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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

社会契約説が説明するNPT体制の非合理性

2025年04月30日 11時35分11秒 | 国際政治
 来年の2026年に開催が予定されているNPT再検討会議に向けての準備委員会に、日本国の岩屋毅外相が、加盟国で唯一、閣僚の立場で出席したと報じられております。同委員会にあって岩屋外相は、過去二回の再検討会議が合意に至らずに決裂したことから、加盟国間の‘一致団結’を訴えたとされます。岩屋外相と言えば親中派で知られていますので、中国を含む核兵器国の核独占体制を維持するために一役買ったとする見方もできるのですが(台湾や日本国の核武装を阻止したい・・・)、NPT体制とは、そもそも非合理的な仕組みなのではないかと思うのです。

 この非合理性を合理的に説明するためには、政治理論における社会契約説が役立つかもしれません。同説を唱えた近代の政治の思想家としてはホッブス、ロック、ルソーなどが知られていますが、この発想自体は古代や中世にまで遡るとされます。

 それでは、何故、社会契約説がNPT体制の非合理性を説明するのに効果的なのかと申しますと、それは、その基本的な理論構成にあります。同説では、自己保存や自由・権利の擁護といった人々の必要性から政治共同体や統治権力等の存在意義がロジカルに導かれているからです。これを要約しますと、‘自然状態においては、各自は正当防衛権をはじめ自らの意思に従って何事もなすことができる自然権を持っている。しかしながら、個々人の自己救済には限界がある。そこで、理性を備えた人間は、他者による侵害から身を守り、自己の自由や権利が保障されるためには、契約を結んで個人を超えた強力な公権力を打ち立てることに合意した’という論理です。つまり、個々人が自らの自然権を委託する代わりに、統治者あるいは統治機関に権利・自由保護の役割を担ってもらう契約こそ、社会契約であったということとなります(もっとも、論者によって若干の違いはある・・・)。

 この論理をNPT体制に当てはめてみますと、如何に、同体制が非合理的であるのかが分かります。何故ならば、核兵器とは、最大の攻撃力であると同時に最大の抑止力でもあり、その保有は、極めて効果的な正当防衛の手段であるからです。すなわち、加盟各国は、核保有の断念と引き換えに自国の安全を保障する確固たる仕組みが提供されることもなく、この権利を自発的に放棄してしまっているからです。因みに、国連憲章第51条の個別的自衛権並びに集団的自衛権は、全ての国家が有する普遍的な‘自然権’として説明されています。

 NPTでは、核兵器の保有が合法的に認められている核兵器国には、核軍縮に関する義務はあっても、核兵器を保有していない国の安全を保障する義務は課されていません。しかも、国連の常任理事国=核兵器国でもありませんので、それが非合法あるいは不法な保有であれ、核兵器を保有する諸国に攻撃力と抑止力の両面において独占的な特権、あるいは、絶対的な優位性を与えているに過ぎないのです。このことは、同時に、非核保有国は、他者による侵害から身を守り、自己の自由や権利が保障されていないことを意味します(当然に、軍事的に優位する核保有国から一方的に攻撃を受ける可能性もある・・・)。NPTの取極は、明らかに理性に反しており、非合理的なのです。

 それでは、上記の社会契約説のように、条約(契約)によって全ての国家の安全を保障するための国際機構を創設すれば良いのか、と申しますと、そのためには、全ての国家から超越し、グローバリストを含む如何なる勢力や個人をもブロックし得る、独立した警察・司法組織として発足させる必要がありましょう(国際法の執行機関・・・)。現行の国連は同条件を満たしていませんし、こうした機構の制度設計に際しては、あらゆるリスクを考慮する必要があります。NPTがその杜撰さのために悪用されているように、リスクは制度をもって事前に防止しておきませんと、権力の濫用や私物化が起きるからです。ホッブスの社会契約説でも、個人の権利擁護から出発しながら、なぜか統治機構としての絶対君主制の擁護論に行き着いてしまっています(主権者の契約違反に際しては、国民の抵抗権を認めない・・・)。

 NPT体制が加盟国の正当防衛権(含抑止力)もしくは自然権を、‘核兵器’という名に代えて放棄させているとしますと、この状態の継続こそ、国際社会を極めて危険な状態に置いていることとなりましょう。実際に、ウクライナ戦争では、ウクライナ等をNPTに加盟させた「ブダベスト覚書」が仇となりました。このように考えますと、来年のNPTの再検討会議では、むしろ、同条約の終了について話し合われるべきなのではないかと思うのです。

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グローバリストの巧妙なる共産主義の利用

2025年03月24日 12時11分21秒 | 国際政治
 ‘資本家’であるグローバリストによる共産主義の活用方法は、極めて巧妙です。労働者を煽ることで国民を分裂させ、国境を越えた運動として自らの国際組織に取り込むと共に、国際社会をも分断させたのですから。第一次世界大戦後には、自由主義、狂信主義(造語が許されるならばFanazism・・・)、共産主義の三者を操って第一次世界大戦に誘導しましたが、第二次世界大戦後には、資本主義対共産主義という枠組みを作り出すことに成功しています。そして、こうしたイデオロギー集団のコントロールによって最も利益を得たのは、グローバリストであったとも言えましょう。

 それでは、先ずもって共産主義は、どのようにして国際社会にまで分裂作用を及ぼしたのでしょうか。指摘し得るのは、‘共産主義革命’に向けた工作活動です。最初の共産革命とされるロシア革命は、共産主義に基づくと宣伝されながら、その実態は、農民兵を含む兵士による軍事クーデタと称しても過言ではありません。当時のロシアでは、革命の主体となるはずの工場労働者が人口に占める比率は低く、マルクスが論じたような、‘資本主義の矛盾の極限’としての労働者による革命ではありませんでした。革命後にあっては、暴力を是とするボルシェビキの最終的な勝利により、ここに、民主主義とはかけ離れた共産党による一党独裁体制の国家が誕生することとなるのです。

 グローバリストは、‘共産主義’をあたかも人類共通の‘正義’であるかのように喧伝することにより、ここに一つの非民主主義国家のモデルを建設します。共産主義を信奉する人々は‘進歩’であると主張していますが、人類の統治機構の発展史からしますと、この体制は、明らかに進歩ではなく退行です。より単純で原始的な形態に戻ってしまったのですから。極めて少数派となるグローバリストが心密かに恐れていたのは、多数派である一般の国民が自治的に自らの国の統治を行なう民主主義体制であったのでしょう。

 因みに、マックス・ウェーバーは、その著書『職業としての政治』にあって、革命後のソヴィエトについての記述を残しています。ウェーバーは、テーラーシステムなど‘資本主義の制度’が温存されると共に、外資導入にも否定的ではなく、「いったんブルジョア的階級制度として打倒したものを、やがて残らず受入れ、かつての秘密警察まで再び国家権力の主要機関として使っている」と批判しているのです。1919年当時の状況を述べたものですが、ソ連邦とは、あるいは、労働者(生産と消費を行なう便利な商品)を大量に創出した上で、最大限に合理的かつ徹底的に管理し、その労働力を使い尽くすという意味において、‘資本家’の理想郷であったとも解されましょう。今日、国家体制の違いに拘わらず、日本国政府をはじめ、何れの国でもデジタル全体主義が蔓延り、国民搾取に血眼になっているのも、その発想の大本が‘資本家’、すなわち、グローバリストにあるからなのでしょう。

 何れにしましても、共産主義国家、しかも、グローバリストの支援の下で短期間で超大国に成長したソ連邦の出現は、冷戦期にあって国際社会を二分します。そして、東西両陣営とも、安全保障上の脅威となる‘敵勢力’の存在を根拠として、激しい軍拡競争を展開し、かつ、代理戦争としての局地的な‘熱戦’も戦われることとなるのです。この間、エネルギー産業を含めた軍需産業を握るグローバリスト勢力が挙げた利益は計り知れないことでしょう。そしてそれは、国民が本来不要な負担を強制的に背負わされていることを意味します(グローバリストの計略がなければ、国民はより豊かになったはず・・・)。

 しかも、共産主義国家にして超大国の出現は、西側各国にいて国民分断をも深める効果を及ぼします。各国の共産党やその系列の左派集団は、国内の自生的な思想集団ではなく、暴力主義国家をバックとした国際的な活動組織として認識されるからです(安全保障上の脅威に・・・)。国民の間でも疑心暗鬼や心理的な壁が生じると共に、公安活動を含め、テロ対策のためのコストも跳ね上がります。何れも、物心両面で国民の重荷となる一方で、グローバリストにとりましては、内外両面(国家の内部と国際社会)において‘自発的’な対立と分断をもたらしますので、同作戦は一石二鳥となるのです。

 近現代史は、不自然さに満ちています。グローバリストの影は、共産主義のみならず、ナチズムやファシズムといった狂信主義にも見られるのであり(今日では新興宗教団体・・・)、こうした歴史をコントロールするための‘駒’とされた政治勢力の実像を解明しないことには、グローバリストが人類支配のために築いてきた巧妙な支配のメカニズムから逃れることはできないのではないでしょうか。

