万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカの強力な封じ手―身動きが取れなくなった中国

2012年12月01日 15時41分24秒 | 国際政治
米、尖閣防衛を初明記 強い危機感、中国牽制(産経新聞) - goo ニュース
 昨日、アメリカの上院において、国防権限法の修正案が全会一致で可決されたそうです。成立までには、下院との協議を残しているそうですが、尖閣諸島の防衛義務を明記したこの修正案、日本国にとりましては心強い味方となると共に、中国に対しては覇権主義に対する強力な封じ手になるのではないかと思うのです。中国の一党独裁体制を揺るがすほどの…。

 これまで、中国は、日本国の尖閣諸島を奪取することで太平洋への入り口を確保し、東シナ海のみならず、太平洋までをも中国の海とすることで、鄭和を派遣した明時代をも凌ぐ、大海洋帝国の建設を夢見てきました。人民解放軍内部では、既に、長期計画が作成されているとも噂されています。しかも、折も折、中国国内では、共産党の一党独裁体制に対する批判が高まっており、尖閣諸島の上陸と占領は、中国国民の不満を外部に逸らす格好の政治ショーとしても利用できます。反日感情を植え付けられている国民は、中国軍の勝利ともなれば世論が湧きかえり、熱烈な体制支持に転じることも夢ではないのです。その上、海底資源の利権をも獲得できるのですから、中国政府高官にとっては、一石二鳥どころか、一石三鳥もの効果が期待できるのです。おそらく、就任したばかりの習近平総書記にとっては、体制固めのためにも、尖閣攻略は、絶対に手放したくないオプションであったはずです。しかしながら、上記の修正案が、アメリカの尖閣諸島防衛義務を明記したことで、このオプションの発動は、即、米中戦争への突入を意味することになりました。つまり、軍事力においてアメリカの後塵を拝する中国は、動くに動けない状況に追い詰められたのです。

 仮に、米中戦争を覚悟で尖閣諸島に対して武力を行使しますと、中国側の敗北となる公算が高く、中国勝利のシナリオの目論見とは逆に、現政権の権威は地に落ち、国民の不満は、体制にストレートに向けられます。その一方で、尖閣戦略のオプションを自ら封じますと、国民の不満のマグマは蓄積され、何時、爆発してもおかしくない状況となります。他の周辺諸国に矛先を変えるという選択もありますが、長期に亘って反日教育を施してきた日本とは違い、国民が、必ずしも政府支持で団結するとは限りません。アメリカは、中国の古典的な戦法であった”闘わずして勝つ”を実践するかもしれないと思うのです。

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コメント (6)
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