万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

急速に進む中国の危うい金融支配の行方

2016年10月31日 15時28分43秒 | 国際経済
 昨晩、NHKスペシャルで、「中国・14億人の大改革-成長かけた国土大改造」というタイトルのルポルタージュ番組を放送しておりました。3億人とされる農民工が直面する危機的な状況を描いていますが、このアングルからも、中国全体の国家的危機が垣間見えます。

 番組が報じる”国土大改造”とは、現政権が進めている国土計画であり、現在、大都市に集中している人口を中規模都市に分散し、消費市場を育成しようとする計画です。その際、移動人口として標的となったのが農民工と呼ばれる農村戸籍の出稼ぎ都市住民です。農民工達は、政府が投入した公安部隊によって強制立ち退きを迫られているのです。ここで注目すべきは、このタイミングで政府が打ち出した農村部における土地使用権を担保とした農民向け個人融資の解禁です。

 農民工が立ち退きを逃れるための最も有効な方法は、都市戸籍を手に入れることです。喉から手が出るほど欲しい都市戸籍を入手するための条件の一つは、都市部での不動産所有であるため、農民工の多くは、出身地の耕作地の使用権を担保に入れ、その資金で都市部の不動産を購入しようとしているのです。もっとも、こうした不動産需要の高まりを受けて土地価格が高騰しているため、番組に登場していた農民工の人は、土地を抵当に450万円の借金で物件を探しても容易には適当な不動産を購入できない様子でした。一つ間違えますと、農民工達は、農村部の土地の使用権を失う一方で借金だけが残ることにもなりかねないのです。そして、この政策は、将来的には、中国の農地の相当部分の使用権が、金融機関に移る可能性を示唆しています。その一方、国土大改造では移住先とされた中規模都市では、政府の計画通りには住民が集まらず、シャッターを降ろす店も目立っているそうですから、どこかでこの計画は破綻しそうなのです(働く場がなければ消費地にもならない…)。

 中国政府は、ゾンビ企業の救済策として債権の株式化を17年ぶりに解禁したそうですが、ここでも、金融機関が登場しています。中国政府は、金融セクターを縦横に活用することで活路を見出そうとしているようにも見えますが、長期的視野の欠け、国民の犠牲を顧みない共産主義国における急速な金融支配の進展は、一体、中国の将来に、何をもたらすのでしょうか。中国の金融機関の大半は政府系ですが、金融機関の手に移った土地の使用権の行方も不明ですし、また、債権の株式化により取得した株価が暴落した場合には、ゾンビ企業問題は、金融機関の経営危機へと連鎖的に拡大します(もっとも、株式化はゾンビ企業と金融機関両者の延命策かも知れない…)。共産主義国家中国は、近い将来、農村社会と金融部門の同時崩壊に直面するというシナリオもあり得ないわけではないと思うのです。

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新自由主義者が唱える”開放”は閉塞”に至る道

2016年10月30日 15時17分24秒 | 社会
人権侵害ブログを削除 法務局要請でサイバーエージェント
 誰であれ、他人を誹謗中傷する行為が道徳や礼儀に反していることは言うまでもないことです。しかしながら、日常生活を見てみますと、人々の会話から他者の悪口や口汚い批判を取り除くことは不可能に近く、仮に、それを実行しようとすれば、”人の口に戸を立てる”という言論弾圧を徹底する必要があります。

 日本国でも、昨年、ヘイトスピーチ規制法が制定され、罰則規定はないものの、外国人のみを対象に’差別的発言’が規制の対象となりました。この法律は人種差別禁止条約の流れにあり、外国人差別をなくす、という目的が、政府による言論統制を正当化しています。リベラルが掲げる外国人差別の撲滅という大義名分が、憲法で保障されている言論の自由に優先された、とも言えるのです。

 報道に拠りますと、現在、地方自治体の法務局では、個人の被害申し立てに基づいて、”人権侵害”と自らが判断した個人ブログについて、サイバーエージェントに当記事の削除を要請しているそうです。公権力による民間言論空間の監視と介入は、典型的な情報統制の方法であり、遂に、日本国でも実行されることとなったのです。そして、これらの法務局による措置は、個人による申し立てに基づいていますので、一種の”密告制度”が成立したことをも意味します。しかも、他者の意見や発言をチェックし、差別的内容と判断して救済を訴えることができる権利は、外国人にのみ与えられています。一般の国民には与えられていない、言論チェックの外国人特権なのです(もっとも、削除された側の一般国民には行政裁判で法務局の措置の違法性や不当性を問う権利はあるが、訴訟に際しての負担は重い…)。

 
 今後とも、この国家レベルでの言論監視体制は、外国人の数が増加するにつれてさらに強化されることでしょう。新自由主義者は理想郷へ至る道として”開放”を謳い、移民政策を積極的に推進していますが、現実には、外国人差別の禁止を盾にした言論統制が、法整備を伴いながら進行します。同人種や同民族同士であれば、法律問題とはならない悪口レベルの発言であっても、外国人に対してであれば規制対象となり、”言いたいことも言えない”息苦しい閉塞社会へと至るのです。そしてこの状態は、どこか、ジョージ・オーウェルの『1984年』を彷彿とさせるのです。

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ドゥテルテ大統領の暴言中止ー本物の”神”のお告げなのか?

