万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国のドラマCM禁止―スポンサーの影響力を排除したい?

2011年11月30日 16時00分28秒 | アジア
ドラマ中のCM禁止=視聴者に配慮、広告減も―中国(時事通信) - goo ニュース
 日本国では、放送局が”韓流ドラマ”を大量に放送したところ、国民の間に反感が生まれ、スポンサーに対する不買運動にまで発展する事件が発生しました。この事件から、公共性の高い電波をめぐる、放送局、スポンサー、視聴者、そして政府(何故か日本政府ではなく韓国政府…)の4者による混戦模様が見えてきます。

 中国では、来年1月1日から、ドラマでCMを放送することが禁止されるそうです。当局は、”視聴者を満足させるための措置”と説明しており、ネットの世論調査でも、90%以上が賛成意見なほど評判は上々のようです。中国政府が、国民のために視聴者の意見を重視したとなりますと、日本の放送局よりも民意を尊重にしていることになるのですが、疑問がないわけではありません。何故ならば、スポンサーを外すことができれば、その影響力をも番組から排除することができるからです。リッチな中国企業が多額の広告料を支払えば、放送局は、政府よりも、スポンサーの意向を汲んだドラマを制作するかもしれません。さらには、外国企業が、自社の製品が登場する舞台として、おしゃれな生活空間をCMとして放映すれば、お茶の間のテレビを通じて視聴した国民は、外国の自由な生活様式に憧れを抱くかもしれないのです。

 中国においては、放送局、スポンサー、視聴者、そして政府(中国政府)の4者の関係は、政府の優位が明白です。日本国の放送局の視聴者軽視も問題ですが、中国政府によるCM禁止は、やはり、視聴者、つまり、国民を完全にコントロールしたい中国政府の意向の現れなのではないかと思うのです。

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失業者480万人の衝撃―経産省は国民に説明を

2011年11月29日 15時54分18秒 | 日本経済
10月の失業率、0.4ポイント悪化 求人倍率は横ばい(朝日新聞) - goo ニュース
 本日の日経新聞の一面に、極めて衝撃的な記事が掲載されていました。経産省の提言をさりげなく紹介しており、タイトルは「医療・環境・農業に重点」ですが、その内容として驚くべき数字を挙げています。

 それは、日本の雇用は、2020年までに480万人喪失する可能性があるというものです。対策を採ることで90万人ほどの減少に抑えることができるとしていますが、それでも深刻な数字です。おそらく、経産省は、日本経済が抱えている”6重苦”を解消するための政策をとるのではなく、産業の空洞化を放置し、そこで生じた失業を、別の産業で吸収しようとしているのでしょう。再生戦略の新たな柱として、上記の3部門を重点産業に据えたいようですが、どれも、日本国にとって、特に競争力のある分野とも言えません。通常は、自由化によって国際競争に晒される場合、産業戦略としては、競争力のある分野を強化するものなのですが(該当するのは、新しいエネルギー産業として挙げられている省エネ機器と次世代自動車ぐらい…)、何故か、経産省の戦略は逆なのです。これでは、再生戦略ではなく、後ろ向きの保護政策ともなりかねません。

 失業者が480万人ともなれば、今後、十数人に一人が失業することになります。労組を支持母体としている民主党政権の方針としては背信的なのですが、経産省は、この数字の根拠と戦略の見通しについて、詳しく国民に説明すべきなのではないでしょうか。

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EUの京都議定書推進―財政危機の遠因では

2011年11月28日 15時55分30秒 | ヨーロッパ
「京都議定書はシンボル」EU代表団 COP17開幕へ(朝日新聞) - goo ニュース
 もし、温暖化ガスが地球の気候に多大なマイナス影響を与え、人類の生活空間を破壊するならば、その削減は喫緊の課題です。ところが、最近に至って、温暖化現象の二酸化炭素犯人説には疑問も呈されるようになりました。一方、こうした地球温暖化の原因に関する議論は置き去りにして、COP17は、南アフリカで予定通りに開催され、京都議定書の延長問題が議論されるそうです。

