万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカに見る政府による健康危機管理の危険性

2023年05月31日 11時57分18秒 | 統治制度論
 日本版CDCとされる「国立健康危機管理研究機構」については、科学技術分野における研究・開発機関ではなく、政府の政策を忠実に実行する政治機関化するリスクがあります。しかも、その名称が示すように、新型コロナウイルス感染症への対応が不十分であったことを踏まえ、迅速な公衆衛生危機への対応を実現することを目的としながら、政治家である厚生相が6年という中期目標を作成するという矛盾もあります。緊急時における厚労相の命令権に関する規定は見られるものの、予めパンデミックを起こすウイルスや細菌を知ることはできないはずですので、何故、中期目標を設定する必要があるのか、自ずと疑問も沸いてくるのです。突然に地球上に出現し、瞬く間に全世界にパンデミックを起こすような未知の病原体に対して、予め即応できるような予防や治療の研究開発ができるとは思えないからです。

 そこで推測されるのは、同機構は、政府が説明するように国民の健康危機管理を目的としているのではなく、隠された目的があるのではないか、ということです。おそらくそれは、日本国政府が掲げているムーンショット計画、あるいは、世界経済フォーラムが進めている「グレートリセット」なのかもしれません。‘長期目標’もしくは‘最終目標’が存在しているからこそ、中間地点としての‘中期目標’が設けられていると推測されるのです。

 この疑いは、日本版CDCの設立が、アメリカのバイデン民主党政権からの要請であった点において強まります。新型コロナウイルス(Covid19)については、武漢ウイルス研究所から流出したとする説が有力であり、同研究所には、オバマ政権下にあってアメリカから資金が提供されていました。資金提供の経路は、アンソニー・ファウチ氏が所長を勤めていた国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が感染症研究を専門とする非営利団体「エコヘルス・アライアンス」に業務委託したところ、同団体が、武漢ウイルス研究所と共同でコウモリを宿主とするコロナウイルスの機能獲得実験を実施していたというものです。委託事業の研究成果についてはファウチ所長への報告は義務づけられていたでしょうから、同氏は武漢での研究内容を知っていたはずなのです(同氏は、2021年5月に開かれた公聴会で資金提供の事実を否定したため、偽証罪を問う声もある・・・)。

 就任早々、バイデン大統領は、巨額のワクチン利権を有するビル・ゲイツ氏が主要出資者であり、世界権力との癒着が指摘されているWHOとの関係を改善しています(トランプ前大統領はWHOからの脱退を表明・・・)。また、同大統領は、ファウチ氏を「首席医療顧問」に任命し、コロナ対策の陣頭指揮をとらせています。バイデン政権下の米国にあっては、ワクチン接種が推進され、国際的なワクチン供給の枠組みであるCOVAXへの参加も表明されました。

 それでは、日本国の「国立健康危機管理研究機構」はどうでしょうか。同法案の第一条にあって「予防及び医療に係る国際協力に関し、調査、研究、分析及び技術の開発並びにこれらの業務に密接に関連する高度かつ専門的な医療の提供、人材の養成等を行う」と記されると共に、第23条には、業務の一つとして「予防及び医療に係る国際協力に関し、研究開発を行うこと。」を挙げています。これらの条文から、同機構も海外の研究機関との共同研究を実施できるものと解されます。

 また、厚労相は、同機構の中期目標の作成に際して諮問が義務づけられている「研究開発審議会」に「公衆衛生その他の分野の研究開発に関して高い識見を有する外国人」を任命できるとしています。審議会の委員長に就任できないことや委員総数の5分の1を超えてはならいとする制約が付されつつも、外国人が「国立健康危機管理研究機構」の目標設定に関わることができるのです(バイデン政権、否、世界権力の狙いはここにあるのかもしれない・・・)。

 加えて、同機構は、民間企業との連携をも視野に入れています。何故ならば、同法案の第24条では、同機構が‘成果活用事業者’に対して無償で支援する場合には、同社の株式あるいは新株予約権を取得・保有できるとされているからです。同条文は、日本国の出遅れが指摘されている研究成果の製品化やバイオ分野における起業促進を目的としているのでしょうが、上述したアメリカの「エコヘルス・アライアンス」のような団体への業務委託を介した中国等への技術流出、あるいは、特定の医療・医薬品メーカーとの癒着や利益誘導が生じるリスクともなりましょう。そしてテクノロジーの官民を問わないグローバルな拡散や人材交流は、世界権力に対して人類支配のための基盤を与えるかもしれないのです。

 コロナ禍にあっては、ロックダウンを実施した諸国も多く、また、ワクチン・パスポート構想の下でのワクチン接種も半ば強制的に進められました。今日でも、マイナンバーと保険証との一元化の真の目的は、政府による国民の身体・健康に関するデジタル管理なのではないとする指摘があります。本日、同法案は参議院にて可決成立しましたが、点と点が繋がって線となるとき、そこに現れるのは、国民本位とはほど遠い人類支配のシステムなのかもしれないと危惧するのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本版CDCは政府の‘手下’?-「国立健康危機管理研究機構」に独立性を

2023年05月30日 12時20分20秒 | 統治制度論
 今般、日本版CDCとして設立が予定されている「国立健康危機管理研究機構」については、コロナ禍の経験から公衆衛生上の危機に際しての新たな‘司令塔’の設立として解説するメディアも少なくありません。同機構が国立感染症研究所と国立国際医療研究センターとの統合による設立が同見解の背景にあるのでしょうが、‘司令塔’については、既に本年4月21日に「内閣感染症危機管理統括庁を内閣官房に新設する改正内閣法」が成立しております。むしろ、同庁と国立健康危機管理研究機構との関係が不明な点が問題視されているのですが、両法案とも、政府への権限の集中が図られた点では共通しています。そして、ここに、政府主導の感染症対策は望ましいのか、という問題が提起されることとなりましょう。

 そもそも、モデルとされるアメリカのCDCに極めて政治色の強い機関です。同機構の所長は、議会の承認を得る必要のない大統領による任命であり、政治的任命であるために、大統領は何時でも職を解くこともできます。それでは、日本国の「国立健康危機管理研究機構」はどうでしょうか。同法の第11条には、「理事長及び監事は、厚生労働大臣が任命する。」とあります。また、副理事並びに理事は、厚生労働大臣の許可を受けて理事が任命しますので、同機構の人事の流れは、首相⇒厚生労働大臣⇒理事長・監事⇒副理事・理事となり、首相をトップとするトップ・ダウン型となることが予測されるのです。言い換えますと、人事権を見る限り、同機構は、政府(政治サイド)の下部組織として位置づけられていると言えましょう。

 また、任期についても、特別の措置もとられています。何故ならば、理事長の任期は「中期目標の期間の末日」、即ち、原則6年とはされているのですが、より適した人を任命するために厚労相が必要と認めた場合には、3年に短縮できるとしているからです。‘適任者’の判断は政府に任されますので、同規定も政府の人事権を強めているのです。こうした任期の延長や短縮に関する権限を用いた独立的組織の従属化は、凡そ3年前に問題となった検察法改正問題を思い起こさせます。検察法については任期の3年延長という‘飴’が問題視されたのですが、今般の法案では、任期短縮という‘鞭’を政府が握っているのです。

 こうした同機構の人事手続きを見る限り、理事長には、政府に対して批判的であったり、国民の生命や健康ために抵抗するような人が選任されるはずはありません。政府の方針や諸政策において、如何に医科学的な見地から合理的な疑問や倫理上の問題があったとしても、それに目を瞑ることができる人のみが任免されることでしょう。今般のコロナ禍にありましても、初期段階からコロナ・ワクチンには重大な健康被害の懸念が指摘されていながら、政府が注意を喚起すべきマイナス情報を国民に伏せたために、国民の命や健康が軽視されました。同法によってさらに権限が政府に集中しますと、国民が置かれている状況はさらに悪化することでしょう。

 かくして、新設される同機構は、政府が決定した政策を忠実に実行する下部組織に過ぎなくなることが予測されます。同法案に依れば、実際に、上述した中期目標を決定する権限も厚生労働大臣にあります(第27条)。言い換えますと、「国立健康危機管理研究機構」は、純粋に医科学的な観点から独自に調査や研究を行なうことはできず、常に政府の意向に従わざるを得なくなるのです。

 この状況は、極めて危険です。政府の暴走を止める制御装置もなく、科学的な客観性よりも政治的目的が優先されるのですから。コロナ禍に優るワクチン被害に鑑みれば、改正の方向性が逆であり、「国立健康危機管理研究機構」こそ、科学的な立場から政府に対する制御機能を担うべきなのではないでしょうか。つまり、公衆衛生の安全性の観点から、同機構の独立性こそ保障されるべきではないかと思うのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本版CDC法案が示唆する忍び寄るリスク

2023年05月29日 13時12分55秒 | 国際政治
 今月5月18日、日本版CDC法とも称される「国立健康危機管理研究機構」を設立する法案が衆議院を賛成多数で通過しました。自民、公明、日本維新の会、国民民主各党など、日本国内の凡そ全ての政党が同法案に迷わず賛成票を投じたのですが、同法案に対して慎重な審議を促したり、疑問を呈する政党が殆ど存在していない現状にはどこか空恐ろしさが感じられます。何故ならば、同法案には、幾つかの問題点が潜んでいるように思えるからです。

