万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

AIIB債の“格上げ”か?ムーディーズの“格下げ”か?

2017年06月30日 17時18分37秒 | 国際政治
AIIBは、その不透明な運営と信用性の欠如から、これまで、何れの格付け会社からも格付けを得ることができず、AIIB債が発行できない状態が続いていました。ところが、今般、突然に、米大手のムーディーズが最高ランクの“トリプルA”に格付けしたことから、ようやくAIIBも外部資金の調達に漕ぎ着けたとの観測も流れています。しかしながら、同社の最上位格付け付与については、既に疑問の声が上がっています。

 第1の疑問点は、既に新聞紙上などで指摘されているように、中国関連の債権に対するムーディーズの矛盾した評価です。今年5月に、同社は、中国国債の評価を格下げしており、この評価に基づけば、中国が最大の出資国であるAIIB債の評価もまた、中国国債と同レベルとなるはずです。

 第2に、ムーディーズは、ポリティカル・リスクを全く評価に加算していない点です。AIIBは、加盟国の数こそアジア開発銀行を上回り、ユーラシア大陸をも越えた大所帯を形成していますが、それ故に、深刻な対立を抱える諸国も抱え込んでいます。当の中国は、南シナ海のみならず、カシミール問題をめぐりインドとの関係も悪化しており、AIIBにおける中国のパキスタンへの肩入れを考慮すれば、AIIB内部において加盟国間対立が表面化するシナリオも想定されます。インフラ関連事業は、“政治案件”が多いのですから、インフラ関連債については、ポリティカル・リスクを無視した評価は信頼性に乏しいと言わざるを得ません。

 第3に、アジアにおけるインフラ需要が巨額な資金を要することは確かなことですが、加盟国の返済能力には限界があることです。AIIBの設立は、世界銀行やアジア開発銀行に加えて、もう一つ、資金調達先が増えたわけですから、インフラ整備に取り組む諸国にとりましては朗報であったかもしれません。しかしながら、低利での融資とはいえ、インフラ事業には巨額の資金を要しますので、焦げ付かないとは限りません。さしもの中国も、最近では外貨流出に規制をかけており、AIIB債の“紙屑化”リスクが低いとは到底思えません。

 第4の疑問点は、AIIB債の発行通貨がはっきりしない点です。人民元建てであれば、中国国内で起債すればよいわけであり、敢えてムーディーズに評価を依頼したとしますと、米ドル建てが中心となるのでしょう。仮に、米ドル、あるいは、ユーロや円などの他の外貨での起債となれば、外貨建てで融資を受けた国の返済リスクはさらに高まります。それとも、起債は外貨、融資は人民元、返済は外貨といった“からくり”で、中国は、AIIBを外貨獲得の手段としようとしているのでしょうか。

 第5として挙げられる点は、賄賂が横行する中国の政治体質です。誰もが首を傾げるようなムーディーズの判断の裏には、習主席の面子にかけてAIIBを成功に導くために、巨額の“チャイナ・マネー”が動いたのではないか、とする疑いを人々に起こさせることでしょう。

 昨年、IMFが人民元をSDRのバスケット構成通貨に決定した際には、その判断に対する疑義が呈されつつも見切り発車しています。結局は、この時の約束は反故にされ、中国政府による人民元国際化のための措置は遅々として進んでいません。AIIB債に対する懸念が現実化すれば、ムーディーズは、自らの信頼性に傷をつける結果となり、格付け機関としての“格付け”を下げてしまうのではないかと思うのです。

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大阪市ヘイトスピーチ実名公表条例の意図とは?

2017年06月29日 15時22分22秒 | 日本政治
 2016年5月のヘイトスピーチ対策法成立から凡そ一年が経過しましたが、大阪市では、吉村洋文市長がヘイトスピーチと認定した投稿者の実名を公表する条例案を提出するようです。

 報道された記事を読みますと、条例制定の理由は、「違法なヘイトスピーチを不特定多数に知らしめる人の氏名を保護する必要はない」というものであり、言論の自由や通信の秘密の保護よりも、民族や人種差別反対を優先させるようです。言論弾圧という同法案成立時に懸念されていた方向に向かう気配も感じられますが、この条例に対する評価は慎重であるべきかもしれません。

 ヘイトスピーチ法案の成立背景には、在特会と在日韓国・朝鮮人団体との間の激しい抗争があり、いわば、両者の対立が法案成立の舞台装置の観さえありました。このため、当時より、在特会と”しばき隊”は裏では協力関係にあり、マッチポンプではないかとの疑いも提起されておりました。仮にこの推測が事実であれば、一般の日本人にとりましては、同法案の成立を後押しした在特会こそ、日本国の自由を売り渡す”裏切り者”ということになります。そもそも、在特会の過激な表現は、日本文化とは異質であり、どこか芝居じみてもいます。

 在特会の闘争手段は、明らかにヘイトスピーチ規制法案を誘発しています。何故ならば、在日韓国・朝鮮人が日本国内で特権を有し、優遇されていることに憤慨するならば、”日本人への差別反対”を叫べばよいからです。あるいは、”優遇措置の廃止”や”公務員に関する実態調査の要求”など、政策論としての提起も可能であったはずです。こうした手法の方が、刑法上の犯罪行為を連呼するよりも、遥かに一般の日本国民の賛同を得ることができるでしょうし、ヘイトスピーチ対策法制定の契機となることもなかったことでしょう。敢えて同法制定の”必要性”を作為的に作り出した点が、在特会に対する拭い去れない疑惑を生んでいるのです(法案通過後は、その活動も殆ど報じられていない…)。

 こうした在特会に対する疑いを踏まえて上記の条例を見てみますと、この条例には、全く正反対の2つの思惑が推測されてきます。その一つは、先述したように、対策法成立を根拠に、政治家が、条例の制定も以って一般の日本人の言論の自由を奪おうというものです。一般の日本人による在日韓国・朝鮮人に対する批判は一切許さないとする、恐るべき”日本人差別”がそこにはあります(大阪市民は反対しないのでしょうか?)。そして、もう一つの可能性があるとすれば、それは、在特会の正体の暴露です。本条例では、実名を公表するとしております。マッチ・ポンプ説の真偽は、在特会をはじめとする”日本側”のヘイトスピーチ団体の実名が条例によって公表され、日本人ではないことが明らかとなることによって判明する可能性があるのです。

 実のところ、実名が公表されれば、ヘイトスピーチをめぐる一連の騒動の真相は明らかとなることでしょう。何れにしても、これまでマスメディアや派手なパフォーマンスに流される一方であった一般の日本国民も、巧妙に仕組まれた政治の舞台装置を知るべき時が来ているのではないかと思うのです。

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支離滅裂な女系天皇容認説ー天皇位が”王”で現皇室の血脈は”飛車”では?