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共産主義拡散の狙いは労働者の国際組織化による国民分断と世界支配

2025年03月21日 09時37分29秒 | 国際政治
 1848年に出版されたカール・マルクスの『共産党宣言』は、今日に至るまで共産主義者のバイブルとされてきました。経済メカニズムの分析と解明を内容としながらも、幾つかの重大な誤りや矛盾を含んでいる『資本論』よりも、同書の方が遥かに知名度が高く、その影響力も広範囲に及んでいます。その主たる理由の一つは、難解とされる後者よりも前者の方が平易に書かれており、理解が難しくないからなのでしょう。

読みやすさに関しては両者の間には雲泥の差があるのですが、‘マルクスの著作は文章の表面だけを読んではならない’という読者の注意点においては何れも共通しています。何故ならば、マルクスの視線が‘資本家’のものであり、かつ、マルクスのスポンサー勢力が所謂‘資本家’であるとしますと、真の目的は隠されているからです。マルクスの執筆の目的は、‘資本家’による過酷な搾取に苦しむ労働者の救済ではなく、‘裏の目的’があったとしますと、読者は、このもう一つの目的を読み解かなければならないのです。‘二重思考’は‘二重思考’で解くしかないのです。

それでは、マルクスは、何故、労働者を共産主義革命に駆り立てようとしたのでしょうか。そこで注目されるのは、『共産党宣言』を締めくくる最期の一文です。同書は、「万国のプロレタリア団結せよ!」で終わっています。同書がプロレタリア救済の書であると信じる人々の耳には、共産革命へと労働者を鼓舞する勇ましい雄叫びに聞えることでしょう。‘資本家からの搾取を運命付けられている労働者の諸君、この資本主義のシステムを破壊しないことには、君達は永遠に解放されない。今や、資本主義は万国に及んでいるのであるから、万国の労働者よ、革命に向けて団結しよう’と・・・。

しかしながら、マルクスの裏の目的を想定しますと、この言葉は、デマゴーグの扇動に聞えてきます。そして、この扇動の言葉が労働者の団結を促している点から推測しますと、先ずもって、『共産党宣言』の目的は、国境を越えた労働者(‘資本家’にとっては生産と消費をしてくれる便利な商品)の組織化ではなかったのか、という疑いが生じてくるのです。同宣言の最後を飾り、読者に最も強いインパクトを与える劇的なこの言葉にこそ、‘裏の目的’が顔を出しているように思えるのです。

マルクスとそのスポンサー勢力が労働者に国際的な団結を促した理由、それは、世界経済を掌握するには、労働者をも自らの組織的なコントロールの下に置く必要があったからなのでしょう。確かに、投資や株式制度等によって資本が国境を越えて他国に移動することは比較的容易です。他国にあって天然資源やインフラ等の利権を獲得したり、株式の取得や投資により、海外の企業を自らの傘下に置くこともできます。しかしながら、マネー・パワーの支配力をその国民にまで及ぼすことは簡単なことではありません。他国の社会全体を自らの都合がよい方向に変革し、国家内部の国民経済をコントロールするには、国民の内部に自らの組織を造り出す必要があったのでしょう。

19世紀にあっては、労働者が全人口の多数を占めますので、労働者の組織化はそれ程には難しい課題ではなかったはずです。実際に、イギリスでは、産業革命を機に階級社会へと変貌してゆきます。そして、『共産党宣言』の第1章には、

「・・・かれらの闘争の本来の成果は、その直接の成功ではなくて、労働者の団結がますます広がってゆくことである。この団結は、大工業が作り出す交通手段の成長によって促進され、異なる地方の労働者はそれによって互いに連絡する。そして、各地の一様な性格をもった多数の地方的闘争を結集して一つの国民的な闘争、階級闘争とするためには、この連絡さえできればよいのである。・・・(『共産党宣言』、岩波文庫、51頁)」

と記されているのです。マルクスは、交通網の発達を介した労働者間による広域的な団結を可能とし、やがて労働者による一つの階級及び政党に結集してゆく道筋を描いています。この団結を世界大に広げてゆくことが、共産主義を成功に導く鍵と説いているのです(ロシアに外部から暴力革命をもたらしたレーニンの封印列車も関連?)。因みに、上記の記述では、交通手段の重要性が述べられていますが、同書にあって列挙されている‘最も進んだ’諸国の10の諸法策の内、第6番目に‘全ての運輸機関の国家への集中’が見られ、この政策には、どこか共産主義者の尻尾が見えているようにも思えます(プロレタリア独裁体制樹立後の体制維持のためには交通手段の徹底管理が必要・・・)。

 マルクス並びにそのスポンサー勢力の目的が労働者の団結による国際組織化であったとしますと、同労働組織の実態は、‘上部の指令に従う実行部隊’ということになります。そして、その標的となる対象、あるいは、共産主義の表の顔を信じた善意の労働者が含まれるにせよ、資本家と労働者が共闘する相手こそ、国民という存在であったのかも知れません。国境の内側にある国民が自らの抵抗勢力となることが分かっていたからこそ、共産主義という国民分裂作用をもたらす思想を流布し、全世界の混乱に乗じて人類支配体制を構築しようとしたとも推測されるのです(つづく)。

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USスチール買収問題で交渉すべきは‘有事の鉄鋼供給’では?

2025年01月09日 10時46分38秒 | 国際政治
 日本製鉄によるUSスチールの買収については、鉄が所謂‘戦略物資’であり、かつ、鉄鉱石の調達にはじまる生産、供給。運搬能力が戦争の行方をも左右することから、相当なる政治、否、安全保障上の問題であることが理解されます。アメリカが、全米で2位のシェアを占めるUSスチール社を手放したくない理由は、アメリカの軍事力とも直結するからなのでしょう。グローバリズムの問題に進む前に、本日は、有事における鉄鋼供給の問題について述べておきたいと思います。

 たとえ戦場における戦闘において自軍が勝利を収めたとしても、戦争自体には敗北するというケースは珍しくはありません。兵站が途切れてしまったり、兵器等を製造する能力が乏しい、あるいは、原材料が入手不可となったり、破壊されてしまいますと、敗戦は必至となります。人が生きるのに必要な食料の確保とその供給も含めて、戦争には、それを支える物資の調達・供給体制の構築を要するのです。第二次世界大戦における日本国の敗北も、これらの要因に負うところが大きいことは認めざるを得ません。‘無謀な戦争’もまさに、戦争遂行に不可欠となる物資の不足が予測されながら、これを無視した当時の為政者に対して投げかけられた批判の言葉でもあります。仮に、戦争というものを想定しているならば、先ずもって、必要物資の調達、生産、供給、運搬手段等については万全に整えておくべきであり、多少の寸断や破壊にも耐えうる体制を準備しておく必要がありましょう。

 かくして、戦争とは、良しにつけ、悪しきにつけ、戦争を支える戦時体制の構築をも伴うものなのですが(戦時体制とは、大概は軍需に物資を優先的に供給する統制経済になってしまう・・・)、同盟関係にありながらも、日米両国とも、国家安全保障を根拠として自国の製鉄企業の海外企業への売却を相互によしとしないならば、同盟国として日本国政府が進めるべきは、有事に際しての製鉄分野における日米二国間の協力に関する協議なのではないでしょうか。仮に、中国を‘仮想敵国’と想定するならば、この必要性は、中国の粗鋼生産力を見れば、一目瞭然です。生産量、価格、並びにその品質において圧倒的な競争力を付け、世界市場のシェアで上位を占める中国の製鉄企業群の生産力は、そのまま、中国の軍事力として理解されるからです。もはや、日本一国では、中国に太刀打ちできないことは明白です。粗鋼市場のシェアで世界第一位となる中国の宝鋼集団は国有企業ですので、戦時体制の準備という側面から見ますと、‘集中’の進む中国の方が余程先んじているのです。

 その一方で、マスメディアは、1月6日の年頭記者会見に臨んだ石破茂首相が「なぜ『安全保障の懸念』があるのかは、きちんと述べてもらわないと話にならない」と述べ、バイデン大統領によるUSスチールの買収禁止令を批判したと報じています。しかしながら、石破首相が‘軍事オタク’であればこそ、戦時における鉄鋼生産の重要性は理解に難くないはずです。むしろ、日本製鉄によるUSスチール買収を禁じるアメリカの方針を受け入れる一方で(ただし、日本製鉄は、違約金の支払い義務については司法の場に訴えても争うべき・・・)、有事に際しては、日本国における物資不足を解消すべく、アメリカ側からの継続的な供給の確約を求める方が、対中政策としては遥かに建設的であり、両国の安全保障に寄与することとなりましょう。

