万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ノーベル平和賞―”該当者なし”の年があっても

2009年02月28日 16時05分16秒 | 国際政治
ノーベル平和賞候補、過去最多に 205個人・団体(共同通信) - goo ニュース
 今年のノーベル平和賞には、過去最多の候補者の名が挙がっていると言います。この数の増加は、どうやら平和に貢献している人の数が、今年は大幅に増えたということではなく、皆がが一致して、この人こそ受賞に相応しい!と思える人がいないことの現われのようなのです。

 もし、相応しい人がいないならば、無理をしてまで受賞者を決めることはないのではないかと思うのです。特にノーベル平和賞は、これまで政治的な力学や思惑が働くとする指摘を受けてきており、他の理科学系の分野よりも業績の評価が難しいとも言われています。にもかかわらず、誰もが知らない人(もちろん知名度だけが全てではありませんが・・・)や顕著な業績がない人が受賞するとなりますと、ノーベル賞の価値を低下させてしまうかもしれません。いわば、ノーベル賞のインフレが起きてしまうかもしれないのです。

 ノーベル賞がノーベル賞としての価値を維持するためには、”該当者なし”の年があってもよいように思うのです。真に平和賞に相応しい人が現れた時にだけ受賞することにすれば、ノーベル賞は、その輝きを保つことができるのではないでしょうか。

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破産防止が金融危機を封じる?

2009年02月27日 15時30分51秒 | アメリカ
オバマ大統領「公的資金24兆円追加」 予算教書概要(朝日新聞) - goo ニュース
 予測されている最悪の事態を避けるために、アメリカ政府は、さらなる公的資金の追加を検討しているようです。しかしながら、財政政策での対応は、財源が限られているため自ずと限界があります。それでは、他に打つべき手はあるのでしょうか。優先してなすべきことは、”破産”の防止策のように思うのです。これには、幾つかの機関の連携プレーが必要です。

(1)民間金融機関
・サブプライムローンの高金利システムを停止し、債務者が、購入した住宅を維持しつつ、ローンの返済が可能なレベルまで金利を下げること。あるいは、既に住宅を放棄した人々に対しては、低金利ローンによる再購入の契約を結ぶこと。
・CDSを介した連鎖倒産が損失規模を最大化するので、CDSについては契約の解除、あるいは、決済をすすめること。

(2)中央銀行
・中央銀行は、”銀行の銀行”あるいは”最後の貸し手”となること。つまり、保有債権の買い取りや特別融資を通して、金融機関の破綻を防ぐとともに、マネー供給量を増やすこと。
・プルーデンス政策を行っている場合には、金融機関の窓口に対して積極的な融資を促すこと。

(3)行政当局
・企業破産はCDSの連鎖破綻の引き金になるので、企業が、安易な破産申請を行わないよう監視すること。
・時価会計による企業の巨額の赤字決算報告については、経常損益と資本損益とを区別し、実体以上に不安を煽らないよう注意を促すこと。

(4)政府・議会
 政府は、極力、国債の発行を控えること。異論も多いかもしれませんが、もし、国債の発行が、市中のマネーを吸収することになるならば、むしろ、財政拡大政策は、金融危機を悪化させる要因ともなります。政府や議会は、連鎖的な破産こそ防止すべく、財政権限を用いるべきかもしれません。

 この方法は、損失を分散させることによるソフト・ランディング路線であり、もちろん、これですべて解決するわけではありませんし、もっと優れた別の方法もあるかもしれません(私は、金融の専門家ではありませんので・・・)。しかしながら、それぞれが、耐えられる範囲での損失を甘受することで、経済の破滅という最悪の事態だけは避けるべきと思うのです。

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財政出動を否定すると大恐慌になる?

2009年02月26日 15時54分01秒 | 国際経済
民主党で大恐慌?:若田部昌澄(早稲田大学教授)(Voice) - goo ニュース
 1931年のマクドナルド内閣による金本位制の停止は、イギリスを大恐慌から救ったのでしょうか。確かに、金為替本位体制にあっては、政府の金融政策や対外通貨政策の手足は縛られていますので、柔軟、かつ、機動的な政策を繰り出すことはできません。しかしながら、本当のところは、金本位制からの離脱による自由度のアップは、自由貿易の旗手であったイギリスを、ブロック経済にむかわせてしまったと思うのです。

