万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

法の裁きを受けるべきは韓国

2012年09月30日 16時30分23秒 | アジア
「竹島提訴」に韓国反論 国連演説 日本名指しせず(産経新聞) - goo ニュース
 国連総会の各国代表の演説は、尖閣諸島、竹島、”慰安婦問題”などをめぐり、国際的な軋轢や摩擦が激しくなる中、例年になく、国内外の世論の関心を集めることになりました。総会では、日本国政府が法の支配の重要性を主張したのに対して、韓国政府は、竹島問題につていは”法の支配(国際法の手続き?)の濫用”を訴えて牽制する一方で、”慰安婦問題”については、”法の裁きを受けるべき”と非難したそうです。

 ところで、”法の支配の濫用”という非難は、これまで聞いたこともない表現です。そもそも、”法の支配”とは、為政者の恣意的な権力濫用を抑止するために誕生したのです。為政者に無制限な権力を与えますと(絶対王政や独裁…)、権力は私物化され、為政者の感情のままに人々が支配されてしまいます。そこで、法という枠組みを設定し、権力行使の範囲を統治に必要な範囲に限定することで、恣意的な権力行使を防ぐようになったのです。ですから、防御的な仕組み対して、”濫用”という言葉は相応しくありません。しかも、国際社会では、国レベルほどには法整備が進んでおらず、濫用どころか、司法制度の活用が停滞していることにこそ、問題があります。竹島問題と”慰安婦”など、自己の都合のよいように”法”の適用や解釈を使い分けている韓国政府こそ、法の支配の精神に反しています。そして、”法の支配の濫用”を言い出したことは、自らの恣意的、あるいは、感情に基づく権力行使(竹島の不法占拠)を認めよ、と国際社会に訴えていることに他ならないのです。

 奇妙なことに、島の領有権を争う竹島問題は、国際法や法的な正当性を示す書類や史料などが数多く存在しており、司法解決に相応しい案件ですが、一方、”慰安婦問題”については、韓国人の”元慰安婦”の女性達の証言しか根拠がありません(プロであったことを示す証拠は多数残されている…)。しかも、韓国は、過去に日本人引き揚げ者に対する虐殺やベトナム戦争での虐殺など、本来、法の裁きを受けるべき行為を行っています。他国に法の裁きを受けるよう求めるならば、まずは、自らが範を示して、法の裁きの場に姿を現すべきではないかと思うのです。

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中国を狂わす江沢民元国家主席のトラウマ

2012年09月29日 16時11分52秒 | アジア
中国外相「日本が盗んだ」 国連演説、日本激しく応酬(産経新聞) - goo ニュース
 先日、中国の外相は、国連総会で、日本国の尖閣諸島領有について、”日本が盗んだ”と聞き捨てならない言葉で非難したそうです。そして、日本国は、反ファシズム陣営によって構築された戦後の国際秩序に挑戦していると…。

 戦後、67年もの歳月が流れ、21世紀を迎えた今日にあって、この歴史認識には、どこか時代錯誤の奇妙さが漂っています。第二次世界大戦の終結を待つまでもなく、連合国は分裂模様となり、東西陣営が鋭く対峙する冷戦が発生したのですから。戦後生まれが大半を占める現代の人々にとっては、中国は、長らく”鉄のカーテン”の向こう側の国であり、しかも、かつての枢軸国であったドイツ、イタリア、日本の三国が、揃って自由で民主的な国家として再出発したとなっては、殊更に、”反ファシズム陣営”という言葉には、ノスタルジーさえ感じられます。ファシズムやナチズムの全体主義としての特性は、共産主義体制にこそ色濃く継承されており、中国の批判は、この意味においても、ちぐはぐなのです。それでは、何故、中国は、古い箪笥の奥からこの言葉を取り出してきたのかと推測してみますと、中国政界に隠然たる影響力を維持している、江沢民元国家主席のトラウマに行きつくのではないかと思うのです。江沢民の父親の江世俊は、日本の特務機関の協力者であり、本人もまた、戦時中は、上海交通大学で日本語を専攻していたそうです。自らの生涯をかけて抹殺したかったもの、それは、親日派であったという、自らの負い目なのかもしれないのです。

