万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アジアの予測は経高政低?

2007年12月31日 20時13分03秒 | アジア
2008年アジア アジア台頭は世界を利する――フィナンシャル・タイムズ(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース

 2008年にも続くと見られるアジアの経済成長は、市場の拡大とそれに伴う利益の増大という側面においては、確かに世界を利することになりましょう。しかしながら、その反面、政治的な自由化や民主化が進展しない場合には、アジア各国では、政情の不安定化、または、独裁体制の強化が起きる可能性を秘めています。

 楽観的なシナリオでは、市場経済化は、やがて政治的な民主主義をもたらすとされていますが、そうとばかりは言えない面があります。何故ならば、経済的な自由と政治的な自由は、同一線上に位置しているわけではないからです。経済の自由化とは、私的所有権、営業の自由、契約の自由、職業選択の自由といった諸自由や諸権利が保障されることによって実現しますが、政治の自由化は、まずもって、政治的な選択、つまり、政治思想や信条の自由が許されていなくてはなりません。このことは、取りも直さず、共産主義を唯一の公認のイデオロギーとする共産主義体制や特定の人物が生殺与奪の権を握る独裁体制では不可能であることを意味しているのです。言い換えますと、経済的自由化から政治的自由化への経路は、必ずしも直線ではなく、わずかに財政を接点に通じていたとしても、政治的に遮断されてしまうかもしれないのです。

 このように考えますと、アジアの民主化は、市場経済化よりもはるかに難しく、しかも、経済成長に伴う利権の拡大は、共産党などの現政権が利権を独占し、手放したがらない要因ともなります。そうして、アジアが政治的に停滞し、経済的な豊かさが人々の生活向上に繋がらないとするならば、アジアの人々にとりまして、大変不幸なことなのではないか、と思うのです。

 来る年が、皆様方にとりまして、良い年でありますように。

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孔子アピールは逆効果?

2007年12月30日 19時22分40秒 | アジア
「文化の原点、感銘深い」=福田首相、孔子廟を参観-中国・山東省 (時事通信) - goo ニュース

 中国政府は、自国の言語・文化広報機関として、「孔子学院」を世界各地に設立し、積極的に孔子をアピールする作戦を展開しています。しかしながら、中国政府の意図に反して、この戦略は、裏目に出てしまう可能性もあるのです。

 儒教とは、紀元前6頃の人物である孔子が、家族道徳の実践から仁の完成を目指し、君臣両者の修身を基礎とした治国・平天下を唱えた政治倫理の学とされています。政治思想史から見ますと、自由、民主主義、法の支配といった西欧政治思想に由来する現代国家の価値体系とは異なる政治倫理思想であるとも言えましょう。

 もちろん、儒教の中にある現代国家には欠けている倫理的な要素を評価することもできます。しかしながら、この思想を強調しますと、第一に、諸外国からは、中国が、形式的な位階秩序や上下関係を重視する古代型の国家を目指していると見なされるかもしれません。第二に、国内的には、儒教の求める君子の仁徳を、現代の中国政府が体現していないことにことに対する不満が、国民の間で高まる可能性もあります。政府に高い道徳性が求められるとしますと、共産党の腐敗は、国民にとりましては、より許し難いものとなりましょう。また、第三に、憲法には記されていない思想体系を持ち込むことになりますので、政府自身が、共産主義を否定したものとも受け取られかねません。

 このように考えますと、中国政府が積極的に孔子礼賛路線をとることは、まことに不思議なことです。あるいは、内外からの民主化・自由化の要求を古代思想を盾にしてかわしたり、国内において宗教が広がるのを妨げるためなのかもしれません。

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ローマ帝国の最後の継承者はロシアか?

2007年12月29日 18時10分46秒 | ヨーロッパ
「プーチン首相」は官僚出身の大統領をどうするつもりか――フィナンシャル・タイムズ(2)(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース

 1917年のロシア革命により帝政ロシアが転覆しソ連邦が誕生したとき、人々は、そこにドラスティックなロシアの体制変革を見ようとしたものです。そうして、1991年にソ連邦が崩壊しCISが成立した時にも。しかしながら、ロシアとは、これらの変革などどこ吹く風であり、実際には、その本質は、殆ど変っていないのかもしれません。

 歴史を遡ること今から535年前、モスクワ大公のイヴァン3世は、最後のビザンチン皇帝コンスタンティン11世の姪と結婚します(1472年)。この婚姻によって、ロシアは、東方教会の正教を受け入れるとともに、自らをローマ帝国の継承者として強く意識するようになるのです。その後、イヴァン4世(雷帝)が、ツァーリ(カエサルの意)を称してロシア帝国を建設しますと(1547年)、帝政ローマに範をとるごとく、歴代皇帝は、覇権主義国家の道をまい進してゆくことになります。