 先ずもって指摘すべきは、同機構の設立は、日本国に対するアメリカによる内政干渉ではないか、という疑問です。日本版CDCの設立は、昨年5月23日に同国のバイデン大統領が訪日した際に、日米首脳会談後の記者会見の席で同大統領の口から公表されています。新型コロナウイルス感染症への対策として、日本国自らが発案したのではなく、いわば‘外圧’による押しつけられた形となります。ところが、露骨なまでの強要にも拘わらず、与野党問わず、日本国の政党は揃って従順な‘イエス・マン’に徹しているのです。

 第2に挙げるべき疑問点は、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の設立経緯から見出すことができます。そもそも、アメリカのCDCとは、第二次世界大戦後にあって、戦争分野におけるマラリア対策(Malaria Control in War Area: MCWA)のプログラムを引き継いで設立された機構です。マラリアは、蚊を介して感染しますので、同センターのプログラムではDDTといった殺虫剤の大量散布などが行なわれていました(蚊については、かのビル・ゲイツ氏も強い関心を示している・・・)。因みに、DDTには、開発当初は人体に対しては安全な殺虫剤とされ、戦後、日本国でもシラミ対策として散布もされましたが(都市部では軍用機による空中散布も・・・)、後に毒性が判明したことで多くの諸国で禁止されることになったという経緯があります。CDCは、その出発点からして戦争との関連性が見られるのです。

 もっとも、今日、CDCは、マラリアのみならず、ペストなど様々な感染症に活動領域が拡大すると共に、中心的な研究分野も、害虫駆除から医療やバイオテクノロジーに移っています。しかしながら、同センターは、その本質において感染症の研究に留まらず、MCWAから実践的な感染症対策を伴うという側面を引き継いでいます。今日、日本版CDC法案の成立に日本国民の多くが漠然とした不安感を覚えるのも、感染症対策の手段としてワクチン接種等が強制される事態が懸念されるからなのでしょう。実際に、同法案の第23条では、「国立健康危機管理研究機構」は、医療の提供(二)も、研究開発の成果の普及や政策提言(一一)もできるとされています。

 なお、CDCは軍事分野に始まったためか、同センターは、生物兵器に利用される可能性のある病原体について格付けを行なっています。最も危険なカテゴリーAとしては、は炭疽菌、ペスト菌、ボツリヌス菌、野兎病菌、天然痘ウイルス、各種出血熱ウイルスなどが挙げられています。CDCも含めてサル痘のリスクが警告されている中、天然痘ウイルスを保管しているのはロシア国立ウイルス学・生物工学研究センターとアメリカのCDCのみとされところも、どこか気に掛かります。

 ウイルスや細菌の研究は、人々の命を救うという天使の顔と生物兵器に使う、あるいは、マッチポンプ式のビジネスに悪用するといった悪魔の顔の両面を持ち得るのですが、CDCは、ウイルス研究機関としてバイオセーフティーレベル4(BSL4)の研究施設を備えています。BSL4は武漢ウイルス研究所でその危険性と存在が知られるようになりましたが、同法案によって「国立健康危機管理研究機構」に吸収される国立感染症研究所も、レベル4の研究施設です。新型コロナウイルスの流出が疑われている武漢でのウイルス研究にはアメリカが出資していたとする説やウクライナにも同様のバイオ研究所があったとする指摘もあり、全世界のウイルス研究は、世界権力のコントロール下に置かれているのかもしれません。この問題は、アメリカ、並びに、CDCの信頼性に深く関わるのですが、コロナ・ワクチンの健康被害を考慮しますと、日本国内でも悪魔が顔を覗かせるリスクが皆無なわけではありません。

 第3に指摘し得るのは、金融財閥の利権との関係です。MCWAが設立された第二次世界大戦当時、マラリアの撲滅については、国際連盟並びにロックフェラー財団が積極的に後押していたそうです。日本版CDCとなる「国立健康危機管理研究機構」の設立に際しても、バイデン大統領のさらに背後には、グローバルな医療・製薬利権の‘親玉’としての世界権力の意向が働いていたとも推測されます。因みに、「国立健康危機管理研究機構」は公益法人でありながら、どうしたわけか全額政府出資の資本金を有しており、この株式会社風の組織形態にも謎があります(民営化可能な形態?)。

 以上にCDCとの関係から「国立健康危機管理研究機構」の新設に際して懸念される問題点について述べてきたのですが、国民の命に直接的に関わるような重要法案でありながら、日本国の政界のあまりの無反応あるいは思考停止ぶりに、国民のあずかり知らぬところで何者かの思惑が蠢いているように思えてならないのです(つづく)。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中小国が戦争ができない時代の最大の戦争リスクとは

2023年05月26日 11時00分00秒 | 国際政治
 核拡散防止条約に基づくNPT体制にあって、核を保有している国は、(1)1966年までの間に核実験に成功した国、(2)同条約に未加盟の国、並びに、(3)同条約からの脱退を一方的に宣言した国の凡そ三者に分けることができます。(1)がアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の五カ国、(2)がインド、パキスタン、イスラエルとなり、そして(3)のケースは北朝鮮となります。

 時限的条件の充足により核保有国となった諸国は、国連安保理常任理事国と重なるため、核保有国=安保理常任理事国=国際秩序の擁護者というイメージがあります。実際に、核兵器国に不拡散に関する義務を負わせているため、同条約の作成に際しては、合法的な核保有国とは、国連憲章において国際社会の平和を維持する責務を負う軍事大国、即ち、安保理常任理事国であるべき、とする暗黙の合意があったのかもしれません。しかしながら、敢えて条文に核兵器国の条件として安保理常任理事国の資格を明記しなかったのには、何らかの思惑が隠されていたとも推測されます(核開発に遅れをとっていた中国やイスラエル等への配慮?)。

 何れにしましても、NPT体制の目的は、核兵器の中小諸国への不拡散にあります。とは申しますものの、軍事大国には核保有が許されて、中小諸国には許さない、とする基本的なスタンスの背景には、‘理性的な秩序や平和に対する意識の低い中小諸国に核を持たせては‘危ない’、‘何をしでかすか分からない’といった一種の蔑視や偏見が潜んでいたことには否めないように思えます。かくして核の拡散は危険とする認識が固定化される一方で、NPTの成立から凡そ半世紀が過ぎた今日、人類を世界大戦の戦渦に巻き込んできたのは、国際の平和に対して責務を担ってきたはずの大国を操る世界権力であったとする認識が急速に広がっているように思えます。そもそも、現代という時代にあっては、中小諸国は最早戦争はできないのですから。

 中小諸国が戦争ができない理由は、先ずもって莫大なコストがかかるからです。それは、兵器の価格を見れば一目瞭然です。ミサイル発射の単価は億単位であり、海上自衛隊に装備されているSM-3迎撃ミサイルに至っては凡そ20億円ともされます。高額な兵器価格は、財力に乏しい中小諸国には戦争継続能力がないに等しいことを意味します。仮に、隣国との地域的紛争であれ、中小諸国が戦争に訴えれば、ローテク戦争ではない限り、数ヶ月を経ずして軍資金が底をつき、国家破産してしまうのです。

 戦争による財政破綻の時期は、軍事大国からの兵器輸入によりさらに早まります。ハイテク兵器が戦争の勝敗を決する今日では、中小諸国の大多数がハイテク兵器開発能力に欠けていますので、戦いで勝利を収めるには相手国よりも高性能の武器を手に入れざるを得ません。このため、双方共に、高額の先端兵器を軍事大国から競うように輸入しようとすることでしょう。そして、その末路は容易に予測できます。国家破産が早まるのみならず、戦争当事国の双方が、ハイテク兵器の凄まじい破壊力によって国土が焦土と化し、多くの国民の命も失われることでしょう。あるいは、たとえ戦勝国とはなっても、戦後、長期に亘って戦争債務の返済に苦しむことになります。ウクライナが戦争を継続できるのは、NATOとの代理戦争の側面があるために日本国を含めた多額の資金援助があり、しかも、それは、世界権力によるシナリオの一部であるからなのでしょう(ウクライナは特別な国・・・)。

 その一方で、軍事大国は、巨大な軍需産業を抱える故に、戦争はビジネスの好機となります。この側面は、ロスチャイルド家がワーテルローの戦いに関する情報操作で巨万の富を手にしたように、戦時国債の引き受けや戦争関連株への投資によって金融・経済財閥が戦争利権を掌握するようになった近代戦争の特徴の一つとも言えるかもしれません。そして、ロバート・ケネディJr氏が指摘しているように、アメリカが戦争を引き起こすために秘密裏に工作活動を続けてきた理由も、莫大な戦争利権にあるのでしょう。今般のウクライナ紛争では、西側マスメディアはロシアの脅威のみを強調していますが、戦争によって利益を得る国は、ロシアであれ、アメリカであれ、何れも軍事大国なのです。そして、急速な軍拡によって兵器産業を育て、かつ、台湾の武力併合を公言する中国もまた、軍事大国にして戦争利得国家の一国と言えましょう。

