万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

公務員には職業選択の自由は及ばない

2009年10月31日 15時51分47秒 | 社会
「司法修習生は日本国籍必要」条項を削除 最高裁(朝日新聞) - goo ニュース
 ”治外法権”の撤廃が、不平等条約改正の目的の一つであったように、如何なる国でも、裁判権の所在には神経を尖らすものです。司法修習生の国籍条項撤廃のニュースには、外国人裁判官への道を開いたのかと、一瞬、驚いたのですが、今回の改正は、あくまで裁判官や検察官の任用に関するものではないようです。

 そうは言いましても、国籍条項の削除の理由として、関係者の方が、職業選択の自由を実現を挙げたことには、首をかしげざるを得ません。何故ならば、公権力に関わる職業には、その国の国民とする制限が設けられていることは、当然のことだからです(もし、この制限がなければ、簡単に外国人による支配が成立してしまう・・・)。司法修習生は、公務員に準ずる身分とされ、守秘義務が課されている文章や情報に触れることもあると言います。修習期間に限定されてはいても、修習生は、国家権力の行使に関わるのです。

 それでは、この問題は、どのように解決したらよいのでしょうか。アメリカの司法制度では、司法修習制度そのものが設けられておらず、イギリスでも、事務弁護士については、法律事務所との契約による見習い制度を採用しているそうです。外国籍の司法試験合格者は、裁判官や検察官には任用されないのですから、司法官と弁護士の修習制度を分けてはどうかと思うのです。官民分離方式であれば、国家の主権と個人の職業選択の自由は、衝突しなくて済むのではないでしょうか。

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軍事判断を優先すべき普天間移設問題

2009年10月30日 12時53分23秒 | 日本政治
嘉手納統合、運用上機能せず=普天間移設問題で米国防総省(時事通信) - goo ニュース
 軍事基地とは、古今東西を問わず、”要衝”と判断された地政学上の最適位置に建設されるものです。この点を考慮しますと、嘉手納統合では機能不全となるとするアメリカ政府の見解を、日本国政府は重く受け止めるべきではないかと思うのです。

 基地をめぐっては、建設反対運動や移転要求運動などが起きますと、とかくに軍事的な判断よりも、政治判断が優先されがちです。政治家は、平和主義をアピールしり、政治家としての存在感を示すために、軍事戦略を後回しにしてしまうのです。基地の存在によって被害を受けている沖縄の住民の負担を軽減し、相応の保障を行うことは当然のことなのですが、基地そのものを最適地から動かすことには問題があります。同盟国であるアメリカ軍の機能が低下すれば、自国の防衛にマイナス影響がないわけはありません。防衛レベルの低下は、国家の存立を危うくし、沖縄県民のみならず、全ての国民を危険に晒すことになるのです。

 普天間基地の移設問題については、民主党政権は、マニフェストに拘ることなく、専門家による戦略上の判断を優先すべきと思うのです。最適地から基地を動かした結果、領土が占領されたり、国が滅んでは、亡国の決断となるのではないでしょうか。

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国債発行は民間頼み

2009年10月29日 17時24分41秒 | 国際政治
長期金利の上昇続く 鳩山政権下、財政再建に不安(朝日新聞) - goo ニュース
 政府は、”景気回復は政府の仕事”とばかりに、積極的な財政政策を採用しがちです。民主党政権もご多分にもれず、来年度の予算は95兆円にも膨らみそうで、国債発行も抑えた見積りで44兆円とも報じられています。

 政府の大盤振る舞いは威勢がよく、国民にも頼もしく映るかもしれません。しかしながら、国債発行による景気対策は、表面からは政府主導型と見えて、実は、民間の金融機関に国債を購入してもらわねばならない、という側面において、民間頼りの政策と言えます。政府が、無理に金融機関に国債購入を迫りますと、後に国債の金利や価格の変動することがあれば、金融機関に損失を与えますし、もし、金融機関が国債の購入を控えたり、大量売却を行うとしますと、今度は、政府が、窮地に立たされます。さらに、資金需要が拡大する時期に、金融機関が自由になる資金を持たないことは、景気の足をひっぱることになります。つまり、政府にとっても、民間金融機関にとっても、国民にとっても、国債の発行は、将来的なリスクを抱え込むことになるのです。

 この点を考慮しますと、政府は、財政再建の方向に舵を切る方が、賢明であるかもしれません。国債発行に伴うリスクを考えますと、国民は、マニフェストの変更は許容するのではないでしょうか。

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"日本病"は不治の病か?

