万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

人類誕生の要因は加熱調理では?ー有効成分の飛躍的摂取

2016年11月30日 15時20分27秒 | その他
 人類は、本当のところは自らの存在について全てを知っているわけではなく、生物の起源に至っては、未知の世界といっても過言ではありません。科学技術が進歩した現在の人類の知性を総動員しても解き明かすことができない謎は、数多く残されているのです。

 ところで、ダーウィンに代表される進化論では、大まかに言えば、適者生存の法則が人類を誕生させたと説いています。しかしながら、二本の足で歩く人間の身体は合理的、かつ、視覚的にも美しいフォームですし、その高い知能・知性は、他の類人猿から一歩抜きん出ています。”何故、人類だけが他の動物とは違うのか”という問題を考えた時、適者生存のみでは説明が不十分なように思われるのです。弱肉強食をも意味する適者生存だけが進化を齎すならば、今日にあっても、恐竜といった獰猛な生物が”地球の王者”として君臨してもおかしくはないからです。

 そこで推測されるのは、人間による火の使用です。他の動物は、火を極端に恐れますが、人間のみは、火を様々な目的に使うことができます。そして、火の使用による主たる効用の一つは、加熱した食物を食べることで、自然界に存在する様々な有効成分を摂取することができるようになったからではないかと思うのです。古代から人間が薬草を利用してきたことは知られており、中には、脳の神経細胞を増殖させたり、刺激する成分を有する植物もあります。今日では、これらの植物が効用や効能の多くは、科学的成文分析によって裏付けられています。薬草を特定するに至らないまでも、人間は、調理を通して知らず知らずの内に様々な有効成分を体内に取り入れることで、知能のみならず、様々な機能を、比較的短期間の間に急速に発展させたとも考えられるのです。

 この仮説が正しいとしても、何故、人間のみが火を怖れないのか、といった根本問題は謎のままですし、有効成分は人間のDNA配列に変化を与え、進化モーターとして働いたのか、あるいは、既存のDNAに何らかの機能の発現を促す促進作用を及ぼしたのか、といった問題も残ります。人間とは一体何なのか、あらゆる分野で混乱に見舞われている今日、もう一度、人間自身を見つめることも無駄ではないように思えるのです。

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米大統領選挙に見るリベラルの排他主義ー保守主義者との共存の拒否

2016年11月29日 15時16分40秒 | 国際政治
トランプ氏、ミシガンでも勝利=最後の州の結果判明―米大統領選
 アメリカ大統領選挙は、その長期にわたる選挙期間を通して、現代社会が抱える様々な問題や矛盾を露呈することとなりました。その一つに、トランプ氏当選が確定した後に起きた、クリントン支持者による反トランプ抗議デモやカリフォルニア独立運動があります。

 それでは、これらの運動から、どのような問題や矛盾が垣間見えるのでしょうか。リベラル派の人々は、常々、異なるルーツやバックグランドを持つ多様な人々が共生し、仲良く暮らしてゆくことが理想社会と見なしています。あらゆる差別に反対し、マイノリティーの権利保護にも熱心です。確かに、”皆が仲良く”という性善説を前提とする一般的な道徳規範には誰も反対しないでしょうし、寛容は美徳の一つです。しかしながら、国家や社会というものが、移民国家であるアメリカにおいてさえ、歴史や特定のルーツを持つ集団の固有性を伝統として引き継いでいる現実を考慮しますと、リベラルの主張する寛容は、際限のない多様化、即ち、移民の受け入れを意味し、既存の国家や社会を融解させてしまう働きを必然的に伴うのです。

 それでは、リベラルの反対に位置する保守的な態度、即ち、既存の国家や社会の維持を望むことは、反道徳的なのでしょうか。今日の国際社会では、数万年を経て生じた人類の多様化に対応する形で民族自決の原則が成立しています。仮に、無制限な移民受け入れによる多様化を推し進めれば、その社会は、何らかの共通点もない”烏合の衆”となるか、民族、宗教、思想等の多様性に起因する内乱状態となるか、あるいは、無味乾燥としたモノトーンの世界に至らざるを得ないのです。民族自決が集団的な権利である以上、その権利を護ることは、決して批判されるべきことでもないのです。

 ここに、国家や社会の維持を望む保守的な人々と個人の自由、特に、マイノリティーの人々の自由を優先するリベラルな人々との間において、抜き差しならない対立を見出すことができます。そして、この抜き差しならぬ関係は、リベラルをして保守主義者の排除という行動に駆り立てるのです。反トランプ抗議デモは、トランプ氏を大統領と認めないことにおいて不寛容と排除の姿勢を露わにし、カリフォルニア独立運動も、アメリカ合衆国から脱退を訴えて保守主義との共存を拒否しています。自らが理想とする共存を実現するには、保守主義を排除しなければならないのですから、これ程の自己矛盾もありません。リベラルの理想郷とは、既存の国家や社会を消滅させなければ実現しないことを、自らの行動で示してしまったのです。自由であれ、権利であれ、他者からの侵害に対する防御という意味で本質的に排他的ですので、保守主義もリベラルも、この点においては同列なのです。