 経済力並びに軍事テクノロジーの格差から戦争という選択肢が中小国からほぼ消えた今日、これらの諸国が直面している最大の危機とは、世界権力の傀儡と化している軍事大国によって戦争に引き込まれるリスクなのではないでしょうか。中小国にとっては、中小国相互の紛争が発生するリスクよりも、軍事大国によって戦争利権の犠牲に供されるリスクの方が遥かに高いのです。良識的な弱者による暴虐な強者の制御は、人類が抱えてきた難しい課題でもあります。

 こうした危機は、軍事大国に対して中小諸国が何らの効果的な抑止力を有していない現状に由来しています。この点に鑑みますと、NPT体制は、「核なき平和」の理想視するあまりに、むしろ中小諸国から対軍事大国の抑止力を合法的に奪い、国際社会の安定と安全を損ねているように思えます。軍事大国が、非核兵器国である中小諸国に対して「核なき世界」をアピールするほど、世界権力による戦争誘発工作を隠すための偽善的な策略なのではないかと疑うのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本国のNATO加盟の行方

2023年05月25日 10時53分05秒 | 国際政治
 日本国のNATOとの連携強化は、日本国民のみならず、人類全体の運命を左右する問題でもあります。何故ならば、仮に、近い将来、日本国がNATOに加盟すれば、地域的紛争が瞬く間に第三次世界大戦に発展してしまうからです。北大西洋条約の第5条では集団的自衛権の行使が認められており、ヨーロッパにおいてNATO加盟国の一国でも他国から攻撃を受けることにでもなれば、戦火は法的参戦義務を負う日本国にも飛び火することは言うまでもありません。偶発的であれ、ウクライナ紛争にあって、ロシアがNATO加盟国の一国を攻撃する事態となれば、日本国もロシアと戦わざるを得なくなるのです。ユーラシア大陸の西方で発生した戦争は、一瞬にして東方にまで広がるのです。

 G7広島サミットについては、NATOとの結束強化を以て評価する声も少なくありません。中には、戦争を機としてロシアから北方領土を武力で奪い返すチャンスとみる意見も見受けられます。プーチン大統領は、北方領土を第二次世界大戦の‘戦利品’と見なしていますので、日本国が第三次世界大戦の戦勝国となれば取り戻せる、という主張です。武力奪回論者からしますと、むしろ、日ロ開戦による第三次世界大戦への拡大は望ましい、ということになりましょう。

 しかしながら、北方領土武力奪回論をはじめとした好戦的な主張、国民の大多数が賛意を示す一般的な世論と言えるものなのでしょうか。広島サミットの国際イベントとしての華やかさや「核なき平和」に向けたパフォーマンスに惑わされた国民も少なくないのでしょうか、現実問題としてロシアとの戦争を望む国民は少なくないはずです。何と申しましても、ウクライナの現状が、現代の戦争というものの悲惨さを物語っているからです。ドローンによる都市空爆、住民虐殺、インフラの破壊、子供の強制連行のみならず、徴兵制まで敷かれることになるのですから。

 しかも、NATO陣営の結束強化の反作用とも言えるロシア・中国間の陣営形成は、台湾有事をも招きかねません。となりますと、第三次世界大戦は、NATO陣営対中ロ陣営の対立構図となりましょう。そして、日本国は、両国から壮絶なるミサイル攻撃を受けるリスクも格段に高まるのです(米軍側が作成したとされる台湾有事のシュミュレーションでは、日本国並びに自衛隊の役割は‘捨て石’に近い・・・)。

 政府やメディアが解説するカバー・ストーリーはともかくとして、第三次世界大戦を裏から巧みに手引きしているのは、おそらく、特定の金融・経済財閥を中核とする世界権力なのでしょう。この極めて蓋然性の高い推測からしますと、戦争による北方領土の奪還は、日本国をNATOに引き込むために置かれたいわば‘餌’なのかもしれません。‘NATOと共に対ロ戦争に参加すれば、日本国も領土を回復できますよ’という・・・。目の前のうっかりと‘餌’に飛びつきますと、たとえ最終的に戦勝国となれたとしても、老若何女を問わず多くの国民の尊い命が失われ、国土は不可逆的な破壊を受けることとなりましょう。

 岸田首相もNATO諸国も、‘ロシアは侵略国家’の一点張りで戦争を正当化しようとしていますが、日本国民並びに人類は、大がかりな舞台装置によって世界権力に騙されてきた歴史を教訓とすべきです。明治維新以来、日本国はあらゆる面においてヨーロッパに憧れ、先進的な文明の地として追従する傾向にありましたが、今日のヨーロッパは既に変質しておりますし、世界権力の本拠地でもありました(ロスチャイルド家はフランクフルトのゲッターから世界へ・・・)。日本国は民主主義国家なのですから、今度ばかりは政府による戦争誘導から逃れるべく(NATOに正式に加盟しなくとも、ロシアに敵国認定されるリスクも高まる・・・)、国民こそが冷静に‘その先’を見通し、マスメディアの扇動に踊らされることなく賢明なる判断に努めるべきではないかと思うのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

‘虐め問題’は国際社会にも-日本国は虐め被害国?

2023年05月24日 12時04分16秒 | 国際政治

 本日の現代ビジネスのWeb版に、興味深い記事が掲載されておりました。それは、「なぜ日本の学校から「いじめ」がなくならないのか…たった2つの「シンプルかつ納得の理由」」というタイトルの記事です。同記事で指摘している虐めが蔓延る原因、考えてもみますと、日本国内の学校のみならず、国際社会にも当てはまるのではないかと思うのです。

 同記事では、虐めが蔓延する理由について以下の二つの点を挙げています。

「(1)市民社会のまっとうな秩序から遮断した閉鎖空間に閉じこめ、
(2)逃げることができず、ちょうどよい具合に対人距離を調整できないようにして、強制的にベタベタさせる生活環境が、いじめを蔓延させ、エスカレートさせる。」

 国際社会の現状を具に観察しますと、学校現場との共通点が見えてきます。国際社会もまた、学校と同様に、一般的な社会とは‘遮断’された存在です。国家によって構成される国際社会は、誰もが簡単に出入りできる場所ではなく、閉鎖空間と言っても過言ではありません。また、国内では、民主的な制度も司法行政制度も一先ずは整っており、常識や良識を基盤とする市民社会が成立しています(もっとも、良識的な市民社会が崩壊している国もありますが・・・)。一方、国際社会では、ウクライナ紛争等によって示されるように、未だに力を解決手段とする状況が続いています。国際社会もまた、‘まっとうな秩序’から遮断され、閉鎖空間に閉じ込められているのです。

 そして、国際社会もまた、適切に国家間関係を調整できず、親密性を強制される傾向にあります。先ずもって国際社会では、国連憲章も謳うように、平和の名の下で国家間にあって友好関係を築くように強く要請されています。このため、何れの諸国の対外政策も、建前としては全ての諸国との全方位的な友好を掲げています。しかしながら、実際には、国家間の関係強化が、むしろ摩擦や対立を生む原因となる場合が少なくありません。日中関係も見ても日韓関係を見ても、一定の距離があった時代の方が、むしろ双方共に相手国に対して好意的であったかもしれません。グローバリズムの流れにあって国境が低くなり、外部からの移民や資本の流入が増えるほどに、国民の警戒心や対抗心、あるいは、支配欲や防御意識が刺激され、虐め問題が、双方の力関係に沿って‘現代の植民地化問題’や‘差別問題’として噴出してくるのです。
 
 こうした国家間における密室における密な関係は、表向きの友好国間においても‘虐め’の原因となります。軍事的同盟国ともなれば、有事に際しては一蓮托生の関係となり、否が応でも関係性を深めざるを得なくなるからです。しかも、同盟相手国に自国の安全を依存している場合、虐めの傾向に拍車がかかることとなりましょう。今日の日米関係を見ますと、日米合同会議の存在やエマニュエル駐日大使の内政干渉によって表面化したように、アメリカから無理難題が押しつけられることも少なくないのです。学校でも、表向きは仲の良いグループの一員に見えながら、グループ内で虐めを受けるメンバーが見られますが、日本国とは、まさにこの立場にあるのかもしれません。

 また、学校でも、虐めの主犯格となる不良グループの‘ボス’が、調べてみると校外に存在しているケースもあるそうです(あるいは、虐めを黙認する’先生’かもしれない・・・)。国際社会にありましても、今日、アメリカをも手下とし、同社会全体を仕切っているのは、全世界にネットワークを張り巡らしている特定の金融・経済財閥、即ち、世界権力とする見方が有力です。この場合にも、日本国は、虐めの対象となります。ウクライナや台湾等で戦争を起こす一方で、投資先のアメリカ等の巨大軍需産業を擁する諸国にはIT・AI兵器を含む武器を大量生産・開発させ、日本国には戦後復興のプロセスで利益を得るために復興費用を負担させる、といったように、各国に対して役割を割り振るのです。