2017年06月28日 14時56分59秒 | 日本政治
「皇室」のニュース
 日経新聞では、先日から「危うき皇位継承」のタイトルで皇室問題に関する解説記事を連載しております。ところが、本日の記事を読む限り、この連載、中立・公平な立場からの解説というよりも、皇統を引く女性から生まれた子にも皇位の継承を認める”女系天皇”へと導く世論誘導を目的としているとしか言いようがないのです。

 本日掲載された記事は”「男系男子」は明治から”との見出しが付され、今日の皇室典範における男系男子継承の原則は明治から始まったとするイメージを打ち出しています。最初の部分において、1876年以降の皇室典範に関する第一次から第三次までの草案を紹介していますが、特に第三案では、1885年~86年頃の宮内省の「皇室規制」案に「皇族中男系絶ゆつときは、皇族中女系以って継承す」という一文があるとし、あたかも明治期にあって”女系”を容認していたかのように印象を与えています。次いで、男尊女卑の当時の社会状況を鑑みた井上毅が反対し、結局、1889年に公表された旧皇室典範では、男系男子継承の条文で決着したとしています。

 この解説記事には、幾つかの問題点があります。第一の問題点は、女系天皇と女性天皇の議論を混在させており、奇妙な”継ぎ接ぎ”によって結論を導こうとしている点です。最初の宮内庁案は女系容認論として扱っていますが、井上の反対理由が男尊女卑の風潮であったとしますと、否定されたのは”女性天皇”であって”女系天皇”ではありません。皇統を引く女子から生まれた子は、男子である可能性もあるからです(第三次宮内省案は、”女系”と表現されつつ、当時の理解では女性天皇案であった可能性もある…)。

 第二に、第三次宮内庁案については、宮内庁関係者を登場させ、”皇室は、前例を以って慣習としてきたから、宮内省が女系容認案を作成した以上、過去にも前例があったに違いない”とする意見を掲載しています。しかしながら、皇統譜上の記載のみならず、歴史的な事実としても、過去において女系天皇が即位した事例はありません(母が天皇である子の即位は、父も皇統を継いでいる場合に限る…)。しかも、明治期に作成された皇室典範は、旧来の皇室の慣習を大幅に変えたことは良く知られております。そもそも、第二条の「皇位ハ皇長子ニ伝フ」もまた、典範制定に際して新たに作られた原則です(第三条以下も同様…)。

 第三に、同宮内庁関係者は、「天皇家が他姓となるというのは理解し難い。皇室は元より姓がないのだから、婿入りした人も姓がなくなる」と述べ、女性天皇が配偶者を有することを認めると共に、婿入りで父親の姓がなくなることを理由に、その子への皇位継承、即ち、女系天皇を暗に認めています。この発言も、第二の問題点との関連からしますと、支離滅裂です。自ら前例論を持ち出して女系天皇容認の根拠としながら、今度は、前例が一切存在しないケースを自論を以って主張しているのですから(そもそも女系天皇へと繋がる女性天皇の即位は、その在位中に配偶者が存在していないことが条件ですので、仮に女性天皇を認めるならば、前例に従い、該当者は婚姻が禁じられることになる)。

 最後の極めつけは、小田部雄次静岡福祉大教授の発言です。「飛車を守って王を捨ててしまう発想はおかしい。世襲が王、男系が飛車だ。男系に固執すると世襲制そのものがダメになってしまう」と述べているからです。確かに、”飛車を守って王を捨てる”のは下手な手ですが、女系天皇論者こそ、この下手な手を打っているように見えます。世襲とは欠陥に満ちた制度であり、”世襲”を勝負を決する”王”と考える日本国民がそれ程多いとは思えません。仮に何としても守るべき”王”に譬えるとすれば、それは、天皇という建国から連綿と連なる国家祭祀を司る位であり、現皇室の血脈は”飛車”に過ぎないのではないでしょうか。真に”危うき”は皇位継承ではなく日本国の伝統としての天皇位であり、地位と血統は分けて考えるべきなのではないかと思うのです。

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梯子を外された日本の親北派と韓国の文政権ー北朝鮮の自発的核交渉拒絶

2017年06月27日 16時58分34秒 | 国際政治
【トランプ政権】日米外務次官が北朝鮮めぐり協議 日韓合意履行で連携強化を確認 文在寅・韓国大統領の訪米前に
 韓国大統領選挙における文在寅氏当選の背景には、緊張を高める一方の北朝鮮に対し、親北派の同氏であれは対話路線へと導いてくれるのではないかとする期待があったと指摘されています。しかしながら、この期待、早々に裏切られたようです。

 何故ならば、先日、北朝鮮は、核戦略の放棄を交渉のテーブルに載せる意思はないと公言したからです。日本国内でも、マスメディアに登場する”北朝鮮問題専門家”や”軍事専門家”は、”表向きは強がっているが北朝鮮は、内心では対米交渉を望んでいる”と口を揃えるかの如くに解説してきました。親北宥和派とも称すべきこれらの人々は、北朝鮮のスポークスマンと見なされてきたため、一定の信憑性を以って北朝鮮交渉願望説が受け止められてきたのです。あるいは、これらの発言がなされた時期には、北朝鮮も、交渉の糸口を探っていたのかもしれません。もちろん、アメリカを騙した1994年の米朝核合意や六か国協議の再来を期待して…。

 しかしながら、北朝鮮は、過去に成功した詐欺的手法では、最早、アメリカや国際社会を騙せないと判断したのでしょう。三度も騙される人はいませんし、イランの核開発に対する技術協力や米学生に対する残虐行為等が明るみに出た以上、アメリカに対して自国に有利な”話し合い解決”を求めるのは無理筋です。北朝鮮は自ら交渉の扉を閉ざすことで、”籠城”作戦に転じ、面子を保とうとしたかもしれないのです。

 北朝鮮の自発的核交渉拒絶は、結局のところ、日本にも散見される親北知識人と文政権の梯子を外す格好となりました。果たしてこれらの人々は、今や空論となった北朝鮮との話し合い路線をなおも主張するのでしょうか。北朝鮮問題については、現実を見据えた対応が必要なのではないかと思うのです。

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日本から北朝鮮への資金遮断は完璧か?ー対話の扉は閉ざされた

