より弾圧を強めることになれば、対話路線は危うくなると思うのです。

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中国はフェアプレー精神の教育を

2009年04月22日 13時17分57秒 | アジア
中国“替え玉チーム”で世界王者 学校対抗女子サッカー(産経新聞) - goo ニュース
 スポーツマンシップとは、フェアプレーの精神を意味しており、学校教育において体育の科目があるのも、学童がこの精神を学び、身に付けるためです。如何なるスポーツにもルールはあり、たとえルール違反で勝っても、それは勝利とは認められません。フェアプレーの精神は、スポーツのみならず、健全な社会を維持するためにも必要なものです。

 今月中旬、トルコで開催された女子サッカー世界大会において、中国が、”替え玉チーム”を編成して優勝していたことが発覚し、世論の激しい非難を浴びているそうです。取材によりますと、”替え玉”を指示したのは教育省らしく、もしこの報道が事実であれば、スポーツを通してフェアプレー精神を教える側が、アンフェアなプレーを率先して行ったことになります。これでは、中国のスポーツ教育は、フェアプレイ精神どころか、アンフェアな精神を奨励しているとしか思えません。

 北京オリンピックにおいても、”口ぱく”事件や女子体操選手の年齢偽装疑惑などがありましたが、優勝者となったとしても、守るべきルールを違反しては、それは、自国の汚点にしかなりません。真の勝者としての名誉はフェアプレーあってこそのことであり、中国政府は、スポーツ教育の基本にあるべきこの精神を忘れているように思えるのです。

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太陽光発電へのエコ贔屓

2009年04月21日 15時19分29秒 | 日本政治
ガスVS.電力業界 余剰電力買い取りで火花(産経新聞) - goo ニュース
 電力会社による家庭でのエコ発電の余剰電力買取をめぐって、ガス業界と電力業界との間に対立が生じているそうです。事の発端は、政府の太陽光発電優遇策にあります。太陽光発電優遇策とは、政府が、環境ビジネスの振興を目的として、電力会社に家庭での太陽光発電で余った電力を二倍の価格で買い取ることを義務付けるというものです。

 環境ビジネスの振興が目的ならば、政府は、すべてのエコ発電を公平に扱うべきですので、ガスvs.電力業界の対立は、燃料電池にも同様の措置を求めるガス側に分がありそうです。全く同じ効果が期待されるエコ住宅ビジネスならば、太陽光発電だけを優遇することは、政府による露骨な”エコ”贔屓になるからです。しかも、太陽光発電設備の製造に必要となるシリコンウェハーの高騰も報告されており、特定のエコ製品への政府の肩入れは、市場の適正な価格形成を歪め、コスト高を招きかねません。

 そもそも、余剰電力の二倍価格の買い取り制度には、電力価格の上昇と他の国民への負担の転嫁を伴いますので、必ずしもプラス面ばかりではありません。この側面を考慮しますと、太陽光発電も燃料電池も、等しく通常価格で買い取ることが、両業界も、また、多くの国民も納得する妥協点ではないか、と思うのです。

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中国共産党の宗教ビジネス化政策の冒瀆

2009年04月20日 17時15分22秒 | アジア
中国共産党、弱まる宗教制御 寺院と地方政府衝突 信仰拡大、世論は僧侶支持(産経新聞) - goo ニュース
 共産主義の恐ろしいところは、国民の行動のみならず、心をも統制できると考えていることです。共産体制成立以来、今日まで続いてきた宗教弾圧はその最たるものですが、宗教弾圧に輪をかけて酷い政策は、宗教の観光ビジネス化政策なのではないか、と思うのです。

 共産主義のイデオロギーの衰退は否定しようもなく、共産党もまた、この事実に薄々気付いているのかもしれません。そこで、強圧的な弾圧をやめて、国民の寺院参拝を黙認するようになったのでしょう。しかしながら、それは、国民の信教の自由を尊重してのことではなさそうです。驚くべきことに、共産党は、全国に名の知られた寺院を観光地化し、ビジネス収入を得ようと画策しているというのです。宗教施設は認めるけれども、それは、党の観光ビジネスのため、ということになりましょう。

 もしかしますと、神や仏への冒涜においてこれ程酷い政策もなく、宗教のビジネス化は、共産党が、依然として唯物主義者であることを如実に示しています。宗教は、人々の心を救うのではなく、お金儲けの手段としか考えていないのですから。この共産党の拝金主義とも言える宗教政策の方針によって、中国の人々は、共産党に対してさらなる幻滅を抱くのではないかと思うのです。

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中国の自由の行方―他律型か自律型か

2009年04月19日 13時07分59秒 | アジア
「中国人は管理される必要ある」=J・チェンさんの発言が物議(時事通信) - goo ニュース 

 J.チェン氏の論法は、行き過ぎた自由⇒混乱⇒管理体制となるようです。しかしながら、是正すべきは”行き過ぎた”という修飾語が付いた自由であり、管理強化が唯一の解決の道とも思えません。奴隷になりたい人はいないはずですから。

 自由とは、それを無条件かつ無制限に許しますと、他者の自由や権利を侵害してしまうという欠点があります。この行き過ぎた自由がもたらす混乱=他者の侵害を解決する方法は、管理の強化のみではありません。それぞれが自由を享受できる方法として、相互の間で承認されるべき自由の範囲や限界を設けるという方法もあるのです。後者の論法ですと、行き過ぎた自由⇒ルール⇒健全な秩序となり、基本的な自由を損なうことはありません。管理強化が他律型としますと、後者は、相互にルールを守るという自己規律が求められますので自律型と言えます。