2016年10月29日 13時40分52秒 | 国際政治
「暴言やめる」と宣言=神のお告げ―比大統領
 フィリピンのドゥテルテ大統領は、訪問先の日本国から帰国し、南部ダバオ空港に降り立った途端、記者団を前にして”暴言をやめる”と宣言したと報じられています。その理由が”神からのお告げ”というのですから、二重の驚きです。

 同大統領の説明によると、機内において、突然、「ののしるのをやめないとこの飛行機を落とす」という声が聞こえたそうです。そこで、声の主は誰なのかと尋ねたところ、神であるとする答えが返ってきたので、暴言を止める決意をしたと説明しています。フィリピンは、カトリック教徒の多い国であり、大統領も、厚い信仰心の持ち主なのかもしれません。カトリックでは、しばしば秘跡の出現を認めていますので、フィリピン国民の多くも、大統領が直接に神の声を聴くという超自然現象を素直に受け入れることでしょう。

 しかしながら、その一方で、神の言葉があまりにも人間的であるため、疑問も湧いてきます。飛行機撃墜いった手荒な手法が神の行為に相応しいとも思えず、全知全能の神による”脅迫”にも本質的な違和感があります。しかも、神の意に沿って暴言を止めることによってもたらされる”善き事”とは何かもはっきりしてもいないのです。

 そもそも’暴言’には、二種類あり、一つは、一般常識、社会通念、もしくは、自らの道徳的な良心や根差した正当なる批判であり、きつい言葉を用いるために’暴言’と認識されてしまいがちです。もう一つは、誹謗・中傷の類であり、言葉の暴力です。後者を止めるのであればよいのですが、ドゥテルテ大統領の場合は両者が混在している状態にあり、仮に、前者の意味での発言を止めてしまいますと、むしろ、社会浄化が難しくなります。大統領が’暴言’を止めれば、果たして世界は平和になり、全人類は祝福されるのでしょうか。

 神の声説が俄かには信じられないとなりますと、暴言中止宣言には、別の意味があるようにも思えます。”神”とは、ドゥテルテ大統領が、密かに絶対的な忠誠を誓っており、決して異を唱えることができない”誰か”であるのかもしれません。あるいは、敵対勢力の”誰か”であり、”命が惜しければ、暴言は止めよ”と脅している可能性もあります。もっとも、暴言中止を神の意志として国民に説明することで、自粛路線への転換を準備をしているとする見方もできます。仮に前二者であれば、意図せずして、大統領は、国民に明かすことができない存在を暗示したことになりますが、暴言中止の背景には、何らかの政治的な意図が垣間見えるのです。

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カレー難民キャンプ爆発事件ー多文化共生主義は放火にも寛容?

2016年10月28日 09時40分16秒 | 国際政治
難民キャンプで爆発=撤去中、負傷者も―仏
 イギリスへの上陸を目指して約6000人もの難民や移民が野宿しているカレーにて、遂にフランス当局が、難民キャンプ撤去に乗り出したと報じられております。一先ずは、移転先が決まっているそうですが、中には、撤去に際して放火をする難民・移民も現れているそうです。

 難民キャンプでの放火事件は、爆発音があったことから発覚したものであり、事件発生当初は、おそらく難民・移民によるテロ、あるいは、抗議の爆破を疑ったことでしょう。しかしながら、フランス当局は、事件性の疑いについて触れることなく、「民族によっては退去後に住宅を燃やす習慣がある者もいる」と説明したというのです。確かに、移動を常とする遊牧民族などには、以前住んでいた家屋を壊して他所に移るという風習はあるのかもしれません。あるいは、安易にテロや故意の爆破を認めますと、連鎖的に全国的な暴動にも発展しかねないことから、”民族的な習慣”に逃げたとも考えられます。

