万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

FIFA汚職問題-”独占”は必ず腐敗する

2015年05月31日 13時19分24秒 | 国際政治
ウィリアム王子がFIFAを痛烈批判「我々はフットボールをしている」
 6人もの逮捕者を出したことで汚職問題に揺れるFIFA。にも拘らず、一昨日実施された会長選挙では、現役のブラッター会長が再選され、疑惑に満ちたブラッター体制は当面続く模様です。

 組織内部における自浄作用を疑う欧州諸国がブラッター会長再選の阻止に動く一方で、当のブラッター会長は、今のところは改革に積極的なポーズを見せております。実のところ、この腐敗問題、サッカーのみならず、興業的なスポーツイベントを開催している国際スポーツ機関に付きまとう、共通の病理ではないかと思うのです。何故ならば、世界○○協会や国際○○連盟とは、得てして全世界で一つしかないからです。つまり、全世界で一つであれば、放映料やスポンサー料などは莫大な額となり、しかも、価格も立場の強い国際組織の側が容易に釣り上げることができます。決定権を握る役員のポストとは、まさに”お金の生る椅子”であり、逮捕されたFIFAの役員の宿泊施設が超高級ホテルであったことも、放漫財政とも言えるリッチ体質を物語っております。しかも、このポストに就任すれば、開催地立候補国やスポンサー企業…から私的に賄賂が提供される機会にも遭遇します。よほど精神力が強く、清廉潔白な人物ではない限り、役員ポストは容易に私物化され、不正や腐敗の温床になりかねないのです(一種の官製談合…)。全世界の人々スポーツの機会や楽しみを提供するという意味において、国際スポーツ機関の公共性は極めて高いのですが、チェック・アンド・バランスを組み込んでいる一般の政府と同程度には(もちろん、政府でも談合は発生しますが…)、利権の独占から生じる腐敗を防止する仕組みが整ってはいないのです。

 ”独占体質”が問題であることは、内部チェックのみならず、第三者による外部チェックの仕組みが必要であることを意味しておりますし、会計や情報の開示義務や役員に対する審査の厳格化といった機構改革も求められます。そして、さらに厳格に腐敗防止を徹底するならば、国際社会において、国際スポーツ機関を対象とした”スポーツ汚職・談合防止協定”といった国際ルールや防止の仕組みを造るべきなのかもしれません。スポーツマンシップを育てるべき立場にある国際機関が、フェアプレーが無意味であることを自らの悪しき行動で全世界に示している現状は、あまりにも不健全であると思うのです。

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日韓世論調査-読み取るべきは中韓同盟の予兆では?

2015年05月30日 12時37分48秒 | アジア
「韓国は民主主義」と答えた日本人わずか14% 前ソウル支局長問題影響か 日韓世論調査 
 日本の民間NGOと韓国のシンクタンクが共同で実施した世論調査の結果、日本国が韓国を民主主義国家とする回答はわずか14%である一方で、韓国側では、58.1%もの高い率で、日本国を軍事的脅威と見なしているそうです。この世論調査の結果は、一体、何を意味するのでしょうか。

 マスコミが報じる調査結果は一部ですし、誘導的な設問も推測されますので、全体像を掴むことは難しいのですが、日韓両国の世論は、”民意の溝”といった些細な意識の違いではなさそうです。日本側の韓国に対する非民主国家認定は、両国間における価値観の共有の欠如を明白に示しておりますし、韓国側の”日本国軍事脅威論”も、近年、頓に顕著となった東アジアにおける地殻的な変動を示唆しております。何故ならば、韓国では、中国を軍事的脅威とみなす回答は、わずか36.8%に過ぎないからです。この回答、今日、中国が、南シナ海の埋め立てを強行し、国際社会における中国脅威論が高まっていること、そして、米韓同盟を考慮しますと首を傾げる結果です。しかしながら、仮に、韓国が、自らを中国陣営に位置付けているとしますとどうでしょうか。ここ数年、中国が、積極的に韓国の取り込みに暗躍する一方で、韓国もまた、事大主義から中国に靡いてきました。中国よりも日本国に対する警戒感が強いのは中韓関係強化の結果でもあり、ある意味において当然のことかもしれないのです。しかも、反日教育によって日本国を”敵国”と教え込んできた韓国は、竹島を戦後の混乱に乗じて武力で奪っておりますので、なおさら日本国の軍事力を怖れているのでしょう。