 ただし、ここであり得る重大なリスクとして考慮に入れるべきは、水面下における世界権力による第三次世界大戦シナリオの存在です。日米間における戦時協力体制の強化は、世界を対立する二大陣営に分け、人類を世界大戦に誘導したい勢力にとりましては‘思う壺’となりかねないからです(シナリオを一歩進めることに・・・)。もっとも、協力メカニズムの発動を有事にのみに厳密に限定すれば、日米間にあって戦時に物資を融通するための協力体制の構築は安全装置の一環と位置づけられ、対中抑止力として作用するかも知れません。日本企業によるアメリカ企業の買収という形ではなく、有事に際してのみ、両国間における物資調達協力メカニズムが発動するように準備しておくのです。政界であれ、経済界であれ、日本国側にあって世界権力、並びに、中国勢力の浸透が強く観察されますので(もちろん、アメリカにも浸透している・・・)、日本製鉄によるUSスチールの買収によって、日米ともに鉄鋼生産が超国家勢力のコントロール下に置かれてしまうリスクは当面は回避されるのです。

 また、第三次世界大戦シナリオの有無に拘わらず、グローバリストが握る巨大なる戦争利権の存在は、日本国側にさらなるリスクを意識させます。2兆円規模とされる買収資金を日本製鉄の自己資金で賄えるとは思えず、その背後には、金融勢力としての世界権力が背後で糸を引いている可能性もありましょう。そして、最悪の場合には、日本製鉄は、アメリカの原子力子会社であるウエスチングハウスの買収で巨額の損失を被り、結局、‘白物’事業を中国の美的集団に売却した東芝と同じ道を歩むかも知れません。最後に笑うのは、一体、誰なのでしょうか?日本製鉄によるUSスチールの買収については、先の先を読んだ対応が必要なのではないかと思うのです(つづく)。

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USスチール買収が何故安全保障の問題なのか-鉄と戦争

2025年01月08日 09時46分25秒 | 国際政治
 アメリカのジョー・バイデン大統領が、大統領令をもって日本製鉄によるUSスチールの買収を禁じた一件については、昨日1月7日に、経団連、日本商工会議所、並びに、経済同友会の3団体のトップが顔を揃えて同措置を批判する記者会見を開いています。その主たる批判点は、安全保障上の理由から買収が禁止されたところにあるようです。自由主義経済を守ってきたアメリカが、このような措置を執れば、むしろ安全保障上のリスクとなる日米離反が起きかねないとして。尤もな主張のようにも聞えるのですが、同批判は、日本国側の安全保障に関する認識の甘さを露呈しているようにも思えます。

 企業買収や合併等の本質的な問題性については後に論じるとしましても、今般の買収劇の舞台が製鉄分野であったことには留意する必要がありましょう。仮に、買収案件がファッション系や食品系の企業であれば、たとえ日本企業が米国企業を買収したとしても、これほどまでに抵抗を受けたり、問題視はされなかったはずです。ところが、製鉄分野ともなりますと、これは、実のところ、‘戦争’と直結してしまうのです。

 仮に、今般のケースとは逆に、USスチール側が日本製鉄を買収するとする計画があったとすれば、日本国政府は、自由主義あるいはグローバリズムの名の下ですんなりと同案を承認するのでしょうか。今日、日本国政府はグローバリストの‘パペット’状態にありますので、アメリカのCFIUS程の審査もなく同案は承認されるかもしれません。しかしながら、おそらく、防衛省当たりからは反対の声が上がるでしょうし、日本国民の中にも日本製鉄の海外企業による買収を日本国の安全保障上の危機とみなす反対意見も現れることでしょう。製鉄産業は、軍需を支える基幹産業であり、武器製造に不可欠であるからです。たとえ、同盟国の企業と雖も、外国企業に軍需産業の主力企業を押さえられるとなりますと、日本国が独自に生産を管理することは難しくなります。売却先が同盟国の企業であったとしても、日本国の防衛や独立性に対してはマイナスに作用するのです。

 因みに、この点に注目しますと、日本製鉄によるUSスチールの買収には、隠れた目的があった可能性もないわけではありません。推測の一つに過ぎませんが、巨大な戦争利権をも握る世界権力が第三次世界大戦誘導計画を実行しているとすれば、日米同盟を含むアメリカ陣営を枠組みとした製鉄産業の合理化と一体化を図ろうとするかも知れないからです。迅速且つ効率的に武器を生産・供給するために。新年早々、習近平国家主席が演説で‘台湾の統一は阻止できない’と述べたとも伝わります。経済面を強調するメディアの報道の裏では、国際社会の上部にあって第三次世界大戦シナリオが進められており、今般の買収案は、まさしく政治、否、安全保障問題であるとする見方もあり得るのです。あるいは、さらに穿った見方をすれば、戦争準備を根拠とする生産体制のさらなるグローバルな‘集中’が真の目的であるのかも知れません。グローバリストには、国家や企業の独立性などは何の意味も無いどころか、自らの世界支配にとりましては阻害要因でしかないのですから。

 また、日本国の経済界側の主張に従えば、究極的には、中国の国有企業である宝鋼集団が日本製鉄を買収しようとした場合、これを認めざるを得なくなりましょう(中国は、アメリカによる買収阻止を批判している・・・)。政治の介入はあってはならないのですから(否定すれば、ダブル・スタンダードとなる・・・)。この場合、日本の製鉄産業の中核企業を中国側に取り込まれますので、日本国は、有事に際しても自立的な軍需品の生産体制の構築が困難となります。もちろん、‘敵国認定’によって中国企業となった‘中国製鉄’を日本国政府が接収するとする対応もありましょうが、買収に伴ってサプライチェーンで中国国内の企業と結合された生産体制が構築されますので、その切り離しは簡単ではありません。そして、製鉄産業の軍事的側面に注目しますと、昨年2024年7月における日本製鉄の宝山鋼鉄との合併事業解消は、中国側にフリーハンドを与えたようにも見えてくるのです。政経わたって日本国は中国勢力が根を張っていますので、アメリカから疑われても致し方ない要因もないわけではないのです。

 人類の歴史を振り返りましても、鉄と戦争とは切っても切れない関係にあります。古代におけるヒッタイトの台頭のバネとなったは、その高度な鉄加工技術にありました。第一次世界大戦に際しても、敗戦国のドイツは、賠償金の未払いを理由としてフランスによって製鉄に必要な石炭の一大産地であり、それ故に製鉄業が発展していたルール地方を占領されています。鉄と戦争との不可分の関係を考えますと、USスチール買収を阻止したアメリカの判断は、バイデン大統領であれ、CFIUSであれ、利己的かつ恣意的で誤っていたとは思えないのです(つづく)。

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否定できない新型コロナパンデミック陰謀説

2024年12月13日 10時15分21秒 | 国際政治
 2019年12月に中国の武漢市に始まるCovid19パンデミックにつきましては、発生当初より、SNS等では様々な憶測が飛び交ってきました。もちろん、中には陰謀説もあったのですが、同パンデミックから凡そ5年が経過した今日では、マスメディアやウェブ上で公開されている情報だけからでも、ある程度は真実に迫ることができるようになりました。そして、同ウイルスについては未だに不明な点は多いものの、点と点が線となり、やがてこれらの分散されていた線が一つのキャンパスに吸い寄せられてゆくと、素描ではあれ、そこにはやはり陰謀の姿が浮かび上がっているように思えるのです。

 陰謀の実在性は、ここ凡そ十日間におけるCovid19パンデミックをめぐる動きからも容易に推測されます。先ずもって、12月2日に、アメリカの議会下院の特別委員会は、「新型コロナウイルスは中国・武漢の研究所にまつわる事故で出現した可能性が高い」とする最終報告書を公表しています。天然のウイルスであれ、人工ウイルスであれ、あるいは、意図的であれ、偶然であれ、同ウイルスは、武漢市に設けられていたバイオセキュリティー・レベル4のウイルス研究所から流出したとしているのです。

 もっとも、武漢ウイルス研究所におけるウイルス研究については、アメリカも無関係ではなく、同報告書では、米国立衛生研究所(NIH)がウイルスの「機能獲得」に関する研究のために資金を提供していたことを事実として認めています。「機能獲得」とは、自然界に存在する天然のウイルスの遺伝子配列に遺伝子操作を加え、新たな機能を付加することを意味します。ウイルス研究所における研究目的が、純粋に自然界に存在するウイルスが引き起こす感染症の撲滅や治療を目指しているならば、あえて‘機能’を拡張させる必要はないはずなのです(有毒化機能や感染促進機能の獲得としか思えない・・・)。ここに、流出の有無に拘わらず、米中が、生物化学兵器にも転用し得るウイルスの遺伝子改変技術の開発を共同で行なっていた実態が明らかになったとも言えましょう。武漢ウイルス研究所は、人民解放軍との関係も指摘されています。