 その一方で、この問題は、難民や移民が持ち込んだ自らの”民族的な習慣”が、居住地において犯罪を構成してしまうケースに対する対応の是非をも問うています。多文化共生主義者は、民族差別に反対する立場から、全ての固有文化を無条件に受け入れるよう説いています。ところが、それぞれの国や地域では、刑法に限らず、倫理や道徳に関する人々の一般的な意識に相当の違いが見られます。イスラム教圏では名誉殺人が許容されていますし、インドでも夫を亡くした妻を殉死させるサティーといった風習が報告されています。そして、人身や臓器の売買が横行する中国の暗部に目を凝らせば、今日に至るまで生命軽視の風潮が残ってきたことは一目瞭然です。多文化共生主義者の多くは、同時に熱心な人権尊重主義者でもありますが、多様性の容認が非人道的行為や犯罪の容認にも繋がりかねないという事実には、目を瞑っているのです。

 今日、移民・難民問題が深刻な社会問題化した理由の一つは、受け入れ国の治安が悪化しているところにあります。カレーの難民キャンプでの爆発事件は、多文化共生主義の限界をも露わにしたのではないかと思うのです。

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ドゥテルテ大統領への期待ー法の支配への理解

2016年10月27日 15時43分40秒 | 国際政治
南シナ海問題「日本側に立つ」=比大統領
 フィリピンのドゥテルテ大統領は、先日の訪中に際し、南シナ海問題について中国と仲裁裁定の”棚上げ”に合意したとの報道もあり、反米親中への傾斜が懸念されておりました。今般の訪日では、打って変わって同仲裁裁定を尊重する方針を示しており、驚きと共に安堵感も広がっております。

 ドゥテルテ大統領の”豹変”については、様々な見解があります。日中間の対立関係を見越した上で、両者から利益を引き出すための巧妙な外交戦略とする見方もあれば、フィリピンの独立性と国益の堅持こそが大統領の揺るぎない政治的信念であり、相手国によって態度を変える”豹変”も、この目的達成のためには手段を択ばない結果であるとする見立てもあります。あるいは、時間的な経緯を辿ると、訪日に訪中が先じたことが、”豹変”の原因となった可能性もあります。習近平国家主席との会見の場において、ドゥテルテ大統領がガムを噛んでいたと推測される映像が公開されていますが、仮にそれが事実であれば、大統領は、言葉では中国に同調的ではあっても、内心において反発を感じていた可能性もあります。そして、訪日してみて、改めて価値観を共有しない中国への接近がフィリピンにとってリスクに満ちていることに気が付いたのかもしれません。親中路線の行く先には、フィリピンの属国化が待っているかもしれない…と。

 ドゥテルテ大統領の真意がどこにあるのかを探るには、氏の法の支配に対する理解を考慮する必要があります。仮に、国際社会における法の支配こそが、フィリピンを含む全世界のすべての国々の権利を保護していることを理解しているならば、間違ってもも、これを否定する中国の軍門に下ることはないからです。麻薬撲滅にめぐりましては、確かに、ドゥテルテ大統領の”法の支配”に対する理解度には疑問が呈されてはおりますが、法の支配の原則の、その奥底にある精神、即ち、不当な侵害から全ての人々の権利を守るという本質的意義においては、氏はその役割を果たそうとしております。迷うところもあるのでしょうが、不当に他国の権利を侵害している中国に対しては、麻薬撲滅と同様の熱意を以って抵抗することを、ドゥテルテ大統領に期待したいと思うのです。

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北朝鮮の核放棄には強制力が必要ークラッパー米国家情報長官発言

2016年10月26日 14時49分31秒 | 国際政治
北朝鮮の核放棄は成功の見込みない、核能力抑制が関の山=米高官
 二度に亘って立て続けにミサイル実験には失敗したものの、北朝鮮の脅威が消え去ったわけではありません。脅威の高まりを裏付けるかのように、米国家情報長官であるジェームズ・クラッパー氏は”北朝鮮の核放棄は見込みが薄い”と発言しております。

 氏の分析は、核兵器の保有こそが北朝鮮の”命綱”である以上、如何なる条件下であれ、それを自ら手放すことはない、というものです。氏が、機密情報に触れる機会も多く、また、膨大な情報を入手できる国家情報長官の立場あることから、この見解が、全くの見当はずれとも思えません。一方、北朝鮮に対しても、イラン型の解決を実現したい国務省は、氏の発言の火消しに躍起になっております。カービー報道官は、従来の政策方針からの変更はないと説明していますが、1994年の核合意せよ、六か国協議にせよ、過去の北朝鮮との交渉が、悉く失敗に終わっている現状を考慮しますと、北朝鮮相手では、話し合い路線の限界は誰の目にも明らかです。