 陰の実力者であるがゆえに、氏の個人的なトラウマは、改革開放路線以降の若手や中堅層にまて、”国家的な歴史観”として強要されているのかもしれません。つまり、中国は、今年で86歳を数える江沢民氏の個人的な経験によって、過去の歴史から抜け出られなくなっているのです。しかも、反ファシズムを唱えていれば、戦勝国側に立って敗戦国の日本国を叩けると同時に、アメリカを懐柔できるのですから、一石二鳥でもあります。中国の権力中枢では、胡派と江派との間で激しい権力闘争が繰り広げられていますが、権力者のトラウマが、一国の運命を弄ぶとしますと、これもまた、共産党一党独裁体制の限界なのではないかと思うのです。

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尖閣諸島共同管理案―国際法秩序の崩壊を招く危険性

2012年09月28日 11時08分39秒 | 国際政治
首相の「妥協せず」発言、経団連会長が批判(読売新聞) - goo ニュース
 中国側の常軌を逸した反日運動に慄いたのか、経団連の米倉会長も、日本維新の会の橋下氏も、尖閣諸島の共同管理案を提唱し始めました。この提案、国際法秩序を崩壊させかねない、極めて危険な提案なのではないかと思うのです。

 国境線の法的保障が如何に重要であるかは、もし、これが失われたとしたら、全世界は、全ての境界線を失い、”切り取りご免”の”戦国時代”に突入することからも、容易に想像することができます。国境線がないのですから、力のある国が、無制限に自らの領域を拡大しても無問題なのです。しかしながら、これでは、戦争が常態化し、人類は滅亡しかねませんので、人類は、(1)二国間の合意によって領土画定条約を結ぶ(2)国際条約によって特定の国の領域を定める(多国間の講和条約…)(3)無主地などの取得手続きを定める(4)民族自決の原則により特定の民族の居住地を領域として認める・・・といった法的なアプローチで、国境線の安定化を図ってきました。こうした歴史的プロセスを経て、国際紛争も制度的に司法解決することができるようになったのです。それでは、この流れの中に尖閣諸島問題を当て嵌めてみますと、どうなるのでしょうか。尖閣諸島は、無人島でしたので、日本国は、1895年に(3)の近代国際法の先占の手続きを経て尖閣諸島を領有するに至りました。この際、周辺諸国から何らの異議申し立てもなく、平穏無事に実効支配が続き、75年の歳月が流れたのです。近代国際法においては、こうした事実があれば、日本国の尖閣諸島の領有権は当然に確立されたものと見なされます。ところが、中国と台湾は、68年代に石油資源の埋蔵が報告された途端に、突如として、領有権の主張を始めます。もし、国際法において、中国や台湾が、日本国の先占と実効支配を否定するならば、日本側の主張を覆すような証拠や根拠が必要です。しかしながら、中国や台湾には、自らの主張を立証するためにICJに提訴するどころか、武力による威嚇や暴力に訴えてでも、(3)を強引に否定して(1)に持ち込み、日本国に領土、あるいは、資源に関する主権的な権利を割譲させようとしているのです(この行為も国際法違反…)。仮に、中国や台湾の行動が容認されるとしますと、国際法において領有権が既に確立している地域であっても、安心してはいられません。他の諸国が領有権を主張さえすれば、その地域は容易に”交渉対象”に転じてしまうのですから。世界諸国の境界線は、時代によって激しく変化していますので、過去の関連事実を持ち出せば、領有権の主張は、比較的簡単にできることなのです。

 現在、尖閣諸島等の共同管理案を提案している人々は、二国間の任意の妥協こそが、問題解決の近道であると信じているのでしょう。しかしながら、脅しを背景とした安易な妥協と譲歩は、歴史の教訓が示すように、より重要なもの、すなわち、法秩序による安定の土台を根底から掘り崩すことになります。日本国政府は、国際社会における暴力の効力を否定するためにも、あくまでも、国際法秩序の擁護者として行動し、全世界の国境を不安定化するような、悪しき前例を造ってはならないと思うのです。

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法の支配―中国も国際法の下にある

2012年09月27日 14時42分53秒 | 国際政治
領土対立、国際法で解決を=尖閣・竹島念頭に国連演説―野田首相(時事通信) - goo ニュース
 尖閣諸島や竹島など、日本国を取り巻く国際情勢は、悪化の一途を辿っています。日本国政府の対応も、決して褒められたものではなく、対応が裏目に出ることも少なくありません。こうした中、唯一、野田首相を高く評価できる点があるとすれば、国連総会の演説において、法の支配の重要性を説いたことです。