 マスコミは、日本国軍事脅威論の原因は、集団的自衛権の行使容認以降の安保法制に対する批判的な反応と見ておりますが、日韓が同一の陣営に組していると意識しているならば、中国に対する抑止力が強化されるのですから、むしろ歓迎するはずです。そうではなく、軍事脅威論が高まったところに、将来的な中韓同盟の予兆を感じるのです(中国は、韓国に対して領土保全と竹島の領土化を密約で保障したのでは…?)。

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日本の捕鯨・イルカ追い込み漁問題-近代科学による”魚”から”知的哺乳類”への転換

2015年05月29日 09時57分45秒 | 国際政治
イルカ追い込み漁利用禁止規定、JAZA策定へ
 古来、日本国が漁業として営んできたクジラやイルカの捕獲は、近年、残酷であるとする国際的な批判を浴びております。世界水族館動物園協会からのイルカ追い込み漁のみならず、鯨もまた、シー・シェパードなどの攻撃の対象となってきました。

 こうした問題が発生した要因の一つは、近代科学によって、クジラやイルカが動物、しかも、かなり知能の高い哺乳類であることが判明したことにもよります。近代科学の知識が導入される以前の日本国では、クジラやイルカは、海を泳ぐ他の魚達と区別されておららず、一般的には、”魚類”として扱われておりました(仏教でも魚や鳥は食してもよい…)。江戸時代には、殺生を忌避する仏教の影響から、牛や豚と言った動物を食することは禁じられていましたが、捕鯨や追い込み漁は、伝統的な漁法として受け継がれてきたのです(日本国の伝統文化とされる理由…)。ところが、近代科学によってクジラとイルカが哺乳類に分類されますと、日本国は、認識の転換を迫られることになりました。そしてそれは、心理的な衝撃のみならず、今日では、国際的な批判として日本国を苛めることになったのです。日本人は、知的な海の哺乳類を残酷に殺害する人々であると…。しかしながら、生類憐みの令を発した犬公方が登場したり、肉食が禁じられるなど、歴史全体から見ますと、日本人は、動物達にやさしく接してきました。生命を尊ぶ感覚は、あらゆる命あるものを供養し、感謝する風習にも表れております。

 この点、国際社会は、日本国の事情に無理解ですし、日本国もまた、この問題に適切な対応を見いだせない状態にあります。そしてこの問題は、人間と動物の区別、そして、生命の価値の違いを含むあまりに多くの論点を、日本国のみならず、国際社会に対して提起していると思うのです。

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EU離脱問題-イギリスの主張にも一理あるのでは?

2015年05月28日 15時12分14秒 | ヨーロッパ
 イギリスの議会選挙の結果、保守党が雪崩を打つように勝利したことで、EU離脱を問う国民投票の実施も現実味を帯びてきました。施政方針演説によれば、2017年末までに国民投票を実施する方針とも伝わりますが、仮に、イギリスがEUから脱退するとなりますと、成立以来拡大を続けてきたEUは、初めて縮小局面を迎えることになります。

 元よりイギリスは、EUに対して一歩距離を置く姿勢が目立ってきましたが、今般の離脱問題に関連してイギリスは、EUに対して、”人の自由移動”に関する是正要求を提示しております。”人の自由移動”とは、発足以来、EUが掲げられてきた原則の一つですが、二つの面で、イギリスは、この原則に修正を求めているようなのです。第一に、域外からの移民については、現在の制度では、加盟国のうちの一国において合法的に移民資格を獲得すれば、他の加盟国にも自由に移動することができます。この結果、外国人に対して厚い社会保障政策を実施している国に移民が集まり、社会保障レベルと移民増加の間に比例関係が成立することとなりました。言い換えますと、”人の自由移動”は、特定の国への移民の集中が起きる要因となり、それは、受け入れ国の財政問題に直結しているのです。第二の是正要求は、加盟条件における域内移民に対する制限の強化です。EUでは、外国人に対する賃金差別を禁じておりますので、当然に、人が自由に移動できるとなりますと、賃金水準の低い新規加盟国から高い賃金水準にある諸国への移民の流れが発生します。こちらの方は、財政悪化の直接原因となりませんが、国内における雇用問題を引き起こします。また、どちらの問題にあっても、国家の崩壊や社会分裂のリスクは高まりますので(実際にテロが発生…)、原則の見直しを求めるイギリスの要求も理解に難くはありません。