 石油産出国であるイランは、制裁解除によって莫大な石油収入を得ることができ、自力で経済の立て直しに取り組むことができます。また、イスラム革命を経た宗教的原理主義の国とはいえ、一先ずは、民主的な選挙も実施されています。一方、北朝鮮は、経済制裁が解除されたところで、最貧国からの脱出は困難です。可能性があるとすれば、韓国に合併されるか、あるいは、国際的な経済支援を受けることですが、前者では、金王朝体制は消滅しますし、後者では、NPTに違反する核開発に、”むち”ではなく”あめ”を与えることを意味し、倫理上の問題が生じます。つまり、前者のシナリオでは北朝鮮が反対し、後者のシナリオは、国際社会が許さないのです。また、北朝鮮は、民主主義の観点からしても、イランより遥かにカルト的な独裁体制を敷く非民主的国家です。

 一般の社会にあっても、全ての人に対して同じ手法のアプローチは使えないものです。国際社会も同様であり、イランと北朝鮮を同列に扱うことはできないのではないでしょうか。クラッパー米国家情報長官の発言は、北朝鮮の核放棄には、それが如何なる手段であれ、強制力を働かせざるを得ない現実を示していると思うのです。

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危険な妥協ードゥテルテ大統領はスカボロー礁を中国に譲った?

2016年10月25日 13時52分06秒 | 国際政治
両国関係の安定重要…米比外相、電話会談で一致
 先日、訪日を前にして中国を訪問したドゥテルテ大統領は、アメリカとの決別を宣言すると共に、親中路線に大きく舵を切ったと報じられております。中比関係の劇的な接近の鍵は、スカボロー礁における中国側の譲歩にあるとも指摘されおりますが、事態は逆なのではないでしょうか。

 フィリピンに帰国したドゥテルテ大統領は、程なく、中比首脳会談の成果が目に見える形で現れるとした上で、中国船によって締め出されてきたスカボロー礁に、数日以内にフィリピン漁船が戻ることができる見通しを明らかにしています。大統領訪中を切っ掛けに、中国側がフィリピンに譲歩したとする上記の見解は、この発言に拠る憶測です。しかしながら、中国が、フィリピンに対して、軍事基地を含めたスカボロー礁からの全面撤退を約束したと見なすのは、早計に過ぎます。

 何故ならば、中国外務省の陸慷報道官が、この件について、フィリピン漁船に対して近く操業を”許可”する可能性について言及しているからです。つまり、スカボロー礁が中国の領域であることを前提に、特別にフィリピン漁民に対して漁業を認める、という態度なのです。仮に、フィリピン側が中国政府の許可の下でスカボロー礁での自国漁船の操業を受け入れるとしますと、これは、フィリピンが、同礁の中国領有を認めたことを意味します。フィリピンは、1999年8月の憲法改正でスカボロー礁を自国領土と定めましたので、中国に対する領土割譲ともなるのです。これでは、ドゥテルテ大統領は、鳴り物入りで訪中し、外交的成果を以って凱旋したように見えながら、その実、独断で領土を中国に割譲してきた、ということにもなりかねません。

 ドゥテルテ大統領は親日派でもありますが、日本国政府は、同大統領の訪日を機会に、南シナ海問題について率直な意見を述べる必要がありそうです。そして、安易な妥協は危険であり、法の支配の筋を通すことこそが、国際法秩序の下でフィリピンの権利を守ることに他ならないことを、丁寧に説明すべきではないかと思うのです。

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日韓慰安婦合意は反故にされたのでは?ー事実のみが真の歴史を語る

2016年10月24日 15時25分56秒 | 国際政治
慰安婦像設置は残念=菅官房長官
 上海市の大学の構内において、中国では初めてとなる慰安婦像が設置されたそうです。アメリカ国内の慰安婦像とは違い、韓国人少女の隣に中国人少女を配した構図であり、中韓共闘の姿勢が伺えます。

 昨年末の日韓慰安婦合意では、日韓両国とも国際社会において相手国を批判する行動は控える旨で合意しており、この合意からしますと、中国における慰安婦像の設置は合意内容に反しています。韓国政府としては、民間団体の慰安婦設置活動には介入できないとする立場なのでしょうが、少なくとも、韓国政府は、自国の活動団体に対して自粛を求めると共に、上海市に対して日韓合意を根拠に中止を申し入れることはできたはずです。ドイツのフライブルク市における慰安婦像設置計画は、姉妹都市の松山市等をはじめとした日本国側の抗議によって寸前に阻止されましたが、韓国側は、海外における慰安婦像設置活動を放任、あるいは、黙認しているのです。その一方で、ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像さえ撤去されていないにも拘わらず、日本国政府は、既に10億円を元慰安婦に対する支援に拠出しております。これでは、律儀に合意を順守した日本側が”お金”だけを巻き上げられてしまった格好となり、国内世論も納得しません。日韓慰安婦合意は、事実上、韓国側によって反故にされているのです。