 京都議定書の生みの親でもあるEUは、COP17の方針について、当議定書の延長を支持することを早々に表明したそうです。しかしながら、EUのひときわ熱心な温暖化ガス削減への取り組みが、財政危機の遠因となっている可能性は、否めないのではないかと思うのです。何故ならば、京都議定書で削減の義務を負っているのは、EUや日本などの先進国であり、BRICsを始めとした新興国では、厳しい規制はありません。そこで、EU域内の企業が、生産を増加させようとする場合、域内よりも規制の緩い域外の国に工場を建設しようとするインセンティヴが強く働くのです。この結果、域内の産業の空洞化が進み、税収の低下、雇用対策などのための政策費の増加、国債の増発といった負のスパイラルを描くようになったとも考えられます。

 日本国もまた、経済の”6重苦”に直面していますが、EU域内の産業もまた、苦戦を強いられています。しかも、新産業として有望視されいたエコや再生エネルギー分野でも新興国に追い上げられていますし、金融面から期待されていた排出権取引市場も低迷しています。COP17で、新興国への削減の義務付けが実現しないとなりますと、EUは、さらに自らに重い足枷を課すことになるのではないかと思うのです。

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財政危機問題―歳入に歳出を合わせるべきでは

2011年11月27日 15時47分29秒 | 国際政治
欧州共同債、期待しぼむ=独首相、反対を堅持(時事通信) - goo ニュース
 世界中を見渡しますと、ヨーロッパ諸国をはじめ、深刻な財政問題に苦しむ国が少なくありません。アメリカでは大統領と議会が財政議論で火花を散らしていますし、日本国もまた、1000兆円の累積債務が何時日本経済に襲いかかってくのるか気が気ではありません。

 こうした問題は、特に先進国において顕著です。これは、高い生活水準と手厚い社会保障を誇った”豊かな先進国”の幻影が、消えつつあることをも示しています。市場のグローバル化の結果、今日では、「世界の工場」の座は安価な労働力と元安を武器とした中国へと移動し、各国とも、実体経済を動かす原動力も雇用機会が流出しています。この状態で、これまでのレベルを維持しようとすれば、常に、政府は、多額の国債を発行して歳入を補填するか、増税で埋め合わせるしかないのです。しかしながら、国債発行を増やしますと財政危機が悪化しますし、大幅な増税は、国民の購買力を低下させ、さらなる景気後退を招くことにもなります。

 ここで考えるべきは、政府の予算編成は、税収の方に合わせるべきではないかということです。これまで、政府は、最初に予算を組んで、足りない分を国債で補ってきました。今後は、歳出に歳入を合わせるのではなく、逆に、歳入に歳出を合わせるのです。例えば、予算の編成を、前年度の税収の枠内に収めれば、少なくとも、国債増発による財政危機からは逃れることができます(もちろん、移行期間を設けて・・・)。

 この方法を採りますと、政府は、限られた予算で最大限の政策効果を発揮できるよう、これまで以上の努力をする必要に迫られます。もちろん、社会保障レベルの低下も起こりうることですが、工夫次第では、スリム化と効率化によって乗り越えることができるかもしれません。どこかで大胆な方向の転換をしませんと、結局、ハードランディングによる破滅に至るのではないかと思うのです。

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本当に怖い経済・金融危機―解決手段がない恐怖

2011年11月26日 14時29分57秒 | 国際経済
ユーロ危機、テロより怖い=日本に期待「3%」―EU世論調査(時事通信) - goo ニュース
 深刻な財政危機に瀕しているEUでは、テロよりもユーロ危機に恐怖感を抱いているという世論調査の結果が報告されたそうです。それでは、何故、テロよりも金融危機の方が、恐ろしいのでしょうか。