 実のところ、イギリスは、本気で離脱を望んでいるわけではないとも指摘されており、軌道修正の要求が実現すれば、国民投票の実施も見送られる可能性もあります(あるいは、実施しても否決…)。また、イギリス以外の他の諸国でも、EUの移民政策に見直しを求める声が決して小さくないことを考慮しますと、案外、イギリスは、”憎まれ役”を敢えて買って出ているのかもしれないとも思うのです。

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日本国の安保法制法案の審議-中国の軍事戦略を前提とした議論を

2015年05月27日 15時52分12秒 | 国際政治
他国で武力行使、首相ら拡大示唆 機雷除去など
 日本国の国会では、審議入りした安保法制法案について、与野党間で活発な論戦が展開されています。法案の早期成立を目指す与党と、海外での武力行使を何として阻止したい野党との対立構図は、日本国の政治では、見慣れた光景でもあります。

 時を同じくして、中国では、「中国の軍事戦略」と題された国防白書が公表されました。こちらも何時ものことながら、域外からの脅威を理由として、海上有事を想定した防衛力を一層強化する方針を示しております。防衛を名目としながら攻撃的な拡大主義路線であることは明白であり、中国海軍の近海型から遠海型への転換に留まらず、空軍についても、領空防護型から攻防兼務型への変換を目指しているそうです。日中の軍事政策は、全く対照的なコントラストを描いています。日本国では、できる限り武力行使の地理的範囲を狭くする方向で議論が進められている一方で、片や中国では、武力行使の地理的範囲の拡大が国防白書の名の下で宣言されているからです。

 防衛とは、外部に存在する脅威に対応しなければならない最も現実的な政策領域であり、政策と現実との齟齬は命取りとなります。日本国の国会での議論も、公表された中国の「軍事戦略」を前提としなければ、空理空論にしかならないと思うのです。

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敵は愛せても邪悪な者は愛せない

2015年05月26日 16時57分38秒 | 国際政治
 ”汝の敵を愛せ”は、『新約聖書』において示された最も重要なキリストの垂訓の一つです。その一方で、黙示録は、邪悪な人間に対する天罰を予言しています。それでは、聖書は、人類の敵ともいうべき邪悪な人間をも愛せと教えているのでしょうか。

 この問題を一先ずは人間の一般的な心理のレベルまで引き下げて考察してみますと、”敵は愛せても、邪悪な者は愛せない”という一般論に辿りつきます。邪悪な人間とは、自己の欲望や満足のために他者を傷つけたり、利己的な目的のために他者の権利や自由を奪う者であり、邪悪な者を愛せる人とは、自虐的人間であるか、虐待される他者を見殺しにする薄情な人間ともなるからです。つまり、邪悪な者を愛することは、道徳的に褒められたものではないのです。一方、運命の徒によって敵味方に分かれることは珍しいことではなく、力が解決の主たる手段であった時代には、決闘や戦争による決着も正当な行為でした。それ故に、敵に対しても敬意が払われており、武士道や騎士道精神には、命を賭して戦う者同士の相手に対する最大限の尊重があります。こうした人間一般の心理からみますと、第一次世界大戦以降の戦争が、法の支配への過渡期であったが故に、敗戦国の犯罪行為と見なされるに至ったことは、今日まで尾を引いております。犯罪国家、すなわち邪悪な国家に認定されたら最後、敗戦国は、敬意を払われるどころか、罪を負う国家として徹底的に糾弾され、一切の名誉も剥奪されることになったからです(卑怯で残酷な国家イメージ…)。