2017年06月26日 15時09分21秒 | 国際政治
核戦力「交渉の対象外」=北朝鮮、米韓をけん制
 報道に拠りますと、北朝鮮は、米韓に対して核戦力の放棄については”交渉の対象外”と通告し、自ら対話の扉を閉めたようです。核放棄なしの対北交渉が全く以って無意味であることは、北朝鮮も、百も承知のはずです。

 対話路線が消滅した以上、徹底的な経済制裁か、武力による軍事制裁か、あるいは、NPT体制の崩壊かの何れかとなり、北朝鮮問題解決の選択肢は狭まることになりますが、日本国政府は、自国から北朝鮮への資金の流れは完全に遮断しているのでしょうか。一頃では、日本国のパチンコマネーこそが、北朝鮮最大の外貨獲得の手段とされていました。拉致事件の発覚等もあり、日本国政府もようやく重い腰を上げて対北制裁に踏み出し、現在、送金規制を実施していますが、高額送金の申告制度に過ぎず、完全に資金の流れを遮断できているのか不明です。

 北朝鮮への資金ルートとしては、パチンコマネーを中心とした朝鮮総連系が主流なのでしょうが、その他にも、莫大な資金力を擁する親北朝鮮系の団体は存在しています。創価学会の名誉会長の池田大作氏は北朝鮮出身とされ、教団の教祖独裁体質は極めて北朝鮮に類似しているとの指摘もあります。同教団、あるいは、池田氏の個人資産は兆単位との噂もあり、宗教法人であるため、資金の使途については闇の中です。また、ソフトバンクの孫正義氏も北朝鮮系の経営者であり、親族には、朝鮮学校や朝鮮大学の出身者も多数含まれているとの情報があります。事業関連の会計や投資先については公開されてはいるものの、長者番付に載るほどの孫氏の個人資産については、これも不明としか言いようがありません。昨年も、紳士服のAOKIに至っては、北朝鮮国内や中国国内の北朝鮮系企業で加工を行っていた事実が明るみとなりました(この件では、総合スーパーのイトーヨーカ堂やりそな銀行の名も挙がっている…)。日朝には国交がないにも拘らず、何故、政府は、自由に北朝鮮系ビジネスを許してきたのか、理解に苦しみます。あたかも制服のように画一されたリクルート・スーツなるものの普及も、北朝鮮のための陰謀ではないかと疑うくらいです。これらの他にも、人材派遣のパソナなど、日本国内には、北朝鮮の”資金源”が疑われる個人、団体、並びに、企業が少なくないのです(創価学会と親密な現皇室も例外ではない…)。

 何れの展開となるにせよ、北朝鮮に対する制裁強化なくして、日本国は自国と自国民の安全を守ることができません。アメリカは中国に対して対北経済制裁の強化を求めていますが、日本国政府は、自らの足元こそ見据えるべきです。背後から北朝鮮を支えているのは、他でもない、日本国内の北朝鮮系勢力であるかもしれないのですから。日本国政府は、北朝鮮の外貨を枯渇させるべく、最低限、日本国から北朝鮮への送金、並びに、企業取引は全面的に禁止するべきではないでしょうか。

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日欧EPAはTPPよりリスクが低いー”格差移動”がない

2017年06月25日 15時17分44秒 | 国際経済
日欧EPA、日本側が関税9割超を撤廃の方向
 ”行き過ぎたグローバリズム”への批判が強まる中、日本国政府は自由貿易主義を維持する方針から、EUとのEPA締結に向けて交渉を重ねています。自由貿易主義へと潮流を戻すべくEUも積極姿勢に転じており、合意間近との観測も流れています。

 それでは、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ政権誕生の主要な要因となった”行き過ぎたグローバリズム”には、どのような問題があるのでしょうか。実のところ、広域経済圏を構成する国家間の間に著しい経済格差が存在する場合に、主として以下の問題が発生します。

 第一の問題点は、移民労働者の移動です。イギリスでは、EUの基本原則である人の自由移動の結果、中東欧諸国から同国を目指して移民が押し寄せ、反EU感情を誘発することとなりました。この点はアメリカも同様であり、NAFTAには人の自由移動は原則に含まれないものの、不法移民の形でメキシコからアメリカに大量の移民が流入しました。この流れは、経済レベルの低い国から高い国への一方通行となります。

 第二の問題点は、製造拠点の移動です。この問題は、先進国における産業の空洞化と称される現象であり、グローバル企業がより労働コストの低い加盟国に製造拠点を移すことで発生します。この結果、経済レベルの高い国は、深刻な雇用不安や所得の低下に悩むこととなり、トランプ氏を大統領に押し上げる原動力ともなりました。イギリスのEU離脱決定においても、EUが掲げる”サービスの自由(設立の自由)”に基づく海外移転による製造業の衰退は、有権者の判断材料の一つとなっています。製造拠点の流れも、経済レベルの高い国から低い国への一方通行となり、移民労働者の流れとは逆です。

 つまり、経済格差によって、上述した二つの逆方向の流れが同時に発生することで、とりわけ経済レベルの高い側の国民にしわ寄せが集中するのが、”行き過ぎたグローバリズム”の問題点なのです。この側面から日欧EPAを見ますと、日EU間では、TPP加盟予定国間ほどには経済格差がありません。また、EUのようにモノ、人、サービス、資本の自由移動を認める市場統合をするわけでもないのです(日欧は国境を接しておらず、米墨間のような密入国も問題も起きない…)。即ち、上記の問題は日欧EPAでは起きにくいのです。しかも、移民問題については言語の問題もあり、日本国からEUに移民労働者が押し寄せたり、逆に、EUから移民労働者が大量に日本国に流れ込む事態もあり得ません。日欧EPAについては、”コメが絡まない分、交渉は楽である”との評もあるそうですが、”格差移動”がない点も、日欧EPAが低リスクな理由ではないかと思うのです。

 自由貿易において相互利益が確実に期待できるパターンとは、双方が相手国が生産できない産品を有している場合です。この点、日本国政府は、ソフトチーズといった乳製品の関税撤廃には難色を示しているそうですが、カマンベールやブルーチーズといった嗜好品は、カビの種類や伝統技術等により、どうしても同じ品質のものを日本国内で生産することはできません(日本製もありますが生産・流通量も少なく、食感も本場のものとは違ってしまう…)。こうした、主食ではなく、かつ、特産性の高い品目こそ、率先して関税を撤廃しても良いのではないかと思うのです。