 法の支配の意義は、中世イングランドの法律家であったブラクトンの“国王は、如何なる人の下に立つことはないが、ただ神と法の下にある”という格言に端的に表現されています。この言葉は、たとえ権力者であっても、法に従う義務があり、法こそが、支配者をも拘束する上位の支配者であると宣言しているのです。中華帝国の伝統では、どちらかと言いますと、法は、為政者の命令文に過ぎず(法治主義)、法が皇帝を拘束することはありません。そうであるからこそ、”私の言葉が法律”といった傲慢な態度の為政者の出現を許してきたのです。中国は、自らの伝統的な法概念に従って、国際法が、自国をも拘束するとは考えていないのでしょう。加えて、私的所有権さえ否定した共産主義体制にあっては、領有権という法的権利に対する意識も希薄であるかもしれません。しかしながら、現代という時代にあっては、中国、そして、台湾も、尖閣諸島の領有権を主張するならば、国際法に照らして正当な権利があることを、自ら証明しなければなりません。国際社会では、一方的に他国の領土を自国の国内法で編入し、”自国の欲する領土は自分もの”という態度は、許されないのです。

 中国は、自らもまた、国際法の下にあることを自覚すべきです。そして、国際法が存在する以上、領有権を主張する場合には、ICJに提訴し、中立・公平な裁判において領有権の承認を得る必要があることを認識すべきと思うのです。正当な領有権なくして軍事力で他国の領土を奪取すれば、それは、”侵略行為”になるのですから。

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歴史認識に自縛されてゆく韓国―旭日旗への恐怖心

2012年09月26日 15時56分55秒 | アジア
韓国、自衛艦寄港を拒否 PSI訓練 日本側「きわめて非礼」(産経新聞) - goo ニュース
 先日、韓国の沖合で実施されたPSI訓練に際して、日本国の海上自衛隊の艦船の釜山港への寄港が拒否されたそうです。竹島問題で緊張が高まる中、韓国側の反日感情が露わとなったのですが、海自が掲げる旭日旗に敏感に反応したのではないかとする憶測もあります。

 ロンドン・オリンピックで韓国側が見せた旭日旗に対する激しい反発に、日本人の多くは、驚きを禁じ得なかったと思います。数年前までは、韓国側が、旭日旗に対してこうした過激な反応を見せたことはなかったからです。最初は、サッカー選手の”人種差別パフォーマンス”や”独島パフォーマンス”の批判のカウンターとして、旭日旗批判を始めたのでしょうが、今では、日本国の軍国主義の象徴として、ナチスのハーゲンクロイツと同列に扱っています。しかしながら、軍旗である旭日旗と政党旗であったハーゲンクロイツとは、何もかもが全く違います。そもそも、韓国は、当時、日本国に併合されていたわけですから、韓国人を、ハーゲンクロイツの下で迫害されたユダヤ人に模すことはできません。当時の朝鮮籍の人々もまた、旭日旗の下で”日本人”として戦争を闘っていたのであり、多くの朝鮮籍の人々もまた、自ら志願して日本軍に参加しているのです。しかも、韓国の場合、日本国が、軍事占領して併合したのではなく、韓国併合条約を締結することで、平和裏に併合しています。当時の世界情勢では、韓国が、国家として自力で独立を維持することは難しく、日本国の軍事力あってこそ、戦場にもならず、爆撃も受けずに、第二次世界大戦の終戦を迎えることができたのです(その後、朝鮮戦争が勃発しますが…)。

 戦後、韓国は、国家的な反日政策として、日本国を、軍事力で朝鮮半島を植民地化し、軍国主義が跋扈した”侵略国家”と位置付けてきました。それ故に、日本国の”軍事力”は恐怖心と反感の対象となり、アレルギー症状にも似た旭日旗の排除要求に至ったのでしょう。しかしながら、これでは、韓国は、自らが造り出した歴史観に自縛されていることになります。この救い難い自縛は、年々、何らかの事件が起きるたびに激しさを増しているように思えるのです。

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”領土問題”の定義を明確に

2012年09月25日 15時33分04秒 | 国際政治
尖閣・竹島、国際法で解決を…首相が国連総会へ(読売新聞) - goo ニュース
 尖閣諸島の領有権について、日本国政府は、歴史的にも法的にも明確なる日本領として、”領土問題はない”とする基本原則を堅持してきました。しかしながら、”領土問題”が意味する内容を明確に定義しませんと、不毛な論争に陥ると思うのです。