2009年10月28日 15時35分04秒 | 国際政治
日本みたいになってしまうぞと英米の経済紙が警告(gooニュース・JAPANなニュース) - goo ニュース
 バブル崩壊以降、財政拡大政策というカンフル注射を打ち続けながら、一向に景気低迷からの回復を見せない不景気の慢性化症状は、どうやら”日本病”とでも名付けられそうです。この病気を治すことはできるのでしょうか。

 異論はあるかと思いますが、この病気の根本的な原因は、(1)財政出動政策(2)金融機関の窓口政策(3)新興国の台頭(4)産業政策の欠如、(5)過剰な福祉重視にあるようです。

(1)財政出動政策
 国債の大量発行が、民間への資金供給を圧迫する現象は、クラウディン・アウトとして説明されます。公債と民間債権との金利差を原因としなくても、国民の預金が、民間部門の投資に回らないことは、企業活動を低下させます。

(2)金融機関の窓口政策
 中央銀行が低金利政策を採用しても、金融機関が窓口で貸し出しを絞り、企業に資金を提供しないとなりますと、結局、民間企業は、充分な活動資金を得ることができません。

(3)新興国の台頭
 市場のグローバル化により、多国籍企業が国境を越えて製造拠点を移動できるようになりましたので、廉価な人件費の国に雇用が流出します。90年代のバブル崩壊期よりも、この傾向が強まっている現代の方が、はるかに”日本病”の治療は難しくなります。

(4)産業政策の欠如
 先進国は、常にフロント・ランナーの地位を維持するよう努力しませんと、衰退することは世の習いです。次世代の経済を牽引するような産業の育成に官民が取り組みませんと、競争力や雇用は生まれず、この運命に逆らえなくなります。

(5)過度な福祉重視
 福祉政策の充実が叫ばれている中で、この原因を挙げますと反発を受けそうなのですが、高福祉国家が経済停滞に陥る現象は、”英国病”としても知られていました。手厚い福祉は、国民の政府への依存を高め、企業家精神や勤労意欲を削いでしまうのです。景気が後退するほど、生活保護や雇用対策への支出が増える一方で、税収は減少しますので、(1)の国債増発となり、悪循環に陥ります。

 ”日本病”の治療には、(1)~(5)までの原因を考慮して、負のスパイラルから脱出する必要があるのですが、民主党政権の政策の中には、悪循環をさらに促進させそうなものも少なくありません。”生き物”である経済を救うためには、大手術も必要な時もあるのではないでしょうか。

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官僚は政治家ではなく国民への奉仕者

2009年10月27日 15時50分23秒 | 日本政治
小沢氏、臨時国会で官僚答弁容認 首相の「安全運転」配慮?(産経新聞) - goo ニュース
 ”脱官僚”を掲げて政権を獲得したこともあって、民主党は、国会での官僚の答弁を禁止する方針を示してきましたが、ここにきて、この方針は撤回されるようです。その背景には、政治家の準備不足も指摘されそうですが、そもそも、官僚の答弁を禁じること自体が、以下の諸点を考慮しますと、不合理なことのように思えるのです。

(1)全体の奉仕者
 官僚を含む公務員とは、憲法第15条2項によれば、「・・・全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定めており、第一義的には、政治家ではなく、国民に対して責任を負っています。公務員として奉職するにあたっては、これを確認する宣誓もあるはずです。つまり、この条文は、むしろ、政治家であれ民間人であれ、恣意的あるいは不当な介入から、行政部を守ろうとしているとも言えます。

(2)法の誠実な執行機関
 行政機関とは、法律を誠実に執行するために設けられている国家機関です。三権分立論では、議会が法を制定し、行政府が法を執行するものとして、両者の間に役割分担を設けています。この点にからしますと、行政機関は、法さえあれば、日常的な業務において政治家からの指示を逐次受ける必要はないのです。