 この結果、徹底的な敗戦国バッシングは、”戦争犯罪国家に対する罰”や”愛国無罪”を名目とした新たな犯罪や違法行為を生むことにもなりました(反日政策、竹島強奪、慰安婦問題…)。そしてそれは同時に、新たに被害者となった敗戦国の国民にも、”邪悪な者は愛せない”とする感情が湧く原因となったのではないでしょうか。

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認識の欠落がある中国共産党の政府・国民二分論-日本国は民主主義国家

2015年05月25日 14時35分12秒 | 国際政治
習式揺さぶりの術? 二階氏ら「正義と良識ある日本人」、安倍首相が「諸悪の根源」
 世論の批判が渦巻く中、二階総務会長は、関係者3000人をも引き連れて、朝貢使節団の如くに中国を訪問しました。かの地では、日中の交流式典に、面会が危ぶまれていた習主席が突然に登場するというサプライズもあったそうです。

 古来、中国は人心掌握術にも長けており、じらされた上に面会の夢が叶った二階議員の感激も一入であったことでしょう。習主席の計算づくの演出に、二階議員の中国への忠誠心はこれまで以上に高まったものと推測されます(谷垣議員、高村議員、額賀議員…は習主席と面会できなかった…)。と同時に、日本国民の二階議員に対する警戒心も強まることになるのですが、この席で、習主席は政府と国民との二分論を唱え、安倍政権を”悪しき軍国主義の日本の政府”と見なす一方で、訪中団は”正義と良識のある日本人”として区別したそうです。二分論は、日中間の戦争に関する共産党の正式の見解でもあるのですが、この見解には重大な認識の欠落があります。それは、民主主義国家の政府は、国民多数の支持なくしては立ち行かないことです。仮に、日本国民が、安倍政権の政策に批判的であるとすれば、内閣支持率は急落することでしょう。否、親中派である野党の支持率が極めて低い状況は、日本国民の多くが、親中政策に対して不支持であることを示しています。また、二階議員を次期首相に推す”二階総理待望論”の声も聞こえてきません。自国が軍事力を背景に圧力をかけてくる中国に屈し、”21世紀の冊封体制”に組み込まれることを望む日本国民が多数を占めるはずもありません。

 政府・国民二分論は、一党独裁体制を敷いている中国にこそ当て嵌まります。権力と富を独占している中国共産党が、13億の中国国民を代表しているとは到底思えないからです。日本国が民主主義国家であることを中国のトップが失念しているとしますと、今後とも、中国は、国際情勢や国際社会のコモンセンスを読み違える可能性が高いのではないかと思うのです。

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日韓財務対話-韓国の対日政経分離論は虫が良すぎる

2015年05月24日 15時37分01秒 | アジア
2年半ぶりに日韓財務対話、「経済改善」で一致
 近年、日韓間関係は悪化の一途を辿る一方です。日本国内では、竹島問題や慰安婦問題のみならず、韓国側の執拗な反日政策や妨害に対する嫌悪感が蔓延しており、政府間のみならず、国民間の感情も相互に険悪化してきていることは、世論調査の結果にも表れております。

 韓国の歴代政権が、支持率アップのために過激な反日政策を打ち出しているところを見ますと、日韓関係においては、もはや”政府と国民とを区別すべき”とする意見も説得力を持たなくなりました。その一方で、報じられるところによりますと、スワップ協定の中止等もあって冷え込んでいる経済関係を打開すべく、日韓財務対話の席が設けられたそうです。朴大統領も、韓国経済の不調を考慮して、政経を分離して経済関係だけは日本国との友好を保つ方針にあると伝わります。しかしながら、この政経分離論、あまりにも虫が良すぎるのではないでしょうか。何故ならば、経済関係の冷却化や経済制裁は、相手国に圧力をかける有効な手段となるからです。今日でも、核・ミサイル開発に関連して、国連の枠組みで北朝鮮やイランに対して経済制裁が実施されておりますし、ロシアもまた、クリミア問題に端を発して経済制裁を受けております。国際的な規範から外れた行為を行う国に対しする経済制裁は、武力を用いない平和的な手段であり、これを否定しますと、むしろ、問題解決が遠のきます。韓国に関しても、竹島は日本国の領土の不法占領ですし、慰安婦問題も日本国に対する誣告ですので、当然に、被害国である日本国から経済制裁を課されるべき立場にあります。国際法に反する行為を行っているのですから(あくまでも、違反行為等に対しての正当な制裁…)。

