万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

移民受入拡大は繁栄を約束しない

2009年11月30日 14時55分20秒 | 社会
 今日も昨日に続いて、「移民1000万人政策」について、しばし考えてみようと思います。この政策を最初に言いだしたのが法務省の官僚の方となりますと、この政策もまた、”官僚主導型”となるのですが、果たして、この提言には、説得力があるのでしょうか。

 「移民1000万人政策」には、国民に対して、移民受け入れ=繁栄か、それとも、移民制限=衰退か、という二者択一の選択を迫っているところに、既に間違いがあると思うのです。実際に、人口大国であるBRICs諸国が経済的な離陸を始めたのは最近のことですし、著しい成長を遂げているとはいえ、一人あたりの所得は日本国を下回っています。また、インドネシア、パキスタン、バングラディッシュ、ナイジェリアは、日本国より人口ランキングが高い諸国です。一般的には、経済成長とともに、出生率が低下する傾向にあるとしますと、経済的な繁栄とは、人口規模ではなく、生活水準、教育・文化レベル、余暇の充実、自然環境、医療水準・・・などが物差しとなると考えられるのです。

 国民一人当たりの所得ランキングでは、一位ルクセンブルク、2位ノルウェー、3位スイスと並び、何れも人口規模の小さな国です。ようやく6位に人口大国であるアメリカが登場し、日本国は9位です。人口規模と一人あたりの所得のランキングは一致しないのです。むしろ、人口減少を受け入れ、一人あたりの所得を増やすほうが、国民は、豊かさを実感できるのではないかと思うのです。

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「移民1000万人政策」のナンセンス

2009年11月29日 14時42分42秒 | 社会
移民YES 在日韓国・朝鮮人との出会いが「移民1000万人政策」の原点になった 移住を認める「大きな日本」と美しい衰退の「小さな日本」、どちらを選ぶか(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 元法務省・東京入国管理局長の坂中英徳氏が、「移民1000万人政策」を唱え、積極的な移民受け入れを提言しておられます。しかしながら、この主張には、そこかしこに論理矛盾があるように思えるのです。如何に理由を挙げますと・・・

(1)移民YES=繁栄の単純な発想
 とかくに、移民賛成派の人々は、人口大国=繁栄とステレオタイプの発想をします。しかしながら、人口大国でも、経済発展が遅れている国もあり、一概に、人口増加が繁栄を約束するとは言えません(雇用の方が重要)。

(2)市場のグローバル化による変化
 80年代以降、急激に市場のグローバル化が進んだ結果、多国籍企業は、人件費の廉価な国外に製造拠点を移すようになりました。つまり、人ではなく、工場が移転する時代を迎えているのです。この傾向が続くとしますと、日本国の雇用は将来的には減少しますので、むしろ、人口規模が小さい方が経済状況にはフィットしています。

(3)移民奨励と国外退去否定の矛盾
 氏は、移民を奨励する一方で、国外退去処分が如何に過酷なことか、力説しています。しかしながら、移民とは、住みなれた母国を離れる行為ですので、もし、国外退去が非難すべき事柄であるならば、移民という行為もまた、奨励できないはずです。来日は歓迎、でも、離日は反対では、論理に一貫性がありませんし、バランスを欠いています。しかも、強制退去は、犯罪や違法行為を行った人々に対する処分ですので、政府の当然の行為です。

(4)日本型の育成型移民政策の非現実性
 治安の悪化を招かないために、留学生を軸とした育成型の移民政策を提唱しています(氏は、外国人は犯罪率が高いと認識している)。この手法も、現実を見ますと疑問なところです。何故ならば、もし、”日本人”への完全同化を求めるならば、ホーム・ステイさせるなど、生活習慣を教えなければならないからです。このことは、同時に、母国や母国社会との絆を断つことになりますから、むしろ、反発を受ける可能性さえあります。

(5)在日韓国・朝鮮人問題は解決したのか
 もし、青少年期から日本に住むことで、”日本人化”することができるならば、在日韓国・朝鮮人問題は、存在しないはずです(実際には、犯罪率が高いとの指摘も・・・)。しかしながら、定住外国人への参政権付与が議論されているように、日本国内には、民団や総連など、大規模な民族組織が活動しています。氏は、9割が”日本人”と婚姻していると主張していますが、国籍と民族は必ずしも一致しませんので、集住地域や民族的な要求が消滅するとも思えません(チャイナ・タウンやコリア・タウンなどが増える)。