 ウィキペディア(英語版)には、領土紛争リスト(List of territorial disputes)が掲載されており、その中には、北方領土、尖閣諸島、竹島のみならず、日本国が関わる紛争として、沖ノ鳥島、対馬、タスマニアなどもリスト・アップされています。この顔ぶれを見ますと、紛争地域の認定基準とは、複数の国がある特定の領域の領有権を争うか、あるいは、ある国の領域に対して、他の何れかの国が、その領有権やEEZの範囲などについて、クレームを付けた事実の存在にあるようなのです。沖ノ鳥島は中国が、対馬は韓国が、タスマニアはオーストラリア(オーストラリアのEEZ内での捕鯨)が、日本国を相手取ってクレームを付けていますので、後者の事例となります。仮に、この紛争認定基準に従うとしますと、尖閣諸島もまた、中国がクレームを付けてきましたので、”争いのある地域=領土問題”となります。こうした場合、”領土問題はない”という表現は、正確には、”中国側がクレームを付けてきているが、尖閣諸島は、歴史においても、国際法において、日本国領として確立している”という、日本国側の立場の表明となります。ここに、国際社会と日本国との間に、領土問題の定義に関する”ずれ”を見出すことができます。そして、この”ずれ”に無頓着に、領土紛争リストの基準に従って”領土問題はある”と発言しますと、日本国政府の公式見解を否定したとして、売国奴扱いされることになるのです(私自身も、売国奴扱いされている可能性がある…)。
 

 それにしましても、他国の領域に対して、ある国が、一方的にクレームを付けることができる現状は、国際秩序の平和と安定にとりまして、決して望ましいことではありません。全ての諸国が強制管轄宣言を行うことも一つの方法ですが、ICJの領有権確認手続きを充実させる(応訴拒否を想定し、単独訴訟にも対応)、あるいは、他国の領有権にクレームを付ける場合には、ICJへの提訴を標準手続化するといった制度的な強化が必要なのではないかと思うのです。

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橋下市長の支離滅裂な売国発言

2012年09月24日 14時52分02秒 | アジア
橋下市長、竹島を「日韓の共同管理に持ち込め」(読売新聞) - goo ニュース
 大阪市の橋下市長は、竹島問題について、”日韓の共同管理に持ち込め”との発言をしたそうです。韓国の不法占拠の効力を認めたことになりますが、この売国発言、支離滅裂なのではないかと思うのです。

 橋下市長は、”共同管理案”と同時に、韓国に対して、ICJの応訴受託義務を宣言するように求めています。仮に、韓国が、ICJの強制管轄権を受け入れるとしますと、裁判所は、おそらく、日本国側に領有権を認めることになるでしょう。判決の結果、日本国領であることが確定したならば、韓国側には、判決内容を履行する義務が生じます。それでも、韓国側が竹島に居座るならば、判決の履行に責任を負う安保理が、何らかの対策を講じることになります。判決内容を実現するためには、当然に、韓国側の駐留警備隊や各種の施設の強制撤去が必要となりますので、この強制執行の作業は、多国籍軍、あるいは、日本国の自衛隊に委任され展開もあり得なます。また、ICJでの判決があれば、韓国側の侵略行為が確定しますので、自衛隊による竹島奪還も自衛権の発動とし許されることになります(交換公文に反し、平和的な解決手段を拒否した韓国側に責任がある…)。何れにしまして、このプロセスでは、どこにも”共同管理構想”の入り込む余地がないのです。

 不思議なことに、橋下市長の”共同管理案”に対して、これまでのところ、韓国や北朝鮮からの激しい反発は見られないようです。自国の領土であると確信しているならば、”共同管理”さえ日本国への譲歩となり、許されないはずなのですが…。少なくとも、この売国発言は、法よりも暴力を支持したことにおいて、正義派の弁護士としての橋下氏のイメージを、根底から覆してしまったと思うのです(正当な所有権を有する方が、暴力で占拠した側に半分を折半…)。