(3)独立的な行政機関
 官僚組織には、政治からの独立性が保障されている機関があります。今回、答弁を許されたという公正取引委員会もその一つです。官僚による答弁を全面的に禁じるとしますと、独立的な行政機関の中立性や公平性が損なわれる可能性があります。

 以上の点を考えますと、政権与党が完全に官僚組織を掌握する体制にも問題がありそうです。確かに、安全保障や外交など、国家の主権にかかわる戦略的な政策の決定を、官僚に任せることは、民主主義の観点からは望ましくありません。しかしながら、政治による官僚支配と官僚による政治支配の双方に弊害があるのですから、上手な棲み分けが必要です。国会答弁においても、質問の内容に即して、誰が応えるべきかを決めればよいのではないかと思うのです。

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ASEAN vs. 共同体構想?

2009年10月26日 15時24分30秒 | アジア
影薄まるASEAN 首脳会議閉幕 「枠組み論議」に終始(産経新聞) - goo ニュース
 地域共同体構想は、鳩山首相が提唱した東アジア共同体のみではなく、オーストラリアもまた、米ロを含むアジア・太平洋共同体構想を提案したそうです。地域共同体をめぐって、”大国”の思惑が交錯することになったのですが、ASEAN諸国は、今後、どのような方向に動くのでしょうか。

 ところで、中小国の連合という形態において、欧州の地域統合とASEANは類似しています。欧州経済共同体(EEC)の場合には、その設立にあたっては、ソ連邦への対抗を意識しており、外部の超大国に対して中小国が結束することに意義がありました。一方、ASEANを見ますと、東アジア共同体では、近年、頓に軍事的脅威となりつつある中国が加わり、アジア・太平洋共同体では、アメリカやロシアといった”超大国”も参加します。どちらのヴィジョンを取りましても、大国がメンバーとなるのです。中国が共産主義体制を敷いていることを考えますと、これは、欧州経済共同体に、最初からソ連邦が参加するようなものです。しかも、東アジア共同体構想では、通貨や安全保障の政策領域にまで統合を進めるというのですから、政策権限の共同体機関への移譲を通して、ASEANが、大国の支配に組み込まれる恐れもあります。

 地域共同体構想を打ち上げることが、ASEANの警戒心と疑心暗鬼を生み、内外の諸国との対立要因や混乱要因となっては、元も子もありません。共同体の設立どころか、構想の提案そのものが、分裂の種を蒔くことになるのですから。
 
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来日中国人は”法の支配”の伝達者に

2009年10月25日 15時56分30秒 | アジア
リンク: <中国人が見た日本>日本に来て味わった「生まれて初めての自由」 - 速報:@niftyニュース.
 中国から来日した人々が、「日本国の良さ」として、法に反しない限り政府から干渉を受けない、”法治国家の自由”を挙げているとのことです。もし、この調査結果が事実であるならば、中国本土にも、この”良さ”が広がる可能性があるのではないかと思うのです。

 おそらく、中国にも”法”そのものはあるのでしょうが、それは、上部から命令であったり、官僚による恣意的な運営に任されているのでしょう。中国の現状は、”法治”ではなく”人治”であり、そこには、自由が息づく空間がないのです。この文脈において、”法治”というよりは、個人の自由や権利の保障に重点を置く”法の支配”と表現したほうが相応しいかもしれませんが、中国の人々が、”法治国家の自由”をプラスに評価していることこそ重要なのです。このことは、もし国民が、自由に体制を選べるならば、法の支配の方に軍配を上げる可能性を示唆しているからです。国民の自由や権利を一方的に抑圧するのではなく、これらを守る政府のあり方も世の中にはあることを知ることは、中国国民の意識改革ともなりましょう。

 来日された中国人の人々は、本国の人々にも法の支配の良さを、ぜひ、伝えていただきたいと思うのです。もちろん、共産党政権下にあって、言論が統制されていますので、法の支配の伝達にはリスクもありますが、法の役割に関する国民意識の変化は、やがて、中国の国政改革へと繋がるかもしれません。この記事から、将来の可能性が、わずかながらも垣間見られるのです。