 管理通貨制度に移行しますと、自国通貨の切り下げは簡単に行うことができるようになります。つまり、政府は、輸出に有利なように自国通貨の相場を為替操作する手段を手にしたのです。また、翌年、カナダのオタワで開催された連邦経済会議では、英連邦諸国間における特恵関税制度の導入が決定され、経済ブロック化の路線が選択されました。こうして、広大な英連邦を背景に、イギリスは、保護主義による景気回復に突き進んでいったのです。もちろん、当時の世界情勢を考えますと、ブロック経済化の原因はイギリスの政策転換のみにあるわけではなく、ドイツでは既に管理通貨制度に移っていたという現実があります。

 現在の政府ははるかに多様な政策手段を持ちますし、ブロック経済の枠組みとなる植民地体制は既に崩壊しています。このことを考慮しますと、30年代の状況から現在の政策選択を判断することには、いささか無理がありそうです。また、戦後に経験したケインズ主義政策による長期の経済後退は、財政出動政策の有効性に疑問符を付けています。はたして、財政出動の否定=大恐慌となるのか、冷静に考えてみる必要があるように思うのです。

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”家庭の太陽光発電”買取に潜む問題点

2009年02月25日 15時32分46秒 | 日本政治
家庭の太陽光発電、高く買い取り 電力会社に義務づけ(朝日新聞) - goo ニュース
 不景気に見舞われる中、新たな産業分野として環境技術が注目されており、太陽光発電の高値買い取りの仕組みも、製品普及を促す政策の一つと言えそうです。この政策は、一見、環境にやさしく景気対策にもなりそうなのですが、問題点がないわけではありません。

(1)太陽光発電が普及すればするほど、電力料金が上がること。
 家庭で余った電力を電力会社が買い取る義務があるとしますと、”副業”として太陽光発電設備を購入する国民は、増加することになりましょう。しかしながら、普及には成功しても、電力料金も比例して上昇しすることになります。エネルギーコストの上昇は、電力会社の経営を圧迫するとともに、他の国民の負担を高めることになりますし、産業全体にマイナス影響を与えるかもしれません。

(2)国民の間に負担の不公平が発生すること。
 現在、太陽光発電設備は、7万円の補助金を受け取れたとしても、一台230万円ほどかかると言います。一般の家庭で購入するには価格が高いため、購入できる世帯は限られております。しかも、余剰電力の売却ということですので、購入者の電力料金はゼロでありながら、先に述べたように、他の非購入者の電力料金は比例的に上昇することになります。

(3)一戸建ての家庭にしか設置できないこと
 太陽光発電設備は、一戸建ての家屋にしか設置できませんので、マンションやアパートに住む人々は、この仕組みを利用できません。

(4)太陽光発電設備の費用対効果にも疑問がること。
 小規模な家庭用太陽光発電設備の設置が、費用対効果の観点から見て、経済効率性にかなっているのか疑問なところです。また、CO2削減効果についても、製造過程での排出量とのバランスを見る必要もありそうです。

 以上に幾つかの問題点を挙げてみましたが、もし、再生可能なエネルギーを普及させることが目的ならば、より国民負担が少なく、かつ、将来性のある手法を考えるべきと思うのです。エネルギー・コストをさらに低下させ、商業ベースに乗せることができるような技術開発に投資する方が、多くの国民の賛同を得られるのではないでしょうか。 

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オバマ政権を待ち受ける深刻なジレンマ

2009年02月24日 15時26分13秒 | アメリカ
「米中は安全な舟に同乗」「これから沈みゆく泥舟」 米国債購入、中国世論二分(産経新聞) - goo ニュース
 ”チェンジ”を叫んで颯爽と登場したアメリカのオバマ大統領。アメリカの金融危機を脱するために打ち出したのが、民主党の伝統的な手法を踏襲した70兆円に上る景気対策法案でした。しかしながら、危機脱却を掲げて景気対策には、何らの問題もないのでしょうか。

 問題があるとしますと、それは、景気対策案を実行に移すには、米国債の発行による財源の確保が必要であり、この米国債の有望な買い手こそ、安全保障上の対立をはらむ中国であるということです。中国世論は、米国債の買い取りに慎重なようですが、中国政府の中には、米国債の購入でアメリカに対する政治的影響力が増すことを主張する意見もあると言います。アメリカとしましても、中国政府に国債を引き受けてもらえるならば、中国の元安政策や人権弾圧には目を瞑るかもしれません。つまり、中国からの輸入がさらに拡大し、アメリカ自らが、中国の軍備増強の手助けをすることになりかねないのです。