 おそらくそれは、一旦、経済・金融危機が発生しますと、全ての人々の生活基盤が揺らぐにも拘わらず、誰もが有効な解決手段を知らないからなのかもしれません。テロ事件の場合には、犠牲となった死傷者の方々に心を痛めますが、解決策がないわけではありません。以後は、テロリストへの警戒を強め、予防策や未然に防ぐための仕組みを構築することで、対応することができるのです。実行犯のテロリストは、追跡すれば逮捕できますし、裁判所で刑罰を科すこともできます。しかしながら、経済・金融危機は違います。実のところ、人類は、何度となく経済や金融危機を経験してきながら、それを上手に終息させる手段を未だに見出していないのです。世界恐慌から回復するためには第二次世界大戦を要したという俗論がありますが、経済学者もまた、経済・金融危機発生のメカニズムは説明しても、その確実な防止策や遮断策、あるいは、事後的な回復策を示してはいません。

 人間は、解決策が存在するものよりも、存在しないものに対してより強い恐怖を感じます。全世界を覆う漠然とした不安感は、解決策なき危機が忍び寄っていることに起因しているのかもしれません。

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女性宮家創設―制度矛盾と深刻なリスク

2011年11月25日 11時23分10秒 | 日本政治
「女性宮家」創設検討を…宮内庁、首相に要請(読売新聞) - goo ニュース
 宮内庁は、野田首相に対して、”女性宮家”の創設の検討を提案したと報じられています。しかしながら、”女性宮家”は、制度的には矛盾に満ちていますし、日本国が、将来において深刻なリスクに直面する可能性も否定できません。

 宮家とは、宮号鎌倉末に最初の世襲親王家が創設されたことに始まりとし、江戸時代には、新井白石が、徳川御三家の制度を参考に、皇位継承を確かにするために閑院宮家などを創設しています。白石の立場を踏襲するならば、”女性宮家”の創設は、意味のないものとなります。何故ならば、宮家の女性当主の子である王が、父系から皇統を継がない限り、天皇に即位する資格がないからです。つまり、皇位継承の安定性には全く寄与しないのです。この矛盾を解決するためには、男系男子継承を定めた第一条を改正し、女系男子でも皇位を継承できるようにしなければなりませんが、今度は、初代の神武天皇から続く皇位継承の慣例を途絶させることになります(歴代女帝は、すべて独身の皇女や皇族を配偶者としていた寡婦の皇女・女王など、配偶者のいない皇親女性)。父系から皇統を継がない天皇は、日本の歴史上、存在していないのです。もし、母系からしか皇統を継がない天皇が即位するとなれば、それは、天皇の正統性が失われることになりかねません(国民の多くが、正統な天皇とみなさなくなった時点で、天皇家の権威は失墜する・・・)。

 将来的なリスクとしては、東宮家で既に表面化しているように、女性宮家には、配偶者やその親族に利用される可能性が極めて高く、背後に、新興宗教団体や外国勢力が蠢くことが予測されます。明治憲法は、こうした事態を怖れて男系の女性天皇さえ否定したのですが、皇族に自由恋愛を許している現在では、このリスクは、明治時代の比ではありません。宮家ともなれば、国費が支給されるわけですから、外戚や特定の支持団体による皇室利用は、国民感情が許さないのではないでしょうか。

 この他にも、この提案には様々な問題があるのですが、宮内庁が充分に国民に対して情報を提供していない中で、”女性宮家”の創設を提案しましても、国民の多くが賛同するとはも思えないのです。

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ユーロ圏共同債案―ドイツは連帯保証人になるのか

2011年11月24日 19時21分11秒 | ヨーロッパ
ユーロ圏、共同債の導入提案 欧州委、資金調達狙う(朝日新聞) - goo ニュース
 ギリシャに端を発した欧州の財政危機は、ユーロ導入国に新たな対応を迫ることになりました。その一案に、ユーロ圏で共同債を発行する案があるそうです。もし、この方式を採用しますと、ドイツは、いわば、連帯保証人の立場に立たされることになります。