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アメリカは自由の国のお手本に

2009年10月24日 17時15分47秒 | 国際政治
FOXテレビ 米政権が「政敵」扱い 取材排除…非難も(産経新聞) - goo ニュース
 ”自由の国アメリカ”。世界中の人々がアメリカに憧れ、夢を抱いてかの地に渡ったのは、このイメージがあったからに他なりません。オバマ大統領が、アフリカ系アメリカ人として最初に大統領に選ばれたのことも、全ての人々にチャンスを与えるアメリカの国柄をアピールするものでした。

 しかしながら、最近に至って、アメリカ民主党政権が、保守系のテレビ局を排除し、リベラルな論調のメディアを優遇していると非難されているようです。もしこれが事実としますと、”自由の国”のイメージの逆をゆく行為ですので、極めて残念なことです。非難には、しばしば示唆に富む内容が含まれていることがありますし、そもそも、反対意見に耳を塞ぐようになりますと、その為政者は、寛容性や公平性を失ったと見なされるものです。次に来るのは、言論弾圧や思想的な迫害であり、さらにこれが悪化しますと、”粛清”となる事例も少なくありません。アメリカでは、さすがにここまで酷いことになるとは思えませんが、”自由の国”には、報道規制や取材拒否は相応しくありません。

 自由の旗印が色褪せてしまうことは、アメリカの国際社会に与える政治的な影響力にも暗い影を落とすかもしれません。アメリカには、やはり開かれた言論を重んじる”自由の国”であっていただきたいと思うのです。

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EU大統領―ポスト争いという混乱要因

2009年10月23日 15時46分32秒 | 国際政治
EU大統領、人選過熱 欧州の顔、大物か小国からか(産経新聞) - goo ニュース
 最後に残ったチェコの批准により、リスボン条約が発効する見通しとなったことで、EU大統領の誕生も確実となりました。EUの政治的な結束を強めるために設置されたEU大統領のポストが、狙い通りの効果を生むのかは、実のところ、未知数でもあります。

 何故ならば、大統領ポストそのものが、EUの加盟国間に亀裂や対立をもたらす可能性があるからです。EUの場合には、”大統領”と称されつつも、その実態は欧州理事会の”常任議長”であり、強力な実権が付与されているわけではありません。しかしながら、欧州理事会は、特に外交安全保障政策の分野では、重要な政治的決定機関となりますので、議長である”大統領”の役割は決して小さいものではないのです。この点を考慮しますと、(1)大統領の選出と(2)その後の欧州理事会の運営の両面において、加盟国内に不協和音が生じるかもしれません。”大統領”の候補者に関しては、現に、加盟国の間で駆け引きが続いているようですし、イラク戦争に際して、EU加盟国の外交的な立場が二分されたことは、外交問題における合意の形成が如何に困難であるのかを示唆していました。

 政治分野における中央集権の強化は、逆に、EUの加盟国間に分裂要因を抱え込むことでもあります。EUの将来は、もしかしますと、”大統領”の巧みな調整力にかかっているのかもしれません。

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中国は元高容認を

2009年10月22日 17時37分08秒 | 国際経済
中国GDP、8.9%成長 金融危機前の水準に接近(朝日新聞) - goo ニュース
 国際経済の不均衡の原因が、中国の元安政策にあるとすると、中国がこの政策を放棄しない限り、なかなか不均衡は是正されそうにありません。国際経済全体を考えますと、中国は、日本国が、85年にプラザ合意を受け入れたように、元高を受け入れるべきと思うのです。

 中国がどのような方法で為替市場に介入しているのかは詳しくは分かりませんが、日本国の場合と同様に、短期国債(TB)を発行して元を市中から調達し、ドルを購入しているとしますと、この操作自体が、中国国内の物価や賃金の上昇を抑えていることになります。ドル建て取引や為替介入で積み上げた膨大な外貨準備は国内に還流されず、米国債の購入や、政府系ファンドを通して海外への投資に充てられているのです。つまり、国民を犠牲にして、中国は、経済大国にのし上がっていると見ることもできます。