 以上に述べてきたように、氏の主張の中には、問題点が数多く潜んでいるようです。おそらく、これらの問題点は、日本国のためと言いながら、実のところ、坂中氏が、移民する側の立場を擁護しているからのように思えます。「大きい国」か「小さい国」かという、二者択一で移民政策の選択を迫るよりも、適正な人口規模の下で、繁栄を築く道を探るべきと思うのです。

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景気回復後も怖い国債という魔物

2009年11月28日 14時49分37秒 | 国際経済
来年度税収、40兆円割れ確実=国債44兆円以下は堅持-野田財務副大臣(時事通信) - goo ニュース
 リーマンショック以来、各国とも、政府は、景気刺激策や不況対策を名目に、国債発行額を増やしてきました。ところで、景気回復後も国債のリスクから逃れられないところが、国債の恐ろしさなのではないかと思うのです。

(1)国債価格暴落の心配
 不景気であれば、民間の金融機関も、民間への貸し出しや証券の売買よりも、安定性の高い国債を選好する傾向にあります。しかしながら、景気が上向きますと、国債から民間投資へと投資対象が移行しますので、この時、国債価格が暴落する怖れがあります。

(2)長期金利上昇の心配
 景気回復局面であるほど、民間の金融機関は、国債の保有を控える方向に向かいます。民間金融機関が、国債の入札に応じなくなれば、景気が回復しても、長期金利が上昇する可能性があるのです。

(3)中央銀行の政策金利の心配
 不景気にあっては、中央銀行は、金融緩和策として、低金利政策を行います。景気が回復しますと、中央銀行は、政策金利を上げるという選択肢を持つのですが、ここで政府は、国債の金利上昇を心配せねばならなくなります。

 国債とは、民間金融機関にとりましても、その売却行為が、国家の財政破綻を誘発する怖れがありますので、換金性が低い債権と言えます。たとえ、景気が回復したとしても、国債発行額が多くなればなるほど、上記の事態を心配せねばならないのですから、政府は、できる限り、国債発行額を抑える努力が必要なのではないかと思うのです。

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中国の削減目標―国際基準とは異質の尺度

2009年11月27日 13時06分34秒 | 国際政治
中国、GDP当たりCO2排出量を40―45%削減へ(トムソンロイター) - goo ニュース
 デンマークで来月開催される予定のCOP15を目前にして、各国政府によるCO2削減目標の公表が相次ぎ、中国もまた、昨日、GDP当たりの排出量を40~45%削減するとする目標を発表しました。主要国の削減目標が出揃ったということで、合意近し、との期待感もあるようですが、中国の内容を見る限り、むしろ、合意は遠のいたとの見方もできるかもしれません。

 何故ならば、中国の削減目標は、他の諸国の基準と同じではなく、根本的に別物だからです。他の諸国が、特定の基準年を設定し、その基準年の排出総量から○○%の削減を設定しているのに対して、中国は、2005年という基準年は定めながら、”GDP比”という全く異質の尺度を持ち出しています。削減目標が40~45%と聞いて、中国も、相当の負担を引き受けたとものと感心する人々もあったかもしれませんが、実のところ、総量については何らの上限を設けていませんので、CO2の排出を減らす環境装置を付ければ、いくらでも温暖化ガスを排出することができるのです。

 中国の独自基準による目標設定が、他の先進諸国を納得させることができるとは思われず、実際に、非難の声も上がっています。温暖化ガス削減交渉とは、国際社会における負担の配分問題であることを考えますと、自国に有利な中国の目標設定は、むしろ、議論を紛糾させる要因となるのではないかと思うのです。
 
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民主党は利益誘導政治に逆走?