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対中コメ輸出のリスク-老獪な二階議員の死角

2017年06月24日 15時24分01秒 | 日本政治
ようやく日本国内のコメ消費量の減少に歯止めがかかる徴候が見えるものの、国内の“コメ余り現象”は、深刻な状況を脱していないようです。米作農家にとりましては、米価の下落を招きますし、経営の不安定化は後継者不足にも拍車をかけます。こうした中、親中派の二階幹事長を中心に、コメの対中輸出を増やす案が浮上しているそうです。中国政府と親密な関係にある二階議員にとりましては、一石二鳥どころか、一石三鳥以上の効果が期待できます。

第1に、100万戸ともされる米作農家にとりましては、余剰米の販路を提供することで“救世主”となることです。中国では、日本産のお米は高級品として需要が高く、高値で取引されています。第2に、現実はどうあれ、“二階幹事長あっての対中交渉”として宣伝すれば、同氏は、対中コメ輸出を政治的な“手柄”とし党内における基盤を固めることができます。自民党は、全国の農家票を掴んだ同氏の功績を高く評価することでしょう。第3に、二階幹事長は、中国に対しても恩を着せることができます。報道によりますと、中国は、現在コメ不足の状況にあり、東南アジア諸国からの輸入で凌いでいるそうです。中心に日本ブランドのコメが中国国内で流通すれば、少なくとも、購入可能な共産党員や富裕層にとりましては習政権に対する評価は上がることでしょう。同氏は、中国に対しても日本国の交渉窓口としての地位を不動のものとするのです。二階議員の対中コメ輸出は、利益を広く国内外にばらまきつつ、自己の地位を高めるという戦略において完璧なように見えます。しかしながら、この戦略には、“隙”は全くないのでしょうか。以下に、対中コメ輸出のリスク面について挙げて見ることとします。

第1に、現時点では、日本産ブランド米は中国国内において高値で取引され、食の安全性の面からも需要の拡大が見込めます。しかしながら、需要と供給による価格形成からしますと、日本産ブランド米の供給量の増加は、中国における希少性を徐々に薄れさせ、価格の低下も予測されます。今後とも、中国市場で高値を維持し得るかどうかには、疑問があります。

第2に、日本国内の余剰米の多くは、中国で高値を付けるブランド米ではなく、一般のお米です。この点に注目しますと、この政策は、100万戸の農家に対して効果があるわけではなく、ブランド米生産農家に限定されます。否、一般の日本人消費者からしますと、香港のバイヤーによって鮪の初セリ価格が暴騰したように、中国向け輸出の拡大は、日本国内でのブランド米価格を押し上げるかもしれません(日本の一般消費者にはマイナス高価)。

第3に、二階幹事長は、中国や東南アジア諸国の農業技術は、年々向上している現実を無視しています。中国は、アグリビジネスの大手シンジェンダ(スイス)を、遺伝子組み換え等のバイオ技術獲得を目的に買収しましたが、今後、中国のコメ生産量は飛躍的に伸びる可能性があります。また、東南アジア諸国でも、高品質のコメの生産が実現すれば、中国の消費者は、日本産より安価な東南アジア産を選択することでしょう。あるいは、高品質のカリフォルニア米を有するアメリカが、貿易不均衡の是正を理由に中国に対して米国産コメの輸入拡大を求める可能性もあります。長期的に見れば、日本産の米の輸出が増え続けるとする予想は楽観的にすぎます。

第4に、日本国内の米作農家の対中輸出依存が深まるほど、日本国は、中国からの対日輸入枠削減圧力に悩まされることになります。コメの輸出入は、日中両国とも政府が直接に実施する国家貿易ですので、日本米の輸入枠が中国主導で決定されるとなりますと、日本国は、政治的要求にも利用可能な“米カード”を中国に与える等しいのです。

第5に、昨今、日本国政府は、農村に外国人農業技術指導者や実習生を招き入れる政策を推進しています。対中コメ輸出とこの移民政策がリンケージしますと、日本国の農村は、中国向け輸出米を移住してきた中国農業者が生産するという姿へと変貌しかねないリスクがあります。日本国内の後継者不足が解消されたとしても、中国の13億の人口を以ってすれば、日本国の農村を中国人の人口で席巻することは容易なことです。あるいは、二階議員は、中国との裏交渉において農村への中国人移民の受け入れを輸入枠獲得の条件としているのかもしれません。

 以上に主要なリスクを挙げて見ましたが、上述した二階幹事長への高評価は、その前提条件や外部環境が変化すれば、プラスからマイナスへ転じる可能性があります。長期的に見ますと、この政策はリスクに満ちておりますので、日本国の農業の再生には、食糧自給率の向上に寄与し、かつ、農村共同体を再活性化させるような、より低リスクで安全性の高い方法を考案すべきと思うのです。

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平昌五輪南北共同開催案問題―古代と現代のオリンピックは違う

2017年06月23日 17時04分09秒 | 国際政治
北朝鮮と一部共催の議論歓迎=平昌五輪でIOC
 来年2月に開催が予定されている平昌冬季オリンピックは、北朝鮮との一部共同開催が検討されているそうです。IOCのバッハ会長も、歓迎の意向を示していると報じられております。

 近代オリンピックは、全てのポリスが4年に一度開かれるオリンピアの祭典の期間においては戦争を停止し、平和を維持した古代ギリシャの慣行に倣って始まったものです。平和の祭典と称されるのも、この時だけは武器を置き、束の間であれギリシャ全土で平和が実現したからです。古代オリンピックの精神を継承した近代オリンピックもまた、伝統的な平和の精神に沿うならば、南北による共同開催は、歓迎すべきことなのでしょう。

 しかしながら、古代と現代のオリンピックとの間には、著しい違いも見られます。最大の相違点は、現在のオリンピックは、サマランチ会長以来、“参加することに意義がある”に象徴されるような高貴なアマチュア精神はすっかり影を潜め、すっかり商業主義に堕しています。全世界に放映されるため、民間企業にとりましては格好の宣伝舞台ですし、開催地では、競技施設等の建設、選手等の宿泊や観衆向けの観光ビジネス、関連グッズの販売…など、一定の経済効果が期待できます。そして、IOCもまた、メディアへの放映権販売、企業からのスポンサー料、公認ロゴやマスコットのライセンス料など、莫大な利権を懐に入れています。オリンピック憲章の理想から遠く離れ、今日のオリンピックは、欲望が渦巻く巨大なる興行ビジネスと化しているのです。