 菅官房長官は、上海における慰安婦像設置に対して”残念”と語るのみであり、積極的な対応策を打ち出してはおりません。慰安婦問題の実像とは、当事の日本国政府、並びに、日本軍による強制連行ではなく、一部の日本軍将兵による軍規違反があったにせよ、民間事業者(主として朝鮮半島並びに満州地域における朝鮮人業者や犯罪組織…)による犯罪の結果なのですから、日本国政府もこの問題の原点に帰り、歴史実証主義を基本方針として戦略の見直しに着手すべきです。事実のみが真の歴史を語るのですから。

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日本国政府による自国植民地化政策の懸念ー水道事業の開放

2016年10月23日 15時23分36秒 | 日本政治
 本日の日経新聞の一面に、”水道企業の参入後押し”という見出して、日本国政府が、水道事業の民間企業の参入障壁を大幅に引き下げる方向で検討に入ったそうです。この政策、一つ間違えますと、自国の植民地化政策となるのではないでしょうか。

 当記事の説明によると、地方自治体による水道事業の運営権売却(コンセッション)は既に2011年から認められているものの、災害発生時における莫大な費用負担が重荷となって、実際には実現していないそうです(松山市の事例は、事業運営ではなく浄水場の運転や設備の保守に限定されているらしい…)。そこで、政府は、企業負担の低減で市場参入を促す方針のようですが、そもそも、”リスクは住民、利益は企業”では住民が納得するとは思えません。

 加えて、料金の引き上げは時の手続きも簡素化するとし、水道料金の値上がりを前提としています。通常、民営化に際しては、値下がり効果を以って国民を説得するものですが、水道事業に関しては、設備の老朽化を取り上げ、最初から設備更新に要する費用の上乗せを予定しているのです。水道事業の民営化については、諸外国では、料金の現状維持を約しながら、結局、老朽化を理由に反故にされ、水道料金が二倍に跳ね上がった例もあるそうです。水道施設の老朽化問題は地方自治体の怠慢であって、予算を付ければ済むことです。

 そして、この政策を自国植民地化政策と呼ぶ理由は、水道事業の運営権の売却先を内外に開放していることです。外資に限定されているわけではありませんが、日本国内の水道運営事業はこれまで地方自治体が担ってきたため、浄水事業を除いて民間運営企業は十分には育っていません。この状態では、運営権を競争入札の手続きで開放すれば、当然に、国内企業は、世界規模で水道運営事情を展開してきた外資大手に太刀打ちできないことでしょう。「水メジャー」と称されているフランスのヴェオリアや仏スエズなどの名が既に上がっておりますが(ヴェオリアは松山市の浄水事業の委託企業…)、近い将来には、13億の市場で実績を積んだ中国企業の参入もあり得ます。中国系投資機関は、最近、日本国内で水源地帯を積極的に買い漁っていますので、水道事業への参入意欲は高いはずです。

 アメリカでは、民営化に伴う水道料金の値上がりに反発した住民が、水道事業の経営権を買い戻して再公営化した事例もあるそうです。買い戻しに際しては相当の資金を要しますので、この事例は、一旦、経営権を売り渡すと、後々まで禍が続くことを示しています。水道事業とは、基本的な社会インフラであり、かつ、極めて公共性の高い一種の”独占事業”ですので、民営化に相応しい分野とは言えず、日本国政府が、何を目的にして国民に不利益を与えかねない政策を推進するのか、疑問を抱かざるを得ないのです。

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南シナ海問題ーアメリカによる中国提訴というシナリオ

2016年10月22日 13時06分06秒 | 国際政治
西沙諸島沖で「航行の自由作戦」=仲裁裁判決後初めて―米
 フィリピンのドゥテルテ大統領の訪中は、南シナ海仲裁裁定を葬り去ろうと手ぐすねを引いて待っていた中国に、またとないチャンスを与えてしまったようです。懸念は現実となり、中比首脳は、南シナ海問題は二国間の対話によって解決する方針で合意したと報じられています。

 フィリピンが親中へと傾斜を強める中、アメリカ政府は、仲裁裁定後初めての航行の自由作戦を実施したと発表しています。同作戦について、アーネスト米大統領報道官は、”国際法の下ですべての国の自由と権利を支持する”ことが目的であると説明しています。米報道官の説明の通り、南シナ海問題は中比二国間に限定された問題ではなく、国際法秩序、即ち、国際社会全体の問題であることは、中国とその追従国以外の諸国は全て理解しています。たとえ中比が結託して仲裁裁定を”棚上げ”しても、国連海洋法条約上の違法行為が争われている以上、二国間問題に還元することはできないのです。