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尖閣諸島問題―ICJへの提訴は”自衛権”の行使

2012年09月23日 14時37分03秒 | 国際政治
国連で日本の立場説明へ=「尖閣・竹島」言及は回避―野田首相、24日総会へ出発(時事通信) - goo ニュース
緊張高まる尖閣諸島問題について、日本国政府は、これまで”領土問題は存在しない”とする公式の立場を表明してきました。この立場を貫くと、司法解決の提案さえも、”領土問題”の存在を認めたことになり、中国への譲歩となるとする反対意見も聞かれます。

 何故、中国への譲歩となるのか、と申しますと、領土問題として認めた限り、二国間交渉の席で、日本国は、中国側からの提案を飲まざるを得なくなるのではないか、とする懸念があるからです。実際に、胡錦濤主席の作戦は、日本国側に領土問題の存在を認めさせた上で、共同開発案を日本国側に飲ませるというものなそうです(習近平氏も、武力奪取の方針を転換?)。つまり、領土問題化こそが重要であり、後は、外交交渉という”平和的な手段”を装った”脅し”で、少なくとも、尖閣諸島、あるいは、近海に眠る資源の半分は奪取できると目論んでいるのです。しかも、トップ外交で、平和的に解決したとなれば、国際社会から称賛を浴びるかもしれません。中国側からしますと、一石二鳥なのですが、よく考えてみますと、中国政府、並びに、司法解決反対派の人々も、一つの重要な点を見落としていように思えます。それは、領有権とは、法の保護の下にある排他的な権利であって、法的な根拠を持つ側は、他国による権利主張を退けることができることです。仮に、複数の国が、同時に権利を主張する場合には、どちらに法的な権利が存するのかを、中立・公平な裁判によって判断してもらうことになります(中国は、既に尖閣諸島を自国の領域に編入…)。ですから、日本国政府が、ICJへの提訴といった司法解決に訴えたとしても、相手国の権利を認めたことにはなりませんし、自国の正当な権利を否定したことにもならないのです。むしろ、中国側の不当な権利主張を、法を根拠に排そうとしているのですから、行為としては、自衛権の行使に類似した自己防御権の行使なのです。

 国連総会では、日中間の外相会談なども準備されているそうですが、外交的解決と領土問題の承認の組み合わせは最悪です。中国側のペースに嵌れば、いつのまにか、平和的解決の名の下で、法的根拠を持つ日本国側が、領土や権利放棄を迫られることになりかねないからです。日本国政府は、軍事力による自衛を強化すると共に、法的な自衛手段にも訴えるべきと思うのです。

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暴走する中国―”文明の衝突”ではなく”文明と野蛮の衝突”

2012年09月22日 14時00分28秒 | 国際政治
尖閣、国際司法裁で争わず=外相(時事通信) - goo ニュース
 尖閣諸島に対する中国の傍若無人な態度が示すように、中国という国は、法観念がなきに等しく、”力がある国が盗るのは当たり前”とでも考えているようです。21世紀に至り、経済的にも軍事的にも急成長を遂げた中国は、今や、国際社会を脅かす、危険な存在となりつつあります。

 1990年代に、サミュエル・ハンチントン氏が世に問うたのは、イスラム諸国の台頭を念頭に置いた『文明の衝突』でした。一方、21世紀に生きる人類が直面しているのは、文明間の価値観の違いから生じる摩擦や軋轢ではなく、文明そのものを破壊しかねない、野蛮な世界からの挑戦なのではないかと思うのです。中国は、かつては、古代文明の発祥地に名を連ねる文明の先進国でした。しかしながら、西欧から発しつつも、法や権利意識が広く行きわたった現代にあっては、中国は、人治が残る文明の後進国に留まっています。否、後進国どころか、共産主義勢力が一党独裁体制を敷いたことで、中華文明の地は更地とされ、暴力が容認される野蛮な世界に退行してしまった観さえあるのです。その中国が、大国として国際社会に進出を図ろうとすれば、当然に、文明と野蛮との間の衝突が発生します。そして、歴史は、文明と野蛮が闘った時、必ずしも文明側が勝つとは限らないことを示しているのです。

 玄場外相は、尖閣諸島問題について、ICJでは争わず、26日には、中国の楊外相との会談の場を設けるそうです。話し合いでは、中国側は、武力行使を仄めかした威圧と手練手管の懐柔により、文明国であった日本国を野蛮陣営に引きづり込もうとするかもしれません。公平で公正な法秩序こそが文明の証しなのですから、日本国政府は、決して司法解決という手段を放棄してはならないと思うのです。

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尖閣諸島問題―司法解決反対論は中韓のため?