 韓国には、”用日”という言葉があり、日本国を自国の利益のために利用しようとする場合に使われるそうです。日本国が、不用意に韓国側の政経分離論に同調しますと、自国が受けた被害の回復は望めない一方で、韓国に利用されるだけの結果となる恐れがあります。これでは何らの問題解決にならなず、日本国内の反発ばかりが強まることでしょう。日本国政府は、韓国の政経分離論に惑わされずに、有効に使うべく経済的手段を道具箱に入れておくべきと思うのです。

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AIIBで拒否権を獲得した中国-そして誰も借り手がいなくなった?

2015年05月23日 13時18分40秒 | アジア
 報道によりますと、AIIBの首席交渉官交渉において組織の大枠が固まり、重要案件については、中国が、実質的に拒否権を握る体制となるそうです。中国の拒否権掌握により、AIIBから融資を受けるリスクがさらに高まったと言えそうです。

 嘘か真か、AIIBの仕組みでは、人民元での貸し出しに対して、外貨での返済が求められているそうです。中国の内情は不透明ですので、輪転機で刷られた人民元が、融資を通して米ドルやユーロ等に化けるのですから、中国にとりましては、AIIBは外貨獲得のマシーンに他なりません。しかも、人民元での貸し出しとなれば、融資先のインフラ事業は半ば中国企業の独断場となり、人民元が流通する”人民元通貨圏”の形成も夢ではなくなります。その一方で、融資を受ける国にとりましては、AIIBからの借り入れには、様々なリスクが伴います。AIIB債権の信用の低さに起因する高い利子率、融資担保としての政治的要求、中国企業の進出、”人民元通貨圏”による自国通貨の弱体化、外貨返済による外貨準備不足…など、どれもが、国家の独立性や財政を損ないかねないリスクばかりです。加えて、中国が拒否権を握ったとなりますと、腐敗リスクも加わります。融資を引き出すため(拒否権を発動されないため)にはAIIBの中国人スタッフ、あるいは、共産党員から賄賂を要求されるかもしれないからです。国内の親中派が結託するとなりますと、蟻地獄のような従属化に向けた負のスパイラルに陥り、中国経済圏に飲み込まれると共に、国民には何らの利益ももたらさないかもしれません。

 AIIBからの借り入れリスクの高さを考慮しますと、AIIBからの借り入れを望む国があるとは思えません(怖くて借りることができない!)。アジアのインフラ需要については、アジア開発銀国も融資能力を高めておりますし、日本国もまた、同行をバックアップする形で財政支援を表明しております。多少融資条件は厳しくても、環境保全や国民の健康に資するのですから、インフラ資金は、信頼性が高く、安心安全の銀行から借り入れるべきなのではないでしょうか。

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”NPTは刀狩論”の払拭を-”持たざる者”の恐怖

2015年05月22日 09時22分20秒 | 国際政治
 昨日、ニューヨークで開かれているNPT再検討会議において、最終文書の草案が公表されたそうです。各国首脳に被爆地訪問を提唱した日本政府の提案は、広島と長崎の地名は削られたものの、かろうじて”被爆経験の共有を促す”とする表現で残される見通しとのことです(採択の可否は未定ですが…)。

