万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

宣戦布告なき真珠湾攻撃-通説は覆されたのか

2012年12月08日 16時18分22秒 | 国際政治
真珠湾攻撃から71年、3000人が犠牲者追悼(読売新聞) - goo ニュース
 本日12月8日は、日本軍がハワイの太平洋艦隊基地を攻撃した、真珠湾攻撃から71年目に当たります。日米交渉の決裂が決定的となった末の開戦でしたが、無通告であったため、”宣戦布告なき騙し打ち”としてアメリカ世論を激昂させることにもなりました。

 これまで、真珠湾攻撃については、駐ワシントン大使館の不手際により、攻撃が開始されてから1時間後にアメリカ側に手渡されることになったと説明されてきました。ところが、本日の日経新聞によりますと、最近になって、米国立公文書記録管理局で発見された資料から、実際の理由は、現地大使館ではなく、本国外務省の打電が遅れたからであったとする研究が発表されたそうです。その根拠は、アメリカ軍の傍受記録によるものなそうですが(アメリカ側は、傍受しながら通信会社が暗号解読に手間取り、真珠湾基地に警告できなかったとも…)、これは、通説を覆す新事実なのでしょうか。紙面に掲載された表によりますと、最後の部分の電文-902号14部-が外務省から送付されたのは(902号は全部で14部から構成…)、日本時間の7日4時38分のことです。ところが、先に発信した902号13部(日本時間午前1時25分)との間に15時間の開きがあり、その間に、2本の訂正電文が入っているそうです。訂正電文の発信も、13部が打電されてから10時間が経過しており、この時間的な空白から、この資料を発見した九州大学の三輪宗弘教授は、意図的に外務省が電文を遅らせたのではないかと推測されているようです。確かに、この空白の10時間は謎ですが、真珠湾攻撃の開始時間は、日本時間8日3時20分です。つまり、現地大使館が14号を受け取ってから攻撃までの間には、約半日の余裕があるのです。本気で奇襲攻撃をかけようとするならば、14部は、攻撃開始後に発信するのではないでしょうか(もちろん、訂正電文に”8日3時20分以降に通告文書を渡すべし”とあったならば、別ですが…)。このように考えますと、外務省からの打電が遅れたことは判明したものの、通説を否定するまでには至っていないのではないかと思うのです。

 それにしましても、明治以降、国際法の遵守に努めながら、開戦という一大事に際し、”宣戦布告なき騙し打ち”と見なされたことは、返す返す、残念なことです。日米開戦を前にした12月1日の御前会議では、無通告攻撃は絶対にあってはならないとし、開戦30分以上前には宣戦布告を手渡すことが正式に決定されていました。国民の多くが、不本意にも国際法違反となってしまったことに対して、良心の痛みを感じていることが、せめてもの救いに思えるのです。

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コメント (6)
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