 また、仮に中国が主張するように、Covid19が武漢市の海鮮市場で売られていた野生コウモリを宿主とするウイルスであるとしますと、今日、中国は、12億人ともされる人口大国ではなかったはずです。当時にあって武漢市で撮影された映像では、街を歩く人々がバタバタと倒れていましたが、中国の人々が伝統的にコウモリを食材としていたとしますと、今回の感染拡大も珍しいことではなく、歴史にあって同疫病は何度も繰り返されていたことでしょう(Covid19感染症に耐性を有する人も多いはず・・・)。自然発生説は、おそらく武漢ウイルス研究所からの流出説を打ち消すために創作された‘カバー・ストーリー’としか考えられないのです。
 ここまで事実が明らかになりますと、誰もが、Covid19が武漢ウイルス研究所において実験対象とされてきた研究用ウイルスであり、かつ、遺伝子操作が加わっている可能性が限りなく高い、という結論に容易にたどり着けるように思えます。ところが、新型コロナ発生から5年目に当たる12月8日に、新型コロナ政府分科会会長を務めた尾見茂氏は、報道番組のインタヴューの中で「パンデミックがまた来ることは想定していた方がいい」と語っています。次いで、その二日後の12月10日には、WHOのテドロス・アダノム事務局長が、WHOへの国家主権の移譲を伴うリスクが指摘されてきたパンデミック条約について、2025年5月までに締約国館で合意が成立するものと確信していると述べているのです。

 これらの発言は、なおもCovid19自然発生説を前提としているのですが、上述したように、武漢ウイルス研究所からの流出が真の原因であれば、同条約は最早必要ではないはずです。パンデミックが発生する確率は著しく低下するのですから。採るべき対策は、各国のウイルス研究書における管理体制を強化すると共に、生物化学兵器に転用し得る機能獲得研究の禁止と言うことになりましょう。全く対策の方向性が違っている、あるいは、的外れのです。
 
 しかしながら、このパンデミックの再来を確信しているかのような不可解な対応も、武漢ウイルス研究所からの流出が故意であったと仮定すれば、自ずと理解されてきます。そして、あたかも既に準備されていたかのようにmRNAワクチンが米英の大手製薬会社から大量供給されると共に(従来型であれ、中国でも即座にワクチン提供が開始された・・・)、各国政府も、足並みを揃えるかのようにロックダウンやワクチンパスポート、並びに、全国民ワクチン接種体制の導入に邁進した理由も分かってくるのです。かくして同パンデミックが発生した当時、‘陰謀論’として一笑に付されていた陰謀説も、俄然、信憑性を増してきます。‘プランデミック’とも称されるように、パンデミックを口実とした人類支配体制構築のためのプランが作成されており、コロナ禍とはその実行過程であったと見た方が、余程、現実に起きてきた一連の出来事が一つの計画として説明できるのです(米中の対立も表面に過ぎない・・・)。プラン発動の前に、各国政府を含む世界レベルでの協力体制は、水面下にあって既に整えられていたのでしょう。今や、陰謀説を否定する方が難しくなっているのではないかと思うのです。

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「ブダペスト覚書」の教訓-日台同時核武装が対中戦争を防ぐ

2024年12月11日 11時42分48秒 | 国際政治
 ウクライナ戦争を誘発した遠因として、しばしば「ブダペスト覚書」に基づくウクライナの核放棄が指摘されています。同覚書によって、ウクライナは同時に核の抑止力をも失ったからです。事実を直視しますと、「ブダペスト覚書」とは、NPTの縮図にも見えてきます。核兵器を手放したウクライナと核放棄の見返りに同国の安全を保障したアメリカ、イギリス並びにロシア等との関係は、NPTにおける非核保有国と核保有国との間の関係との相似形であるからです。ウクライナは、結局、約束を反故にされて騙される形となったのですが、核保有国による核兵器使用の可能性が高まる今日、核攻撃のリスクに晒されている非核保有国の多くでは、核保有国、否、NPT体制の背後で蠢いてきた世界権力によって‘騙された’とする感情が湧いていることでしょう。

 もっとも、ウクライナでは既に戦渦に見舞われていますが、他の非核保有国には、戦争を未然に防止する手段が残されています。その方法とは、速やかに核の抑止力を備えることです。つまり、一般国際法としてのNPTの終了、もしくは、各締約国によるNPTからの脱退ということになりましょう。軍事大国による核使用の現実性に加え、インドとパキスタンとの間の核の均衡については別に置くとしても、イスラエル、北朝鮮、イラン等が核を開発・保有した時点で、NPT体制の仕組みは既に破綻しているのですから。NPTの理想論にしがみついていても戦争を回避することはできない段階に、今や至っていると言えましょう。今日とは、物理的な対応をもってしか剥き出しの暴力を止めることができない時代にあるのかもしれないのです。

 「ブダペスト覚書」の事例が人類に教訓を与えているとすれば、それは、核の抑止力の重要性です。同教訓に学ぶならば、中国による台湾侵攻を防ぐためには、先ずもって台湾の核武装を急ぐ必要があるとの結論に至ります。同核武装につきましては、台湾が独自に開発・保有する方法と準軍事同盟国であるアメリカ等の核保有国から提供を受けるという二つの道がありましょう。台湾は、NPTの正式な締約国ではありませんので(条約遵守国の地位)、前者については、NPTによる法的な縛りは格段に弱くなります。台湾の核武装が実現すれば、核の抑止力の効果により台湾有事の可能性が著しく低下しますので、同時に台湾有事が日米同盟により日本国に連鎖的に波及するリスクも下がります。

 もっとも、日本国の場合には、中国との間に尖閣諸島問題も抱えていますので、中国による台湾有事が断念された場合、中国あるいはその背後の世界権力が、日本国に狙いを定めるリスクは逆に高まります(真の目的は第三次世界大戦の誘発にある・・・)。対日侵略のリスク、さらには共に核保有国であるロシア並びに北朝鮮の脅威を考慮すれば、日本国も同時に核武装を急ぐべきこととなります。そして核武装の必要性は、南シナ海問題で中国との間で紛争が生じているフィリピンについても言えましょう。

 なお、シリアにあってアサド独裁体制崩壊の混乱状態の中、イスラエルがシリア領に侵攻したとの報道もあります。イランに対しては抑制的な対応をとる一方で、シリアに対しては‘火事場泥棒’の如きに傍若無人に振る舞うイスラエルの態度には、あるいは、前者が核保有国であり、後者が非核保有国であるとする認識の違いがあるのかも知れません(おそらく、イランは既に核兵器を保有している可能性は相当に高いのでは・・・)。

 仮に、近い将来において中国が台湾に侵攻した場合、後世の歴史家は、何故、時間があるにも拘わらず、台湾、並びに、日本国やフィリピンが核武装をしなかったのか、その非合理的かつ非現実的な無防備さを訝しがることでしょう。否、今日にあっても、「ブダペスト覚書」の教訓に学ぼうとせず、戦争回避のために手段を尽くそうとしない政治家の責任が問われるべきですし、仮に、故意に回避手段をとらないのであるならば、第三次世界大戦を欲する世界権力の傀儡であることを自ら認めたに等しいのではないでしょうか。ノーベル平和賞の授賞式が行なわれている中、核武装の議論は不謹慎として眉を顰める方もおられましょうが、時間は待ってはくれないと思うのです。

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日本国は台湾有事で第二のウクライナに?

2024年12月10日 11時58分46秒 | 国際政治
 非核保有国であるウクライナの運命は、同国と同じく核を保有していない日本国ともオーバラップします。「ブタベスト覚書」が存在しながら、‘核の傘’を提供する国が現れなかったように、日米同盟が存在していても、必ずしも‘核の傘’が開くとは限らないからです。核保有国と非核保有国との間の絶対に越えることができない軍事力の差は、NPTを遵守してきた非核保有国にとりましては死活問題となります。

 この点に注目しますと、東アジアにおける台湾有事は、アメリカを介して日本国をも第二のウクライナの立場に追い込むリスクがあります。アメリカと台湾との準同盟関係が日米同盟に連鎖する可能性が極めて高いからです。否、アメリカ側は既に自衛隊の参加を織り込み済みなのでしょうし、日本国側も効果的な日米合同軍事行動の実現を目指して着々と法整備を進めています。もっとも、米シンクタンクのシミュレーションに依れば、多少の犠牲を払ったとしても、何れもアメリカ側が台湾から人民解放軍を追い出し、最終的に勝利を収めるとしていますので、‘勝ち戦’の予測から日本国の参戦については楽観視する空気があります。

 しかしながら、中国は、‘負け戦’を認めるでしょうか。ウクライナ戦争では、ロシアは、通常兵器による戦いで敗北するぐらいなら、自国の「核抑止力の国家政策指針」に基づいて核兵器を使用すると公言して憚りません。中国の習近平国家主席もまた、自らの面子を保つためにも核兵器の最終的な使用を選択肢に含めていることでしょう。否、周辺諸国の反発から公表は控えているものの、政権内部にあって中国版「核抑止力の国家政策指針」が既に策定されていると考える方が妥当です。中国もまた、威嚇を含めて核の効果的な使用を自らの国家戦略に組み込んでいることでしょう。