 ところで、日本提案に対する中国の強固な反対は、NPT体制に対する非核保有国の不安をこれまで以上に高めることになりました。中国は、公然と核の使用を正当化したからです。NPTについては、実のところ、非核保有国の間では、密かな疑いが広がっていました。表向きは、非人道的な兵器である核兵器の拡散を防止する、という目的を高らかに掲げているのですが、真の目的は、核保有国による”刀狩”ではないか?という…。豊臣秀吉が命じた刀狩令がよく知られておりますが、”刀狩”とは、鎌倉期からしばしば行われてきた僧や農民を武装解除させる方法です。国民各層が広く武器が保有している状態では、いつ何時反乱や内乱が起きるか分かりませんので、時の為政者が、武士以外の者に武器の保有を禁じ、軍事力を独占したのです。確かに、平和の維持には効果的ですが、一般の国民にとりましては、メリットばかりではありません。武力に訴えることはもはやできなくなりますので、いかに理不尽な扱いを受けても、軍事力を保有している側に従わざるを得なくなるからです(抵抗手段の没収…)。”刀狩”による平和とは、”持つ者”の支配的地位と”持たざる者”の従属的地位との組み合わであり、”持つ者”に対する何らの規制やチェックもなく、かつ、モラルが低下しますと、核の脅しによる抑圧体制に転じかねないのです。

 NPT体制についても、”持たざる者”である非核保有国は、常に”刀狩”の恐怖に苛まされています。今般の最終文書をめぐる日中間の議論の応酬では、中国がNPTに参加している目的が”刀狩”であることも判明しました。NPT体制が”刀狩”ではないことを核保有国が具体的な行動で示さない限り、非核保有国の疑いと恐怖心を払拭することは難しいのではないかと思うのです。

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国民軽視の中国製造業”十年計画”

2015年05月21日 14時58分52秒 | アジア
 昨日の日経新聞には、”中国10分野に重点”とする見出しで、中国政府が、新たにな”十年計画(「中国製造2025」)”を発表したとする記事が掲載されておりました。成長分野に絞って製造業の高付加価値化を目指す計画のようですが、肝心要の分野が抜け落ちているのです。

 中国が指定した10大重点産業とは、次世代情報技術、高度なデジタル制御の国策機械・ロボット、航空・宇宙設備、海洋エンジニアリング・高技術船舶、先進鉄道設備、省エネ・新エネ車、電力設備、農業機械、新材料、バイオ・高性能医療機器です。どの分野も、中国以外の他の諸国も目標に設定しており、中国だけが重点産業として位置付けているわけではありません。つまり、これらの分野は、グローバル市場において各国が競争にしのぎを削る、将来性の高い成長産業ばかりなのです。このことから、世界一位の経済大国を夢見る中国の産業政策の基本方針が、グローバル志向であることが伺えます。その一方で、中国政府は、国民が求めている産業分野については、全く関心を示しておりません。国民が求める分野、それは、環境技術分野に他なりません。中国大陸では、PM2.5で知られる深刻な大気汚染が常態化しており、重金属による土壌汚染や規制の甘さによる河川等の水質汚染も報告されおります。急速に進行している砂漠化も可住空間を狭めており、中国が抱える問題の一つです。このため、中国国民の大半が健康被害のリスクと住環境の悪化に晒されており、このまま放置すれば、経済大国化と引き換えに、多くの国民が犠牲を払うことになります。

 日本国も、高度成長時代には深刻な公害を経験したものの、この危機を克服すべく、国を挙げて環境技術の開発に取り組みました。中国もまた、国民のために、汚染除去技術や緑化技術などを優先的に研究・開発すべきなのではないでしょうか。

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北方領土問題-ロシアは既に択捉以北を獲得している

2015年05月20日 15時29分42秒 | 国際政治
北方領土「日本に権利ない」 ロシア外相、地元紙に
 北方領土問題について、ロシアは、第二次世界大戦の”戦利品”と見なしており、本日も、”日本に権利はない”とするロシア外相の発言が報じられております。日本だけが、”第二次世界大戦の結果に疑問を差し挟む唯一の国”として…。