 結局、オバマ政権は、国内向けに景気回復の大義名分を掲げて財政拡大を行いますと、対外的にはアメリカの国力を衰退させてしまうというジレンマに陥ってしまうようなのです。景気対策にはスピードが求められつつも、時には一旦立ち止まって、長期的な影響を慎重に見極めることも大事なのかもしれません。

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日米安保条約の再改正に向けての議論を

2009年02月23日 15時36分51秒 | 国際政治
麻生・オバマ25日初の首脳会談…アフガン支援など合意へ(読売新聞) - goo ニュース
 アメリカとの間に結ばれている現在の「日米相互協力及び安全保障条約」は、1952年に成立した「日米安全保障条約」を改めて、1960年に調印されたものです。既に半世紀を経ようとしていまが、当時が冷戦の最中であったことを考えますと、そろそろ、日米安保条約の再改正を目指してもよい頃のように思うのです。例えば、以下のような論点が挙げることができるかもしれません。

(1)相互性の確立
 現行の条約では、日本に対するアメリカの防衛責任が強く、その逆が弱いことから、相互性の欠如が問題となっていました。両国の間に対等関係を築くためには、相互条項を加えることが検討課題となります。

(2)米軍基地と日本国の経費負担
 相互性が要請されながらも、米軍基地の存在によって日本国の防衛が強化されている側面があります。この点に関しては、もし相互性を原則とするならば、日本国側の米軍駐留費の負担という形でバランスをとる必要があります(相互の負担の明確化・・・)。

(3)条約の発動対象の明確化
 現行の条約では、同盟の発動対象が曖昧であり、このことが、日本国の防衛政策を迷走させる原因ともなっております。どこまでが、自国の自衛の範囲であるのか、お互いに明確にすれば、より具体的な対応策を策定することができるようになります(領土問題のみならず、アメリカの戦争に対する日本国の協力の問題も含めて・・・)。

(4)核の傘条項
 周辺国が核保有する中でNPT体制を維持するならば、日本国は、核保有国であるアメリカの核の傘を必要します。核攻撃に対する抑止力を働かせるためには、核の傘条項を加えることも検討課題となります。

(5)軍事技術の独自開発
 真偽のほどはわかりませんが、日本国の軍事技術の開発には、アメリカ側の要請によりブレーキがかかっているとも言われております。技術力のある日本国の独自開発は、ひいては、同盟国の軍事力の強化にも資すると考えられますので、独自開発の問題も、技術協力とともに議論すべきかもしれません。

(6)NATOとの関係
 万が一、戦争がアジアに限定されるのではなく、世界大で戦われる可能性に備えて、NATO加盟の可能性を検討しておくことも、将来的な課題として挙げておくことができます。

 もちろん、これらの内容を全て条約に書き込む必要はありませんし、日本国側が国内問題として解決しなければ交渉が先に進まない部分もあります(憲法改正や集団的自衛権の解釈・・・)。中国が軍事力を飛躍的に拡大させ、韓国が竹島のみならず対馬へも食指を伸ばし、北朝鮮が核やミサイルの開発を進めている現状を考えますと、60年代の状況とは大きく様変わりしています。日米安保条約の曖昧さが双方にとって命取りになってはならず、日本国の政界も、政争に明け暮れるよりも、安全保障問題にこそ議論を尽くしていただきたいと思うのです。

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”人権後回し”のクリントン対中外交のリスク

2009年02月22日 15時27分04秒 | アメリカ
クリントン外交 米中対話の拡大をうたったが(読売新聞) - goo ニュース
 現下の金融危機を乗り切ることを優先させたクリントン国務長官は、中国政府に対して、人権問題を持ち出すといった強い態度に出ることができなかったようです。しかしながら、対中融和外交には、将来、アメリカの立場を苦しくするリスクが伴うように思うのです。

 中国国内では、景気後退の影響で失業者が増加しており、共産党の腐敗も加わって、政府に対する不満と非難も高まり、各地で暴動も起きているようです。しかも、今年は、天安門事件から丁度20年に当たる年であり、多くの国民の脳裏に国民に対して銃口を向けた忌わしい記憶が蘇るかもしれません。もし、中国国民の多くが、秘かにアメリカの自由や民主主義に憧れを抱き、人権擁護の旗手と見なしていたとしますと、今回の”人権後回し”の態度は、アメリカに対する失望を生むかもしれないのです。

 しばしば、戦後のアメリカ外交には、国民に不人気な腐敗政権を支えてしまうという傾向がありました。もし、中国の国民が、アメリカに対して自国の政府に”ものを言う”ことを期待していたとしますと、対中融和外交は、長期的に見ますとマイナスに働く可能性があると思うのです。
 
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「チェンマイ・イニシアチブ」は中韓の国家戦略?