 中国による核使用が一般的な予測の範囲内にあるとしますと、台湾有事における日本国の事実上の参戦は、台湾のみならず、日本国をも窮地に追いやります。両国共に非核保有国なのですから。最悪の場合、中国は、アメリカとの核戦争だけは回避したいがために、‘核の傘’が開かないことを見越して、米軍基地への攻撃を口実として日本国に対してのみ核攻撃を加えるかも知れません(日本国に対する核攻撃を機にアメリカの世論が硬化し、台湾防衛を断念して撤退に動くかも知れない・・・)。あるいは、米中両国が核の使用を自制しているとするパフォーマンスの下で、ウクライナのように通常兵器による戦争が‘だらだら’と続いてゆくとも考えられます。通常兵器戦であっても、兵器がハイテク化した今日では、その破壊力は飛躍的に高まっています。‘超限戦’ともなれば、生物化学兵器の使用やサイバー攻撃等もあり得ることとなります。何れにしましても、日本国並びに日本国民の被害は、第二次世界大戦時を凌ぐかも知れないのです。

 中国の習近平国家主席が台湾侵攻を決断する時とは、自国の勝利を確信するか、あるいは、勝敗に関係なく、第三次世界大戦シナリオにあって世界権力によって命令を受けた時となりましょう。今日の国際情勢を見ておりますと、あたかも連携するかのように各国が陣営形成に急ぐ節が見られ、後者の可能性の方が極めて高いように思われます。この場合、日本国の危機はさらに深まります。日本国の破壊や人類支配が、第三次世界大戦を引き起こす目的の一つであるのかも知れないのですから。

 非核保有国の安全をどうのようにして護るのか、と言う問題は、今や日本国のみならず人類共通の緊急課題でもあります。この問題に関連して、昨今、トランプ次期大統領は、NATOからの脱退を仄めかして周囲を慌てさせています。その真意はアメリカの負担軽減にあるともされますが、やがては日米同盟の終了をも言い出すかも知れません。それが、交渉上の‘ブラフ’であれ、第二次世界大戦後のアメリカを中心とした同盟網による‘西側’の安全保障体制は、今日、重大なる転換期を迎えつつあるとも言えましょう。そしてそれは、今後、国際社会はどうあるべきなのか、という、NPT体制の見直しを含めた全人類の未来にも関わる重大問題であると思うのです(つづく)。

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NPT時代の残酷な戦争

2024年12月09日 11時55分02秒 | 国際政治
 ウクライナ紛争は、それが非核兵器保有国と核兵器保有国との間の戦争に発展したため、NPT体制を根底から問い直す機会ともなりました。何故ならば、50年代に始まるNPTの成立過程にあって、核保有国対非核保有国との間の非対称な戦争は想定されていなかったからです。戦後、アメリカの核独占状態が崩れ、ソ連邦をはじめ各国が核兵器を開発・保有に成功する中、核兵器の拡散を防ぎ、核戦争の恐怖から人類を解放することが、NPTの主たる目的であったのですから。言い換えますと、核戦争の未然防止策として始まったのが、同条約に基づく核放棄の義務化であったのです。因みに、1958年にNPT構想を発案したのは、当時、アルランド外相であったフランク・アイケン(Frank Aiken)であったとされます。

 未然防止策とは、時にして、その防止したはずの事柄が起きてしまう可能性を忘れがちです。未然に防止したのだから、懸念すべき出来事は起こらないと信じてしまうのです(‘結果の先取り’思考・・・)。とりわけ、安全面において深刻なリスクとなるのは、手段の保有を禁じつつも、全てのメンバーがこれを放棄しない場合です。何故ならば、一方的に放棄した者は、平時の抑止力のみならず、有事の正当防衛の手段さえも失うからです。この問題は、日本国の憲法第9条にも通じており、軍事力の放棄=平和という命題がたとえ‘真’であったとしても、それが一国のみでは意味がないどころか、むしろ戦争を誘発する要因になり得る現実に目を瞑りがちなのです。NPTの場合もこの傾向が顕著であり、誰もが核兵器の放棄=平和という等式を信じて疑おうとはしませんでした。否、NPTを疑いますと、‘異端’と見なされかねなかったのです。

 かくして、NPT加盟国は増加の一途を辿る一方で、トラテロルコ条約(中南米33カ国:1968年発効)、ラロトンガ条約(南太平洋諸国:1986年発効)、バンコク条約(東南アジア諸国:1997年発効)、ペリンダハ条約(アフリカ諸国:2009年発効)、セメイ条約(中央アジア諸国:2009年)など、今日に至るまでに地域的な非核化条約が凡そ10年おきに成立していきました。1992年には、韓国と北朝鮮の間で「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」まで打ち出されていますので、非核化は抗いがたい時代の大きな流れともなったのです。

 しかしながら、今日、人類が直面しているのは、NPT体制に起因する戦争であり、核戦争の恐怖です。その根底は、上述したように、未然防止策にありがちな‘結果の先取り’問題があります。性善説に基づく未然防止策が描いて見せた平和な未来は、一国でも性悪な国が出現した途端に幻として消えてしまいます。そこに残されるのは、‘持てる国’と‘持たざる国’との間の残酷なまでの不平等な格差です。後者は、前者から戦争を仕掛けられた場合、決して勝つことが出来ないからです。それが、人道に反し、国際法に違反する侵略やジェノサイドを伴うものであったとしても・・・。

 未然防止策に潜む破綻リスクを考慮しますと、NPTとは、全ての諸国に対して正当防衛権を認めた国連の第51条をも空文化したとも言えます。圧倒的に軍事力に差がある場合、正当防衛権とは、事実上、‘持っていても使えない権利’となるからです。ピストルを手にしている相手を前にしては、素手で自らの身を守ことができる人がいないのと同じことです。結局、NPT体制とは、抑止力を放棄した大多数の中小諸国に対する、核という暴力手段を独占的に保有している軍事大国並びに‘無法国家’の勝利を保障しているに等しいと言えましょう(世界権力がNPT体制を堅持したい理由の一つでは・・・)。

 しかも、仮に非核保有国が核保有国に対して通常兵器で自国の勝利寸前まで追い込んだとしても、相手国の核兵器の使用によって一瞬のうちに形勢を逆転され、多くの自国民が被爆すると共に国土が焦土と化してしまいます。軍事同盟によって‘核の傘’を核保有国から提供されている国も、自らも核攻撃を受けることを覚悟してまで同盟国が核兵器での報復を行なってくれると信じてはいないことでしょう。否、軍事同盟の信義から‘核の傘’を開いた時こそ、人類が遂に双方が核ミサイルを撃ち合う核戦争に見舞われるという‘終末の時’となるのです。

 残酷なるNPT体制の現実を直視しますと、ウクライナ戦争をこれ以上継続することは、犠牲ばかりが増えるのみであり、無意味で無駄なように思えてきます(利益を得るのは戦争ビジネスや戦争利権に与る勢力のみ・・・)。このように考えますと、ウクライナを核武装中立国としつつ、ロシアが自国に一方的に併合した地域については、住民投票を実施するなど、改めて国際法に則った手続きをもって法的地位を確定すべきではないかと思うのです。

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NPT体制維持のための茶番劇か-ウクライナの単独核武装を拒む勢力

2024年12月06日 10時48分49秒 | 国際政治
 ゼレンスキー大統領による停戦提案につきましては、NATO側はウクライナの早期加盟に否定的な態度を示す一方で、ウクライナに対する継続的支援については積極的な姿勢を見せています。その背景には、戦争ビジネスの温存があるのでしょうが、軍事同盟の連鎖経路を断つことによる第三次世界大戦の回避、並びに、同戦争に伴う関係諸国の国民の負担や犠牲等を考慮しますと、ウクライナの単独核武装こそ、現下にあっては最も望ましい方向性のように思えます。しかしながら、ウクライナの単独核武装が現状における最適解でありながらも、何故か、国際社会ではこの選択肢を潰そうとする人々が湧き出てきます。敵味方に関係なく、あたかも全員が結託しているかのように・・・。

 ウクライナの核武装につきましては、先ずもってロシアのプーチン大統領が脅しをかけています。ロシアが近年に策定した「核抑止力の国家政策指針」では、核使用条件の一つとして「通常兵器によるロシアへの侵略により存立危機に瀕したとき」と明記されています。同指針は、‘ロシアの安全のために非核保有国の核武装を阻止するために核攻撃’の可能性を強く示唆し、ウクライナの核武装にも適用されるものとして議論を呼んでいました。その後、同指針は先月の11月19日に改定され、「核保有国の支援を受けたロシアへの通常兵器攻撃」に拡大されることとなります。つまり、アメリカもまた核攻撃の対象に含まれることとなったのですが、この文脈において、ロシアは、ウクライナに対するアメリカの核ミサイル配備を牽制したとされます。