2012年09月21日 11時31分42秒 | アジア
ニュースを斬る えっ、「日本は中国と戦争したがっている」って? 中国人は日本の“異常さ”がまだ分かっていない(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 中国の抱える最大の問題点は、法意識の欠如にあります。共産党一党独裁体制が、暴力革命、すなわち、法秩序と権利の徹底的な破壊を経て成立したわけですから、中国政府が、法というものを毛嫌いするのは当然なのかもしれません。

 中国国民の多くが疑っているように、日本国が、中国の領土を無制限に”侵略”することはあり得ないことです。日本国には、国際法に対する遵法精神がありますので、国際法で確定されている自国の領域=尖閣諸島を守ろうとしているだけなのです。一方、尖閣諸島のみならず、沖縄や日本本土までをも無制限に狙っているのは中国側です。それは、先に述べたように、領域が法によって定められているという事実を否認しているからです。こうした中国の本質的な無法志向が根本的に改善されない限り、何度でも同様の問題が繰り返されることになりましょう。ですから、対中政策の目的は、中国を、国際的な法秩序に組み入れることであり、この点、尖閣諸島問題も、国際法に基づいて解決することがベストです。領有権問題の中でも、尖閣諸島や竹島は、論点が比較的明確ですので、司法解決こそ相応しい事案でもあります。

 ところが、日本国内には、ICJといった司法解決の方法を”無駄である”、あるいは、”中国への譲歩”として反対する声が聞かれます。こうした反対論者の人々は、中国と同様の思考回路に陥っているか、あるいは、中国と同様に無法志向が強い韓国の国益のために発言しているとしか思えないのです(竹島の共同提訴拒否を間接的に支援するため…)。仮に、中国が、尖閣諸島を武力で占領したとしますと、その時点で、国際法秩序が崩壊し、国境線の流動化が起きるのですから、その災難は、全ての国を襲います。ですから、日本国は、自らの国益、そして、国際社会の法秩序のためにも、司法解決を前面に打ち出して対中政策を進めるべきと思うのです。

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対中融和外交こそ元凶では

2012年09月20日 16時08分35秒 | 国際政治
国際社会も危惧する日本の右傾化と政治主導外交 深刻な日中関係を安定軌道に戻すための「4原則」(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
本日、ディッチレー財団が主催した国際会議に出席した際の感想として、外務省の元アジア局長であった田中均氏が執筆した記事が、ネット上に掲載されておりました。

 記事の内容を要約しますと、(1)日中関係の重要性の再認識(2)中国の不安定な国内事情への配慮(3)日中間のパイプの強化(4)多国間枠組みの活用、の4原則を軸に、対中関係を再構築せよ、というものです(全く、国際法の遵守には触れていない…)。しかしながら、この主張、結果と原因が”あべこべ”なのではないかと思うのです。現実には、これらの原則を追求してきた結果が、対日強硬策と反日暴動なのではないでしょうか。鳩山元首相に至っては、この4原則の忠実なる実行者であるばかりか、”日本国は日本人だけのものではない”という”開放発言”にまで踏み込んでいます。こうした、従来の迎合主義的、あるいは、事なかれ主義的な外交のあり方が、中国の覇権主義を助長したと考えられるのです。先進国間で有効な外交手法は対中政策では通用せず、氏が主張するように、”話し合い”や”人脈造り”を重視しますと、日本国は、中国に取り込まれ、身動きがとれなくなるかもしれません。日中間の頻繁な会談や豊富な人脈は、無理難題を日本国に押し付け、中国が日本国を縛る頸木となるのです。これでは、属国化の奨励に他なりません。

 西欧とは違い、アジアでは、主権平等の原則さえ怪しい限りであり、大国意識を持つようになった中国は、他国の主権など無視して、平気で相手国の法的な権利を踏みにじるろうとします。日本国政府が、21世紀にすべきことは、中国中心の華夷秩序の形成に手を貸すことではなく、アジアに主権平等と法の支配を確立することにあります。融和主義的な政策は、アジアに禍しかもたらさないのですから、日本国政府は、軍事力をバックに据えながら、国際法秩序の構築を軸としたアジア外交への転換を図るべきと思うのです。