 この構図では、「パシリ役」の岸田首相の役割は、‘ボス’の命令に忠実に従い、日本国民から‘巻き上げる’ことです。学校でも、驚くべき額の恐喝事件がおきているそうですので、もはや‘虐め’というよりも犯罪です。ウクライナの復興支援のための費用も、日本国には、一切、それを拠出する法的な義務はありませんので、自発性を装わせたソフトな‘恐喝’とも言えましょう。加えて、台湾有事ともなれば、日本国も世界権力からそそのかされた中国から雨やあられのミサイル攻撃を受け、破滅的な損害を被るのですから、踏んだり蹴ったりとなりましょう。

 同記事では、虐め問題の解決策として、(1)‘市民社会のまっとうな秩序’での運営、並びに、(2)閉鎖社会における密な関係の強要をなくし、各自による対人距離の自由な調節を挙げています。国際社会もまた、各国の主権と独立性を尊重し、それぞれの国が自立的に他国と適切な距離を保つように調整し、かつ、暴力ではなく理性と良識に基づく秩序を確立しないことには、国際社会の‘虐め’もなくならないと思うのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

広島サミットは成功したのか

2023年05月23日 13時09分48秒 | 統治制度論
 今般の広島で開催されたG7サミットは、紛争当事国であるウクライナのゼレンスキー大統領が出席したことで、内外のメディアの注目を集めることとなりました。今月5月にも予定されていたウクライナ側の反転攻勢作戦を目前とした、同国への支援、陣営の結束強化、並びに、復興支援などが狙いともされていますが、同大統領をはじめ、メディアの多くは、同大統領が平和を訴えるためにはるばる広島まで足を運んだかのような報道をしております。

 確かに、ゼレンスキー大統領は、仲介役を買って出ているインドのモディ首相に自らの和平案への協力を求めたり、被爆地で戦争の悲惨さを訴えることで、平和の実現に向けた力強いメッセージを発信しています。しかしながら、同大統領の和平案の骨子は、ロシア軍の撤退並びにクリミア半島を含めた紛争以前の国境の回復ですので、あまりにもハードルが高すぎてロシアが応じるはずもない内容です。しかも、アメリカのバイデン政権がF16戦闘機の供与をNATO加盟諸国に認めたことからしましても、サミット後に待ち受けているのは、戦争の激化であることは疑いようもありません。

 戦争のエスカレートを前にしては、対ロ並びに対中結束の強化という成果も、それが、日本国が第三次世界大戦に巻き込まれるリスクの上昇を意味する以上、岸田政権の外交成果として手放しで評価できないはずです。ロシアが日本国を明確に敵国認定するのみならず、中国は既にG7広島サミットに対して不快感を示しており、台湾有事を誘発する可能性も否定はできなくなります。後世にあって2023年5月の広島サミットが重大な転換点であったとする認識が成立するとすれば、同サミットこそ、和平への道ではなく、世界大戦への道が選択された歴史的な分かれ道に位置していたかもしれないのですから。

ネット上の世論調査によりますと、広島サミットに対して肯定的な評価が多数を占めているようですが、何故、国民の多くが自国の参戦リスクの向上に目を向けていないのか、不思議でなりません。しかも、東日本震災からの復興も終わっていない中、ウクライナの復興に多額の予算を割かれる一方で、国内では増税並びに電気料金の値上げラッシュに見舞われる状況下にあります。ところが、ゼレンスキー大統領登場のサプライズ効果やメディアによるプロパガンダ的な礼賛報道によって、国民は、自らが置かれている現状を忘却させられているようなのです。冷静になって考えますと、日本国民にとりましても、人類にとりましても、戦争のエスカレーションとそれに伴う重税化は望ましい方向性ではないはずです。

日本国の歴史を振り返りますと、天下統一により戦国時代に幕を閉じた徳川家康を、平和をもたらした偉人として評価される向きもあります。今日の人類が、なおも武力による決着をもって平和とみなす考え方を‘良し’とするならば、戦国時代と何ら変わりはなく、そこには、人類の精神的な成長は見られないこととなりましょう(この論理に立脚すれば、中国等の暴力主義国家による世界征服も、「平和」の名のもとで正当化されてしまう・・・)。真に平和を目指すならば、広島サミットは、紛争当事国の一方に対する支援や陣営結束の強化の場とするよりも、ウクライナ紛争が第三次世界大戦に発展するリスクを如何に低減させ、かつ、停戦を含め平和裏にウクライナ紛争を解決する手段について議論すべきでした。あるいは、ロシアのプーチン大統領、あるいは、ICCが発付した逮捕状による逮捕の可能性が考慮されるならば同国の代表を招き、同国の立場や見解を聴取する、あるいは、ゼレンスキー大統領との会談の場をセッティングした方が、余程、岸田政権の外交成果として内外から高く評価されたことでしょう。

こうした平和的解決に関する努力が微塵も見られないことこそ、ゼレンスキー大統領の平和の訴えがメディア向けのパフォーマンスに見え、G7諸国首脳による「核なき世界」のアピールも偽善にしか聞こえないのかもしれません。そして、実際に、世界経済フォーラムをフロントとする世界権力の実在性が露わとなった今日、全ては演出された茶番であるかもしれないのです。岸田首相は、広島サミットの勢いで解散総選挙に打って出るとの憶測もありますが、同サミットの開催には、日本国の岸田政権長期化、即ち、日本国の全面的なコントールの目的もあったのではないかと疑うのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

広島サミットが明かす国際社会の欺瞞

2023年05月22日 12時08分05秒 | 国際政治
 G7サミットの広島開催が決定して以来、日本国の岸田首相は、同サミットが歴史的なイベントとして記憶されるよう、演出には余念がなかったようです。広島が被爆地と言うこともあり、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン 」によって「核なき世界」に向けた力強いメッセージを発すると共に、ウクライナのゼレンスキー大統領まで参加したのですから。主役のはずの岸田首相の影も薄くなってしまったのですが、もちろん、同イベントの脚本家は、アメリカ、あるいは、その背後にG7を操る世界権力であったのでしょう。日本国政府が、独自の判断で紛争当事国のトップを招けるはずもなく、フランス政府専用機での到着も既にお膳立てができていた証しとも言えます。ゼレンスキー大統領の突然のサプライズ訪日は、内外に一定のインパクトを与えたのですが、この訪問、改めて国際社会の欺瞞を見せつけてしまったようにも思えるのです。

 メディアの反応を見ますと、広島サミットに対する欺瞞であるとする指摘は、原爆を投下し、かつ、今日なおも核兵器保有国であるアメリカ、並びに、同国が核の傘を提供している日本国を含めた同盟国の態度に向けられています。核兵器を保有、あるいは、同兵器に依存している諸国が、「核なき世界」を積極的にアピースルしていのは、確かに自己矛盾の極みです。‘「核なき世界」を目指すならば、真っ先に核大国であるアメリカが範を示して同兵器を放棄すべき’というのが、主たる批判点となるのです。

 しかしながら、同批判に対しては、ロシアや中国による核の脅威の存在が合理的な‘言い訳’として準備されています。この弁明は、核の攻撃力に対しては核の抑止力をもってしか対抗できない、とする力学的な均衡理論に立脚しています(構造力学では、相反する力が釣り合わなければ安定しない・・・)。理想は現実の前には屈せざるを得ないのは致し方がなく、中ロや北朝鮮といった核保有国が同兵器を放棄するまでは、アメリカ、イギリス、並びにフランスも核兵器を保有し続けることが正当化されるのです。

もっとも、こうした核保有正当化論にも欺瞞があります。何故ならば、核兵器国は、同論理を中小の軍事小国である非核兵器国が用いることを、決して認めようとはしないからです。ウクライナが「ブダベスト覚書」による核放棄によりロシアの軍事介入を受け、最貧国である北朝鮮が核保有によってアメリカからの攻撃を免れ、印パ戦争が抑制され、そして、イギリスやフランス並びにイスラエルが核の抑止力を以て自国の安全を確かにしているならば、NPTに基づいて非核保有国となった諸国にも、均衡論に基づく核の抑止力を認めるのが、論理的にも力学的にも正しいこととなりましょう。抑止力としての相互確証破壊の論理は、核兵器が凄まじい破壊力を有する故に、大国と小国との間でも成り立つからです。

 そして、何よりも唖然とさせられる欺瞞は、ゼレンスキー大統領が、敢えて「核なき世界」をアピールした広島サミットに姿を現わしたことです。ウクライナ紛争にあって戦渦に見舞われている国を代表して、被爆地で開催され、かつ、注目度が高いサミットの場で平和を訴え、合わせて同国への支援を取り付けるのが、同大統領の狙いであったのでしょう。しかしながら、ここで、同大統領の政策判断に対する疑問が沸いてきます。

 それは、戦争当事国である以上、核保有は当然の行為ではないか、というものです。NPT条約の第10条が脱退条件として定めている「・・・異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認められる場合」とは、戦時をおいて他にはないはずです。ましてや、ウクライナは、ロシアを侵略国、即ち、国際犯罪国家として見なしているのですから、NPTからの脱退に躊躇する必要もありませんし、他の諸国もこれを認めざるを得ないはずなのです。ウクライナの一般国民の命を守るためにも核保有は、合理的な選択肢であるにもかかわらず、広島サミットに出席することで、ゼレンスキー大統領は、自ら同選択肢を封じているのです。