 現在、検討されている案は、(1)共同債案、(2)共同債と各国国債の併存、(3)従来通りの各国国債の3案とのことです。この案が採用されますと、各国政府は、個別に国債を発行することはできなくなりますが、償還や利払い不能によるデフォルトの危機に直面することはなくなります。ギリシャを始めとした財政危機にある国にとりましては歓迎すべきことですが、ドイツにとりましては、他国の借金を返済する義務を背負うことになります。ドイツも、国債を発行している状況にありますので(このニュースの影響か、応札が不調に…)、必ずしも、財政に余裕があるわけでもありません。自らも財政赤字を抱えながら、連帯保証人になるのですから、ドイツが、いち早く反対を表明する理由も理解できます。しかも、ドイツ一国の信用力で共同債を発行することにもなりかねず、良好なドイツ経済に、万が一変調が起きれば、ユーロ導入国の全てに経済不安が広がります。

 かつて、ドイツ・マルクは、ECU(ユーロの前身)の”アンカー通貨”と呼ばれていましたが、今度は、財政分野において”アンカー”となることが、ドイツには期待されているようです。果たしてドイツは、この連帯保証人という”アンカー”の役割を引き受けるのでしょうか。

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再生エネ法―日本は太陽光発電施設の在庫処理場に?

2011年11月23日 14時02分47秒 | その他
ソフトバンクはどこへ行く 「アホだと思われるのがベストの戦略」 孫正義インタビュー(前編)(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 ”失敗に学ばない”ということは、”失敗を繰り返す”ことでもあります。ドイツやスペインでは、太陽光発電バブルが崩壊し、また、アメリカでは、太陽光発電の大手が、安価な中国製品に押されて倒産しています。

 来年7月の再生エネ法の前に、太陽光発電を製造する海外企業が、日本市場に押し掛けているそうです。もちろん、その背景には、ヨーロッパでのバブル崩壊や中国の輸出促進策があり、日本市場は、さながら在庫処理の場と化しそうです。本日の新聞でも、日本勢の苦戦が報じられていますが、特に、再生エネ法の対象となるメガ・ソーラー部門では、外国製品の方が価格競争力があり、産業政策として再生エネ法を実施しても、利益を得るのは、事業者と外国企業だけとなりますです。場合によっては、日本企業もまた、アメリカの倒産劇の二の舞となることも予測されます。

 そして、日本国民の不満が高まりますと、再生エネ法は早期に見直しとなり、やはり、バブルが崩壊するかもしれません。電力料金が上がるうえに、規模の経済の恩恵は外国企業に流れ、安価な外国製パネルを購入した事業者だけがひと儲けするのでは、国民の多くが納得しないからです。日本国政府は、本法を施行する前に、失敗を繰り返さないよう、再生エネ法に内在する負のメカニズムの問題に真剣に取り組むべきと思うのです。

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オウム死刑執行―”慎重発言”の平岡法相の真意とは

2011年11月22日 15時27分53秒 | 日本政治
オウム死刑執行「慎重に判断」…平岡法相(読売新聞) - goo ニュース
 昨日、オウム事件が結審したことを受けて、平岡法相は、刑の執行については、”慎重に判断する”と記者会見で述べたそうです。どのような意味で、平岡法相は、このような発言をしたのでしょうか。

 まず、オウム事件は、宗教団体の起こした事件であり、オウム真理教の後継団体が存続していることに配慮して、積極的に死刑執行はしない、という意味での発言であったとも考えられます。昨日も、テレビにて、”一時は教団を脱退したものの、麻原を信じなくなったら、ただの殺人になると思い、教団に戻った”とする、元幹部の発言が報じられていました。この発言からは、教団を盾にすれば、自己の殺人の罪が軽くなると期待する、元幹部の計算が読み取れます。もし、法相が、この意味で慎重発言をしたならば、宗教が絡む無差別殺人を大目に見ることなりますので、重大なモラル・ハザードを引き起こすことが予測されます。教団の名を出せば、殺人をしても死刑の執行はされないと考える人物が、今後、出現するかもしれないのですから。

 あるいは、平岡法相は、オウム事件の闇が、まだ完全には解明されていないと見なしているのかもしれません。教祖や信者の犯罪は裁かれていても、”オウム事件”という国家転覆を狙った事件には、まだまだ謎があるからです。事件発生当時、北朝鮮やロシアの関与が報じられており、組織的は背後関係については、充分に調査されているとは言えません。つまり、平岡法相は、死刑囚達が、テロで霞が関を制圧しようとした”オウム事件”の当事者であり、かつ、重要な証人であることを考慮して、死刑の執行は急がないと発言したのかもしれないのです。