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尖閣諸島問題―中国の弱点は司法解決

2012年09月19日 15時42分10秒 | アジア
尖閣領有、米は「中立」 安保適用従来通りも中国へ刺激避けたい(産経新聞) - goo ニュース
 昨日、訪中していたアメリカのバネッタ国防長官と中国の梁光烈国防相との共同記者会見の席で、梁国防相は、尖閣諸島に対する日米安保の適用に断固反対すると述べたそうです。中国側は、”日米安保が邪魔で武力行使ができない”と不満をぶつけたに等しく、この言葉から、中国政府が、武力こそ唯一の解決手段と考えていることが、ありありと伺えます。

 そもそも、尖閣諸島に関しては、中国側が、日本国の領有権に対して一方的に異議を申し立てる構図となります。こうした構図にあっては、異議申し立てをする側が、裁判に訴えるのが一般的な対応です。そして、実際に、中国側が、日本国政府に対して、国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴を持ちかけたとすると、日本国政府は、これを拒絶することができません(この点を訂正いたします。強制管轄受諾は、相互主義に基づきますので、中国が、受託していない現状では、たとえ、中国からの提訴があっても、日本国は、拒否できる立場にあるようです。もっとも、共同提訴の提案があれば、日本国は、平和的解決手段として、応訴すると思います。誤った記述を掲載しましたこと、お詫び申し上げます。2012年9月22日)。何故ならば、日本国政府は、ICJの強制管轄権を認めているからです(竹島については、韓国がこの強制管轄権を認めていないために共同提訴を拒絶…)。このことは、中国側がICJへの提訴という手段に訴えれば、たとえ、日本国政府が、公式見解として”領土問題はない”と主張しても、自動的にICJの法廷にて領有権が争われることを意味しています。この展開を考えますと、尖閣諸島を領土問題化したい中国にとっては、ICJへの提訴こそが、最適な手段なはずです。ところが、日中平和友好条約でも、武力の不行使が定められていながら、中国は、この手段を使うことに、極めて消極的です。否、自国民に対して、国際社会には、こうした平和的な司法解決手段が存在していることを隠そうとさえしています。何故ならば、ICJへの提訴は、自らの敗北を意味するからです。

 『孫氏の兵法』では、”戦わずして勝つ”が、上策とされています。ところが、中国の尖閣諸島をめぐる現状は、”戦わなければ勝てない”というものです。日本国政府は、中国からの武力攻撃を迎え撃つ体制を備えつつ、同時に、国際法と国際司法制度という、平和的な解決手段をも追求すべきではないかと思うのです(ICJ共同提訴のみならず、単独提訴や国連海洋法裁判所…の活用も可能)。中国の最大の弱点は、司法解決なのですから。

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幻の中国漁船大船団―沈黙する不可解な日本国政府

2012年09月18日 15時46分36秒 | アジア
漁業監視船、尖閣の接続水域に…漁船団は未確認(読売新聞) - goo ニュース
 尖閣諸島周辺海域に向けて1000隻もの中国漁船が、中国当局の漁業監視船を伴い、出航したというニュースに、日本国では衝撃が走ることになりました。すわ、平成の元寇かと…。中国では、反日運動に連動して日中開戦論が高揚しており、尖閣諸島沖での両国の偶発的な武力衝突もあり得たからです。

 ところが、何時になっても中国漁船の大船団は、尖閣諸島沖に現れないのです。仮に、中国政府の公表通りであれば、大船団は、既に現地に到着しているはずですが、確認されているのは、中国側の漁業監視船のみです。中国政府が公表する数字は、常に一ケタ違うとも言われていますので、あるいは、100隻ほどの小船団であったか、あるいは、元から大船団など存在していなかった可能性すらあります(あるいは、既にUターン?)。狐につままれたようなお話なのですが、実のところ、この大船団の真相は、既に日本政府は掴んでいるはずです。昔とは違い、東シナ海の上空には監視衛星が周回しており、1000隻もの船団であれば、容易にその姿も航行位置もキャッチすることができるからです。日本の衛星ではなくとも、同盟国であるアメリカから、情報提供を受けているかもしれません。

 日本国政府としては、この大船団が実在するならば、国際社会に向けて中国の無謀な行為として発信し、一方、大船団が実は幻であるならば、中国政府が”偽情報”を流したとして咎めることができます。どちらにしましても、国際社会から非難を受けるのは中国ですし、日本国民も正確な情報を得ることができます。にも拘わらず、日本国政府が、この中国漁船大船団について沈黙を決め込んでいることは、中国を庇うが如くであり、極めて不可解な行動に思われるのです。