 アメリカ大統領選挙に見られる両者の対立は、結局、寛容を主張しながら排他主義の”本音”を晒してしまった点において、リベラルにとって痛手となったのではないでしょうか。トランプ氏は、選挙遊説中にその”本音”によって支持者を集めたとされていますが、リベラルの人々は、意図せずして露わにしてしまった”本音”、即ち、’他者の排除’があまりに攻撃的な思想であった故に、人々を遠のかせてしまったと思うのです。

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アメリカ大統領選挙ー得票数優位論の盲点

2016年11月28日 16時10分06秒 | アメリカ
くすぶる再集計、トランプ氏猛反発「何も変わらない」
 アメリカ大統領選挙は、11月8日の投票によりトランプ氏の勝利で決着したかと思いきや、機械集計の得票数に不自然な点があるとして、ウィスコンシン州では再集計問題が持ち上がっているようです。加えて、得票数ではクリントン氏の方が上回っていることから、選挙には敗れたものの、アメリカ国民の民意はクリントン氏にあるとする論調も聞かれます。

 現行のアメリカの選挙制度では、一部の州を除いて選挙人総取り方式が採用されているため、全体の得票数に優っていても落選する現象がしばしば起きます。フランス大統領選挙等の直接選挙では起き得ないことですが、アメリカは、合衆国、即ち、州(state)によって構成される連邦国家であるために、建国以来、州の権限が強いことに由来します。単一国家を前提とした”一人一票同価値”の観点から見ればこの制度は不合理な制度に映り、これまでも、”捻れ現象”が批判の対象となってきました。

 しかしながら、今般の選挙の様子を見ますと、単一国家型の視点のみから得票数の優位を主張することが適切であるのか疑問が湧きます。選挙当日の開票結果の中継では、終始、トランプ氏の得票数がクリントン氏を上回っており、”捻れ現象”は起きていません。それでは、何故、その後、クリントン氏の得票数がトランプ氏を逆転し、200万票もの差をつけたのか言いますと、凡そ4000万人という巨大な人口を抱え、かつ、民主党の大票田であるカリフォルニア州の集計に時間がかかっているからなそうです。カリフォルニア州に割り当てられた55人の選挙人のクリントン氏による獲得は早い時点で確定したものの、全得票数の集計には時間がかかるため、最終集計では確定時よりも大量に票が上乗せされたということらしいのです。

 カリフォルニアでは、トランプ氏勝利が決定した後、Brixitを捩ってCalexitなる”独立運動”が発生しましたが、独立の気風が強いのも、カリフォルニアとその他の州とでは歴史や人口構成等において違いがあるからなのでしょう。仮に、単一国家のように、得票数に大統領の正当性を求め、選挙制度を改革したとしますと、人口の多い州の意向が強く反映されることとなります。この点、国家連合であるEUの理事会の決定手続きでも、加盟国ごとに人口数に比例した票の配分がなされているものの、人口大国支配への警戒感は強く、採択基準に工夫を凝らすなど、中小加盟国への配慮が見られます。果たして、アメリカ国民は、人口大国ならぬ”人口大州”に有利な制度への変更を望むのでしょうか。そして、その行方は、アメリカの将来の国家像-合衆国か単一国家か-にも深くかかわってくると思うのです。

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キューバ革命は歴史の教訓ー騙しの時代の終焉へ

2016年11月27日 16時08分39秒 | 国際政治
「反帝国主義に特別な貢献」=カストロ前議長を称賛―金正恩氏
 キューバ革命の指導者にして長らく同国に独裁体制を敷いてきたラウル・カストロ前議長が死去したとの報は、ある一つの時代の終焉を象徴してるのかもしれません。

 キューバ革命の背景には、資本主義の悪しき一面が問題として潜んでいたことは確かなことです。スペインからは独立したものの、キューバの主力産業である製糖事業はアメリカ資本の下にあり、経済面を見れば、”支配者”がスペインからアメリカに交代したに過ぎませんでした。当然に、水面下では一般のキューバ国民の不満は燻っており、その不満のはけ口となり、期待を寄せたのが、資本の国有化を訴える共産主義であったのです。革命家であったカストロやチェ・ゲバラ等は、親米派であったバティスタ政権に対して反政府組織を結成しゲリラ戦を仕掛け、革命政権を樹立するのです。

 時計の針をこの時点で止めることができるならば、あるいは、カストロにせよ、ゲバラにせよ、民衆を抑圧から救った英雄としての評価を歴史に残したかもしれません。しかしながら、時計の針を止めることはできるはずもなく、キューバ革命の実態が明るみに出るにつれ、革命への評価は低下の一途を辿ります。共産革命もまた、アメリカからソ連邦への”支配者”の交代に過ぎなかったのですから。ソ連邦の支援なくしてキューバ革命が実現するはずもなく、共産主義体制の成立後は、共産党が全ての権限と利権を独占しつつ、カストロ氏は世界有数の富豪の一人となりました。国民を抑圧から解放したはずの革命の英雄は、自らの目的を達成した途端に抑圧者に豹変したのです(もしかしますと、共産主義者の目的は、最初から別のところにあったのかもしれません)。