 こうした時代の変化を考慮しますと、IOCのバッハ会長の歓迎発言は、現実を無視した建前に固執する偽善のように聞こえます。何故ならば、現在、北朝鮮は、核・ミサイル開発に関連して国際社会から厳しい経済制裁を受けている国であるからです。古代であれば、敵対関係にあるポリスが、一旦、対立を棚上げしてオリンピアの祭典に共に参加しても、それが、敵対する双方の何れかを利することはありませんでした。しかしながら、今日の商業化されたオリンピックでは、一次的であれ、北朝鮮に対する経済制裁の解除を意味しかねないのです。つまり、オリンピックの開催は、北朝鮮にとりましては、貴重な外貨獲得のチャンスとなり、その資金は、十中八九、核・ミサイル開発に投じられることでしょう。

 加えて、北京オリンピックの開催日である2008年8月8日に、ロシアがグルジアに侵攻したしたことも記憶に新しく、古代オリンピックの精神は、全世界の諸国で共有されてもいません。しかも、先日、北朝鮮から解放され、帰国したアメリカ男子学生が同国による何らかの虐待行為により死亡するという痛ましい事件も発生しています。アメリカは、自国選手に対する拘禁や殺害のリスクを負ってまで南北共同開催オリンピックに選手団を派遣するのでしょうか。このリスクは、アメリカに限らず、日本国を含む他の参加国も同様です。

古代と現代のオリンピックの相違を考慮しますと、各国とも、平昌オリンピックのボイコットは選択肢となるのではないでしょうか。そして、IOCもまた、古今のオリンピックの違いを直視し、現代にあっては、偽りの平和よりも真の平和、即ち、国際的な対北制裁網の維持こそ優先させるべきと思うのです。

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一帯一路構想と南シナ海囲い込みー中国の言行不一致

2017年06月22日 14時56分48秒 | 国際政治
米、対北朝鮮で圧力強化要請=外交・安保対話で中国に―南シナ海は平行線
 中国は、近年の急速な経済発展とそれに伴う軍事力の増強を背景に、経済面では自国中心の経済圏構想、即ち、一帯一路構想を掲げる一方で、政治面では、国際仲裁の判決を無視する形で南シナ海の軍事拠点化を強行しています。しかしながら、中国は、政経両面の二つの政策が矛盾していることには気が付いていない、あるいは、気づいていないふりをしているようです。

 中国の説明によれば、一帯一路構想とは全世界に開かれた経済圏であり、モノや人等の自由、かつ、活発な往来が経済圏全体を豊かにするとしています。インフラ投資を目的として設立されたAIIBも、この構想の一環と言えます。アメリカがトランプ政権の下で保護貿易色を強める中、中国は、グローバル経済の盟主を自負しており、経済面では、”移動の自由”の促進を謳っているのです。

 AIIBに参加している、あるいは、一帯一路構想に賛同している諸国は、中国の掲げるグローバリズムの理想に共鳴しているのでしょう。しかしながら、中国が、本心から開かれた広域経済圏を目指しているのか、と申しますと、これは、相当に怪しくなります。何故ならば、南シナ海では、自らの説明とは真逆の行動をとっているからです。

 常設仲裁裁判所における判決において問題視されたのは、中国が、歴史的、並びに、法的根拠を欠くにも拘わらず、国連海洋法条約を無視し、「九段線」の主張の下で一方的に南シナ海を囲い込もうとしたところにあります。国際レベルでの海洋法とは、海洋における自由な航行を約するために締結された条約であり、いわば、”海の交通ルール”の側面があります。つまり、公海や領海等の範囲を定めたり、航行のルールを明記することで、一国による特定海域の囲い込みや外国船舶に対する航行阻害行為を禁じているのです。

 こうした海洋法の意義に照らしますと、中国の南シナ海における行動は、航行自由の原則に対する挑戦に他なりません。中国が南シナ海の軍事拠点化を進める目的としては、アメリカが秩序を維持している太平洋への自国勢力範囲の拡大、東南アジア諸国に対する軍事的威圧、そして、南シナ海をシーレーンとする諸国に対する経済封鎖手段の獲得などが挙げられています。南シナ海が”中国の海”として閉鎖されれば、当然に、自由貿易も露と消えることでしょう。

 中国は、グローバリズムの衣を纏って一帯一路構想の実現に向けて邁進しようとするのでしょうが、南シナ海での行動は、それが本心ではないことを証明しております。仮に、真に開かれた経済圏を標榜するならば、それを法的に保障する海洋法に違反するような行為は決して採らないはずなのです。中国の一帯一路構想、並びに、AIIBが信頼されない理由は、まさに、言葉では開放を唱えながら閉鎖を追及している中国の言行不一致にあると思うのです。

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「東芝メモリ」売却問題ー経産省主導で何故韓国ライバル企業が入るのか?

2017年06月21日 14時13分29秒 | 国際政治
東芝メモリ売却、「日米韓連合」と優先交渉決定
 東芝問題につきましては、何処か、腑に落ちない点が多すぎます。今般の東芝子会社の半導体メーカーである「東芝メモリ」の売却先についても、報道によりますと「日米韓連合」が優先交渉権を得たそうですが、何故、日米連合に韓国のSKハイニックスを参加させたのか、日本国政府からの説明は何もありません。

 「東芝メモリ」の入札に関して、日本国政府が背後で動いた理由としては、海外への技術流出阻止が指摘されております。同連合の中核に日本国の官民ファンドである産業革新機構が据えられたのも、この説を裏付けています。しかしながら、政府の基本方針に照らしますと、韓国のSKハイニックスの参加は説明が付きません。。「日米韓連合」の一角を成すアメリカのベインキャピタルは投資会社ですが、SKハイニックスは、技術流出や競争法上の問題も生じるライバル会社であるからです。