 ゼレンスキー大統領の行動については、ロシアによる核使用を牽制するためとする見方もありましょう。保有はしても使ってはならないとする‘不使用’を強調する論法です。しかしながら、ロシアによる核使用のリスクをウクライナの核武装によって劇的に低下させることができるならば、後者の判断の方が政治的にも軍事的にも合理的です。あるいは、同大統領は、核放棄を断念する見返りに、G7諸国に対して多大な軍事支援を求めているのかもしれません。このシナリオですと、アメリカや世界権力とは戦争利権において利害が一致します。何故ならば、通常戦力による戦闘が徒に長引くからです。実際に、広島サミットに際して、バイデン政権は、NATO加盟のヨーロッパ諸国が、F16戦闘機のウクライナへの供与を決定した場合、これを認めるとしました(予定されていたウクライナ側の反転攻勢による戦闘の一層の激化が予測される・・・)。たとえ交渉戦術であったとしても、戦闘の長期化によりウクライナの戦争被害も拡大するのですから、ゼレンスキー大統領は、国民の命を軽視しているようにも見えるのです。

 たとえ演説においてヒロイックで感動を呼ぶような言葉を並べても、セレンスキー大統領の政治的判断を見ますと、真剣味にも合理性にも欠けているように思えます。そして、こうした紛争当事国の不可解で非合理的な行動は、否が応でもウクライナ紛争そのものに対する疑いを深めるのです。結局は、軍事大国による核の独占状態を保ちつつ、各国政府を裏からコントロールする世界権力が、利益誘導と人類支配のために計画通りに戦争を引き起こしているのでは、という・・・。懐疑的な視点からしますと、広島サミットも、シナリオに予め描き込まれた一つのシーンに過ぎないかもしれないと思うのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米軍撤退後の安全保障とは?

2023年05月19日 09時49分30秒 | 国際政治
 次期アメリカ大統領選挙にあって台風の目となるのは、良きにつけ、悪しきにつけ民主党のロバート・ケネディJr氏であるのかもしれません。その理由は、民主党員でありながら、最有力とされる共和党のトランプ前大統領と足並みを揃えるかのように、全世界からの米軍撤退を主張しているからです。ロバート・ケネディJr氏が民主党の統一候補に選出されるかどうかは定かではありませんが、共和党と民主党の両候補が共に同方向を目指すとしますと、どちらが当選したとしても、第二次世界大戦後に成立した戦後体制は、大きな転換期を迎えることとなります。

 それでは、全世界の諸国から米軍が撤退するとしますと、その後の国際社会は、どのような方向に変化を遂げてゆくのでしょうか。理想とすべきは、国際社会にあって法の支配の原則が確立し、主権平等、民族自決(国民による自己決定)、並びに内政不干渉の原則がゆき亘り、国際法の下で平和が保たれている状態となりましょう。既に18世紀末にカントが『永遠平和のために』において示唆したように、全ての国家が民主主義体制へと移行すれば、戦争が起きるリスクはさらに著しく低下します。何れの国の国民も、戦争を望まないからです。

 これと同時に、国際の平和を制度的に支える仕組みの構築も進める必要があります。例えば、国連も、それが存続しているとすれば、法の執行機関、即ち、警察的な役割を担うのみとなり、万が一にも戦争が起きた場合、兵力を引き離したり、民間人を保護したり、停戦状態を維持したり、あるいは、判決内容の強制漆黒を担うなど、平和のための秩序維持的な活動が中心となることでしょう(新しい組織を結成するという選択肢も・・・)。そして何よりも、司法解決であれ(法律問題)、和解であれ(政治問題)、武力を使わなくしてあらゆる紛争やトラブルを平和裏に解決し得る仕組みこそ不可欠です。力を主たる解決手段とする時代に幕を下ろさないことには、人類は、戦争から逃れることができないのです。

 もっとも、理想的な状態に至るには、まだまだ高いハードルが待ち受けています。米軍の撤退が現実のものとなりますと、当然にロシアや中国等の暴力主義国家による‘侵略’が予測されるからです。米軍の撤退は、かろうじて保たれてきたアジアやヨーロッパにおける軍事バランスを一気に崩し、軍事力に優る国による近隣諸国に対する軍事行動を誘発しかねないのです。仮に、世界権力が全世界の全体主義かを狙っているとすれば、米軍撤退は好都合なシナリオなのでしょう。

 それでは、米軍の撤退後にあって、中ロ、あるいは、軍事強国による侵略の脅威に晒される諸国は、どのように対処すべきなのでしょうか。先ずもって検討されるのが、全ての諸国による核武装なのではないでしょうか。核兵器には、攻撃力のみならず、抑止力の効果があります。ウクライナ紛争にあっても、仮にブダベスト覚書等に基づいて同国が核を放棄しなければ、今般の悲劇は起きなかったのではないか、とする指摘もあります。核の相互抑止体制が整えば、軍事大国といえども迂闊に他国を侵略したり、無闇には軍事力を行使することはできませんので、核保有は、最も簡単で効果的な対応策なのです(NPTを終了させることで、即、実現・・・)。

 米軍の撤退については、アメリカとの軍事同盟の解消を意味するわけではなく、同盟国に提供されている‘核の傘’が消えるわけではない、とする反論もありましょう。しかしながら、ロバート・ケネディJr氏の主張は、‘軍隊は国を守るという本来の役割に戻るべき’というものですのですし、トランプ前大統領も‘アメリカ・ファースト’を旨としていますので、アメリカが核の報復を受けるリスクを負ってまで、同盟国のために自国の核を使用するとは思えません。言葉では約束していても、現実には核の傘が開かない可能性の方が遥かに高いのです。

 G7広島サミットは、本日5月19日より21日にかけて人類史上はじめて核爆弾が投下された広島にて開催されます。岸田文雄首相は広島が地盤と言うこともあり、同サミットを‘核なき世界’への取り組みを加速させる機会としたいようですが、ロシアによる核兵器の使用リスクが高まり、かつ、アメリカにあって米軍の役割の見直しを求める世論が主流となりつつある今日、同方針は、どこか現実離れしているように思えるのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

デジタル全体主義国家中国の現実

2023年05月18日 17時13分26秒 | 統治制度論
 監視カメラの設置や顔認証システムの導入に際しては、常々、犯罪対策として説明されています。犯行現場と瞬間をカメラが捉えていれば、確かに犯人を見つけることは容易となりますし、その存在だけで抑止効果も期待できます。犯罪とは、一般的には‘人が見ていないところ’で行なわれるものであるからです。このため、身の安全を願う多くの人々がこれらの監視システムの導入には賛意を示すのですが、犯罪防止という目的は、果たして実現するのでしょうか。

 他の諸国に先駆けてデジタル全体主義を実現した中国を見る限り、監視カメラや顔認証システムは、一党独裁体制の維持には貢献しても、治安の改善には然程には役立っていないように思えます。同国の犯罪組織に関する事情を紹介した記事を読みますと、むしろ、一般の人々の置かれている状況はさらに悪化していると言わざるをえません。何故ならば、今日の中国の犯罪組織の特徴は、政府や行政との癒着にあるからです。

 漢の祖である劉邦が若き日に無頼漢であったことはよく知られており、中国では、悪党であってもしばしば民衆の側に身を置くのが伝統的な反社会組織のあり方であったようなのです。反社会組織であるからこそ、容易に時の権力者に対する抵抗勢力ともなり得たのであり、圧政に苦しむ民衆もこうした集団に期待を寄せたのでしょう。ところが、現在の犯罪組織は権力の側に与しており、一般の市民が政府や行政に何かを訴えようものなら、反社会組織によって痛い目に遭わされてしまうと言うのです。

 この現象は、近年において報告されていますので、デジタル技術の全面的な導入が、中国国内の治安を大幅に改善し、国民の安全を護っているとは言いがたくなります。そもそも、国民の一人一人が当局によって常時監視され、あらゆる個人情報もデジタル化されている中国において、犯罪組織の存在が許されていること自体がおかしなお話なのです。このことからも、犯罪防止という国民監視システム整備の大義名分が、国民を騙す口実に過ぎないことが分かるのです。否、中国は、現状に対して不満を漏す‘国民の取締’のために民間の犯罪組織を暴力装置として温存し、これを裏から密かに使っているのかもしれません。表だって警察が国民を弾圧すれば、内外から批判を受けかねないからです。

 中国に見られる政府と犯罪組織との癒着は、中国国民のみならず、日本国をはじめとした他の諸国にとりましても脅威となります。2021年3月におけるマレーシアの警察署長による報告に依れば、「投資会社「雲尊集團(Winner Dynasty Group)」を隠れ蓑として高利貸業、詐欺、マネーロンダリング(資金洗浄)に従事するマレー系中国人の廖顺喜(Nicky Liow)」を摘発したところ、「中国共産党が主導する中国人民政治協商会議の構成員である」尹國駒(Wan Kuok Koi)容疑者との繋がりが判明してきたそうです。しかも、尹容疑者は「一帯一路政策の推進を表向きの顔として東南アジアの権力者層に属する人物を選別して違法行為に誘導したという犯罪歴」があり、中国共産党をバックとして国境を越えた犯罪ネットワークを広げていたというのですから驚かされます。