 平岡法相は、こうした重大な発言をするならば、解釈が分かれないように、国民に真意を説明すべきなのではないでしょうか。社会的な影響のある法相であればこそ、曖昧な表現をすべきではないと思うのです。

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産業の空洞化―製造業の失業をサービス業は吸収できるのか

2011年11月21日 15時25分44秒 | 日本経済
海外展開に挑む町工場の気概:片山 修(ジャーナリスト)(Voice) - goo ニュース
 昨日に続いて、本日も、産業の空洞化容認論に対する疑問を提起してみることにします。本日は、サービス業の失業吸収力を問題としたいと思います。

 超円高を始めとした”6重苦”に苦しむ日本企業は、海外への製造拠点を移す動きが止まりそうにありません。特に問題となるのは、(1)国内の工場を閉鎖して国内の人員を解雇し、現地雇用を前提に新たな工場を海外に建設する場合と、(2)海外の安価な輸入製品に押されて、国内企業が倒産する場合です。これらのケースでは、確実に失業者が増加します。しかも、製造業の場合には、関連の部品メーカにまで、倒産や失業が連鎖的に及ぶ可能性が高くなります。産業空洞化容認論の論理では、(2)を避けるために、(1)を選択し、(1)で生じた失業は、サービス業で吸収すればよいとするものです。失業吸収産業としては、介護や医療などの社会保障関連の職種が候補として挙げられていますが、例えば、1000人規模の工場が閉鎖となった場合、これらの人々が全員、介護や医療の職に転換できると考えるには無理があります。介護や医療には、訓練や資格の取得を要しますし、今後、数百万人規模で失業が発生するとなりますと、逆に、介護士の方が余ってしまいます。しかも、社会保障分野には、税金がつぎ込まれていますので、この分野の従事者が増えるほど、財政は逼迫してゆきます。製造業からの納税による歳入が減少する一方で、社会保障分野での歳出が増加するわけですから、我が国の財政状況は、早々に危機的な状況に直面します。

 景気が後退し、所得が減少しますと、真っ先に影響を受けるのは、サービス業と言います。つまり、サービス業とは、充分な国民に可処分所得があってはじめて盛んになるのであり、今後、産業の空洞化による国民の所得水準の低下が予測されている中で、サービス業に高い失業吸収力を期待することはできないはずです。企業の海外展開そのものは否定すべきものではありませんが、国内においても、”6重苦”からの脱却を目指すとともに、苦境にあっても収益を挙げることができる強い産業を育てるべきではないかと思うのです。

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産業空洞化容認論―甘い見通し

2011年11月20日 15時41分52秒 | 日本経済
海外展開に挑む町工場の気概:片山 修(ジャーナリスト)(Voice) - goo ニュース
 最近、超円高が長期化しそうな気配を受けてか、産業空洞化を容認し、企業は、積極的に海外展開すべきという意見をよく耳にするようになりました。企業が海外で稼いだ収益を日本国内に還流させればよい、と・・・。しかしながら、この容認論、見通しが甘いと思うのです。

 日本よりも一足早くに産業空洞化が起きたアメリカでは、中間層の崩壊と失業率の高止まりに苦しんでいます。欧州もまた、域外への製造拠点の移転による雇用の喪失が、財政問題の一因ともなっており、産業の空洞化の先例を見れば、悲観せざるを得なくなるのです。しかも、容認論では、企業は、収益を日本国内に還元させるものと想定していますが、企業が、このように行動するとは限りません。海外の工場で低賃金労働をさせて、収益の大部分を日本国に吸い上げる形となっては、どこか”搾取”のニュアンスがあり、倫理的にも問題がありますし、企業としても、もし、日本国内に魅力的な投資先がなければ、当然に、現地、あるいは、より投資収益率の高い新興国に投資を拡大させるはずです。結局、産業の空洞化だけが加速し、国民の生活水準の低下と深刻な失業問題に直面することになるかもしれません。