 実際に、11月28日付けの本ブログの記事で述べたように、ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領の‘相応の反応’という表現による核の恫喝に屈するかのように核武装の断念を表明しています。また、バイデン大統領が「ブダペスト覚書」に基づいてアメリカに引き渡されたウクライナの核兵器の返還の可能性を示唆したことに対して、プーチン大統領は、「われわれと戦争をしている国が核強国になれば、すべての破壊手段を使ってこれを許さない」と脅しています。そして、プーチン大統領の同脅迫に呼応するかのように、アメリカのジェイク・サリバン大統領補佐官は、ウクライナへの核兵器返還は考慮していないと述べているのです。ここでも、アメリカがロシアの恐喝に屈しているのです。なお、同問題については日本国も無関係ではなく、アメリカによる日本国内へのミサイル配備について、同様の核の恫喝をロシアから受けています。

 以上に述べてきましたように、ロシアの昨今の核ドクトリンには、単独武装であれ、同盟国であれ、ウクライナその他の諸国の核武装は、核兵器の先制攻撃をもってしても阻止するとする強い意志が覗われます。しかしながら、ロシアの脅しに易々と屈するウクライナやアメリカの反応は、いかにも不自然です。ロシアこそ、ウクライナとの開戦後にベラルーシに核を配備していますし、今年の6月に「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、軍事同盟国となった北朝鮮にももちろん核は‘配備’されています。ロシアの態度は、‘自分には許して他者には許さないという’呆れかえるほどの自己中心的な傲慢さなのです。そして、この恫喝を認める側も、呆れかえるほどの‘素直さ’と言えましょう。

 この点、ソ連邦時代の1979年12月12日には、「NATOの二重決定」が採択されています。1972年に核搭載ミサイルであるSS-20弾道ミサイルを配備したソ連邦に対して、軍縮を推進する一方で、NATO側も中距離核兵器を配備するとする決定です。このときには、NATO側は、ソ連邦の核戦力強化に対して核の抑止力、即ち、核の均衡の観点から同レベルの核兵器の配備をもって応じています。ところが、今般のアメリカの対応は、核の先制攻撃を含むロシアの一方的な核戦略を認めており、対抗処置を採ろうとしないどころか、自発的に核武装や核配備路線を放棄し、ロシアの前に膝を折っているのです。因みに、両陣形の中距離核兵器は1987年に米ソ間で締結された中距離核戦力全廃条約(INF)により撤廃されるのですが、SS20弾道ミサイルは、今日、ウクライナの航空博物館並びにキエフの大祖国戦争博物館に展示されているそうです。

 戦争当事国が核兵器を保有できないとする状態は、第二次世界大戦末における核兵器開発競争を思い起こせばあり得ないことなのですが、今日では、NATO諸国でもニュークリア・シェアリングも行なわれており、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの五カ国にはアメリカの核が既に配備されています。同盟国に対する核配備や‘核の傘’の提供は、核の拡散を禁じるNPTにあっても一先ずは許されていますので、自らも同盟国に核を配備しているロシアには、なおさらにこれを否定する立場にはないはずなのです。

 この理解に苦しむアメリカの露骨な屈服は、‘茶番’をもってしか説明できないようにも思えます。核の独占を許すNPT体制こそが、世界権力による支配体制を支える重要な基盤の一つであるからです。そして、それが核保有国による核の恫喝と先制使用を認めるという意味において、NPTの存在意義をもその根底から否定していることに(NPTの維持のために核戦争が起きかねない矛盾・・・)、どれだけの人々が気ついているのでしょうか(つづく)。

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NATOによるウクライナ加盟拒否の思惑

2024年12月05日 12時16分45秒 | 国際政治
 ウクライナのゼレンスキーが提案したNATO加盟とロシア占領地域の現状維持をセットとした停戦案は、早くもNATO側の加盟拒否という壁にぶつかってしまったようです。冷静に未来を予測すれば、何れか一方によって停戦が破られた時点で第三次世界大戦に発展しかねないのですから、NATO側もおいそれとは加盟を認めるはずもありません。

 盧溝橋事件をはじめ、戦争の発端が何者か、あるいは、第三者による工作であった疑いのある場合も多く、当事者双方が遵守しようとしても、外部者の思惑によって停戦の合意が破られるリスクもあります。つい数年前の2022年9月に起きた「ノルドストリーム」爆破事件でさえ、真相が全て明らかになっているわけではありません。この事件では、デンマーク沖のバルト海に敷設されていた天然ガスの海底パイプラインが、何者かの手によって爆破されています。ロシア犯行説をはじめとして様々な説が飛び交ったのですが、仮に、アメリカのウォールストリート・ジャーナル紙が報じたように、訓練を受けたウクライナ兵が同事件の実行犯であり、ゼレンスキー大統領の反対を押し切ってこの工作を命じたのがヴァレリー・サルジニー総司令官であったとすれば、停戦後も同様の事態が起きることは予測の範囲内です。因みに、サルジニー氏は、2024年3月にゼレンスキー大統領によって駐英ウクライナ大使に任命されており、この人事が同氏を‘危険人物’とみた左遷であったのか、爆破の功績を認めての栄転であったのか、あるいは、イギリス絡みの何らかのネットワークに関連してのことなのか、同情報だけでは判然とはしません。

 何れにしましても、ゼレンスキー大統領並びにその背後に控える世界権力にとりましては、同停戦案に基づくウクライナのNATO加盟が最も望ましい未来であったのでしょう。自らの望むときに、何時でも第三次世界大戦を引き起こせるのですから。しかしながら、この案は、既に多くの人々によってリスクが認識されていますので、同案の実現は望み薄です。そこで、同勢力にとりましての次善の策となるのが、ウクライナがNATO非加盟の状態で通常兵器による戦争を続けつつ、チャンスを狙って第三次世界大戦に持ち込むという作戦なのかもしれません。

 同作戦では、NATOはウクライナ加盟による第三次世界大戦リスクを回避し得る一方で、自らを戦場となすこともなく、また、軍人を含めて自国民を犠牲にすることなくして戦争を継続することができます。戦争が継続している間は、兵器は消耗品ですので軍需産業には常に利益が転がり込んできます。兵器の製造や販売等によって利益を得る戦争ビジネスにとりましては、戦争の早期終結こそが‘悪夢’なのです。戦争に対する認識が一般の人々とは真逆と言えましょう。

 アメリカを筆頭に、フランスやイギリス等の諸国も自国内に軍事産業を抱えており、それらが金融・産業財閥である世界権力の傘下にある現状からしますと、ウクライナ加盟案が第一候補ではなく、むしろ、第二候補となる同案へと引き込むための‘囮’のようにも思えてきます。

 この路線については、フィナンシャル・タイムズとのインタヴューにおいてNATOのルッテ事務総長は、ウクライナのNATO加盟には難色を示しながらも、同国への支援継続については前向きな姿勢を示しています。また、欧州諸国が資金のみを提供し、兵器等の製造はウクライナ国内で行なうとするデンマーク方式も、欧米系の兵器製造メーカーによる製造拠点の移転として理解することもできましょう。あるいは、巨額の債務を抱え、かつ、腐敗大国のウクライナのことですから、支援金は債務返済に充てられるか、あるいは、闇に消えてしまうかも知れません。アメリカにあってトランプ次期大統領の当選が決まった直後に岩屋外務大臣がウクライナに飛び、支援継続を約束するぐらいですから、日本国政府も同路線に同調しているのでしょう。

 かくして、第二案は、戦争利権に与る勢力にとりましては望ましいのですが、何れの国でも、その負担は国民に重くのしかかります。戦争当事国のみならず、支援国の国民もまた間接的ながらも‘犠牲者’であるとも言えましょう。日本国民を含む関係諸国の国民負担に鑑みますと、戦争の早期終結は急がれるのですが、NATO加盟と停戦とをセットとしたゼレンスキー大統領の非現実的な提案はむしろ障害となり、停戦を遠のけてしまいかねません。そして、他の諸国の国民の立場も考慮すれば、現時点における同問題に対する最善ではないにしても最も犠牲の少ない方策とは、ウクライナの単独核武装ではないかと思うのです(つづく)。

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ゼレンスキー提案はミュンヘンの宥和の再来?