 日本国内でも、強盗殺人や特殊詐欺を含む各種詐欺など、中国人または中国系犯罪組織による事件が多発しており、中国の治安当局による取締の温さが日本国の治安を悪化させています。そして、福建省福州市並びに江蘇省南通市の二つの公安当局が東京都内に拠点を設けており、中国警察の海外拠点の存在は、同国の犯罪組織が構築した国際ネットワークが、そのまま中国が、自国の警察権を海外で行使する口実となりかねない現状を示しているのです。中国にあっては、共産党を介して警察と犯罪組織が裏で繋がっているとしますと、犯罪は、中国が日本国の国権を内部から侵食する手段であるのかもしれません。

 何れにしましても、中国の事例は、デジタル技術が悪しき政府に利用された場合の惨事を示しています。結局は、ITやAIといった先端技術によって治安が向上するどころか、犯罪組織はお目こぼしにする一方で、善良な一般の国民を徹底的な監視下に置く装置に堕しているのですから。目下、日本国政府によって積極的にデジタル化が推進されていますが、今日の中国は明日の日本国になりかねないのではないかと危惧するのです。

*米軍撤退問題のつづきにつきましては、明日、記事といたします

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロバート・ケネディJr候補の米軍撤退発言を推理する

2023年05月17日 13時17分44秒 | アメリカ
 2024年に予定されている次期大統領選虚を前にして、アメリカでは、既に熾烈な候補者争いが始まっているようです。現職が有利とは言え、バイデン大統領は高齢に加え、その政策運営にも党内での批判があり、必ずしもその立場が盤石にあるとは言い難い状況にあります。米NBCが公表した世論調査の結果では、回答者の70%がバイデン大統領の再選に対して否定的であったとされます。こうした中、民主党内で注目を集めているのは、ロバート・ケネディJr候補です。

 その名が示すように、ロバート・ケネディJr氏は、かの政治家一族ケネディ家に生まれ、暗殺に斃れたジョン・F・ケネディ氏の甥にしてロバート・ケネディ元司法長官の次男です。同氏が関心を集めている理由は、ケネディ家からの出馬というニュース性のみではありません。同氏への注目度の上昇は、同氏は、伝統的な民主党の基本方針、並びに、それを踏襲するバイデン政権とは真逆とも言うべき政策方針を示したことに依ります。例えば、半ば強制的なワクチン接種やワクチン後遺症についてもナチス的手法として批判しており、バイデン政権とは一線を画しているのです。そして、自らが大統領選挙に当選したならば、全世界から米軍基地を撤退させると言うのですから、驚かされます。

 この主張、共和党のドナルド・トランプ前大統領のものと見紛うばかりです。実際に、スティーブン・バノン氏はケネディ氏を共和党候補者として立候補すべきと主張していますし、同前大統領の政治顧問を務めたロジャー・ストーン氏も、トランプを大統領に、ロバート・ケネディJr氏を副大統領に据える正副大統領構想を明かしています。

米軍については、ロバート・ケネディJr氏は、「軍隊は国を守るという本来の役割に戻るべき。代理戦争をはじめとして、他国を空爆したり秘密工作をすることがあまりにも普通になってしまっている」とする踏み込んだ発言もしています。同発言からしますと、戦争を誘導するための‘秘密工作’がアメリカの手によって頻繁に行なわれていることとなり、いわば陰謀の実在性を認めたことになります。トランプ大統領の口から同様の発言があっても、多くの人々は話半分に聞いたかもしれませんが、政治の世界に精通している政治家一族、しかも、民主党員からの発言ともなりますと、その信憑性は否が応でも高まります。これまでトランプ前大統領を批判していた民主党員も立場がなくなってしまうことでしょう。それでは、何故、民主党員であるロバート・ケネディJr氏は、真っ向からバイデン政権と対峙したのでしょうか。

先ず考えられるのは、アメリカの世論が圧倒的にトランプ前大統領の方針を支持しており、ライバル政党から票を奪うために敢えて類似した政策を打ち出している、というものです。言い換えますと、民主党が自らの政権を維持するための偽装作戦と言うことになりましょう。現行のバイデン路線では次期大統領選挙には勝てないとする判断が、同氏をしてトランプ前大統領の持論とも言える米軍撤退を主張させたこととなりましょう。

第2の推測は、米軍撤退論は、ロバート・ケネディJr氏自身が自らの良心に誠実に従ってアメリカ国民の意を汲む、あるいは、米国民の世論を独自に分析した結果であった、というものです。同氏は、アメリカが超大国として牽引してきた戦後の国際体制の変換を目指し、アメリカ国民の負担を軽減すると共に、同国も他の諸国と同列となる新たな国際秩序を提案したのかもしれません。叔父のジョン・F・ケネディー大統領も父親のロバート・ケネディ元司法長官も凶弾に斃れており、命の危険を顧みずに自らの信じる道を貫こうとするのが、ケネディ家の人々の特徴であるのかもしれません。

そして、第3に推測されるのは、ロバート・ケネディJr氏の真の目的は、アメリカ国民ではなく、むしろディープ・ステート(世界権力)を護ることにあるというものです。何故ならば、同氏は、‘秘密工作’を実行している主体は、アメリカという国家であるとしているからです。この点については、ディープ・ステート論を唱えたトランプ前大統領とはいささかスタンスが違っているように思えます。ロバート・ケネディJr氏は、‘奥の院’とも表現されるディープ・ステート(世界権力)まで追及の手が及ばないように、アメリカに陰謀の罪を着せようとしているとも推測されます。

なお、この点に関連して注目されるのが、ロバート・ケネディJr氏のウクライナ紛争解決策です。同氏は、国境付近のロシア軍並びに核を搭載したミサイルを撤退させ、ウクライナの自由と独立を確保した後、同地帯には国連の平和維持軍をもって平和を保障すべきと述べています。トランプ前大統領は、国連をはじめとした国際機関については否定的な見解の持ち主でしたので、米ロによる首脳会談と言った国家間の外交を舞台とした解決を主張することでしょう。仮にロバート・ケネディJr氏が善意からウクライナ紛争からの撤退を主張しているならば、国際主義者としての民主党のポリシーを継承していることになりますし、ディープ・ステート(世界権力)の利益を慮っているならば、同勢力にコントロール下にあるとされる国連の権威や権限の強化に貢献しようとしているのかもしれません。

また、さらに穿った見方をすれば、同氏は、アメリカを超大国の座から降ろすことで、ロシア、あるいは、中国の優位性を高めようとしているとも考えられます。‘キング・メーカー’を自認するディープ・ステート(世界権力)は、未来の世界をロシアや中国に仕切らせ、自由や民主義といった価値観を葬り去りたいのかもしれないのです。

仮に、同氏が共和党に引き抜かれることなく民主党の候補のままに次期大統領選挙に臨むならば、トランプ候補対ロバート・ケネディJr氏の対決は、米軍撤退後の‘世界構想’をめぐる国家主義対国連主義の構図となる事態もあり得ましょう。何れにしましても、ロバート・ケネディJr氏の米軍撤退発言は、アメリカのみならず、国際社会が重大な転換点に差し掛かっていることを示しているように思えるのです(つづく)。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第三次世界大戦の責任は日本国に-岸田首相のタイム誌事件

2023年05月16日 15時30分39秒 | 国際政治
 先日、日本国の岸田文雄首相が、世界初のニュース雑誌として知られるアメリカの『タイム』誌の表紙を飾ることとなりました。本来であれば、海外トップ誌における日本国首相の華々しいデビューとなり、首相自身も誇らしく思うはずなのですが、内容が内容であるだけに、日本国内の反応は極めて厳しいものとなりました。首相の顔が如何にも悪巧みでもしているような悪人相に描かれている上に、「日本の選択」として、「岸田首相は数十年間の平和主義を捨て、日本を真の軍事力を持った国にすることを望んでいる」とする一文が添えられているのですから。

 同表紙を目にした読者の中には、第二次世界大戦時の日本国を思い出した人も少なくなかったはずです。戦後80年近くを経た今日、日本国が、再び軍事大国化の道を歩み始めたとする印象を与えるからです。台湾有事が取り沙汰されている今日の国際情勢からしますと、アメリカのメディアが、同盟国である日本国を‘悪者’かのように扱う理由はないはずです。日米同盟は、対中抑止並びに防衛の要と説明されています。不自然な出来事の裏には、得てして何らかの目的が隠されているものです。それでは、一体、『タイム』誌、あるいは、その背後にあってアメリカを含む全世界のメディアの手綱を握っている世界権力の狙いは、一体、何処にあるのでしょうか。

 第一に考えられる目的は、近い将来において予測される第三次世界大戦の責任を、日本国に負わせることです。ウクライナ紛争のみならず台湾有事についても、アメリカの民主党バイデン政権は、本心では開戦並びにこれを機とした第三次世界大戦への拡大を望んでいるのではないか、とする疑いが指摘されております。三度の世界大戦は、世界権力が、自らを全人類に対する‘支配者’の座に押し上げるステップともされているからです。これには、戦争利権、及び、デジタル全体主義やカーボンニュートラル化に伴う経済利権も絡んでいるのでしょうが、大多数の人類が平和を望みながら、この世には、戦争を渇望している勢力も存在しているのです。中国を好戦的な独裁国家に仕立て、鉄砲玉としての利用価値から北朝鮮の核保有や大陸弾道弾ミサイルの開発を許しているのも、世界権力なのでしょう。