2009年11月26日 17時30分12秒 | 日本政治
道路ほしいなら「民主応援を」副幹事長、陳情の知事らに(朝日新聞) - goo ニュース
 先の衆議院選挙において、自民党が敗北した原因の一つに、民主党が、”むだ”な公共事業の削減を掲げ、政権交代に伴う制度改革の意義を訴えたことがありました。指摘されているとおり、有力政治家を輩出した地方では、採算性を度外視した立派な道路が走っています。

 公共事業を媒介とした利益誘導型の政治からの決別を訴えながら、もし、民主党の副幹事長が、地方自治体の知事に対して民主党の応援を要求したことが事実であるならば、民主党の看板には偽りがあったことになります。しかも、知事に対して、特定の政党への支援を働き掛けたとしますと、公務員が全体の奉仕者であることを定めた憲法第15条に違反しますし、さらに、都道府県庁を巻き込み、地方自治体を挙げて民主党を応援せよ、ということでしたら、地方公務員法第36条の政治的行為の制限にも抵触することになります。

 これでは、政権交代とは名ばかりで、結局、日本国の政治は、民主党政権が誕生しても、何も変わらず、公然と権力乱用まで勧めているように見えます。行政刷新会議が予算削減に躍起になっている傍らで、民主党が自己利益のために、地方の道路予算だけは拡大するとなりますと、多くの国民は、納得しないのではないでしょうか。

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カーター元大統領の北朝鮮発言の真意は?

2009年11月25日 15時59分06秒 | アメリカ
カーター元米大統領「故金日成主席は聡明で鋭利」(聯合ニュース) - goo ニュース
 政治の世界では、発言の真意を見極めることが大変難しいことがあります。しばしば、メッセージの読み違いが起こり、後々、困ったことになることも少なくありません。94年に米朝関係が緊迫化した際に、仲介役を務めたカーター元大統領が、故金日成主席を評価したとの報道がなされていますが、氏の発言の真意はどこにあるのでしょうか。

(1)金正日批判
 94年の枠組み合意が成立したすぐ後に、金日成主席は世を去りますが、その後、後継者となった息子は、核やミサイル開発など、その行動をエスカレートさせ、瀬戸際作戦を繰り返します。この展開を考えますと、カーター元大統領は、自身が交渉相手であった故金日成氏を持ち上げることで、暴走を続けている金正日体制を暗に批判しているのかもしれません。

(2)独裁体制批判
 為政者の能力は、国の在り方にも影響を与えるものです。カーター氏は、”聡明で鋭利な”指導者を頂きながら、国民を極めて低い生活水準に甘んじさせることになった、北朝鮮の独裁体制を批判しているとも考えられます。為政者が優れていても、国家の体制が悪ければ、良き国家とは言えないと。

(3)北朝鮮との交渉の勧め
 カーター元大統領が、この発言において、北朝鮮との交渉について何度か触れております。このことから、氏は、如何に酷い国でも、為政者には交渉能力がある可能性を示唆することで、アメリカ政府に対して、早期に北朝鮮との交渉を行うよう、勧めているのかもしれません。

 おそらく、大方の見方は(3)なのかもしれませんが、性格や能力は、必ずしも親子間で遺伝しませんし、金正日体制では、金日成体制よりも、はるかに冒険主義的な行動を繰り返えされ、国際社会を欺いてきたことは確かなことです。何れが真意であったとしても、ここはやはり、用心に越したことはないと思うのです。

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尖閣諸島―中国の国内法制定は侵略か?

2009年11月24日 15時27分44秒 | アジア
無人島管理に新法 中国、海洋資源囲い込み(産経新聞) - goo ニュース
 国家の領有権は、現在では、講和条約、国境画定条約、先占の成立など、国際法上に合法的な根拠がない限り、認められなくなりました。中国政府は、国内法によって領有権を確定しようとしていますが、この方法は、侵略に限りなく近いのではないかと思うのです。

 日本国は、1885年から、尖閣諸島が無主地かどうか確かめるために調査を行い、1895年1月に、魚釣島と久場島を沖縄県の管轄と定め、他の島々も国有地としました。国際法に基づけば、この時点で、尖閣諸島の日本国の先占が成立したことになります。一方、中国は、尖閣諸島周辺や東シナ海における天然資源の埋蔵が明らかとなった70年代以降に、俄かに領有権を主張し始め、あげく、国内法を制定して自国の領域に含めてしまったのです。こうした行為は、許されるのでしょうか。

 もし、許されるとしますと、何れの国も、他国の領域の上に、勝手に自国の領有権を設定することができることになります。当然に、一方的に領有権を主張された側は、この行為を自国の領域に対する侵害行為、あるいは、侵略行為と受け取ることになります。この結果、軍隊が上陸を試みようものなら、両国関係は抜き差しならぬ状況となり、武力衝突に至ることは必至となります。中国政府は、国内法による領有の既成事実化が国際紛争を招くことを自覚し、国際法を遵守する方向に転換すべきと思うのです。

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中国の権力分散―独立性なき監査では腐敗防止は無理?