 SKハイニックスについては、当初、単独入札を模索していましたが、公正取引委員会等、各国の競争当局から承認を得るのは難しいとして、一旦、断念した経緯があります。この経緯からしますと、おそらく、SKハイニックス側には、「東芝メモリ」を買収するだけのメリット、おそらく技術上のメリットがあるのでしょう(東芝メモリのコントローラ技術との指摘もある…)。しかしながら、日本側からしますと、技術の海外流出リスクが伴ってきます。東芝とSKハイニックスと言えば、東芝側が同社を知的財産権の侵害で訴えた因縁の過去があり(東芝研究データ流出事件)、東芝側は巨額の損失を被っています。SKハイニックス側が和解金330億円を支払うことで一先ずは解決していますが、SKハイニックスとしては、今度は出資者となることで、合法的な手段で東芝の技術を入手できるとする目論見があるのかもしれません。鴻海陣営による買収を阻止し、中国への技術流出のリスクが防いだとしても、韓国に漏れてしまうのでは意味がありません。SKハイニックス側の出資額は、それ程高額ではないそうですが(少額であれば他の日本企業からの出資も可能であったはず…)、経産省は、韓国への技術流出を防ぐ何らかの措置を準備しているのでしょうか。(追記22日の報道に拠りますと、SKハイニックスは出資者ではなく融資者の立場にとなり、一先ず、技術流出のリスクは低下したようです。もっとも、日本勢が全体の3分の2を占めるものの、コメントをお寄せくださいました方によりますと、米ベインキャピタルはSKハイニックスから資金提供を受けているとする情報があるそうですので、まだまだ油断はできない状況にあります。)

 また、仮に技術流出を防止できたとしても、SKハイニックスが東芝メモリの内部において株主権を自社に有利に行使する可能性も否定はできません。現在、半導体の世界市場のシェアは、サムスンが他者を引き離して1位であり、SKハイニックスも2位につけています。こうした現状を考慮しますと、SKハイニックスの参加は、半導体市場のさらなる寡占化を招く恐れもあるのです。

 何れにしましても、今般のSKハイニックスの参加は、日本側にとりましては何らのメリットもないばかりか、将来的には、「東芝メモリ」の市場競争力を低下させる展開も予想されます。産業革新機構には国費が投入されているのですから、国民の多くも、敢えて韓国のライバル企業を利すような日本国の経産省の方針に納得しないのではないでしょうか。

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”共謀罪”は運用を見てから評価しては?

2017年06月20日 17時15分30秒 | 日本政治
政権逆風、自民は組織固め躍起=民共、追及継続―都議選
 所謂”共謀罪”については、野党をはじめ左派勢力等が激しく反対し、全国的な反対キャンペーンを張ってておりました。ネット上の政治ブログ等でも、改正組織犯罪処罰法が成立すれば、”政府による国民監視体制が敷かれ、戦前の体制に回帰する”として、徒に危機感を煽る意見も散見されました。

 野党による反対の大合唱の中、与党主導で改正組織犯罪処罰法を成立させたわけですが、同法の成立が内閣支持率低下の要因の一つであるとする指摘もあります。委員会採決を省略するという異例の手続きを経て成立しましたので、強行な手法に対する批判は頷けます。しかしながら、同法に対する評価は、実際の運用面を見てから判断すべきではないかと思うのです。本法案が国会に提出された背景には、国際的なテロ活動の活発化があり、諸外国においても対テロ対策の観点から”共謀罪”が設けられている国も少なくありません。現実には、世界各地でテロが頻発しているように、テロを完全に封じ込めることができないまでも、”共謀罪”に基づく捜査当局の活動はネットワーク型のテロ・犯罪活動には有効であり、未然に防止した事例も存在しています。また、”共謀罪”が設けられている国において、同罪の設置により国民監視体制が強化された、とする報告もそれ程には見られないのです。

 野党側は、一般の国民の日常生活までもが監視され、政府による国民統制が強まるとして同法の成立に反対しましたが、実際に、こうした懸念される事態が発生するか、否かは、同法がどのように運用されるかにかかっています。組織に属していない一般の国民が監視され、罪無くして逮捕・収監される、あるいは、左翼団体や宗教法人等の組織が根拠なくして”弾圧”を受けるといった事態が起きてから、同法に基づく具体的な公権力の行使に対して批判を展開すればよいのではないでしょうか。今日では、行政訴訟の手続きも整備されておりますので、法の目的からの逸脱や権力の濫用があれば、司法の場に訴えることもできます。

 共謀罪には、テロや組織犯罪を防止するというメリットがある反面、国民監視体制の強化に繋がるリスクもあります。長短両面を持つのですから、今後、どちらの面が出現するのかは、現時点では国民の誰もが分かりません。実際に、テロや組織犯罪が減少すれば、国民の多くは法案成立を高く評価するでしょうし、反対に、野党の懸念通りの事態となれば、同法の改廃を求めることとなりましょう。このように考えますと、法案成立の時点での批判は、時期尚早なのではないかと思うのです。

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日本軍による慰安婦強制連行はあり得ないー”朝鮮反乱”は致命傷

2017年06月19日 14時13分24秒 | 国際政治
韓国、慰安婦合意検証へ 「破棄と再交渉」は前提とせず
 日韓慰安婦合意の”破棄と再交渉”を公約として当選した文在寅大統領は、当問題について、まずは慰安婦合意に至るプロセスを再検証する方針のようです。実際に、文政権が同合意の”破棄と再交渉”に踏み込むのかは不明ですが、当時の日本国が置かれていた政治状況を考慮しますと、日本軍による慰安婦強制連行はあり得ないはずです。

 何故、あり得なのか、と申しますと、仮に朝鮮半島で反乱が起きれば、戦争を遂行していた日本国にとりましては致命傷となるからです。あまり知られていないセンシティブな事件なのですが、戦時中、日本国政府は、敵国であったアメリカに対して黒人暴動を画策しております。この工作活動にリクルートされたのが黒人問題の専門家であった疋田保一であり、同氏は、民間活動家であった中根中等との協力の下、第二次世界大戦最中の1943年6月20日に発生したデトロイト黒人暴動にも影響を与えたとされています。軍需産業の中心地と化していたデトロイトの生産停止により、戦争遂行能力を削がれることを怖れたアメリカ政府は、この時、即、軍隊を投入し、同月23日に暴動は鎮圧されるのです。

 この事件は、当時の日本国政府がマイノリティーであり、かつ、差別を受けてきた黒人を組織し、大規模な暴動へと誘導すれば、アメリカを内部から崩壊させることができると考えていたことを示しています。ということは、日本国政府自身も、自国領土のマイノリティーが反乱を起こせば、自国の戦争遂行能力に対して致命的な打撃を受けることを自覚していたはずです。仮に日本軍が”慰安婦狩り”を実行し、20万人もの朝鮮人女性を戦場に強制連行すれば、朝鮮半島で大規模な反乱が起きることは目に見えています(過去には日本人男子学生が朝鮮人女学生をからかったことから暴動が発生…)。敵国の内部分裂を誘発するのが一般的な戦略上の手法であるとしますと、当時の日本国政府が、みすみす自ら分裂を招き、窮地に陥るような行為を朝鮮半島において行ったとは考えられないのです。