 このことは、仮に、フィリピンが仲裁裁定を”棚上げ”して中国の軍門に下るとしますと、国際社会全体が、国際法秩序の崩壊の危機に直面することを意味します。そこで秘策があるとしますと、アメリカが、中国を相手取って仲裁裁判に訴えるという方法です。確かに、アメリカは、領土問題については当事国ではありませんが、提訴可能な非領土的な訴因としては、(1)帰属未確定海域における中国内法に基づく一方的な行政権行使の是非、(2)EEZ、あるいは、他国のEEZ内における軍事施設建設の違法性、(3)公海を含む南シナ海全域に対する中国による「九段線」主張の違法性、(4)7月12日の仲裁裁定の受入拒否…などが考えられます。常設仲裁裁判所であれば受理される可能性は高く、また、アメリカは、国連海洋法条約の締約国ではないものの、紛争の解決については非締約国の利用が許されるケースもあり、単独提訴も不可能ではありません。

 国連海洋法条約の締約国ではない点がアメリカの弱点ですので、日本国をはじめ、他の締約国諸国が中国を提訴するという選択もあります。特に、ベトナムは、まさしく国連海洋法条約の締約国であると共に領土問題の当事国ですので、当問題の原告適格を有しています。しかしながら、絶大な軍事力を擁するアメリカが直接に中国を提訴するとなれば、裁判後の展開が大きく違ってきます。中国を判決に従わせる段において、アメリカの軍事力には、受入圧力としての効果が期待できるからです。ドゥテルテ大統領は、第三次世界大戦の回避を以って対中譲歩を釈明しましたが、米中対立の舞台は、まずは司法となるシナリオもあり得ないことではないと思うのです。

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米大統領選混乱回避の予防策ー投票・開票作業の不正チェックの徹底

2016年10月21日 10時59分06秒 | アメリカ
トランプ氏、大統領選「勝利」なら結果受け入れる
 投票日を前にした最後の直接対決となる第三回目のTV討論会では、共和党のトランプ氏が、大統領選挙における不正投票に言及し、疑義がある場合には結果を受け入れない意向を示唆したと報じられております。氏の態度については、民主党のみならず、共和党内からも批判の声が上がっていますが、この問題が拗れますと、長期にわたり米政治が混乱するとの懸念も寄せられています。

 民主主義国家にあっては、政権の正当性を支えるのは偏に国民多数からの支持であり、公平・公正なる選挙の実施こそ、民主主義の価値を実現する要となります。仮に、選挙において不正があった場合には、政権の正当性は完全に失われ、”権力の盗取”となりかねないからです。トランプ氏は、民主主義国家の仕組みからすれば当然の心配事を述べたに過ぎないのですが、”暴言王”で知られる氏の発言である故に、むしろ、不正選挙リスクの提起の方が”暴言”に聞こえてしまうところが痛いところです。

 トランプ氏の発言は不見識な”暴言”として片づけてしまうことは簡単ですが、この問題は、民主主義の根幹にかかわるだけに、軽視してはならないこともまた確かなことです。実際にトランプ氏が敗北し、選挙結果に疑義が唱えられた場合、票の再集計等の確認作業によって相当の時間が費やされ、アメリカ政治に重大な空白が生じかねないからです。また、逆に、トランプ氏が勝利した場合にも、大手メディアによるの世論調査では一貫してクリントン候補が優勢であったわけですから、今度は、民主党側から不正選挙の疑義が呈される可能性があります。何れのケースでも、アメリカの政治的混乱は避けられなくなるのです。

 こうした混乱を予防的に回避する策があるとすれば、それは、投票、並びに、開票作業において、不正行為のチェックを厳重にする他ありません。表向きには現行の選挙制度への信頼を口にしつつも、内心では、両陣営共に相手陣営による不正選挙を密かに警戒しているならば、なおさらのことです。開票所における監視カメラの設置に留まらず、両党同数、あるいは、政党の党員ではない中立的な市民によるチェック・チームの編成等、様々な方法があります。不正疑惑が生じる余地が一切ない選挙の制度的保障こそ、正当性に関する不要な混乱を回避し、民主主義を守る砦となるのではないかと思うのです。

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ドゥテルテ比大統領はフィリピンを裏切る?

2016年10月20日 14時22分21秒 | 国際政治
南シナ海協議で一致=中国との首脳会談―比大統領
 フィリピンのドゥテルテ大統領は、18日に訪中し、初の中比首脳会談に臨んだとされています。南シナ海問題に関する仲裁裁定の後だけに、国際的な関心を集めてきましたが、大統領側の全面的な屈服としか言いようのない報道ばかりです。

 驚きを禁じ得ないのは、ドゥテルテ大統領の中国への徹底した忠誠心を示す報道です。中国メディアとのインタヴューでは、祖父が中国人であったことに言及した上で、あたかも、中国に信義を尽くすのが人の道のような言い方をしております。この発言から伺えるのは、中国人のネポティズムなのですが、フィリピン国民からしますと、大統領発言は、自国よりも中国の利益を優先することを意味します。時を同じくしてフィリピンで発生した反米デモも華僑系の人々が組織されたとの指摘もあり、中国人の”血の絆”の強さを見せつけています。