 ローマ帝国を支えたもの、それは、”軍隊”と”法律”であったと言われています。現在のロシアもこの例に漏れず、プーチン政権もまた、”シロビキ(軍部)”と”官僚”に支えられているのです。国家の体制が帝政、共産主義体制、共和政と変遷しようとも、この基本的な構図は、今日まで継承されてきていると言えましょう。現代に残る最後のローマ帝国として。

 

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バランス・オブ・パワーから台湾支援を

2007年12月28日 18時33分18秒 | 日本政治
ガス田問題の早期決着に向けた決意を共有、台湾独立は支持しない=首相(ロイター) - goo ニュース

 国際法においては台湾は既に独立国家ですので、今さらに、福田首相が、台湾独立は支持しない、という立場を表明したとしましても、その法的な効力は限られていますが、ここでは、バランス・オブ・パワーの論理から、日本国の外交政策を検討してみることにしましょう。

 現在のアジア情勢を俯瞰してみますと、経済成長を踏み台として急速に軍事力を増大させてきいる中国に対して、日米同盟は、充分な抑止力を失いつつあります。将来的にはこのバランスが逆転し、太平洋の制海権を中国が握るという展開も絵空事ではありません。こうした安全保障上の危機を迎えた場合、古来、国家というものは、重大な対外政策上の選択を迫られることになります。

 存立の危機に直面した場合、大きく分けますと、1)強国に屈し、下位国家化する、と2)バランス・オブ・パワーを考えて中小国と連合する、という二つの選択肢があります。18世紀の哲学者ヒュームは、古代ローマの例をあげて、自らの同盟国が征服されてゆくというのに、ローマの方に味方した諸国の愚かさをを非難しています。この見解に従えば、中国に擦り寄る現政権の行く先には、日本国の属国化が待っていることでしょう。

 未来永劫にわたって、日本国が自らの独立を守り貫くためには、当然に採るべき選択は、後者の政策、つまり、バランス・オブ・パワーを原則とした台湾支援なのではないでしょうか。それは、自らの独立を守ることでもあるのです。
 

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勝者必ずしも勝者にあらずの論理

2007年12月27日 17時56分30秒 | 社会
「フランダースの犬」日本人だけ共感…ベルギーで検証映画(読売新聞) - goo ニュース

 「フランダースの犬」の物語に日本人のみが共感する理由とは、日本人は、悲劇が好きとか、可哀想なお話に感情移入する傾向にある、という情緒的な側面ばかりではないのかもしれません。もちろん、昔から、日本人は、”もののあはれに”心惹かれるものでしたが・・・。

 それでは、他にどのような理由があるのでしょうか。もしかしますと、日本人の歴史的な経験が、日本人をして敗者に価値を見出す文化を生み出したのではないか、とも思うのです。それは、力を以って勝利を得た者が、必ずしも、最も優れた者ではなく、敗者の中にも尊敬に値する人物は存在している、という共通認識です。たとえば、山背大兄皇子は、争いを避けるために、自ら身を引く決断をしますし、高い人徳を持ちながら戦乱の世にあって敗者となった人物は数多く存在しています。むしろ、勝者には、卑怯な手を使ったり、権力欲に憑かれたりする人の方が多いのですから、歴史の敗者は、必ずしも劣った人物ではないのです。「フランダースの犬」のネロ少年も、とびぬけた絵の才能と優しい心があったのですから、この意味において、優れた敗者と言えそうです。

 敗れはしたものの、その才能や人徳を惜しむ心が、長い歴史の積み重なりの中で、日本人の心の中で育まれたのでしょう。そうして、それは、滅びたものの中に美を見出す”滅びの美学”に通じているのです。

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ストレートな投機規制は可能か?

2007年12月26日 18時46分32秒 | 国際経済
原油高騰、金融混乱を協議 洞爺湖サミットの議題判明(共同通信) - goo ニュース

 昨今の原油高を受けて、政府は、2150億円の予算を割いて原油高対策に当たると言います(本日日経朝刊)。

 ところで、日本国は、財政支援を中心に原油高対策を行いますが、この方法は、他の諸国では選択できない場合もあり、また、根本的な解決とはなりません。原油価格を下げるには、1)OPECの解散、2)OPECの増産、3)石油備蓄の放出、4)油田開発、そうして5)原油市場での投機規制、などの方法があります。これらの方法の中で、最も即効性があるとしますと、5)の投機規制ではないか、と思うのです。特に、サブプライムローンに端を発した金融不安は、大量の投機資金を、石油市場に向かわせたと言います。つまり、投機マネーが原油高の一因でもあるのです。