2009年11月23日 14時45分06秒 | アジア
中国、腐敗防止へ改革着手 権限分散、深センで試行(朝日新聞) - goo ニュース
 中国政府は、実験的とは言いながらも、”権力分立”ならぬ、”権力分散”の方向で制度改革を行うと報じられています。はたして”権力分散”は、腐敗防止のための有効な手段となるのでしょうか。

 中国の改革案の狙いは、地方の行政機構を企画立案、執行、監査の三つの権力に分けることで、行政の長に権力が集中することを避けることにあるようです。外見上は、立法、行政、司法の三権分立に類似しているよう見えますが、中国の体制が、一党独裁制であることを考えますと、両者の間には相当の開きがあります。そもそも、行政機関を超越した存在として権力を独占する共産党がある限り、分散化されたこれらの権力は、党組織の中で融解してしてしまうからです。つまり、あくまでも、一党独裁の枠組みにおける”分散”であって、決して、相互に独立的な立場からチェック・アンド・バランスが働く”分立”ではないのです。

 企画立案部門が充分に国民の声を吸収できるか疑問なところですし、特に、監査部門に対して、共産党や他の機関からの独立性を充分に保障しなければ、腐敗防止という最大の目的も実現できそうにありません。意固地になって三権分立を拒否しますと、たとえ政府が改革を繰り返しても、空回りになってしまうと思うのです。

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炭素税よりも”地球温暖化対策関税”がよいのでは?

2009年11月22日 15時50分53秒 | 国際政治
ノーベル賞経済学者らが警鐘!排出権取引は百害あって一利なし?(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 来月の7日からデンマークで開催される予定の第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議を目前にして、排出権取引よりも炭素税の導入を支持する意見が、ノーベル賞経済学者などから出てきているそうです。確かに、排出権取引の制度には、問題点が数多く指摘されているのですが、さりとて炭素税の導入にも、各国の見解の不一致や国民の反対など、高いハードルがあると言います。

 そこで、もう一つの選択肢として考えられるのが、枠組みへの不参加国や応分の負担を回避している非協力的な国からの輸入品に対して、高率の関税をかけるという方法です。炭素税は、国民から徴収しますので、世論の強い反対が予測されいますが、輸入関税であるならば、国民の直接的な負担にはなりません。また、自国の規制を逃れるために、製造拠点を不参加国に移すという企業の行為に対しても、輸出先での販売価格が上がりますので、一定の抑制効果が期待できます。炭素税の場合には、税収を管理・運営する国際機構を設立しなければなりませんが、関税形式であれば、個別の国家で実施することができますので、導入も容易です。

 本気で二酸化炭素の排出量を減らしたいならば、削減に非協力的な国にペナルティーを科したほうが、はるかに効果的であるかものかもしれません。民主党政権では、地球温暖化対策税を検討しているそうですが、地球温暖化対策関税も検討課題なのではないかと思うのです。

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EU大統領と神聖ローマ帝国皇帝

2009年11月21日 15時32分26秒 | ヨーロッパ
EU大統領の知名度めぐり皮肉 ジスカールデスタン氏(朝日新聞) - goo ニュース
 リスボン条約の発効がほぼ確実となり、第一代のEU大統領として、ベルギーの首相ヘルマン・ファンロンバウ氏が選ばれました。この人選に関連して思い浮かべるのは、ハプスブルク家出身で初めて神聖ローマ帝国皇帝に選ばれた、ルドルフ1世の選出事情です。

 神聖ローマ帝国の皇帝は、世襲ではなく帝国領内の諸侯によって選ばれる仕組みとなっており、誰が皇帝に選ばれるかは、常にヨーロッパの為政者たちの関心事でした。度重なる十字軍の遠征では、神聖ローマ皇帝は旗印とはなりましたしたが、13世紀ともなると、その実態は、帝国内の有力諸侯たちが肩を並べ、相互に覇を競う分立状態となります。この結果、1254年から大空位時代に入るのですが、混乱に乗じて、帝国領外のイギリス、カスティーリャ、ボヘミア、フランスなどの大国も相次いで加わり、帝位争いは混戦模様となります。こうした混乱に終止符を打ったのが、当時はまだ弱小の君主であったハプスブルク家のルドルフの皇帝選出でした(1273年)。敢えて小国の君主が皇帝に選ばれたのは、大国や有力諸侯が相互に牽制し合い、強力な皇帝の出現を望まなかったからと言われています。