2024年12月04日 11時48分24秒 | 国際政治
 アメリカにおける第二次トランプ政権の発足を前にしてウクライナのゼレンスキー大統領が提示した和平案は、既に暗礁に乗り上げているようです。昨日の12月3日からベルギーのブリュッセルにてNATOの外相会議が始まりましたが、この席でも、アメリカやドイツ等の主要国もウクライナのNATO加盟には難色を示していると報じられています。もっとも、アメリカの消極的な姿勢はバイデン現民主党政権によるものですので、来年1月にトランプ政権が発足した以降は、トランプ大統領が自らの選挙公約を果たすためにゼレンスキー提案に乗ってくる展開もあり得ないわけではありません。

 しかしながら、世界大戦というものが、世界権力による誘導であった可能性を考慮しますと、ゼレンスキー提案は大いに警戒すべきです。そして、ここで思い出されますのが、イギリスの痛恨の失策とされる1938年9月29日の‘ミュンヘンの宥和’の前例です。当時、イギリスの首相であったネヴィル・チェンバレンはヒトラーの野望を見誤り、チェコスロバキア領であったズデーデン地方のドイツ併合を認めることで、ナチスとの和平を実現しようとしたとされます。ズデーデン地方はドイツ系住民が多数居住していましたので、ロシア系住民が多く住むウクライナ東部の状況とも類似しています。また、ヒトラーが、同地におけるチェコスロバキア政府によるドイツ系住民の迫害を主張していた点もそっくりです。‘ミュンヘンの宥和’につきましては、平和をもたらしたとして当時は国を挙げてチェンバレン首相の決断を称賛したのですが、その後の歴史を知る今日では、ヒトラーに対して侵略の心理的ハードルを下げるとともに、世界大戦準備のための時間的な猶予を与えたとして、評価が逆転してしまっています。

 この点についてはNATOのルッテ事務総長も同様の懸念を示しており、フィナンシャル・タイムズのインタヴューの中でロシアによる北朝鮮やイランに対する支援強化といったNATOに対する敵対的な行為が助長されるリスクを語っています。加えて、中国による台湾の軍事侵攻を誘発しかねないとして、ゼレンスキー提案に潜む危険性を指摘しています。この発言は、迂闊に和平案に飛びつくべきではない、とするNATOの事務総長としてのトランプ次期大統領に対する警告なのかもしれません。

 かくしてNATO側もゼレンスキー提案に潜む宥和リスクを強く意識していることがわかるのですが、同事務総長は、‘ミュンヘンの宥和’になぞらえてはいません。もちろん、今日のウクライナのケースでは戦争の未然回避ではなく既に交戦状態にありますので、状況の違いを認識してのことかもしれませんが、もう一つ上げるとすれば、ゼレンスキー大統領の‘怪しげな姿’が浮かび上がってしまうからとも考えられます。何故ならば、宥和策を言い出したのは、他でもない、ゼレンスキー大統領自身であるからです。これまで、‘ミュンヘンの宥和’の事例をもって国際社会に対して対ロ徹底抗戦を訴え、NATOの参戦まで主張してきたにも拘わらず…。

 和平案の発案者としては、戦争当事国のトップであるゼレンスキー大統領こそ、ミュンヘン会談におけるチェンバレン首相の立場となるのですが、ゼレンスキー大統領の宥和策、即ち停戦提案は、NATOの加盟という条件まで付いています。第二次世界大戦以上に明確なる第三次世界大戦への導火線までセットになっているのです(戦争と平和のセット…)。この点に注目しますと、同提案は、いかにも‘トリッキー’です。ゼレンスキー大統領は、これまでもNATOを参戦させるべく八方手を尽くしてきましたので、今般の停戦案も、トランプ大統領の早期停戦の公約を逆手にとった、巧妙な第三次世界大戦誘導策にも見えてくるのです(この点、韓国大統領による戒厳令の宣言もシナリオ通りに行動しただけである可能性も…)。

 そして、その指南役が存在するとすれば、それはおそらく過去の二度の世界大戦をも背後から操った世界権力なのでしょう。ミュンヘンの宥和につきましても、近年では、第二次世界大戦への準備期間が必要としたのはむしろイギリスではなかったのか、という説も唱えられています。戦争回避は表向きの時間稼ぎのための口実であり、1938年当時、敵味方を演じながら、主要各国は、それとは気が付かれぬように第二次世界大戦に向けて足並みを揃えていたこととなりましょう(つづく)。

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ゼレンスキー大統領の無理筋停戦案の思惑とは?

2024年12月03日 10時53分02秒 | 国際政治
 11月5日に実施された大統領選挙の結果を受けて、アメリカでは第二次トランプ政権の発足が確実となりました。トランプ次期大統領の対ウクライナ戦争の方針は、選挙戦にあって‘ウクライナでの戦争を24時間以内に終わらせる’と公言してきましたように、戦争の早期終結です。次期政権の方向転換を予期してか、報道に依りますと、ウクライナのゼレンスキー大統領もバイデン政権を後ろ盾として強気で遂行してきた戦争政策の見直しを迫られているようです。これまでロシアとの停戦にはいたって後ろ向きであったのですが、ようやく全占領地の奪還を条件としない停戦案を自ら提案したというのですから。その一方で、三次元的な視点からしますと、ゼレンスキー大統領の目的は別のところにあるようにも思えます。

 今般のゼレンスキー大統領による停戦案とは、ロシアが一方的に自国領に編入したロシア軍の占領地域を除くウクライナ領のみを集団的安全保障の対象とする形で、ウクライナがNATOに加盟するというものです。この案では、ウクライナのNATO加盟時の占領地の境界線が停戦ラインとなるため、ウクライナのNATO加盟が、即、NATOとロシアとの全面戦争を帰結するわけではありません。おそらく、ゼレンスキー大統領は、第三次世界大戦をもたらしかねない戦火拡大のリスクは低いのであるから、NATO諸国、否、アメリカのトランプ政権も同案に不満はないはずと言いたいのかも知れません。しかしながら、ゼレンスキー案は、あまりにも無理筋です。

 そもそも、ウクライナが停戦条件としてNATO加盟を迫ったとしましても、NATO加盟諸国の一国でも反対しますと、同案は実現しません。集団的自衛権の発動対象からロシア軍の占領地を除くとしましても、停戦協定が当事国双方によって厳格に守られる保障はありません。言い換えますと、戦争拡大のリスクが残されているわけですから、特に歴史的にロシアの脅威に晒されてきた北欧や中東欧諸国にあっては、ウクライナ加盟に反対する国が現れてもおかしくはないのです。

 また、NATOのリーダー格であるアメリカも、戦争の早期、否、即時終結というトランプ次期大統領の公約は果たせたとしても、将来における戦争拡大リスクを考慮すれば、同停戦案には慎重な姿勢を見せるかもしれません。トランプ次期大統領は、戦争そのものに否定的な立場にありますので、目先の拙速な停戦が未来の戦争を招くのでは、元も子もないからです。

 一方のロシア側も、ウクライナのNATO加盟については一貫して反対を表明してきました。同国への軍事介入も、その真の目的はウクライナのNATO加盟阻止にあったと指摘されるぐらいです。たとえ、今般の提案によって、当面の間は併合地を維持することができたとしても、プーチン大統領が、易々と停戦ラインの外側のウクライナ領にあってNATO軍が活動することを許すとも思えません。しかも、仮に、4年後の大統領選挙で民主党政権が返り咲けば、トランプ政権の反戦争政策は反故となるかもしれないのですから。ウクライナを緩衝地帯のままにして置きたいプーチン大統領は、少なくとも表向きは難色を示すことでしょう。ロシア領であるクルスク州からのウクライナ兵の撤退が停戦条件に含まれないとすれば、なおさらのことです。

 ゼレンスキー大統領の自己中心的な言動にはしばしば驚かされてきたのですが、関係諸国の立場を考えれば、同提案が必ずしも歓迎一色とはならないことは、容易に予測がつくはずです。しかも、目下、ロシア領であるクルスク州ではウクライナ軍が越境し、ロシア軍並びに北朝鮮兵士と交戦状態にありますので、停戦ラインを何処に引くのか、あるいは、NATO軍の関与のレベルという問題をめぐっても交渉は難航することでしょう。

 今般の提案には、幾つもの相当に高いハードルが聳えているように見えるのですが、ウクライナ戦争そのものが上部からコントロールされていると仮定しますと、同提案の意味するところも自ずと理解されてきます。つまり、ゼレンスキー大統領の口を借りた停戦案の第一義的な目的はNPT体制の維持であり、何としてもウクライナの独自核武装路線だけは避けたいとする世界権力の思惑が見え隠れしているのです。交渉が纏まっても、決裂しも、NPT体制を維持できる見通しがあるからです。しかも、停戦交渉が難航すれば、その間、戦争を続行することもできますので、戦争ビジネスにも好都合です。実際に、EUでは、ウクライナに資金を提供して現地で兵器を生産させるデンマーク方式が注目されていますし、アメリカでも、ジェイク・サリバン大統領補佐官がウクライナへの核兵器返還に関して否定的な姿勢を示しているのも、同方針に添っているとも推測されるのです(つづく)。

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猪口邦子参院議員宅火災の動画について

2024年12月02日 11時56分38秒 | 国際政治
 去る11月27日に猪口邦子参議院議員宅で発生した火災につきましては、様々な情報が飛び交っており、今なお不明な点が多く残されております。報道各社や警視庁等の発表内容にも一貫性がなく、事故であるのか、事件であるのかも分からない状況にあります。前者にしては不自然な現場の状況から後者である高いとする憶測もありますが、情報が不足し、かつ、フェイクニュースが混じっている可能性があるため、本日の記事では、同火災の真相に関する推測は控えるとしまして、テレビ局が放映した動画に見られる不審点だけを指摘しておきたいと思います。