 商品市場へのマネー流入は、商品価格のバブル的な上昇しか招きませし、投機家も自分の行為がやがて自分自身に跳ね返ってくることに気付きません。ですから、政府間の協議によって、各国が、何らかの規制を設ける合意を形成するべきではないか、と思うのです。原油高問題は、日本国のみの問題ではなく、地球規模の深刻な問題ですので、洞爺湖サミットには、相応しい議題と言えましょう。

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国民を怠け者にする民主党

2007年12月25日 20時20分14秒 | 日本政治
高校授業無償化へ民主が法案、通常国会提出へ(読売新聞) - goo ニュース

 学力低下の現実に直面して、ようやく”ゆとり教育”の見直しが始まりましたが、民主党が通常国会への提出を予定しているこの”高校授業無償化法案”もまた、形を変えて、国民の教育と精神性を蝕む一因となるのではないか、と危惧しています。

 その理由は、第1に、法律によって義務教育とされているのは、小中学校のみであり、高等教育は、国民の自発的な選択によるものであるからです。言い換えますと、進学は国民の学ぶ自由に含まれるのであって、政府が、希望者全てに入学を保障する理由はないと思うのです。政府は、学ぶ意志がありながら、経済的な事情で高等学校へ進学できない人々に支援の手を差し伸べるべきなのではないでしょうか。むしろ、誰でも入学できるという状態は、学生の将来に対する目的意識を失わせることになります。
 第2に、希望者全員の入学は、”競争しない”、という行き過ぎた平等教育の弊害を再発させることになります。中学校で勉強しなくても自動的に進学できることになりますので、入試に向けたモチベーションが低下してしまうのです。これでは、”競争しない”どころか、さらに進んで”何もしない”という状況になるかもしれません。
 第3に、現在、誰もが高等学校に進みますが、本当のことろは、それぞれが、自らの個性を生かした職業選択があっても良いとも考えられます(早期から専門的な技術を取得するほうがよい場合もある・・・)。高校進学を標準に据えた政策は、それ以外の選択をした人々を軽視することにもなります(同年代でありながら、職業人を選択した側が学生となった側を支えることになる・・・)。

 以上の点から、民主党の案は、教育のレベルを低下させ、合わせて、国民意識を怠惰に誘うのではないか、と心配するのです。変化の激しい時代にあって、本当に必要となる人材とは、与えられることで満足する人間ではなく、自ら決断し、あらゆる困難に立ち向うことができる強靭な精神力を持つ人間なのではないでしょうか。
コメント (8)
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日本国債は国内消化なら安心?

2007年12月24日 18時04分38秒 | 日本経済
国債発行、個人向け6.2兆円=家計消化に期待-財務省 (時事通信) - goo ニュース

 アルゼンチンなどと違って、日本国債は、国内の金融機関や個人が購入しているため、国家デフォルトを起こしたとしても、さほど心配する必要はない、という意見があります。しかしながら、その反面、自国だけで自滅してしまう可能性もあるのです。

 安全論の根拠は、外国に対して債務がなければ、国内的な対処で不履行問題を乗り切れる、とするものです。例えば、日銀が国債の買い切りオペを実施しますと、国内的なインフレが起きても、国家の債務を全部、あるいは一部帳消しにすることができます。また、たとえ国家がデフォルトを宣言しても、被害を被るのは国債を大量に購入している国内の金融機関や個人ですので、国際的な批判を浴びることはありません。さらには、国内の金融資産を、強制的に国債に転換するという政策もあります(郵政民営化に際して、元本保証限度を超えた預金は自動的に国債化された・・・)。こうして、政府は、危機的状況に陥っても、国内問題として解決できるものと踏むでいるのでしょうが、国内的な経済混乱は避けられません(経済が麻痺し、国民生活も不安定化・・・)。 

 そもそも、6.2兆円分の個人保有の国内資金が国庫に吸収されてしまうのですから、このことだけでも、民間への資金の流れが滞り、日本経済にとりましてマイナスとなります(クラウディング・アウト)。財務省の方々は、国債発行額を減らすことにこそ、努力を払っていただきたいと思うのです。

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台湾の国民投票は中国に対する抑止力

2007年12月23日 18時40分37秒 | アジア
「台湾」国連加盟問う住民投票 米中台、駆け引き激化(朝日新聞) - goo ニュース

 アメリカ政府が台湾に対して国民投票の実施の自粛を暗に求めた理由は、中国を過度に刺激しない、という目的に尽きましょう。ただし、それが、東アジアの平和と安定に繋がるのか、という問題になりますと、必ずしも中国に歩み寄る態度のみが適切な政策であるとは限らないと思うのです。