 しばしば、”新興国の成長を取り込むことで自国も経済発展を”という掛け声は聞こえるのですが、新興国の成長と先進国の衰退がトレード・オフになっては、賢明な道とは言えません。先進国自らが新たな成長産業を生み出し、経済の牽引役とならない限り、共存共栄の状態は難しいのです。この意味において、先進国の方が、むしろ危機の渕にあると思うのです。

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日本国の最悪のシナリオ―経済圏への多重参加で全産業が壊滅

2011年11月19日 14時59分59秒 | その他
日中韓、早期FTA交渉入りを確認(朝日新聞) - goo ニュース
 APECでのTPP構想に加えて、昨日は、ASEANにおいて、アジア広域経済圏構想が打ち出されました。そして、本日は、日中韓FTAの交渉を開始すると報じられています。野田首相は、八方美人を決め込んでいるようですが、一つ間違いますと、最悪のシナリオが待っていそうです。

 それは、これらの全ての枠組みに参加することによって、TPPで農業が壊滅し、アジア広域経済圏と日中韓FTAによって、国内の工業が潰れるというシナリオです。日本の農業が競争力に乏しいことは自明のことですが、工業製品もまた、”6重苦”によってコスト競争においては劣位する可能性があります。気が付いた時には、国内市場は、農産物も工業製品も、外国製品によって占められているかもしれません。しかも、交渉に失敗すれば、TPPでは、不利な形でのISD条項が残り、反対に、日本企業の保護のために真に必要となるアジア広域経済圏と日中韓FTAでは、保護規定や紛争解決の制度が欠如する可能性があります。知的財産権の保護に至っては、中韓が、真剣に取り組むとは到底考えられません。さらには、投資が自由化されれば、巨大化したチャイナ・マネー(政府系ファンド…)が、技術力を得るために日本企業の買収に動くことも充分に考えられるのです。

 TPPについては、不平等条約との批判が強いのですが、アジア広域経済圏と日中韓FTAでは、反日政策を掲げる中韓によって、日本国が不利な条件を飲まされたり、日本国だけに不公平なルールが強要されることもあり得ることです(中韓には”法の支配”が定着していないのでは…)。野田首相は、あまりに呑気であると思うのです。

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TPP反対派はアジア広域経済圏には賛成なのか

2011年11月18日 11時53分52秒 | 国際経済
アジア広域経済圏、ASEANで構想 TPPに対抗(朝日新聞) - goo ニュース
 参加を表明した国が激増したTPPに刺激されてか、ASEANでも、中国を巻き込む形でアジア広域経済圏構想を打ち出したそうです。TPPには、強い反対の声があるのですが、アジア広域経済圏構想や日中韓FTAについては、賛否のほどはどうなのでしょうか。

 TPPへの反対意見としては、第1に、日本の農業や公的医療制度が崩壊するとする危惧があります。アジア広域経済圏では、例外品目を設け易いというメリットがあると指摘されており、農業や医療分野を例外とすれば、賛成ということなのかもしれません。その一方で、TPPにあっても、こうした問題が、何らかの形で解決されれば、反対理由はなくなります。

 また、農業では保護政策が許容されたとしても、逆に、工業分野では、アジア広域経済圏や日中韓FTAの方が、日本に打撃を与え、産業の空洞化を促進させる可能性があります。後者では、価格競争がものを言うからです。しかも、中韓は、為替操作も行っていますので、日本側はさらに不利になることが予想されます。

 第2に、TPPでは、投資保護と紛争解決に関するISD条項が問題となっていますが、アジア広域経済圏では、こうした条項は含まれていないかもしれません。その一方で、中国といった諸国では、投資家や進出企業が不当に不利益を蒙る事例が少なくなく、何らかの権利保護の規定がないと、現地政府から被害を受けるリスクが残されます。このため、安全性を考慮すれば、後者にも同様の仕組みが必要となるのですが、果たして、中国政府は、外国企業や投資家に対して、相応の補償を行ったり、中立・公平な紛争解決方法の導入することに、合意するのでしょうか(ISDは、そもそも、政府による一方的な収用など対する外国投資家の保護を目的としていた・・・)。