2009年02月21日 09時33分19秒 | 国際政治
外貨融通枠11兆円に拡大、日中韓ASEANで合意へ(読売新聞) - goo ニュース
 1997年に発生したアジア通貨危機には、東南アジア諸国が、無理な対ドルペッグ政策を実施していたという背景がありました。この背景から推測しますと、通貨危機の最大要因は既に取り除かれていますので、危機が再来する可能性はそれほど高いとは思えません。それでは、現在、外貨融資枠の拡大が検討されている理由は、一体、どこにあるのでしょうか。

 もしかしますと、その根本的な要因は、自由貿易の歪みにあるのかもしれません。そうして、その歪みを作り出しているのは、中国と韓国ではないか、と思うのです。何故ならば、中国は、元安政策で外貨を蓄積し、反対に、韓国は、政府の輸出志向が、ウォン安を招いているからです。特に、韓国産業は、アセンブリーが中心であるため、製品を輸出するためには、それ以上の部品輸入を要します。通貨危機説が流布する韓国の為替政策は、ウォン安を維持するギリギリの瀬戸際介入を行っているようにも見受けられます。つまり、つねに、デフォルトを起こさない程度に最低相場を維持するために、介入通貨としての外貨を必要としているのです。

 このように分析しますと、今回の外貨融資枠の拡大は、両国の国家戦略に振り回された結果とも言えそうです。もし、この問題をストレートに解決するには、外貨準備に余裕のある中国が韓国に融資するという形態が最も合理的であるのかもしれません。しかしながら、「チェンマイ・イイシアチブ」という衣は、こうした国家戦略や貿易の歪みを覆い隠しているように思えるのです。

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政府支出ではデフレ・ギャップは埋まらない

2009年02月20日 15時44分19秒 | 日本経済
日本経済、年20兆円の需要不足=デフレ懸念で財政出動圧力-内閣府(時事通信) - goo ニュース
 日本国では、現在、20兆円の需要が不足していると報じられ、財政支出拡大への圧力となっているようです。しかしながら、本当に、政府が20兆円分の国債発行で資金を調達し、20兆円分の”お買い物”をすれば、このギャップは埋まるのでしょうか。

 もしかしますと、政府支出の拡大では、デフレ・ギャップは埋まらないかもしれないのです。何故ならば、・・・

(1)政府の消費の内容は、公共事業といった”箱もの”プロジェクトが想定されます。現在、デフレを起こしているのは、自動車や電化製品など、これまで輸出に依存してきた製品市場の分野ですので、両者の間にはミス・マッチがあるのです。

(2)不景気にあっては、国民の行動は、消費よりも貯蓄にむかう傾向があります。国民の貯蓄の増加分が、銀行の国債購入によって政府支出に使われますと、結局、製品分野の需要不足はそのまま残ってしまいます。しかも、将来に増税が予測されますと、この傾向は、さらに強くなります。

(3)もし、20兆円の予算を、薄く広く”ばらまく”としましても(国民一人当たり10万円?)、外国での需要の落ち込みをカバーできるほど需要が増加するとは思えません(自動車購入にはほど遠い・・・)。また、安価な輸入品が増加する可能性もあります。

 不足している需要の内容を吟味しませんと、ミス・マッチによって、大いなる無駄をしてしまうかもしれません。デフレ・ギャップを理由に財政拡大を行いますと、さらなる不況が待ち構えているかもしれないと思うのです。

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クルーグマン博士の説は政府紙幣の根拠になる?

2009年02月19日 15時43分47秒 | 国際経済
ニュースを斬る 禁断のマネー増発、挑む価値あり GDPマイナス12%はこれで克服する(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 政府発行紙幣という奇策は、大変に魅力があるらしく、消えては浮かびを繰り返しているように見えます。ところで、この案を支持する根拠として、ノーベル賞受賞者であるクルーグマン博士の「ベビーシッター協同組合」の説が引き合いに出されているようです。

 クルーグマン博士は、ベビーシッター協同組合の危機と克服を、以下のように説明しています。

”ベビーシッター協同組合では、最初に、全会員に対して同じ枚数のクーポンを配られました。この組合の基本的な仕組みは、会員が、他の会員にサービスを行った時にはクーポンを受取り、自分がサービスを受ける時には、クーポンを払うというものです。ところが、時間が経つにつれてクーポンが不足するようになり、会員は外出を控えるようになってしまいました。そこで組合は、この危機を乗り越えるためにクーポンを増刷し、各会員に配ったることにしました。”

 ”クーポンの増刷で危機を乗り越えた”という結末が、政府紙幣の根拠となります。しかしながら、この説明には、一つ、大きな見落としがあるように思えるのです。博士は、クーポンが足りなくなった理由を詳しく述べていないそうなのですが、おそらく、各会員がクーポン券を自宅にため込んでしまったことが原因と推測できます。そうして、このことから、このお話には、何故にか、金融機能が抜け落ちていることに気付かされるのです。つまり、もし会員が、クーポンを自宅にため込むのではなく、”クーポン銀行”を設立し、そこに預けていれば、クーポンの不足は起きなかった可能性があるのです。

 このように考えますと、政府紙幣の発行は、やはり禁じ手のように思えるのです。

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政府への過剰な期待は禁物?

2009年02月18日 13時36分26秒 | 日本経済
政策実行力に懸念 ジャパン・パッシング再び?(産経新聞) - goo ニュース
 世界的な景気の冷え込みを受けて、各国とも、リーダーシップに富んだ政治家が大胆な景気対策を実施すれば、景気回復は、いとも簡単に実現すると期待しているようです。この期待からしますと、日本国の政策実行力は、海外諸国からは疑念を持たれることになりましょう。

 しかしながら、戦後の日本国は、”経済は一流、政治は三流”と悪口を言われてきましたように、政治が率先して経済を引っ張ってゆく、という状況ではありませんでした。もちろん、かつての通産省がこの牽引役を務めたという説もありますが、政治は、ある意味で何もしなくても、経済は順調に成長できたのです。日本国経済の発展は、民間の企業が勤勉に働き、商機をつかみ、技術開発にも努力を注ぎ続けてきた結果であったとも言えます。民間の戦略性と先見の明こそが、日本国が経済大国たりえた要因であったのかもしれません。

 翻って現在の状況を見てみますと、景気対策の大合唱が聞こえ、民間の政府への依存性が高まっているようにも見受けられます。しかしながら、経済とは、民間の活動に基づくのですから、民間が力量を失っては、景気は回復しようもありません。政府の基本的な役割とは、民間が力を発揮し、自力で回復軌道に乗れるように、手助けをすることではないか、と思うのです。政府への過剰な期待は禁物なのかもしれません。

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大規模公共事業―先端プロジェクトに限定を

2009年02月17日 15時54分44秒 | 日本政治
GDP急落、大規模公共事業など追加経済対策に着手へ(読売新聞) - goo ニュース
 ニューディール政策の影響のためにか、不況対策としてまず挙げられるのが、大規模公共事業です。しかしながら、戦後、一貫して公共事業に予算をつぎ込んできた日本国の事情を考えますと、事業の対象を厳選しませんと、後世に負の遺産を残すことになりかねないと思うのです。

 高度成長時代に実施された高速道路や新幹線の開設は、一躍日本国を経済大国に押し上げるほどの効果を発揮しました。国内の交通網が格段に効率化するとともに、流通速度も大幅にアップしたからです。ところが、一通り、産業インフラが整備されますと、公共事業に対する評価は一転し、やがて財政の無駄遣いとして非難されるようになります。結局、本来の経済政策としての意味を失い、”箱もの行政”の批判を浴びながらも、雇用政策としての意義が公共事業を正当化するにいたったのです。その結果、政府は、有利子負債となった設備の維持費に苦しむとともに、過剰感のあった建設業界のダウン・サイジングも遅れることになりました。

 日本経済の大幅な落ち込みを受けて、日本国政府は、再び大規模な公共事業の検討に入るようです。しかしながら、経済の政府への依存度を高めることが、良策であるとも思えません。もし、大規模公共事業を実施するならば、誰もが経済成長の効果を確信でき、プロジェクト終了後は、民需への転換、あるいは技術の民間移転を柔軟にできるような先端的なプロジェクトに限定すべきと考えるのです。

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日増しに強まる”ジャパン・リスク”?

2009年02月16日 15時36分04秒 | 国際経済
GDP大幅落ち込み、政府が追加経済対策の検討本格化へ(読売新聞) - goo ニュース
 先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、各国が協調して、内需拡大や雇用創出のための財政出動を行うことが合意されたと言います。しかしながら、先進国の中で、飛びぬけて高い財政赤字を抱える日本国は、これ以上の財政拡大を行う余裕があるのでしょうか。

 日本国政府は、20兆円から30兆円の追加経済対策も検討に入ったと伝えられています。もし、この費用を国債発行で調達しようとしますと、民間の資金不足を招くことは大いに予測できます。政府は、無利子国債の発行を目論んでいるようですが、それでもこの額は、国家予算のおよそ半分に当たりますので、国民のタンス預金を全て吐き出してもらっても調達はかなり困難となりそうです。もし、金融機関が、国債への応札を優先させた結果、民間企業の資金繰りが悪化し、さらに失業者が増えることいなれば、まさに、”イタチごっこ”の負のスパイラルに陥ることになりましょう。

 国際協調は大切なことですが、財政の悪化により日本経済が崩壊しますと、世界経済に与える打撃はさらに深刻なものとなりましょう。EU諸国はユーロを守るための財政規律がありますので、無制限な財政拡大はできず、また、アメリカも財政健全性については触れているようです。日本国のみ無制限な財政拡大を続けるとなりますと、”ジャパン・リスク”の上昇は避けられなくなると思うのです。

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公務員の安定志向が「心の病」の原因?

2009年02月15日 12時49分23秒 | 日本政治
「心の病」10年で4倍 地方公務員、減員が背景か(共同通信) - goo ニュース
 昨日、不景気を背景に、公務員試験の受験者が増加しているというテレビ報道がありました。この時、志願者の多くはインタヴューに応えて、「公務員は安定した職業だから」と口を揃えたように志望動機を述べていました。もしかしましたら、この公務員の安定志向が、「心の病」の原因の一つなのかもしれません。

 何故ならば、安定志向で公務員の職に就いたものの、実際には、公務員の減員という現実があったからです。この現実は、二つの方向から、公務員に対して心理的な圧力として働いたと思われます。そのひとつは、地方財政の悪化を背景に、公務員という職にもリストラがあり得ることであり、もうひとつは、採用や人員の削減による仕事の負担増加と激化です。もとより、つつがなくお役所仕事を勤め上げることを目的にして公務員となったわけですから、公務員を取り巻く状況の変化は、心を病むストレスになってもおかしくはありません。

 将来を見越しますと、公務員という職は、自己の保身を第一とする安定志向の人々よりも、住民のために公共サービスの向上を目指そうとする意欲と、地方自治体が直面する苦境を乗り切ろうとするタフな精神を持つ人々の方が相応しいのかもしれません。

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自由貿易主義と保護貿易主義は調和する?

2009年02月14日 15時42分16秒 | 国際政治
「バイ・アメリカン」条項残す、米上下院が景気法案再可決(読売新聞) - goo ニュース
 自由貿易を尊重する立場から、景気法案の「バイ・アメリカン」条項に眉をひそめた方も少なくないはずです。巨大な消費市場であるアメリカが、市場を閉ざしてしまったら、世界経済の回復もままならない、と。

 アメリカの弁明としましては、おそらくアメリカ産業を保護しなければ、国内の雇用も購買力も維持できない、ということなのかもしれません。しかも、財政支出は、国民の税金から拠出されるのですから、国外に政策効果が流出したのでは、国民の納得も得られそうにありません。政策効果を考えますと、アメリカの言い分にも一理はありそうです。それでは、自由貿易と政府調達とが両立するようなルールはあり得るのでしょうか。もしかしますと、以下のようなルールであるならば、多くの諸国は納得するかもしれません。

(1)「バイ・○○国」条項は、政府調達分野に限定すること。
(2)財政支出の目的が、国内の雇用対策や景気刺激策であること。
(3)雇用対策以外の一般の公共事業については、相互主義に基づいて市場アクセスを自由化すること。
(4)「バイ・○○国」条項を制定した国は、早期の解除を目指す努力を怠らないこと。

 現在の国際貿易ルールを見ましても、政府調達部門には適用除外が認められている部分もあります(サービスの貿易に関する一般協定附属書1B)。この問題について国際的な合意があれば、摩擦や非難合戦を起こさずに済むのではないか、と思うのです。 

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