 何故ならば、台湾の地位が不安定な間は、中国政府は、常に「反国家分裂法」の発動に踏み切るチャンスを持つからです。むしろ、台湾の独立国家としての地位を尊重し(台湾は、国際法上の独立国家の要件を充たしている・・・)、国際社会が台湾を国家として迎え入れ、台湾の国際的地位を不動なものとして確立させた方が、はるかに中国の武力行使を抑止する効果を持つかもしれないのです(もし、中国政府が武力行使をすれば、明白な侵略行為となります・・・)。

 時にして、安易に相手に迎合するよりも、あえて意に反する行為を選択した方が、望ましい結果を得られる場合もあるのです。

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たかが民族、されど民族

2007年12月22日 18時44分26秒 | ヨーロッパ
ミス・ベルギー非難の的に オランダ語理解できず 南北政治対立の余波(西日本新聞) - goo ニュース

 一端、火が付いてしまった民族感情と言うものが、如何に制御し難しいものであるのかは、旧ユーゴスラヴィア紛争が激化する過程でも痛感させられたものです。昨日までは、異なる民族が仲良く暮らしていたのに、次の日には、”敵”に変じてしまったのですから。

 ベルギーにおきましては、旧ユーゴスラヴィア紛争ほど悲惨な武力紛争に至るとは思えませんが、複数の民族的地域で構成される連邦制の場合には、連邦制が良いのか、分離が良いのか、という問題については、未だ、明確な答えは出ていないのです。個人レベルでは、離婚のように修復不可能な関係は解消すべき、となりましょうが、国家のレベルとなりますと、そう簡単には解決できそうにはありません。しかしながら、ベルギーがEU加盟国であるということが、両者が分離しやすい状況をつくりだしていることもまた確かと言えましょう(EUが共通して政策を実施している領域がありますので・・・)。

 何れにしましても、共存できたり、共通の利益を享受できる場合には、連邦制を維持する方がよく、お互いの民族がいがみ合い、相互に不幸になるならば、分離した方がよい、とは言えそうです。実のことろ、”たかが民族、されど民族”なのです。


 

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排出権不況の予感

2007年12月21日 21時20分49秒 | 国際経済
 地球温暖化対策の一環として、排出権市場の整備が世界各国で進められており、日本国でも、金融市場の競争力強化の文脈において、設立の検討が進められている”総合取引所”に併設するという案が検討されているようです。すなわち、証券、商品、ならびに排出権の各市場が融合し、投資資金は、これらの間を即時かつ自由に移動できることになるのです。果たして、この結果、経済はどのような影響を受けるのでしょうか。

 資金を自由に移し替えることができるようになりますので、確かに、金融機関にとりましては、メリットはありそうです。その一方で、製造業や消費者にとりましては、あまり歓迎すべき事態にはなりそうにありません。何故ならば、民間における排出量の削減が困難な状況にあって、排出権の将来的な価格上昇が予測されているからです。需給関係から生じる値上がりに加えて、これを好機と排出権の先物市場に投機資金が大量に流れ込むとなりますと、価格上昇に歯止めをかけることは難しくなります。かくして、石油や穀物価格と同様に、必要経費(損金)となる排出権価格の上昇は、企業収益を圧迫し、経済全体にマイナス要因として働くことになるのです。

 排出権不況は、以上のメカニズムを通して容易に発生しそうです。やがて、それは、融資の焦げ付きや倒産などの増加により、金融機関の利益をも脅かすことになりましょう。こうした事態を防止するためには、何らかの制度的な工夫が必要なのではないか、と思うのです。

 

 

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コソボ分割は可能か?

2007年12月20日 18時12分04秒 | ヨーロッパ
コソボ独立の解決を断念 安保理での妥協不可能(共同通信) - goo ニュース

 コソボの独立問題は、安保理での妥協の模索もかなわず、しばし暗礁に乗り上げてしまったようです。その理由は、アルバニア系住民の独立をセルビアが認めない、ということに尽きます。この膠着した状況、コソボ分割という方式を採用すれば、双方が合意に達する可能性はあるのでしょうか。