 この問題について議論するに際して、常々、忘れられてきた事実があります。それは、日本国政府が、千島列島、即ち、択捉以北の島々がソ連の実効支配下にあることを認めていることです。平和条約が締結されていないため、両国間で正式な国境画定は為されていませんが、日本国の地図でも、択捉以北はロシア領として描かれています。つまり、日本国は、択捉島以北の割譲については異議を唱えていないのです。ソ連邦の参戦は、通常の二国間関係においては、日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連邦による日本国に対する”侵略”です。しかしながら、ソ連邦は、中立条約のメリットを十分に享受した後、戦争末期になって連合国陣営の一員を理由として対日参戦し、休戦後にあっても武力行使を停止せず、北方領土を含む千島列島全域と南樺太を占領してしまいました(日本人の多くは、この行為を不当であると認識している…)。ソ連邦は、連合国として参戦の権利を得た以上、連合国の方針であった不拡大主義を順守する義務があります。幕末の条約によって平和裏に日本領として確定された択捉以南の北方領土に対して、ロシアは、領土要求の権利はないはずなのです。この問題は、世界大戦という戦争形態では、二国間戦争と多国間戦争(陣営対立)の間に不整合が生じることに起因していますが、少なくとも、日本国は、「日本国との平和条約」において決定された連合国の戦後処理に従い、択捉以北に関しては、領有権を放棄しているのです(その一方で、南樺太については、日露和親条約当時にあって境界線に関する合意が成立していなかったためか、帰属未確定地としている…)。

 以上のことから、この問題に論理一貫した解決を見出すとするならば、日本国は連合国の一国としてのソ連の対日参戦を認める⇒ロシアは連合国の不拡大方針を承認する⇒日本国は択捉以北の諸島と南樺太のロシア領有を認める⇒ロシアは、択捉以南の北方領土を日本国に返還する、となるのではないでしょうか。ロシアは、既に戦勝国として択捉以北を獲得しているのですから、南樺太の領有の確定をもって満足すべきではないかと思うのです。

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AIIBと韓国の対日スワップ再開打診は関連している?

2015年05月19日 16時58分32秒 | 国際経済
 中国が主導するAIIBについては未だに不透明な状況が続いており、漏れ伝えられる情報も先行きに不安を覚えさせられるものばかりです。こうした中、真偽は不明なのですが、日本国に対して、韓国が、先日打ち切られたはずのスワップ協定の再開を打診してきているとの噂が流れております。

 AIIBの設立の背景には、潤沢な外貨準備の運用の多様化を目指す中国の意図があると説明されてきました。自国通貨安の方向に為替操作を行うと、自動的に外貨準備が増加しますのです、中国の巨額の外貨準備は、貿易黒字のみならず、元安政策の結果でもあります。そして韓国も、近年、ウォン安操作を積極的に繰り返した結果として、中国と同様に外貨準備を積み上げております。スワップ打ち切りに際しても、理由として、もはや韓国には外貨準備面での不安がなくなったことが挙げられていました。しかしながら、ここにきて、スワップ協定の再開を求めているとしますと、外貨準備に、何らかの不安が生じている可能性があります。AIIB参加国の出資比率の順位は、中国、ロシア、韓国と続くそうですが、韓国もまた、AIIBに相当額の外貨準備を出資することでしょう。そして、韓国が、その出資に不安を感じているとしますと、スワップは、いざと言うときの”保険”として日本国とのスワップ協定を利用しようとしている可能性も否定できないのです。つまり、仮にAIIBにおいて損失が生じた場合、日本国に対して、スワップ協定の履行を要求するかもしれないのです。

 AIIBについては、米国籍ながら韓国人であるキム総裁が北京を訪問し、世銀との協力について協議したとも報じられておりますが、AIIBをめぐる韓国の動きも注意深く観察する必要がありそうです。少なくとも、日本国は、AIIBの損失を肩代わりさせられるような事態は回避すべきと思うのです。

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アメリカの日韓関係改善要求-日本国に譲歩の余地はない

2015年05月18日 15時31分02秒 | アジア
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 北朝鮮の脅威を目前として、アメリカは、韓国に対して日韓関係の改善を要求したと報じられております。しかしながら、日本国には、これ以上の対韓譲歩の余地はないのではないでしょうか。