 今回のEU大統領の選出にも、ルドルフ1世の選出に際して大国の間に働いた力学に通じる政治的なバランス感覚を見ることができます。ヨーロッパに傑出した指導力を持つ大統領が登場するよりも、各国とも、EUおける自国の政治的なプレゼンスを保持するために、大統領職に調整役を望んだのですから。この側面は、国連の事務総長の選出にも観察されていますが、国際機構における集権化と分権化との綱引きが透けて見えるように思えるのです。

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政府がNOなら民間で科学技術プロジェクト基金の設立を

2009年11月20日 12時55分58秒 | 日本政治
凍結スパコン 技術開発の必需品 失えば国際競争“必敗”(産経新聞) - goo ニュース
 技術力の優位が物を言う市場経済にあっては、最先端の科学技術が富と競争力の源泉となることはよく知られています。にもかかわらず、行政刷新会議では、軒並み科学技術の研究・開発分野の予算を削減し、日本経済を衰退に導きたいようなのです。

 このままでは、日本国の将来には希望が持てませんので、何らかの対策が必要となります。例えば、スーパー・コンピューターの予算を政府が打ち切った場合、国民や企業に広く寄付を呼び掛けて、民間基金を設立してはどうかと思うのです。これまでの事業は、新たに設立された民間基金がそのまま引き継ぎ、スーパー・コンピューターが完成した暁には、民間にも広く利用を開くことにするのです。あるいは、できる限りに多くの資金を集めるためには、大口の寄付をした企業に優先権を与えるということも検討課題であるかもしれません。この基金設立において、政府の役割となるのは、企業や個人の寄付を免税扱いや控除対象とし、税制上の優遇措置を与えることです。これまでの研究成果を棄てるのはあまりに惜しいことであり、日本国の損失となります。
 

 民間による科学技術プロジェクト基金の設立は、スーパー・コンピューターに限らずとも、日本国の科学技術力を向上させるためには有効な方法かもしれません。技術軽視の政府任せでは先がありませんので、民間が率先してイニシアチヴを発揮してはどうかと思うのです。

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チベットと中国の関係は効力に疑いのある協定による連合?

2009年11月19日 17時19分40秒 | 国際政治
中国メディア、チベット問題や人権触れず 米中首脳会談(朝日新聞) - goo ニュース
 中国を訪問したオバマ大統領は、”チベットは中国の一部”と発言したと報じられています。中国メディアは、ダライ・ラマ14世との対話や人権問題の改善を求めたことは一切触れず、この発言だけは、アメリカの言質を採ったとばかりに報じたそうですが、チベット問題の発端から考えますと、チベットと中国の関係は、「17条協定」という名の条約に基づく連合に過ぎないのではないかと思うのです。両国の関係が、「17条協定」に基づいているとしますと、チベットが中国の一部か否かという問題は、以下の議論を要することになります。

(1)「17条協定」の効力
 この協定は、人民解放軍がチベットに侵攻した状況下で結ばれたものであり、条約法条約に従えば、無効なのではないか。

(2)「17条協定」の破棄
 ダライ・ラマ14世は、かつて、「17条協定」の破棄を宣言したことがあり、この点からも、効力に疑問があるのではないか。

(3)中国による「17条協定」違反
 中国政府は、「17条協定」の内容を順守せず、チベットの自治権を奪っており、条約法条約に従えば、条約は終了または運用停止したものと考えられるのではないか。

 チベットが中国の一部か否かを判断するためには、まずは、「17条協定」が有効であるか否かの検証を要します。また、「17条協定」が、仮に効力を維持しているとしても、主権と領有権はチベットにありますので、条約の内容を越えた中国政府の権力行使は許されないはずです。”中国の一部”という表現では、あたかもチベットの主権と領有権を否定しているように採られかねませんので、ここはやはり、疑問を呈するべきであったと思うのです。

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中国が清潔になるのか、世界が不潔になるのか?