 この目的を達成するためには、全世界の諸国を戦争に巻き込み、抵抗勢力となりそうな諸国民にダメージを与える必要があります。日本国民もまた世界権力から‘敵’認定されていますので、戦争への参加と戦争被害はシナリオに書き込み済みです。実際に、米軍が策定したとされる台湾有事のシミュレーションでは、同盟軍として自衛隊は重要な役割を果たします。そして、日中間のミサイル攻撃の応酬により、日本の国土がウクライナの如くに破壊され、多くの国民の命が失われることも織り込み済みなのかもしれません(日本国捨て石作戦・・・)。

 もっとも、バイデン政権が第三次世界大戦を引き起こしたとなりますと、モンロー主義の伝統も根強いアメリカでは、共和党支持者を中心に世論が強い反発を示すことが予測されます。そこで、あくまでも戦争の責任は台湾を武力で併合しようとした中国にあるとした上で、バイデン政権は、ウクライナ紛争と同様に、自由主義並びに民主主義を護るためにアメリカは台湾を支援するとするスタンスを採ることでしょう(しかも、アメリカでは台湾関係法、並びに、これに基づく台湾保証法も制定されている・・・)。同スタンスからすれば、中国を適役とすれば十分、ということになるのですが、仮に、上述したシナリオにおいて日本国を‘捨て石’にするならば、それなりの理由を要します。つまり、日本国は、‘捨て石にされても仕方のない国’でなければならないのです。

日本国捨て石作戦を前提としますと、『タイム』誌の表紙の意味も自ずと理解されます。同表紙によって、台湾有事から連鎖して第三次世界大戦が起き、日本国が壊滅的な被害を被ったとしても、その責任は軍事大国化の道を自ら選択した日本国にある、とする印象を読者に持たせることができるのですから。

 第二の目的は、中国をターゲットとした対日敵愾心の誘導です。バイデン民主党政権は、中国脅威、並びに、台湾危機を煽りつつも、どこか中国に対して手緩いところがあります。バイデン一家にはハンター・バイデン氏をはじめ中国利権に関する疑惑があり、表向きはともかくとしても、本心では対中関係を維持したいのかもしれません。一方、これまでのところ、中国もアメリカに対して敵意を剥き出しにする様子は見られません。第二次世界大戦時にあっては国民党政権下でありながらも共に連合国の一員であり、かつ、今なお経済的結びつきも強いアメリカに対しては、正面から本気で対峙したくはないのでしょう。言い換えますと、米中両国とも、日本国が‘敵’であるほうが好都合なのです。中国も、アメリカではなく日本国が相手であれば、第二次世界大戦に対する同国の‘歴史認識’に基づく報復感情も手伝って、躊躇なくミサイルを撃ち込むことでしょう。これを裏付けるかのように、4月28日には、中国の呉江浩駐日大使は、台湾有事に関連して「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言しています。

 このように推理しますと、『タイム』誌の表紙は意味深長です。おそらく、日本国政府は同社に対して抗議し、同社も変更に応じたそうですが、世界権力を後ろ盾としている岸田首相も、‘悪役’を引き受けることに同意しているのかもしれません。杞憂であればよいのですが、現状を観察しておりますと‘日本国捨て石作戦’の存在が強く示唆されていますので、今般の『タイム』誌の表紙は、図らずも日本国民に対して危機が迫りつつあることを知らせているように思えるのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エマニュエル駐日米大使とは何者なのか-LGBT法案が明かす正体

2023年05月15日 13時27分48秒 | 国際政治
 今日、グローバリズムの波は経済分野のみならず社会分野にまで及び、各国において同一の社会運動が起きています。LGBT差別反対運動もその一つであり、日本国内でもLGBT案の制定に向けて動きが活発化してきました。保守政党を名乗ってきた自民党でも、G7サミットの開幕までに間に合うよう、「LGBT理解増進法案」の国会提出のための党内手続きを完了させる予定です。ところが、自民党内の合同会議において、反対多数にも拘わらず幹部への一任で手続きを終了させたことから、党内のみならずネットなどでも批判の声が上がることとなったのです。

 国民に対する然したる説明もなく、かつ、LGBT法の制定に向けた与党自民党内の手続きがあまりにも強引であったために、LGBT法案の制定については、‘外圧説’が説得力を増すこととなりました。‘外圧説’とは、‘同法案の制定を日本国に強要しているのはアメリカである’というものです。その根拠として示されているのが、ラーム・イスラエル・エマニュエル駐日米大使の存在です。

 このように申しますのも、エマニュエル大使は、今月5月12日にLGBTなどの性的少数者の権利の擁護を訴える動画をツイッターで公開したからです。同動画には、イギリスやEUなど他の15人の在日大使たちがメッセージを寄せており、その中には、EUのパケ大使のように「差別は間違っている。防ぐには法律が必要だ」とするものもあったそうです。これでは、日本国は、LGBT法案の成立を迫る包囲網に取り囲まれてしまったかのようです。来るG7広島サミットとは、世界権力による世界支配の装置であるかのようです。

 それでは、アメリカのエマニュエル大使とは、どのような人物なのでしょうか。上述したフルネームが示すように、同大使は、ユダヤ系のアメリカ人です。父方の祖父がベッサラビア(現モルドバの一部)からイスラエルに移住したユダヤ人であり、イスラエル生まれの父親が後にアメリカのシカゴに移住し、この地で同じくユダヤ系の母親との間で生まれたのが、エマニュエル大使なのです。同大使は、生まれながらにしてユダヤ系ネットワークのメンバーであり、イスラエルの国籍をも有する二重国籍者です。しかも、父祖の地であるモルドバはウクライナの陸続きの隣国ですので、ユダヤ系ネットワークを介して同国のユダヤ人とも繋がっていることでしょう(ウクライナのゼレンスキー大統領もユダヤ系・・・)。

 アメリカでは、ユダヤ系の人々は一般的に民主党の支持者が多いのですが、エマニュエル大使も例外ではありません。リベラルな思想の持ち主であり、LGBTについても、同性婚を認めるように主張してきました。今般、同大使がことさらにLGBT運動に肩入れするのも、アメリカ民主党、あるいは、世界経済フォーラムに象徴される世界権力が推し進めるリベラリズムの表れなのでしょう。

 エマニュエル大使の経歴を見ますと、クリントン政権にあって選挙キャンペーンでの功績から大統領上級顧問を務めた後、一時的に投資銀行(Wasserstein Perella & Co.)に席を置いていた時期もありました。また、2000年には、クリントン大統領から連邦住宅金融抵当公庫の理事にも指名されており、2001年に辞任するまでの僅かの間に少なくとも30億( $320,000 )円以上の所得を得たとされます(この間、同公社ではスキャンダルに見舞われたものの、ブッシュ政権が理事会に関する再審査を拒否・・・)。こうした金融畑の職歴から、同大使と金融界との繋がりも伺えるのです。

 その後、2002年からイリノイ州の下院議員として政界に戻り、2009年1月には、オバマ政権下で大統領首席補佐官に就任します。そして、同大使の名をさらに広げたのが、シカゴ市長のポストです。エマニュエル大使は、シカゴ史上初めてのユダヤ人の市長となり、2011年5月から2019年5月までの8年間に亘り同職にありました。もっとも、シカゴ市長時代につきましては、必ずしも良い評判ばかりではありません。ラグアン・マクドナルド事件が起きたのも同大使の任期中のことでしたし、その他にも、様々な批判がありました。例えば、透明性の高い市政の実現を掲げながら、在職中に、ロビイスト、企業幹部、献金者並びに友人達との違法なやりとりをしたemailの公表を拒否するなど、その言行が一致しない不透明性が指摘されています。また、2012年には、「ウェルカム・シティ条例」を制定し、シカゴ市を事実上の移民歓迎の‘聖域都市’としました。
 
 以上にエマニュエル大使の経歴等について見てきましたが、昨今の日本国の政治は、まさに同大使の政策方針と一致していると言わざるを得ません。LGBT法のみならず、ウクライナへの異常なまでの肩入れ、政策の利権化、日本の‘移民都市’化、海外への公金のばらまきなどなど・・・。言い換えますと、エマニュエル大使は、在日大使と言うよりも、日本国を統治するために派遣されたエマニュエル総督の如きなのです(ユダヤ系ネットワークを考慮すれば、実際の派遣元はアメリカではなく世界権力では・・・)。

日米合同会議の存在も明るみに出る中、日本国は、独立性を疑わざるを得ない状況にあります。国際社会にあっては、内政不干渉は原則の一つであり、かつ、日本国は、サンフランシスコ講和条約において主権を回復しております。ウクライナ紛争に際しても、バイデン大統領は、自由主義国として民主主義を護る使命を力強くアピールしておりますが、日本国の民主主義が蔑ろにされ、日本国から公金が流出する現実を目の当たりにしますと、この言葉も虚しく響くのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ムーンショトット計画は‘世界同時革命’?