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尖閣反日暴動―通州事件との共通点

2012年09月17日 15時33分56秒 | アジア
中国に強く抗議、邦人の安全確保求める…首相(読売新聞) - goo ニュース
 中国では、日中戦争の発端を、1937年7月7日、日本側が仕掛けたとする盧溝橋事件に求めています。近年の研究では、コミンテルンの策謀の可能性も含めて、中国側の発砲との見方が有力ですが、同年7月29日に発生した通州事件の方が、一般の日本国民にとっては、はるかに衝撃的な事件であったようです。

 通州事件とは、「冀東防共自治政府」保安隊(中国人部隊)が、日本軍の部隊や特務機関のみならず、通州に在住していた日本人居留民260人をも虐殺した事件です。100年近くも前に起きた事件なのですが、今回の尖閣反日暴動もまた、通州事件と幾つかの点で共通点が見出されるのです。第一に、民間人や民間企業が、攻撃の標的とされたことです。通州事件では、無抵抗の日本人が無残に殺害されたことが、事件の凄惨さを際立たせ、対中感情を著しく悪化させる原因になりました。第2に、事件の背後に、政府の容認があったことです。通州事件では、当然、日本は敵と見なされていましたが、尖閣反日暴動でも、”愛国無罪”とも言うべき政府の容認姿勢がありました。第3に、両事件の背景には、”戦争状態”がありました。通州事件では、盧溝橋事件によって既に戦端が開かていましたし、今日でも、一般の中国人の頭の中では、尖閣問題は日本による”侵略”であり、日中は、”仮想戦争”状態にあるのです。そして、中国政府の統制が利かなくなってしまった点が、第4の共通点です。時代状況が違いますので、全てが一致しているわけではないものの、尖閣反日暴動は、どこか、通州事件を彷彿させるのです。

 中国は、戦後、共産党政権が成立したことで時間の流れが止まってしまい、現代の中国人の行動パターンもまた、1世紀前と殆ど変りがありません。中国国民は、政府を含めて、反日暴動にエネルギーを費やすよりも、自国の近代化と民主化にこそ尽くすべきと思うのです。

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領土問題棚上げ論―『ベニスの商人』の逆パターンでは

2012年09月16日 16時14分17秒 | アジア
反日デモ、中国に抗議=野田首相「邦人の安全確保を」(時事通信) - goo ニュース
 尖閣諸島、竹島、北方領土と、日本国は、目下、領土をめぐる周辺諸国との軋轢に苛まされています。こうした中、識者などの間からは、領土問題を棚上げし、資源の共同開発に取り組むべきではないかとする意見も聞かれるようになりました。 

 領土問題棚上げ論とは、領有権の帰属先を決定することは一先ずは先延ばしにし、領域やEEZにおける資源開発だけは共同で行おうというものです。つまり、棚上げ論者は、領有権と資源開発権とを切り離し、資源開発の権利だけは共同で行使できるものとすれば、武力衝突といった決定的な対立に至らずに、円満に当該領土を共同管理できると主張しているのです。この提案、一見、平和的で互恵的に聞こえますので、賛成する人々も現れそうなのですが、よく考えてみますと、巧妙な罠が潜んでいるように思えるのです。何故ならば、それは、法的根拠のない側の国にとって、極めて有利な内容となるからです。否、それどころか、法的根拠を有する側の国にとっては、一方的な領土要求や不法占拠を追認し、自国に帰属するはずの資源の半分をゆすりとられたに等しくなります。尖閣諸島も竹島も、領土としては僅かな面積に過ぎませんが、その近海には天然資源が大量に眠っています。結局、日本国政府を棚上げ論に引き込みば、両国は、資源獲得という初期の目的を半ば達成することになるのです。このような方法が許されるとすれば、今後、世界中で、共同開発狙いの領有権主張が激増することになるでしょう。

 『ベニスの商人』では、”肉は切り取ってもよいが、血を一滴も流してはいけない”とする名裁判で、無理難題な要求を押しのけますが、領土問題棚上げ論は、”肉(領有権)はそのままにしてよいが、血(資源)だけを抜きとればよい”と言っているようなものであり、不法行為を働いた側に微笑んでいます。この台詞では、美しく賢いポーシャのイメージは湧いてこないのです。

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