 中国がこの操作を止めるとなりますと、元相場の上昇、物価や人件費の上昇、輸出の減少と輸入の拡大・・・が起きますが、一方、他の諸国は、価格における相対的競争力の回復、雇用の維持、輸出の拡大・・・が期待できますので、景気の改善には役立ちそうです(もっとも、中国の軍拡を考慮しますと、経済的な関係強化でさえ危険でもある・・・)。中国政府には、国際経済と自国民を犠牲にする利己的な政策は、やめていただきたいと思うのです。

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ラビア・カーディル女史の来日―日中の価値観の違いが浮き彫りに

2009年10月21日 15時24分58秒 | アジア
中国、亡命ウイグル人組織リーダーの来日に「強い不満」(トムソンロイター) - goo ニュース
 鳩山首相の東アジア共同体演説は、日本国が、民主党政権の下で”価値置き去り外交”を推進するのではないかという懸念を抱かせました。しかしながら、「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル女史の来日は、両国間の価値観の違いを浮き彫りする結果となるかもしれません。

 過去の中華帝国の伝統を引きずる中国が、チベットや東トルキスタンのように、”帝国”による一方的な”併合”に起因する民族問題に対して、如何に対応するのかという問題は、将来のアジア秩序にも大きくかかわります。中国政府は、あくまでも”国内問題”として扱い、中央集権体制を緩める気配は見られませんが、この強硬な姿勢は、首相の提唱する”東アジア共同体”が、中国のコントロールに置かれた場合の危険性を示しています。何故ならば、中国は、一たび自らの勢力圏に含めると、他国や他民族の主権や独立性を、もはや認めようとはしないと予測されるからです。

 日本国が、ウイグル問題に対して中国の弾圧政策を暗に非難し、ウイグル人の権利を尊重することは、中国が描く”華夷秩序”としてのアジアを拒否することでもあるのです。

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カルザイ氏の決選投票受け入れは賢明

2009年10月20日 16時05分15秒 | 国際政治
アフガン大統領選結果めぐる混乱、カルザイ氏が決選投票受け入れ示唆(トムソンロイター) - goo ニュース
 権力者とは、とかく権力を悪用して自己に不利なルールを無視しようとするものです。イランでも、現職のアフマディネジェド大統領は、不正選挙疑惑に対する改革派の抗議を力で抑え込んでしまいました。

 アフガニスタンの大統領選挙でも、不服審査委員会の調査の結果、不正なカルザイ氏票が発覚し、一部の投票が無効とされたそうです。この結果、得票数が過半数を超える候補者がいなくなり、憲法に従えば、上位二名による決選投票に持ち込まれことになります。もし、ここで、カルザイ氏が決選投票を拒むとなりますと、アフガニスタン情勢が混迷を深めることは必至です。政権に正当性がないとなりますと、これを口実にタリバンの攻撃はさらに激しさを増し、国民の中には、タリバンに同調する人々も現れそうです。まやかしの民主主義は、民主主義を否定するタリバンの格好の攻撃材料となるのです。

 カルザイ氏が、権力の座に固執するよりも、アフガニスタンの安定を優先させたとしますと、それは、賢明な判断でありました(もちろん、当然と言えば当然のことなのですが・・・)。この行為によって、日常茶飯事にテロ事件が起き、根深い民族対立をはらむアフガニスタンに安定がもたらされると断言することはできませんが、かの地で、信頼ある政府づくりへの一歩が踏み出されたことに安堵するのです。

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一人が世界を破壊する投機

2009年10月19日 16時00分28秒 | 国際経済
投機は市場の「必要悪」:上野泰也(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)(2)(Voice) - goo ニュース
 投機は、為替市場の価格形成の安定化という側面からは、擁護されるのかもしれません。しかしながら、投機行為の最大の問題点とは、一人の民間人が、世界を破壊する力を持つことなのではないかと思うのです。

 投機に端を発した事件として思い起こされるのは、1992年に発生した欧州通貨危機です。この時、かのソロス氏は、ポンド売りを仕掛け、イングランド銀行の外貨準備を空にしてしまいました。通貨危機の影響は経済全般に及び、欧州通貨間の為替協調の枠組みであったEMSにポンドが復帰するまで混乱が続くことになったのです。通貨危機は、得てして投機による”売り浴びせ”が原因となって発生するものであり、その行為の影響は、金融界のみならず、一般の人々をも巻き込みます。通貨危機に至らずとも、今日でも、為替相場はしばしば投機によって動き、そのリスクは日常化してもいます。為替相場は、企業収益や物価を左右しますので、誰もが投機の影響からのがれることができないのです。

 政治家といった公人は、政策の失敗によって国民を混乱に陥れることがありますが、経済の混乱は、しばしば国民に対して責任を負わない民間人によって起こされることがあります。投機の怖さとは、”知らない誰か”によって世界が危機に陥れられることにあるのではないかと思うのです。経済の大破局を避けるためにも、やはり、投機には、国際的な合意による一定の規制が必要なのではないでしょうか。

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友愛外交―政治が法秩序を破壊する?