 日本統治下の朝鮮半島の人々とアメリカの黒人の人々を比較しましても、前者の方が法的地位は遥かに高く、日本国政府からの配慮も受けています。文政権は、慰安婦合意のプロセスを検証するよりも、個人請求の起訴となる事実が実際にあったのか、歴史そのものの検証に着手すべきと思うのです。

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慰安婦個人請求権問題ー日本統治下の韓国・朝鮮人とユダヤ人は全く違う

2017年06月18日 13時50分04秒 | 国際政治
日韓合意「再交渉に期待」…韓国側が発言後削除
 韓国における文在寅政権の誕生は、同国内で慰安婦合意再交渉の機運を高めているようです。個人請求権問題は”慰安婦”に留まらず戦時徴用にも及ぶ動きも見られますが、90年代以降、韓国は、国際社会において慰安婦被害はユダヤ人に対するホロコーストに匹敵する非人道的行為とする認識を定着させるべく、積極的に国際プロパガンダを展開してきました。しかしながら、日本統治下の韓国・朝鮮人とナチス統治下のユダヤ人の立場は、全く違うのではないかと思うのです。

 韓国側は、戦後におけるドイツのユダヤ人に対する個人補償を取り上げては、日本国は、ドイツに見習うべきと主張してきました。この主張には、戦前の韓国・朝鮮人(当時日本国籍を有した現在の韓国、並びに、北朝鮮の人々)とユダヤ人も共に時の政権から迫害を受け、筆舌に尽くしがたい虐待を受けたとする被害者意識があります。ヒトラー政権下のユダヤ人については、ヒトラーの命令や制定された法律に基づいて、公職追放、財産の没収、強制収容所への収監、強制労働…といった憂き目に遭っており、個人の被害や損害も書類等に基づいて証明することができます。奴隷貿易に携わったり、ペスト流行の一因となったり、さらには第一次世界大戦後の振る舞いなど、ユダヤ人の中には、歴史的には必ずしも純粋な被害者とは言い難く、むしろ加害者の側面を持つ者も少なくはないのですが、公権力の迫害行為によって辛酸を舐めたユダヤ人が多数存在したことは確かなことですし、被害の特定も可能です。

 それでは、日本統治下の朝鮮半島、並びに、日本国内の韓国・朝鮮の人々は、ナチスドイツ時代のユダヤ人と同様に、国家権力による迫害を受けたのでしょうか。事実をつぶさに調べますと、戦前の韓国・朝鮮人の場合は、全く逆であったとしか言いようがないのです。韓国・朝鮮人に対する公職追放の事実はなく、官吏、軍人、警察官など、幅広い分野で朝鮮の人々は公務員として勤務していました(日本国内では選挙で選出された帝国議会議員も存在…)。特に朝鮮半島では韓国・朝鮮人公務員の比率は高く、自治的な要素も見られます。財産没収についても、日本国は、朝鮮半島において近代的な所有制度を確立し、財産権の保障は当然に韓国・朝鮮の人々にも及んでいました。敗戦を機に財産を暴力で奪取されたのは日本人の方です。もちろん、韓国・朝鮮人を捕縛して収容するアウシュヴィッツのような強制収容所も設置されていませんし、当時の状況からすれば虐殺など想像も及ばないことです。国家総動員法に基づく戦時徴用はありましたが無償の強制労働ではなく、国民としての義務は、日本人も日本国籍を有する韓国・朝鮮人も変わりはありませんでした。むしろ、韓国・朝鮮人に対しては徴兵も戦時徴用も日本国よりも時期的に遅れて実施され、一般の日本人よりも優遇されていたと言っても過言ではありません。徴兵されはしたものの、韓国・朝鮮人兵士は、結局は戦場に配属されずして終戦を迎えています。

 どの側面をとりましても、日本統治下の韓国・朝鮮人とナチスドイツ統治下のユダヤ人は、真逆と言えるぐらいに政府による扱いが逆です。韓国政府は、国際プロパガンダに際してユダヤ人の協力を得る、あるいは、ユダヤ人の方法に倣ったのでしょうが、基礎となる事実が違っているのですから、ユダヤ人と自らを同列に並べ、”ドイツと同様に個人補償をせよ”という要求は、根拠なき不当な請求に他なりません(しかも、1965年の日韓請求権協定では日本国側が請求権を政府国民共に放棄する一方で、韓国側には、莫大な支援金が支払われている…)。事実関係を明らかにすれば、日本国に対する国際社会、並びに、韓国側からの批判も止むと予測されるのですが、政治的妥協に終始し、事実説明に後ろ向きな日本国政府にはふがいなさを感じるのです。

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残虐国家北朝鮮の意図とはー米大学生の脳壊死

2017年06月17日 14時53分17秒 | 国際政治
北が昏睡状態で解放した米学生、脳に大きな損傷
 観光を目的として北朝鮮に入国したものの、政治犯として当局に軟禁されていた米バージニア大学学生、オットー・フレデリック・ワームビア氏は、水面下における米朝交渉の結果ようやく解放され、無事米国に帰国しました。解放当初は北朝鮮側の関係改善のメッセージではないかとする憶測も飛び交いましたが、ワームビア氏の健康状態に関する情報が伝わるにつれ、この憶測には疑問符を付さざるを得ません。

 報道によりますと、ワームビア氏は昏睡状態にあり、脳内には広範囲における脳細胞の壊死が見られるそうです。治療に当たっている医師の説明では、呼吸停止状態において見られる症状あり、北朝鮮国内においてワームビア氏に対して何らかの虐待行為があったことを示唆しています。否、脳細胞の壊死とは、実質的には”脳死”を意味しており、同氏は北朝鮮によって殺害されたに等しいのです。

 同氏の脳損傷について、北朝鮮側は、”ボツリヌス菌の毒素による中毒で体調を崩し、睡眠薬を服用後に昏睡状態になった”と説明しています。この説明で注目すべきは、”ボツリヌス菌”という細菌の名です。何故ならば、この細菌こそ、その高い毒性故に生物兵器として研究されてきた歴史があるからです(わずか0.5キログラムで全人類を死に至らしめる…)。実際に、ボツリヌス菌に感染すると呼吸筋が麻痺し、死に至るケースもあるそうです。ワームビア氏の症状からしますと、ボツリヌス菌による中毒症状への治療というよりも、ボツリヌス菌への感染によって脳壊死が引き起こされたとする推測も成り立ちます。ボツリヌス菌は自然界に存在する細菌ではありますが、北朝鮮は、弁明しているように見せかけつつ、敢えて”ボツリヌス菌”の名を挙げることで、生物兵器の保有を暗に仄めかしているとも言えるのです。