 日韓関係において未解決であり、かつ、特に刺となっているのは、竹島問題と慰安婦問題です(慰安婦問題については、日本国は解決済の立場…)。竹島については、先日、韓国は、非公開ながら軍事訓練を実施しており、日本国への返還の気配は全く見られません。韓国は、「日本国との平和条約」の交渉過程において竹島等の領有を要求しましたが、アメリカのラスク国務長官から明確な拒否の回答を受け取っております。つまり、サンフランシスコ体制を否定する形で竹島を不法占領しており、今になって”領土問題はない”とは言えない立場にあるのです。竹島問題に関して日本国が譲歩すれば、国際社会への復帰の基礎となった講和条約を自ら否定すると共に、韓国による”武力による現状の変更”を認めることにもなります(法の支配からの逸脱…)。慰安婦問題を見ましても、日本国に譲歩の余地がないことは明白です。朝日新聞社の記事撤回もあり、慰安婦の実像とは、大半が自発的に就業したプロの職業人であり、被害を訴える韓国人元慰安婦の人々とは、事業者と家族等による人身売買の被害者であったことが明らかとなっております。”日本軍による朝鮮女性20万人強制連行説”は虚像であり、事実としての慰安所と犯罪被害の存在は認めても、日本国の名誉にかけても捏造された強制連行説を認めるわけにはゆかないのです。これらの問題の他にも、対馬の盗難仏像問題、工作活動を含む反日政策、在日韓国人問題…などが山積しており、そのどれもが、日本国が不利益や被害を被っている問題ばかりです。

 一方的に日本国が不利益や被害を被っているのですから、日本国側の対韓譲歩は、さらなる不利益や被害の拡大を意味します(日本国の世論が反発…)。しかも、北朝鮮の脅威に対しては、日本国が韓国の防衛を支援する立場にあるのですから、この問題でも、日本国には韓国に譲歩する理由がないのです。日韓関係の改善には、韓国側の大幅な譲歩こそ必要不可欠なのではないかと思うのです。

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中国の南シナ海埋め立て強行は戦争への道

2015年05月17日 15時31分36秒 | 国際政治
南シナ海問題で平行線=「懸念」に「主権」で反論―米中(時事通信) - goo ニュース
 中国が南シナ海で埋め立てを強行している件に関して、昨日、アメリカのケリー国務長官と中国の王毅外相との間で会談の場が設けられたようです。双方折り合わず、話し合いは平行線を辿ったと報じられておりますが、このような悠長な報道ぶりでは済まされない危機が迫っているのではないでしょうか。

 この席で、中国は、あくまでも自らの主権と領土保全を貫くとの立場を表明しましたが、国際法において、中国の南シナ海における権利が確立しているわけではありません。否、法的根拠は極めて薄く、存在していないに等しいくらいです。日本国は、1952年の「日本国との平和条約」の第2条(f)において新南群島と西沙群島を放棄し、ほぼ同時に締結された「日華平和条約」において、台湾島・澎湖諸島と共にこれらの群島の放棄を承認しております。この措置は、1938年に日本国が同群島を領有するに際して台湾の高雄市に編入したことに由来し、日本国の放棄は、事実上、台湾に対して行われているのです。もっとも「日華平和条約」は、1972年9月に、日中共同宣言に伴って失効しております。また、戦後、周辺各国による実効支配も行われたため、南シナ海は、係争地と化したのです。つまり、南シナ海は、帰属未定地なのです。この件に関して、フィリピンは、常設仲裁裁判所に対して中国を訴えおり、現在、仲裁手続きが進行しております。おそらく、常設仲裁裁判所では、中国の違法性を認める判断が下されることが予測されますが、それにも拘わらず、中国が、埋め立てを強行した場合、次に何が起きるのでしょうか。国連安保理では、中国が拒否権を握っておりますので、この件について、如何なる決議も成立する見込みはありません。となりますと、中国を除いた国際社会は、中国の違法行為に対してどのように対応するのか、という重大な問題に直面することになるのです。

 果たして、中国は、国際社会からの非難だけで自らの行動を改め、自主的に埋め立て地を取り壊すでしょうか。仮に、既成事実化に成功したとばかりに使用を開始するとしますと、その行為は、常設仲裁裁判所の決定の執行、即ち、法の支配に基づく国際秩序を守るための武力行使の(中比間の二国間関係の域を越える…)、正当なる根拠となると思うのです。

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