2009年11月18日 15時28分30秒 | 国際政治
日本の「清潔度」17位=1位NZ、最下位ソマリア-世界汚職番付(時事通信) - goo ニュース
 昨日、北京にて開かれた米中首脳会談は、ホームランドということもあって、中国側の尊大な態度が印象に残るものでした。アメリカのオバマ大統領が、元安是正やチベット・ウイグル問題について踏み込んだ発言を控えた一方で、中国側は、基本的人権の普遍性まで否定したのですから、積み残された中国問題は、なかなか解決しそうにありません。

 それでは、現在の中国優位の状況が、今後、さらに増幅されていくとしますと、国際社会はどのような影響を受けるのでしょうか。今後の影響を予測するデータとして、政治の「清潔度」に関する調査結果があります。この調査結果によりますと、日本が17位、アメリカは19位ですが、中国は、79位と大幅に下位のランクにあります。情報統制がなされている状況下での調査結果でこの順位であるならば、もしかしますと、中国の実際のランキングは、79位を大きく下回るかもしれません。一党独裁体制では外部からのチェック機能が働きませんので、中国が”清潔”になると期待することもできないようです。

 このランキング結果は、金満体質となった中国の影響力が拡大すれば、汚職を通して世界各国に拡散する可能性が高いことを示していると言えそうです。中国は、自国あるいは自分の利益のために、有り余る資金を各国の公務員を買収するために”ばらまく”かもしれないのですから。袖の下が通用する中国の政治文化による汚染を防ぐためには、各国とも政治家を含めた公務員の倫理教育に力を入れ、腐敗防止のための法や制度の整備を急がねばならないと思うのです。

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廃止すべきは行政刷新会議?

2009年11月17日 15時39分16秒 | 日本政治
「能なしでもできる」発言など仕分け人が謝罪(読売新聞) - goo ニュース
 行政刷新会議の仕分け人達の独断と横暴は、連日のようにメディアを通して報じられています。ところで、将来を見越した判断ができないとしますと、行政刷新会議こそ、最大の”むだ”、あるいは、予算削減の”阻害要因”となるかもしれないのです。

 行政刷新会議の科学技術の発展に関する事業への冷淡な切り捨ては、目に余るものがあります。この点については、各方面から非難が寄せられているようですが、仕分け人の人々は、革新的な技術の登場こそが、むだをなくす切り札であることを忘れているようなのです。コンピュータ技術やIT技術の発展が、システム化やネットワーク化を通してあらゆる作業の効率化をもたらしたことは、歴史が証明しています。技術の進歩は、合理化と省力化を実現するです。公的事業もまたこの恩恵に与るものであり、新たな技術を導入すれば、事業コストを半減させることも夢ではありません。もし、スーパー・コンピューターが完成すれば、シミュレーションの精度も高まり、よりむだのない効率的なパフォーマンスが実現するも知れないのです。

 目先の財源確保に囚われて、技術・研究開発への先行投資が、将来的な予算削減に繋がることを見落とすとしますと、それは、大変愚かなことと思うのです。

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子ども手当よりも未来を拓く投資を

2009年11月16日 14時57分57秒 | 日本政治
世論調査―質問と回答〈11月14、15日実施〉(朝日新聞) - goo ニュース
 世論調査によりますと、予算の無駄を削除するという民主党の基本方針については、多数の国民が支持しているようです。しかしながら、削減の方針が打ち出された事業の中には、マニフェストに記載された政策よりも、遥かに重要性が高いものもあるのではないかと思うのです。

 その筆頭が、技術・研究開発の分野です。スーパー・コンピューターの予算削減が、仕分け人の独断で決定されたことに衝撃が走りましたが、将来性を無視した判断には疑問を感じざるを得ません。我が国が、天然資源に乏しいにも拘わらず、経済大国となるに至った最大の要因は、高い技術力にありました。技術力こそが、我が国の存立基盤であることを考えますと、その予算を削るということは、国力の衰退をも意味します。技術力に後れをとれば、将来的には雇用の減少を招くことになり、子ども手当を実施した結果、少子化傾向に歯止めがかかったとしても、職がなくては失業者となるだけです。また、日本国に研究の場がなくなれば、志を持った有能な人材は、海外に流出してしまいます。

 衆議院選挙における民主党のマニフェストには、研究・技術開発の予算を削減するとは一言も書いてありませんでした。有権者は、子ども手当といった諸事業と研究・技術開発の優先順位を決定する機会が与えられていなかったのですから、仕分け作業は、”後だしじゃんけん”のようなものなのです。日本国の将来を担う技術開発への予算削減は、ぜひとも、再考していただきたいと思うのです。

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