 一方、アメリカでは、担当の医師は「ボツリヌス菌による中毒の症状は見られない」と指摘しており、ボツリヌス菌感染説、あるいは、北朝鮮生物兵器使用説を否定しています。となりますと、(1)北朝鮮は、ボツリヌス菌を用いずして呼吸困難を引き起こす生物化学兵器、あるいは、脳細胞破壊兵器を開発・所有している(ロシアからの技術移転かもしれない…)、(2)生物化学兵器ではなく、首を絞めるなど、一般的な方法でワームビア氏を酸欠状態とした、(3)アメリカ側の見解に誤りがあり、実際には、ボツリヌス菌に感染している…といった可能性があります。(1)及び(3)では、生物化学兵器の使用という事態となりますので、北朝鮮に対する制裁はさらに厳しくなることでしょう。

 北朝鮮の核・ミサイルの開発の進捗状況につきましては不透明な部分が多いのですが、何れの推測であれ、北朝鮮は、生物化学兵器に関してもその保有を示唆することで、アメリカに対して牽制を試みているように思えます。つまり、北朝鮮にアメリカ人が入国すればワームビア氏と同様の運命を辿るとするアメリカに対する脅しであり、さらには、ボツリヌス菌を攻撃手段とした全世界に対する脅迫であるかもしれません。ティラーソン国務長官は北朝鮮への渡航禁止を検討しているそうですが、如何なる目的であれ、訪朝した米国民は命の危険に晒されるとする認識があるのでしょう。

 以上のように考えますと、アメリカが、北朝鮮に対して安易に妥協するとは思えません。かくも残酷な仕打ちを自国民が受け、しかも、非人道的な生物化学兵器が使用された疑いまであるのですから。本事件は、米朝関係の改善よりも悪化の方向への向かわせる可能性の方が高いのではないかと思うのです。

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マイナンバー・LINE提携リスクー日本国政府の売国か?

2017年06月16日 08時47分46秒 | 日本政治
 報じられるところによりますと、総務省は、内閣府との連携の下でマイナンバーのオンラインサービスである「マイナポータル」とLINEを組み合わせた行政サービスを開始するそうです。子育て支援の分野を手始めに今年の秋頃からのサービス開始を予定しているそうですが、この連携、幾つかの側面において、売国的ではないかと思うのです。

 第一に、LINEとの連携は、日本国民の個人情報を韓国に提供するに等しいことです。LINE社とは、韓国企業であるネイバーの子会社であり、韓国情報院に対する情報提供の義務を負っています。この現実は、LINEを介して収集されたユーザーの個人情報、並びに、ユーザーの登録情報は、全てネイバー、並びに、韓国政府が利用可能なデータとして蓄積されることを意味します。政府はこの事実を当然に知りながらマイナンバーの運営にLINEを利用したのですから、確信犯的な売国行為です。日本国民のマイナンバーが韓国側に漏れる事態ともなれば、リスク管理の甘さが問われることになりましょう(あるいは、韓国側が日本人のマイナンバーを秘密裏に不正利用する可能性も否定できない…。例えば、’成り済まし’)。

 第二に、LINEは一民間のSNS事業者に過ぎず、他にも競合する企業が存在しています。仮に、こうした行政サービスを実施するならば、中立・公平な公開競争入札制度を行った上で、事業者を選定すべきです。日本国政府が、恣意的にLINEを選定したとなりますと違法な随意契約となり、特定の企業への利益誘導となりましょう。LINE利用者数や使用回数が増加するほどに、広告料を主たる情報源とするLINEの収益もアップするのですから。

 第二の問題は、同連携の費用負担が不透明な点も問題です。今般の連携においては、日本国側にシステム開発に要する費用負担が生じているのではないでしょうか。仮に生じているとしますと、予算を要する事業として国会の承認が必要でしょう。LINEは、無料アプリであるために普及したのですが、仮にこの事業でも”無料”であるとしますと(LINE側の負担)、日本国の行政システムが、むしろ、LINE社の利益、並びに、韓国政府の情報収集のために体よく利用されていることとなります。ソフトバンクを含めて韓国系の企業には、政府や行政機関に取り入るという傾向が強く、LINEもまた”用日政策”の一環かもしれません。

 第三に、日本企業側の問題点として、近年、プラットフォーム事業における出遅れが指摘されております。このため、日本国政府は、日本企業によるSNS事業者の育成を目指すべき立場にあります。ところが、韓国系のLINE社を”日本国政府御用達”として認定するのでは、韓国の利益の為に公権力を行使しているとしか思えません。公共性の高い通信・情報事業の分野は、経済のみならず、社会全体にも影響を与えますので、如何なる国にあっても政府の監督の下に置かれております。韓国系のプラットフォームが日本国の国民生活においてコミュニケーション手段として根付くとなりますと、日本国内に韓国系の情報収集ネットワークが張り巡らされ、外国によって日本国民の日常までもが監視される状況となります。

 第四としては、今日、小学生でもアプリを自作できる時代にありながら、何故、総務省は、行政サービスの向上を実現するアプリを自ら開発しないのでしょうか。必ずしもLINEを介在させる必要性がないにも拘らず、敢えて提携を意図したとしますと、国民には説明できない思惑が潜んでいると疑われても致し方ありません。

 マイナンバーカードの交付率は10%を下回る状況にあるとの指摘もあり、この低い数値は、マイナンバー制度に対する日本国民の不信感の現れとも説明されています。しかしながら、LINEの方が遥かに情報漏洩や犯罪関連のリスクが高いにも拘わらず、メディアも左派系の人々も、マイナンバー導入時程には今般の提携を批判的には報じておりません。また、LINEの利用者は、公表では凡そ6800万人ともされていますが、この数字が正しければ、日本国民は、日本国政府よりも韓国系のLINEに信頼を置いていることとなります。なお、インドでは、マイナンバーの交付の際の写真を政府の役人がすり替え、別人を’成り済ま’させるという事件も発生しているそうですが、行政システムにLINEを介在させますと、こうしたリスクも高くなりましょう。

以上に述べた諸点を考慮しますと、「マイポータル」におけるLINEとの提携はリスクのみ高く、日本国、並びに、日本国民にとりましてメリットがあるとは思えません。国家と国民の安全のために情報管理に責任を負う日本国政府は、LINEとの提携は見直すべきと思うのです。

 
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