2023年05月12日 10時39分20秒 | 統治制度論
 世界同時革命とは、共産主義者が目指す全世界の諸国を赤色一色に塗り替える共産革命を意味する言葉です。レーニンが主導したロシア革命であれ、毛沢東の中華人民共和国の建国であれ、歴史上の共産主義革命は暴力を手段としましたので、世界同時革命とは、一般的には暴力革命の形で起きるものと見なされてきました。しかしながら、世界同時革命とは、必ずしも共産主義に限ったことではないように思えます。

 それでは、非暴力的手段による世界同時革命には、一体、どのようなケースがあるのでしょうか。現状を具に観察しておりますと、今日、世界経済フォーラムをはじめ、各国政府が進めているSociety 5.0こそ、まさしく非暴力的手段による世界同時革命と言えるかもしれません。何故ならば、ITやAIの技術をもって人類社会のあり方を一変させようとしているからです。そして、件のムーショット計画も同社会の実現に向けた政府の取り組みの一環であり、予算配分を受けた研究開発支援制度として理解されるのです。

 Society 5.0については、内閣府のホームページに詳しい説明が掲載さております。端的に表現すれば、‘サイバー空間とフィジカル空間が融合された社会’となります。図による説明も付されているのですが、説明図には、フィジカル空間で活動する個々の人々の情報が全てセンサー情報としてサイバー空間にあるビックデータに収集され、同空間に設けられているAIがこれらの情報を解析してフィジカル空間にフィードバックするという流れが、Society 5.0の基本的な仕組みとして描かれています。

 先ずもってここで注目すべきは、個々の情報はセンサーによって収集されている点です。言い換えますと、Society 5.0では、自発的に人々が自己に関する情報を提供するのではなく、フィジカル空間での人々の活動、発言、移動等に際して情報が自動的に収集され、それらが、サイバー空間のビッグデータに自動的に送られる仕組みを想定しているのです。おそらく、様々なアプリを介したスマホやパソコン情報、IOT搭載家電、顔認証システム、マイナンバーなど社会に張り巡らされた様々な端末や監視機器が、情報センサーの機能を担うのでしょう。

 政府の説明では、Society 5.0は、「経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」とされるのですが、サイバー空間には、ビッグデータを掌握するAIが君臨していますので、同社会が‘人間中心’となるはずもありません。実際に、説明図では、サイバー空間が上部に描かれており、フィジカルな空間は下部に置かれているのです。言い換えますと、AIと人との間には、指令を出す側とそれを受ける側という上下関係があるのです。両者の間のこの主従の関係性は、現在、話題となっているチャットGPTの構図とも共通しています。また、個人情報だけは建前としては厚く保護されますので、AIに隣に住んでいる人が‘誰’あるのかを尋ねても、決して答えてはくれないでしょう。個人情報を含む全ての情報はビッグデータを掌握する者によって独占されるので、人々の間の横関係における情報の交流は遮断されてしまうのです(社会的なコミュニティーの破壊、並びに、情報の密売買の温床に・・・)。

 かくしてSociety 5.0は情報化社会というよりも‘AI支配社会’となることが予測されるのですが、同社会の実現が、社会のあり方や人々の生き方を一変させてしまうのは疑い得ません。政府の説明図では、‘快適’、‘活力’、‘質の高い生活’と言った美辞麗句を並べて、同社会を理想的な未来図として描いていますが、大量のAI失業の発生が懸念されている今日、‘地上の楽園’という宣伝は怪しんで然るべきです。そして、何よりも恐ろしいのは、同社会に一端組み込まれますと、‘一人もとり残さず’にAI支配のネットワークに組み込まれ、AIの支配から逃れることはできなくなってしまうのです。

 Society5.0にあって政府の役割も曖昧であり、あるいは、政府が存在しなくともAIが支配している世界なのかもしれません。そして、Society 5.0は、民主的手続きを経ることも、国民のコンセンサスを得ることもなく、テクノロジーの発展のみを根拠として、一方的に上から推し進められてしまうのです。この意味において、Society 5.0の実現は、暴力ではなく、非暴力的な手段であるデジタル技術を用いた革命と言えましょう。しかも、同社会は、世界経済フォーラムの「グレート・リセット」や国連のSDGsとも共鳴しながら、デジタル技術の開発と普及と軌を一にしつつ世界レベルで推進されている点において、‘世界同時革命’なのです。

 チャットGPTに関連して鳥取県の平井伸治知事は、「機械が未来を作っていいのか」と問題提起されておられますが、むしろ、革命の‘首謀者’は、AIといった機械ではなく人間であるように思えます。つまり、各国の国家体制を転覆させ、全世界レベルでデジタル全体主義体制を確立し、世界支配を企んだ人々にこそその責任を求めることができましょう。しかも、各国政府もその手先なのですから、国民は、政府が率先してSociety 5.0の旗振り役となっている今日の事態を重く受け止めるべきです。政府に導かれるままに‘地獄’へと引きずり込まれる前に、前方に潜むリスクを見定める慎重さと方向性を変える勇気こそ、デジタル全体主義へと向かう危機の時代を生きる人類は備えるではないかと思うのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ムーンショット計画は‘誰’のため?-必要電力から推理されるシナリオ

2023年05月11日 12時00分09秒 | 統治制度論
 日本国政府が推進しているムーンショット計画は、2050年までにも目標を達成できば、表向きでは‘全ての人’に恩恵が均霑するかのように謳っております。目標1のターゲットも、「誰もが多様な社会活動に参画できるサイバネティック・アバター 基盤」を掲げており、同研究開発プロジェクトの‘公益性’をアピールしています。しかしながら、国民は、政府の言う「誰もが」を信じても良いのでしょうか。

 例えば、目標1のサイバネティック・アバター基盤が構築された暁には、国民の一人一人が自らの分身アバターを10体以上保有することができるとされます。ところが、複数の分身達が同時に活動するには膨大なエネルギーを要する点については、すっかり抜け落ちています。生物であれば、摂取した食物から体内の代謝機能でエネルギーを得ることができるのですが、3D上のアバターであれ、ロボットであれ、外部からエネルギー、即ち、電力を供給する必要があるのです。

しかも、目標7では、「主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現」を目指していますので、年齢の制約を超えてアバターの数は爆発的に増加します。また、目標8のように自然災害や気候までコントロールするとなりますと、さらに莫大なエネルギーを要します。このことは、Society 5.0時代とは、電力の大量消費社会であることを示しているのです。因みに、内閣府によれば、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と定義されています。

 政府がSociety 5.0時代に向けて率先してデジタル化に邁進する一方で、その行く手には、必要電力の確保と供給という、あまりにも高い壁が立ちはだかっています。現状を見ましても、ウクライナ紛争を機にエネルギー資源の調達への不安、並びに、コスト高となる再生エネの普及から電力料金が軒並み跳ね上がっています。電力料金の急騰に国民が悲鳴を上げる状況に至っているのですが、Society 5.0時代を迎えるには、先ずもってエネルギー不足を解消すると共に、エネルギー供給量を増やさなければならないはずです。しかしながら、日本国政府が掲げる9つの目標にあって、エネルギーに関する項目は見当たりません。目標4として、「地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」が掲げてあるに過ぎないのです。

 Society 5.0時代に伴う電力不足の問題については、既にAIに代わるOIの研究開発が進んでいることからも伺えます。現行のAIが広く普及すれば、深刻な電力不足に見舞われることが予測されるため、電力供給を必要としない人の脳細胞を用いようというのが、OI開発の目的なのです(もっとも、電力は要しないとしても、OIが生物である以上、ブドウ糖等によるエネルギー・チャージが必要なのでは・・・)。

 それでは、エネルギー不足の問題を無視する政府の姿勢は、一体、何を意味するのでしょうか。上述した矛盾点を最も合理的に説明するとすれば、恐ろしいシナリオが浮かび上がってきます。それは、100歳までの健康生活や複数のアバター保有、あるいは、目標10の心のやすらぎ等の先端的なテクノロジーの恩恵は、世界経済フォーラム等のメンバーを中心とした一部の富裕層に限定される一方で、他の大多数の人類には、政府による心身両面における徹底管理、昆虫食の強要、電力不足による劣悪な生活環境等が待っているというものです。そして、コロナ・ワクチン等による人口削減計画が実しやかに囁かれるのも、エネルギー供給のキャパシティーを考慮すれば、Society 5.0時代にあっては、現在の人類の人口は多すぎるからかもしれません。現在の人口規模を抱えたままでSociety 5.0を実現することは、殆ど不可能なのですから。

 以上に述べてきましたように、ムーンショット計画には世界権力による人類支配のシナリオが潜んでいるとしますと、日本国民は、まったくもって政府を信頼しなくなることでしょう。国民にとりましては、自らが納めた税金が、外部の富裕層のために使われるのみならず、その結果として、国民は政府の管理・監視の対象となり、目に見えない牢獄に閉じ込められてしまうのですから。今日の政府の動きを見ておりますと、このシナリオ、陰謀論として一笑に付すことができないリアリティーがあるように思えるのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする