万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国民は菅首相に’指導力’を望んでいるのか?

2021年03月14日 12時35分15秒 | 日本政治

 時事通信社が3月に実施した世論調査によれば、菅内閣に対する支持率は、50%を超えた発足直後の高支持率から16.2%もの下落を見せているそうです。その一方で、不支持率は25.4ポイントも上昇しており、支持率の低下傾向には歯止めがかからない現状を伝えています。

 

 マスメディアが実施した世論調査ですので、同数字をそのまま信じてよいのか迷うところなのですが、同調査結果を基にして、時事通信社は、興味深い分析を行っています。それは、’菅政権の支持率低下の原因は、指導力不足ではないか’とするものです。その根拠として挙げているのが、不支持の理由の変化です。昨年10月に実施された同様の調査では、不支持理由のトップは、「期待が持てない(7.1%)」であり、「リーダーシップがない(2.7%)」は6位に過ぎませんでした。ところが、今般の調査結果では、22.8%の人々が「リーダーシップがない」と回答しており、不支持率のトップに躍り出ているのです。

 

 ’リーダーシップの欠如’を挙げる回答数が跳ね上がった具体的な要因としては、同社では、「「後手」と批判される新型コロナウイルス対応などが影響した」のではないかと推測しており、菅首相が、観光支援事業「Go Toトラベル」の全国一斉停止、並びに、緊急事態宣言の再発令に二の足を踏んだのがマイナスに影響した者としています。しかしながら、国民の多くは、菅首相に対してリーダーシップの発揮を求めているのでしょうか。

 

 実際に、菅首相は地球温暖化ガス排出量実質ゼロ目標など、就任直後から独断とも言えるリーダーシップを発揮してきております。デジタル省の創設も含めた行政のデジタル化やワクチン・プロジェクトも、上からの改革や計画の実行であり、国民的な合意形成のプロセスは無視されてきました。仮に、菅首相が、同世論調査の結果を国民が自らに対してリーダーシップを期待していると恣意的に解釈するとしますと、むしろ安全システムの確立を待たずしてデジタル化を一気に進めたり(中国等の外部勢力に情報が筒抜けに…)、ワクチン接種の全国民に対する強制化といった国民が望んでいない政策の実施を目指して辣腕を振るうかもしれません。

 

リーダーシップにも、国民に資する善いリーダーシップと国民を苦しめる悪いリーダーシップがあるのですから、徒に首相の指導力不足を責め、’改善’を求めますと、国家の独立性が危うくしたり、国民の命を危険に晒すことにもなりかねません。しかも、デジタル化とワクチン接種の両輪によって、菅首相の強力なリーダーシップの下で国民監視体制が強化され、いつの間にか、日本国も中国のような国家体制に変質してしまわないとも限らないのです。中国の毛沢東思想にあって、’指導力’というものが一党独裁を正当化している点を考慮しますと、’指導力’とは、地獄への道案内にもなりかねず、要注意なのです。

 

 メディアなどでは、菅政権に対して何事も後手後手とする批判もありますが、時間をかけて事実を確認したり(ワクチンの安全性など…)、コンセンサスを形成したり、かつ、状況を慎重に決めるべき必要がある事柄については、一方的なリーダーシップは百害あって一利なしです。この点、菅首相の‘リーダーシップ不足’、もしくは、‘リーダーシップ’を発揮したくとも、発揮できない状況が、むしろ、日本国と国民を救っているとも言えましょう。

 

そして、仮に、国民が菅首相にリーダーシップを求めているとすれば、それは、国民のための、あるいは、国民の意を汲む民意の反映としての決断、即ち、’善きリーダーシップ’であるはずです。そして、日本国の置かれている現状を見ますと、むしろ、日本国民は、首相に対して’止める勇気’を望んでいるのかもしれません。

 

’戦争は始めるよりも止めるのが難しい’とされていますが、一度動き出した巨大な歯車を止めるのには、相当の覚悟と勇気を要します。そして、現状において決断すべきは、東京オリンピック・パラリンピックやワクチン・プロジェクトの中止の如何であるのかもしれません。両者とも、状況次第では、無理を押して実施する方が中止するよりも遥かに被害が大きくなるリスクがあるからです。また、安易な入国規制の緩和やGO Toトラベルの再開に対しても、国民の多くは反対していることでしょうし、廉価でしかも効果があるとされるイベルメクチンといった治療薬については、早期の承認を望んでいることでしょう。日本国は、中国とは異なり民主主義国家なのですから、民主主義の名に相応しいリーダーシップの在り方を実現すべきと思うのです。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (櫻井結奈(さくらい・ユ-ナ))
2021-03-14 19:44:44
そうですね、、、、、、、

リ-ダ-シップにも善し悪しが有ると思います。
何をめざしての指導力かということですね。
悪しきリ-ダ-シップを振るうのなら、むしろ何もなさらないほうがましです。(苦笑)

機密保持の欠如したデジタル化推進政策や、ワクチン接種強制などは御免こうむります。

前政権の安倍総理大臣が『初心?』を忘れ、後半期に、だんだんおかしな政策を打ち出した背景には菅総理(当時は官房長官)の
影響が多大です。
そういう菅さんには、陋劣な政策の指導など、して欲しく有りません。

◆今の日本には、敵国・中国の脅威が迫っています。
それに対処できる政治家こそ、善良な国民が待望しています。
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櫻井結奈さま (kuranishi masako)
2021-03-15 08:29:12
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 同世論調査の結果を読んだ菅首相が、国民から指導力を求められていると勘違いし、俄かに暴走し始めるかもしれません。総選挙を経ずして成立した政権でもありますので、我が国が民主主義国家であることを忘れないでいただきたいと思うのです。
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