万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

家庭向け電力自由化の天国と地獄

2012年12月05日 15時35分16秒 | 日本経済
家庭向け料金設定、段階自由化 電力小売りで経産省方針(フジサンケイビジネスアイ) - goo ニュース
 経済産業省は、家庭向け電力小売りについても、段階的に自由化を進める方針を公表したそうです。杜撰な制度設計と見切り発車では、再生エネ法の二の舞となる怖れがあるのですが、果たして、この制度には、どのような運命が待ち受けているのでしょうか。

 独立系の発電事業者もあるにはあるものの、現行の制度では、一つの電力会社が、原子力、火力、再生エネの各電源による発電事業を包摂しています。電源によるコスト差は、一つの電力会社が販売元となることで、内部で平均化されているのです。ところが、電力小売りが自由化されるとなりますと、各家庭は、自由に電源の異なる発電会社と契約を結ぶことができるようになります。予測される一般家庭の行動は、当然、最も安い価格の電力を供給する電力会社と契約を結ぶことです。この制度では、各家庭は、再生エネ事業者だけを選択することもでますが、現実には、原発容認の国民の方が多いのですから、通常の価格の数倍に上る高値の再生エネ事業者と契約する家庭は、そう多くはないはずです。再生エネ導入によるコスト高は、自発的に再生エネ事業者と契約した家庭の負担となりますので、現行の強制負担よりは、公平な制度ではあります(再生エネ法は廃止?)。結局、自由競争を導入しますと、輸入燃料代が嵩む火力事業者も苦戦し、最終的には、原発を擁する電力会社が圧勝するシナリオもあり得ないことではありません。電源によるコスト差を無視して自由競争するのですから、これは、当然の結果なのです。

 再生エネ法による国民負担がなくなりますので、この点、一般の国民にとりましては、電力自由化は、朗報とはなります。その一方で、発送電の分離を想定しているとしますと、日本の送電施設が、中国系ファンドといった外資の手に握られ、国家の根幹にかかわるエネルギー部門を押さえらてしまうと共に、日本国民が、不利益を蒙る可能性もあります。このように考えますと、再生エネ法の見直しも含めて、エネルギー政策については、今月発足する新政権の下で、仕切り直しが必要なように思うのです。

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コメント (4)
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