 このことは、反面、自律型の”法の支配”への移行には、中国の人々の自律性が問われるということにもなりましょう。いつか、中国の人々が、真の自由を享受できる日が来ることに期待したいと思うのです。

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戦争より手強い国内犯罪組織との戦い

2009年04月18日 13時49分24秒 | 国際政治
米「麻薬戦争」に支援 メキシコへの武器密輸阻止(産経新聞) - goo ニュース
 武装した麻薬密売組織と闘ってきたメキシコでは、去年一年だけで、軍と警察を合わせた犠牲者が6300人にも上ったと報告されています。言わば、犯罪組織との戦いが”内乱”の如き事態に発展したのですが、メキシコのみならず、どの国にとりましても手強い相手とは、国内の犯罪組織なのではないかと思うのです。

(1)戦争の場合には、敵味方がはっきりと見えますし、国内が一団となって相手国に立ち向かうことができます。しかしながら、内部の”敵”となりますと、あるいは味方側にも”敵”である犯罪組織の手先が紛れ込んでいるかもしれず、周囲や背後からの攻撃にも警戒しなければならなくなります。

(2)相手が犯罪組織となりますと、戦争法などのルールもないわけですから、軍や警察は、残虐で卑怯な攻撃を受けることを覚悟しなければなりません。テロやゲリラと同様に、犯罪組織は手段を選ばないからです。

(3)国内の犯罪組織を放置しますと、国内の治安は時間の経過とともに悪化します。麻薬の蔓延は国民から健全な思考や判断力を奪いますし、モラルも著しく低下させるからです。つまり、このことは、軍や警察は、時間とも闘わなくてはならないことを意味しています。

 犯罪組織を撲滅するためには、武力による制圧のみならず、政府が汚染されていないか制度や人事をチェックし、もし、問題があればそれを排除する必要があります。また、初等教育の段階から、将来において犯罪組織に加担しないように、健全な社会のあり方やモラルを教える必要もありましょう。メキシコがアメリカとの協力によって犯罪組織の制圧に成功すれば、それは、同様の問題に悩まされている諸国にとっても、大いに励みになると思うのです。 

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チェチェン紛争―”強制による連邦”の問題

2009年04月17日 12時55分44秒 | 国際政治
チェチェン 露、独立派掃討「終了」 対テロ作戦地域から除外(産経新聞) - goo ニュース
 大航海時代を迎えた西欧諸国が先を争うように大海原に乗り出していった頃、ロシア帝国は、ひたすらに陸地の版図を南へ東へと拡大し、領土をシベリア全域に広げてゆきます。19世紀末には、南はトルコと境界を接し、東は日本海にまで到達するのです。

 武力を用いた他民族支配は、かつては最も容易に領土拡張の方法でした。しかしながら、19世紀中頃から民族独立運動が盛んになり、やがて民族自決が国際社会の原則として確立するようになると、帝国に支配されてきた民族の多くは独立を果たしてゆきます。こうして、20世紀にはトルコ帝国やハプスブルク帝国は歴史の舞台から消え、民族を枠組みとした数多くの国家が誕生するのです。その一方で、ロシアでは、ソ連邦が成立したこともあって、民族独立問題は表面的には封印されてきました。共産主義というイデオロギーは、民族や宗教の自己主張を糊塗する役割をも果たしたのです。

 ソ連邦の崩壊は、一世紀を経て民族問題の封印を解いたとも言えるかもしれません。その一方で、独立運動の発生を予期してか、現代のロシア憲法では、連邦を構成する各共和国の脱退権は認められていないのです。憲法上においては共和国の自治権が広汎に認められていながらも、チェチェン共和国のように武力闘争をも厭わない独立運動が起きる背景には、武力による領土拡大の過去を引き継ぎ、ロシアが”自発的な連邦”ではなく、”強制による連邦”であるという問題がありそうです。ロシアで起きている民族紛争は、独立権の承認や中央と地方との管轄権の引き直しなど、抜本的な仕切り直しが行われなければ、根本的には解決されないように思うのです。 

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核の傘は核の抑止力を強化する?

2009年04月16日 17時46分40秒 | 国際政治
「軍縮と核の傘、矛盾せず」バイデン副大統領、安倍氏に(朝日新聞) - goo ニュース
 北朝鮮やイランの核保有疑惑は、日本国を始めとした非核保有国に少なからぬ不安を与えてきました。こうした中で、同盟国に対して核の傘の提供するとしたチェコでのオバマ大統領の演説と、軍縮と核の傘は矛盾しないとのバイデン副大統領の発言は、非核保有国の不安に一定の解決の方向を示したように思われるのです。

 それは、軍縮の進展の如何に拘わらず、少なくとも核が廃絶されるまでの間、核保有国が、非核保有国に核の傘を提供すると言うものです。NPT体制を維持しながら、非核保有国の不安と不満を解消する方法としては、あるいは、この方法が最も現実的なアプローチであるのかもしれません。もし、核の傘が提供されないとなりますと、非核保有国は、抑止力としての核保有を主張する合理的な根拠を持つことになるからです。

 ただ一つ、問題点があるとしますと、何処の国とも同盟を結んでいない非核保有国の安全です。日本国は、日米同盟がありますので、アメリカの核の傘の提供を受けることができますが、核保有国と同盟関係にない国ではこの不安は払拭されません。もし、すべての国に核の傘が保障されるとしますと、核の相互抑止力はアップするのかどうか、検討してみてはどうかと思うのです。

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