 同火災の報道に際しまして、一つの動画が紹介されています。日本テレビ系の「情報ライブ ミヤネ屋」等で放映されたもので、その直後から‘放送事故’との批判が起きることともなりました。何故ならば、ベランダにあって轟々と燃えさかる炎を前にした人の姿が映されていたからです。同批判は、火災で犠牲となられた方の最期の姿を公開するのは報道倫理に反するというものであり、また、ご遺族の悲しみを慮って報道側の無神経さに眉をひそめる声もあったのです。激しいメディア批判の嵐が起きたために、同動画は視聴できない状態にあるものと思い込んでいたのですが、web上にあって削除されることがなかったのです(再生回数が1000万近く・・・)。

 問題視された動画が視聴可能な状況にある一方で、文字情報についてはその後、事件性を打ち消す方向の報道が増えているように思えます。政治家宅での火災ですので、安部元首相暗殺事件のように、明らかに矛盾点や不審点があったとしても、‘なかったこと’にされてしまう可能性もあるのですが、実際に問題の動画を視聴しますと、謎は深まるばかりです。

 日本テレビ側は、同動画は、一般の視聴者によって提供されたものと説明しています。この説明からしますと、火災現場の近隣の住民が撮影したものと推測されます。しかしながら、SNSでは既に同動画は、合成されたフェイク動画ではないかとする指摘があり、動画自体に対する疑問も呈されていました。今日では、生成AIを使用すれば、その道のプロではなくとも動画の加工や合成は難しいことではありません。フェイクの可能性を頭に入れた上で動画を改めて視聴しますと、確かに、合成されているようにも見えます。何故ならば、一続きの動画ではなく途中に断絶があり、およそ三つの場面がつなぎ合わされているからです。上述したフェイク疑惑の根拠は、最初のシーンではフェンスの外に立っていた人物が、その後のシーンではフェンスの内側にいることにあります。確かに、動画に映っていた人物の位置関係が不自然であり、最初から最後までを一つのカメラによって撮影されたとも思えないのです。

 この点、注目すべきは、二番目のシーンです。手にしたペットボトルを頭上に掲げ、液体を撒いているように見えるために、放火説が唱えられる根拠ともなったシーンです。このため、見る人の視線は同人物の動作に向かいがちなのですが、画面の右下側に注目しますと、そこには観葉植物のような植物の一部が映り込んでいることが分かります。地上6階の最上階ですので、周囲にこれを越える高さの樹木が植えられているわけでもありません。となりますと、二番目のシーンについては、ベランダの内側から撮影された可能性が高くなりましょう。

 ベランダ側にも監視カメラが設置されていたとも考えられますが、この説に従えば、動画の流出元として監視カメラを管理しているセキュリティー会社が最も疑われます。その一方で、第一番目のシーンは、明らかに外部から撮影されていますので、第一と第二のシーンは、別のカメラで撮影されたものを繋ぎ合わせたとしか考えられないのです。もっとも、二つの動画の合成であったとしても、ベランダの外側と内側という人物の位置の違いについてはこの仮説では説明が付きません。この点については、実際にはベランダに複数の人物が存在していたか(初期の報道と後の報道では、犠牲者数に違いもある・・・)、あるいは、同動画の各シーンはそもそも別の機会や場所で撮影され、火災の映像が加えられた可能性も生じてきます。

 最期に第三番目のシーンについて指摘すべき点があるとすれば、それは、むしろ過剰とも言えるSNSの反応です。何故ならば、同シーンでは、映像の人物はベランダ沿いに小走りに逃げているように見えるからです。同動画に対する主たる批判は、放送局が火災による犠牲者の最期の瞬間を公開するのは倫理に悖るというものですが、同シーンを見た多くの人々は、無事に避難したものと見なしたことでしょう。高層マンションのベランダには、避難用の階段が設置されているのが一般的であるからです。命が失われる瞬間でもなく、また、避難できた可能性を考慮しますと、テレビ局に対する頭ごなしのバッシングは、いささか酷なようにも思えます(世論誘導のためのSNS工作である可能性も・・・)。

 批判に晒された日本テレビ側は、「全国的にも関心の高いニュースの重要な情報を含んだ映像と判断した」と説明しています。以上に述べてきましたように、同動画に見られる不審点は、同火災が事件であった可能性を強く示唆しており、しかも、日本国の国会議員の自宅ですので、公開の判断は適切であったようにも思えます。そして、このことは、真相の解明には、先ずもって同動画の提供者について調べてみる必要がありましょう。なお、アメリカでも、同日、かの悪名高きロスチャイルド一族の一員であったウィル・ロスチャイルド氏が同様に不可解な火災で死亡しているともされ、何らかの国際的、あるいは、グローバルな動きとの関連性も否定はできないようにも思えるのです。

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プーチン大統領の対日威嚇は何を示唆するのか

2024年11月29日 09時46分07秒 | 国際政治
 言葉による威嚇をもって阻止しようとするプーチン大統領のパフォーマンスは、ウクライナのみならず、日本国にも向けられています。ロイター通信社が、先日11月27日にロシア外務省のザハロワ報道官が、アメリカがミサイルを日本国内に配備した場合、‘モスクワは報復措置を取るだろう’と述べたと報じているからです。同記事によれば、日米両国による台湾有事に備えた南西諸島へのミサイル部隊配備計画を念頭に置いたものとされております。その一方で、ザハロワ報道官は、ロシアが策定した「核兵器使用に関するドクトリン」に言及していますので、ミサイルとは、核ミサイルを意味すると共に、ロシアがかねてより主張してきた‘核武装に対する核攻撃’の可能性をもって日本国を威嚇したことにもなりましょう。

 このロシアからの威嚇、冷静になって検討してみますと、疑問に満ちています。そもそも、台湾有事が、何故、ロシアが核使用の要件としている国家存亡の危機を与えるのか、全く論理的な説明がありません。中国を対象とした日本国内のミサイル配備は、本来、ロシアとは直接には関係のないお話のはずなのです。ソ連邦時代から盟友関係にあり、2001年にテロ対策を目的に設立された上海協力機構のもとに協定国でありながらも、中ロ間に正式の二国間の軍事同盟が成立しているわけでもありません。仮に、近い将来において中国による台湾侵攻を機とした発生した米中戦争がロシアにも飛び火するとロシアが見なしているとしますと、それは、ロシアが、‘確定済み事項’として、ウクライナ戦争と台湾有事をリンケージし、第三次世界大戦に発展する事態を想定している証ともなりましょう。

 この点、ロシアは、2024年6月19日に北朝鮮と「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、積極的に極東への戦火の拡大ルートを敷くべく、積極的に動いています。今では、北朝鮮兵士が、ウクライナ軍の占領下にあるクルスク州で戦闘に参加しているのですが、それでは、ウクライナとの戦争に際して兵力が不足するならば、何故、プーチン大統領は、ベラルーシといった近隣に位置するCSTO(集団安全保障機構)の加盟国を頼らなかったのでしょうか。

 因みに、他のCSTO加盟国は、アルメニア(ただし、現在、同機構からの脱退方針を表明・・・)、カザフスタン、キルギス、タジキスタンであり、上述した上海協力機構にも加盟しています(上海協力機構の他の加盟国は、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イランであり、アルメニアは対話パートナー)。少なくともウクライナ軍がクルスク州の地域を占領した時点、即ち、2024年8月以降にあっては、ロシアは、‘侵略’に対する防衛戦争と見なしてCSTO諸国に対して集団安全保障条約の第4条に基づく集団的自衛権の発動を求めることもできたはずなのです(ロシアが、戦争ではなく、人道的介入を目的とした特別軍事作戦とする立場を貫くならば、ロシア領へのウクラナ軍の攻撃は‘侵略’となるはず・・・)。もっとも、他の加盟諸国も、その本心においてロシアのためにウクライナとは闘いたくはないのでしょう。

  敢て極東の軍事独裁国家である北朝鮮を自国の戦場に呼び入れた背景として、第三次世界大戦シナリオの存在が想定されるのですが、中国を一心同体の同盟国のように見なす今般のロシアの発言も、第三次世界大戦を強く意識したものとして理解されましょう。今になって振り返ってみますと、1902年1月30日における日英同盟の締結も、グローバル戦略の視点からすれば、日露戦争のみならず‘世界大戦’への布石であったようにも思えてきます。二国間紛争や地域紛争を世界大の戦争へと拡大させるには、飛び火先となる遠方の諸国と軍事同盟条約を結ぶのが常套手段なのです。そして、‘鉄砲玉’として使える‘国家’を準備しておくことも、重要な作業工程なのかもしれません。

 何れにしましても、ザハロワ報道官の対日、否、対米威嚇には、中ロ陣営という第三次世界大戦における明確な陣営がその輪郭を表していると言えましょう。そして、次なる疑問は、‘ロシアの安全のために非核保有国の核武装を阻止するために核攻撃を行なう’とするロシアの核ドクトリンです。論理的に考えますと、この理屈が通らないことは明白です。端的に言えば、ロシアには、この主張を正当化し得る法的根拠は何もないからです。NPT条約の成立の趣旨からすれば、矛盾に満ちた主張となりましょう。何故、ロシアは、かくも無理筋の主張を行なうのか、この点についても、第三次世界大戦シナリオが関連しているように思えるのです(つづく)。

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