2009年10月18日 16時08分42秒 | 国際政治
中国、東シナ海の主権主張 「友愛」無視の強硬姿勢(産経新聞) - goo ニュース
 とかくに、政治と法は同類視されがちですが、しばしば、両者は鋭く対立するものです。外交における政治は、あくまでも当事国の合意の形成であり、一方、国際法は、侵してはならない個々の国家の権利の範囲を定めているからです。もし、政治的合意が優先されるとしますと、国家間に政治力学が働いて、強国が弱国の権利を侵害することが合法的にできることになります。

 日中の東シナ海問題においても、この緊張をはらむ政治と法の綱引きを観察することができます。 中国の政治文化には、法の支配が欠如していることはよく知られています。中国は、海洋法条約を無視し、自国の主権を日本国側の海域に及ぼそうとしていますが、この要求を鳩山政権が”友愛の海”を具体化させるために受け入れますと、政治決定は、法に優先するという悪しき前例をつくることになります。この時点で、国際社会の法の支配は、人の支配にとって代わられてしまうのです。

 ”友愛”や”平和”といった美辞麗句を並べて、政治家が、法を越えた妥協をしますと、より大きな意味での平和の基礎を壊すことになります。全ての国々が、曲がりなりにも法秩序によって安全と権利が保障されているのですから、たとえ善意に基づくものであっても、その破壊行為は、人類に対する罪に他ならないと思うのです。 

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アフガン紛争に新たなアプローチはあるのか

2009年10月17日 14時13分34秒 | 国際政治
米国務省「日本のアフガン支援継続を望む」(産経新聞) - goo ニュース
 アフガニスタンにおける軍事活動の雲行きが怪しくなり、アメリカでもオバマ大統領は、軍の撤退をも視野に入れていると憶測されています。その一方で、国際部隊の撤退が、タリバン勢力にとって勢力を拡大するチャンスとなることは必死であり、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯は、今にもまして危険地帯と化しそうです。

 それでは、アフガニスタンを恐怖が支配する世界に逆戻りさせてもよいのでしょうか。それでは、国際社会は、あまりに無責任となりそうです。そこで、硬軟両面作戦をとってはどうかと思うのです。この作戦とは・・・

(1)アフガン政府との間に、今後の国家構想について合意を形成する。
(2)タリバンに対して、アフガン政府との交渉を呼びかける。
(3)現在のタリバン支配地域について、広範な自治権を認めるかわりに、一定の条件を挙げて、これらの条件を履行してもらう。
(4)タリバン側が条件を拒否したり、不履行の場合には、増派を決定する。

 というものです。(2)の条件とは・・・

(1)自治区内部にあっては、民族、宗教、部族の違いにかかわらず、全ての住民に対して生命、身体、財産を保護すること(治安の維持と少数民族の保護)。
(2)自治区においてアフガニスタンの枠内で独自の憲法を制定することを認めるかわりに、憲法の内容については、アフガニスタン政府、および、イスラム諸国の助言を受け入れること(立憲主義に基づく統治のシステムの整備)。
(3)けし畑を農地に転換し、麻薬取引を取り締まること。
(4)女児を含む全ての児童に教育の機会を与えること。
(5)女性が職業を持つことを認めること。
(6)少年兵を訓練・養成しないこと。

・・・などを挙げることができます(その他軍事的な取り決めも・・・)。

 高度な自治を認めた連邦制を提案することで、あるいは、アフガニスタンの状況は改善されるかもしれません。少なくとも、何らの事後策を講じることなく撤退をしますと、後には混乱しか残されないと思うのです。

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