 第3に、TPPでは、知的財産権の保障が含まれており、アジア広域経済圏構想では、この点は、不明です。これまで、日本企業の多くは、中韓の企業によって権利を侵害されてきていますので、こうした分野に踏み込まない経済圏への参加は、危険が高すぎます。

 TPPに対しては、極めて感情的な反対論も見受けられる一方で、中国が関与する経済圏構想には、こうした声が聞こえないことに、どこか、不自然さと怪しさを感じるのです。

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防衛相のブータン国王晩餐会欠席―まさかの中国配慮か

2011年11月17日 17時17分45秒 | 日本政治
一川防衛相、宮中晩さん会欠席しパーティーに(読売新聞) - goo ニュース
 昨晩、宮中において、来日中のブータン国王夫妻をお招きした晩餐会が開かれたそうです。ところが、招待されていた一川防衛大臣は、当晩餐会には欠席し、政治資金パーティーに出席していたというのです。

 防衛大臣は、欠席について陳謝したと報じられていますが、少なくとも、国王夫妻の結婚式があった一か月ほど前から訪日は予定されていたのですから、日程を調整できないはずはありません。防衛大臣の欠席の背景を考えてみますと、ブータン王国の置かれている危機的な状況が思い当たります。ブータンは、近年、覇権主義路線を歩む中国によって、密かに国境線が侵食されるという被害を受けていると報じられています。つまり、表立ってはいないものの、中国とブータンとの間には、深刻な政治的な対立関係があるのです。

 もちろん、一川防衛大臣は、ブータン事情とは全く関係なく、政治資金パーティーを優先したのかもしれません。しかしながら、中国配慮を想起させるような晩餐会の欠席は、日本国が、中国の行為を容認しているといった、誤ったメッセージを送ることにもなりかねない、危険な行為であると思うのです。

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永住外国人の生活保護判決―法の番人が法の破壊者に

2011年11月16日 15時11分37秒 | 日本政治
永住資格を持つ外国人にも生活保護…福岡高裁(読売新聞) - goo ニュース
 裁判官の役割とは、法秩序を維持することです。誰もが同意することなのですが、福岡高裁が外国人の生活保護について下した判決は、当の裁判官が、法秩序の破壊者となっているとしか、言いようがありません。

 この裁判は、中国籍の女性が国籍を理由として生活保護の申請を却下されたことは不当である、として訴えたものであり、一審の地裁では、地方自治体の申請却下は憲法違反ではないとする判断が示されています。一審判決を不服とした中国人女性が、さらに高裁に控訴を行ったのですが、高裁では、逆転判決となったのです。この判決によって、永住外国人に対する生活保護の法的根拠が示されたと報じられていますが、生活保護法の法文には、明確に対象者を”国民”と表現しており、どのように読みましても、外国人に対して受給を認めていると解釈することはできません。一体、この裁判官は、何を”根拠”に、法的な”根拠”を導き出したのでしょうか(無から有が生じるようなもの・・・)。現在、永住外国人に対しても生活保護が実施されてきたのは、戦後に出された厚生省の通達によるものであり、法的根拠がないことは、よく知られた事実でもあります。この判決を下した裁判官は、法秩序を破壊するに留まらず、権力分立の原則を無視し、自らの恣意的な主観に基づいて、勝手に”立法”してしまったことにもなります。

 裁判官が、誰もが首を傾げる判決を行ったのでは、司法制度の信頼性が大きく揺らぐことになります。しかも、今般、生活保護といった手厚い社会保障を受けることを目的に、入国する外国人も後を絶ちません。永住権取得資格も緩和されており、大震災と”6重苦”による生活保護の急激な受給増に加えて、今後、外国人の受給者も増えるのでは、日本国の財政は、早晩、破綻してしまいます(外国人の生活保護は本国が負担すべきでは…)。この問題、最高裁で争うべきなのではないでしょうか。

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