 コソボ自治州は、住民の大半がアルバニア系ではありますが、北部では、セルビア系の人々が多く居住している言います。この人口分布を配慮して、領土の大半はコソボとして独立しつつも、北部の一部をセルビア領として残し、希望があれば、コソボ側に居住するセルビア系住民、および、セルビア側に居住するアルバニア系住民の移住を相互に許可するという案はどうでしょうか。領土全域の所属を争いますと、オール・オア・ナッシングとなりますが、上手に分割できれば双方の妥協点が探れるかもしれません。

 領土問題は、どれ一つとして同じものはなく、根本的な解決には様々な要因が考慮されなければならないのですが、コソボの歴史を振り返りますと、分割案も検討する価値はあるのではないか、と思うのです。

 

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天使が悪魔になるとき

2007年12月19日 18時37分36秒 | 日本政治
孤立深める日本 「死刑停止」の国連決議で(朝日新聞) - goo ニュース

 死刑廃止運動は、特にEUを中心にヨーロッパ諸国で活発であり、その広がりは、遂に国連にまで達したようです。ヨーロッパの人々の死刑廃止への熱意は、恐らく、合理性ではなく、キリスト教精神に内在する”許し”から発しているのでしょうが、それが、全世界の人々に受け入れるようになるまでには、まだまだ長い時間がかかりましょうし、あるいは、拒絶される場合もあるのではないか、と思うのです。

 何故ならば、如何に完璧なる理想を現し、また、如何に善意に満ちた行為であっても、それは、その行為の行われる状況によって、悪い結果を生むことがあるからです。死刑の廃止は、もちろん、人命の尊重と崇高な許しの精神からしますと、これ程、人類の寛容と進歩を示すものはないように見えます。しかしながら、その一方で、人命が軽視され、残酷さが根強くはびこっているような社会では、死刑の廃止は、さらなる犠牲者を生みだすかもしれないのです(本当は、ほとんどの国が、死刑を廃止できるほど、全ての国民が健全で成熟しているわけではない・・・)。利己的な動機から無慈悲に相手の命を奪っても、自分の命だけは助かるのですから。死刑による死への恐怖が犯罪を思い止まらせる、ということは、大いにあり得ることなのです。

 天使が、舞い降りる先を間違えますと、悪魔の役割を演じてしまうことになるとは、何と悲しい現実でしょうか。 
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”ガス田”を首相訪中のお土産にしないで

2007年12月18日 18時14分40秒 | 日本政治
首相訪中時の合意困難 ガス田開発交渉で経産相(共同通信) - goo ニュース

 今月末に予定されている首相訪中に際して、東シナ海のガス田の共同開発に関する合意が成立するとの憶測が、昨今、政界やマスメディアを飛び交っていたようです。本日、この合意は、しばし延期されるとの見通しが伝えら、一先ずは、国家的な危機は回避されたようです。

 この問題で懸念されるべきことは、首相の訪中のたびに、”お土産”として国家の権益が譲られてしまうという前例をつくってしまうことです。相手国との友好関係の構築を最優先にして訪中しますと、民主党の小沢党首のように、言うべきことも言えず、交渉らしい交渉もできず、ひたすら相手に迎合することになります。首相の場合には、政府を代表し、かつ、対外的な権限を持ちますので、うかつな迎合は、日本国にとりまして実害となってしまいましょう。

 首相訪中が回を重ねるにつれて、やがて、国益が削られて、自国のガス田などないに等しくなる、というような状況は、ぜひにも避けていただきたいと思うのです。

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韓国の起源マニアは困りもの

2007年12月17日 19時47分14秒 | アジア
中韓、ルーツ論争激化 「漢字」「囲碁」「孔子」(産経新聞) - goo ニュース

 つい最近まで、茶道や剣道などの日本の伝統文化の起源みならず、歴史に登場する有名な人物までも韓国の出自であると主張する説が内外に流布され、日本では、随分迷惑なものと呆れられたものです。この韓国の起源マニアが、ついに中国にも及んだようで、両国間の激しい論争となっているというのです。

 日本人から見ますと、漢字も囲碁も、もちろん孔子も、中国に起源があることは当然の常識なのですが、この常識にさえ異論を唱えるのですから、韓国の起源マニアは尋常ではありません。しかも、日本での場合と同様に、海外にも自説を広げて既成事実化をはかろうとするのですから、迷惑かつ不愉快この上ないのです。最近の国際世論調査でも、中国人の嫌いな外国人のトップが韓国人であったそうですから、こうした伝統文化ジャックとでも表現できるような態度が、国家間の関係にも影響を与えているとしたら、これは相当の問題であると言えましょう。

 相手国の文化を尊重せず、いたずらに自国起源ばかりを主張していますと、相手国国民の自国に対する感情が悪化するという事実に、韓国は、そろそろ気づくべきではないか、と思うのです。
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