 また、ドゥテルテ大統領は、南シナ海仲裁裁定を棚上げし、首脳会談では持ち出さなかったとされていますが、その理由も、驚愕すべきものです。仮に、アメリカ等の諸国がフィリピンと同じ立場に立てば、第三次世界大戦が起きるというものなのですから。つまり、裁定の遵守を求めることなく、軍事力による裁定内容の強制執行を”戦争”と呼び、それを、第三次世界大戦と結びつけているのです。この論理に従えば、戦争回避のためには、中国の違法行為を黙認せよ、という結論が導き出されます。自国の正当な権利を護るための防御的行為さえ否定するのでは、今後のフィリピンの防衛は危うくなります。フィリピン大統領は、”奴隷の平和”を選び、フィリピン国民にそれを強要するのでしょうか。

 そして、仲裁の棚上げは、フィリピンもまた、中国の国際法秩序破壊行為に加担したことを意味します。実際に、九段線を否定した仲裁裁定を”紙くず”と呼んだとしますと、ベトナムといった他の紛争当事国の怒りをも買うことでしょう。そして、当然に、法の支配の観点からフィリピンを、陰に日向に支援してきた日米をも落胆させました。国際法秩序が破壊されれば、他の諸国の権利も法の保護を受けることができなくなりますので、大統領は、野蛮から文明への道を切り開いてきた人類をも裏切っています。

 世論調査によりますと、フィリピン国民は中国よりもアメリカを遥かに信頼しておりますので、ドゥテルテ大統領は、独断による親中・反米路線の選択に対するフィリピン国民の反発を怖れないのでしょうか。仮に、麻薬取締と同様に、自に対する国民の批判的な言論をも強権発動で封じるとしますと、フィリピンは、中国と共に、暴力が支配する暗黒の世界へと落ちてゆくのではないでしょうか。

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共産主義の“解放”と新自由主義の“開放”

2016年10月19日 15時21分25秒 | 国際政治
英政府、「的絞ったビザ制度」で移民抑制 主要閣僚部会で対策
人間とは、本質的に自由を求めるものですので、束縛からの“解放”や開かれた世界を約束する“開放”といった言葉には弱いものです。しかしながら、これらの魅力的な言葉に、人は、しばしば裏切られます。共産主義の“解放”は、国家への隷従を帰結し、新自由主義の“開放”も、富やチャンスが偏った閉塞社会しかもたらしませんでした。

それでは、こうした期待外れの“どんでん返し”は、何故、起きるのでしょうか。その最大の理由は、唱道者達は、決して“その先”を明示しないところにあります。マルクスは、資本家階級からプロレタリアートを解放し、プロレタリアートによる独裁が実現すれば、搾取装置としての国家は消滅すると主張しました。搾取=国家の構図を示すことで、両者の同時消滅が是認されたのですが、その後に如何なる統治の仕組みが登場するのか、という問題については、殆ど何も語りませんでした。新自由主義者もまた、全ての障壁を取り除いて国境を開放すれば、個人の自由が最大化する理想社会が出現すると説いています。しかしながら、その先に、如何なる社会状況が現れるのか、という問いには口をつぐんでいます。結局、イギリス国民は、中間層の崩壊、アイデンティティーの喪失、治安の悪化、及び、社会的変質等…を伴う移民の大量流入に怖れをなし、国境管理の権限を取り戻すためにEU離脱を選択しました。

“その先”を明瞭に示していない思想への安易な同調は、行く先不明のバスに乗ることと変わりはありません。知らず知らずのうちに、逆方向に連れてゆかれるかもしれないのですから。共産主義の”解放”も、新自由主義の”開放”も、共に耳に心地よく響く言葉ではありますが、迂闊に騙されてはならないと思うのです。

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東京五輪ボート韓国開催の不思議ー誰の意向?

2016年10月18日 15時09分32秒 | 国際政治
ボート、韓国開催も検討 IOC、現計画で困難なら
 東京オリンピックの開催費用が3兆円を超えるとする試算から、目下、東京都では、費用の圧縮作業が進められております。その一環として、ボート競技の会場を宮城県等の地方に移す案が浮上していましたが、小池知事とIOCのバッハ会長との会談を前にして、IOC側が、現計画の「海の森」水上競技場での開催が難しい場合には、韓国での開催を提案する可能性があると報じられております。

 この提案、寝耳に水なのですが、一体、誰の発案なのでしょうか。日本国民は、2002年FIFAワールドカップにおける日韓共同開催の苦い経験から、韓国との共催には懲りております。この時、日本側は、韓国側のサッカー・スタジアム新設を資金面でバックアップしたにも拘わらず、”韓日ワールドカップ”のタイトルまで押し付けられています。しかも、韓国チームが審判買収が疑われる疑惑の判定で勝ち進んだため、史上最低のワールドカップという汚名まで残してしまいました。少なくとも日本国民の脳裏には、この時の悪夢が蘇るのです。

 それでは、韓国による発案であったのでしょうか。この提案は、日本国よりも韓国側により大きなメリットがあります。IOCが推薦している韓国の水上競技場は赤字経営が続いていると報じられておりますので、’東京オリンピック’の会場となれば、国際的な宣伝効果に加えて、観客動員による経済効果も期待できます。また、再来年に予定されている韓国開催の平昌冬季オリンピックの会場整備も、資金不足等から遅れがちであり、先に東京オリンピックでの一部種目の韓国開催が決まれば、自国開催のオリンピックの種目についても、日本側に”見返り”として会場引き受けを要求しやすくなります。韓国側には、経済効果と費用負担の両面において、一部開催を提案するだけの動機があるのです。

 そして、IOCからしますと、資金力と開催ノウハウを有する日本国を巻き込んだ方が、平昌オリンピックの失敗を回避することができます。あるいは、あくまでも「海の森」で実施したいIOCが、日本国内の世論を読んで、敢えて韓国開催案を持ち出した可能性もなきにしもあらずです(「海の森」がダメなら韓国に移すという圧力…)。いずれにしても、当提案は、IOCと韓国にのみメリットがあるのです。もっとも、韓国の国民世論は、絶対反対なのでしょうが…。

 東京オリンピックのみに限ってみれば、以上の推測が成り立つのですが、さらにその奥に重大な謎があるとしますと、それは、国民感情を無視して、日韓共同開催の方向に誘導したい勢力が存在していることです。この勢力は、日本国による韓国併合より以前に遡って、水面下に蠢いているようにも思えます。おそらく国際組織なのでしょうが、IOCがその勢力に近いところに位置しているとしますと、日本国民は、真の歴史を知るためにも、その正体を見極めなければならないと思うのです。

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北方領土の”二重国籍化”は不可能では?

2016年10月17日 15時15分45秒 | 日本経済
ロシアとの北方領土の共同統治、全く考えていない=菅官房長官
 本日、日経新聞の一面に”北方領土に共同統治案”という、衝撃的な見出しが躍っていました。この共同統治案、菅官房長官が午前の会見で全面的に否定しましたが、北方領土の”二重国籍化”は、事実上、不可能ではないかと思うのです。

 記事を読む限りでは、共同統治案の内容とは、”人”を対象に日ロ双方が主権を及ぼすとする案のようです。つまり、双方の国民に居住・移動の自由を認めた上で、それぞれの国民に対して国籍国が、自国の国内法の下で行政権や司法権を及ぼすというものです。立法権についても、何れの形態であれ、共同立法の可能性も視野に入れているそうです。

 しかしながら、この案では、肝心の点が明確にされていません。それは、”領域”に対する主権の如何です。当記事によりますと、共同統治案は、日本国側が、従来からの主張であった北方四島に対する帰属の確認を求めないことをも意味すると解説されています。仮に、共同統治案の内容が、上述した”人”に対する統治権のみに限定されるならば、共同統治の対象となる北方領土は、事実上、ロシアの主権が及ぶ地域となります。また、仮に、”領域”に対する共同統治にも合意したとしますと、北方領土の防衛は、一体、どうなるのでしょうか。論理的には、日ロ共同防衛軍の設立と運営を帰結しますが、共同軍方式は、現実的にはリスクが高すぎます。

 現在、米ロ対立が完全に解消されたわけではなく、ロシアは、ウクライナ問題等をめぐり”西側諸国”と摩擦を起こし、法の支配をも蔑にしています。日米同盟をも考慮すれば、将来的に日ロが対立する場面もなしとは言えません。また、共同防衛軍方式を断念し、ロシアに北方領土の防衛を任せたとしても、万が一、対ロ有事が起きるようなことがあれば、北方領土の日本人住民の運命は、第二次世界大戦末期の状況の再来ともなりかねないのです。

 北方領土問題は、法と正義に照らせば、日本国に理がありますので、北方領土を”ソ連邦の戦利品”と見るプーチン大統領が政権のトップである間に解決を急ぐ必要はありません。北方領土の”二重国籍化”はリスクに満ちているのですから、国際司法制度の下で日本国の領有権確認の後にこそ返還プロセスに関する交渉を行うべきであり、今は、当問題を解決する時期ではないと思うのです。

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