 キューバ革命は、様々な歴史の教訓を残しています。歴史には、”独立”や”革命”といった国民の耳に心地よく響く言葉は、得てして欺瞞に満ちており、国民をさらなる過酷な支配に追いやる結果を招くことも少なくありません。この現象はキューバ革命に限ったことではなく、今日、全世界的に観察される政治家に対する国民の根強い不信は、政治的スローガンやトリックに騙されてきた人々が、歴史の教訓に学んだ結果でもあります。そろそろ、人類は、真の意図を隠した偽りの言葉に騙されてきた時代に幕を降ろす日を迎えつつあるのではないでしょうか。

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歴史実証主義への転換点ーカナダ・ユダヤ人協会の慰安婦問題意見書に感謝

2016年11月26日 15時13分28秒 | 国際政治
 慰安婦問題については、昨年末の日韓慰安婦合意も虚しく、韓国による違約に留まらず、国際社会では、共同申請の形式でユネスコの「世界の記憶」への登録が試みられております。事態が悪化を辿る中、日本国には、思わぬところから助け船が登場することとなりました。それは、カナダ・ユダヤ人協会の人々です。

 報道によりますと、ユネスコの「世界の記録」への登録審査に関連して、カナダ・ユダヤ人協会は、”申請者はホロコーストの意味を捻じ曲げている”との意見書を提出したそうです。当意見書には、”事実の裏付けがない”とする理由を付しており、契約の下で慰安婦には給与が支払われていたことなど、事実に基づく根拠を添えています。しかも、中国によるチベット虐殺や文化大革命の非人道性にも言及しており、申請者の不公平な態度まで批判しているのです。

 日本国とユダヤ人との関係については、これまで、必ずしも良好とは言えない状況にはありました。先の大戦にあっては、杉原千畝氏をはじめ、多くの日本人が迫害されていたユダヤ人を援けましたが、戦後は一貫して、ユダヤ人の人々は、日本国に対して冷淡どころか、敵対的でさえありました。慰安婦問題については、ユダヤ人協会は常に日本国に対して糾弾論調であり、中国や韓国との協力関係さえ疑われていたのです。ところが、今般、カナダ・ユダヤ人協会は、この問題について態度を180度転換させています。その背景には、今後、元慰安婦の証言ではなく、史料に基づいた厳密な検証が実施された場合、慰安婦の実像が明らかとなることは必至であり、ホロコーストが捏造された慰安婦問題と同一視されることを、ユダヤの人々が怖れたのではないか、とする憶測もあります。ホロコーストも捏造ではないか、と…。

 ユダヤ人の思惑がどこにあるにせよ、また、日本国のためというよりもユダヤ人のための方向転換であったとしても、窮地にあった日本国が、カナダ・ユダヤ人協会に援けられたことは疑い得ません。そして、カナダ・ユダヤ人協会の見解が、歴史問題において実証主義への転換を画するとしますと、国際社会における意義は決して小さくはないのではないかと思うのです。この意味において、カナダ・ユダヤ人協会には、深く感謝したいと思うのです。

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中国の一人勝ちは許されるのかーグローバリズムの幻想

2016年11月25日 09時57分21秒 | 国際政治
TPP漂流、中国が攻勢=習主席、南米歴訪で布石
 グローバリズムを最大限に利用し、かつ、最大の利益を受けた国は、中国であると評されています。それでは、何故、グローバリズムは、中国にとって有利に働いたのでしょうか。そして、先進国諸国は、何を読み違えたのでしょうか。

 仮に、グローバリズムが存在しなければ、中国は、軍事、並びに、経済大国として台頭することはなかったことでしょう。今日の中国の大国としてのステータスは、決して自力で築き上げたのではなく、グローバリズムというシステムの利用によるものに過ぎません。本来であれば、13億もの人口を擁し、かつ、低い生活水準に甘んじている状態にあれば、まずは、外需よりも内需の発展に努めるのが筋というものです。否、自国に巨大、かつ、供給不足の市場を有しながら、日用品を含む消費財を海外諸国に大量に輸出すること自体が、一般の国家では、あり得ない政策なのです。しかしながら、グローバリズムは、外国資本・企業による’世界の工場化’によって、中国に対して安価な労働力と通貨安を武器に輸出大国化する道を開き、軍事大国化の基盤となる外貨を提供すると共に、雇用機会や先端技術をも提供することとなりました。

 一方、先進国諸国の企業も、中国の安価な労働力と通貨安を利用したことは確かなことです。中国という国家と先進国企業との間には、ウィン・ウィンの関係が成立しているように見えますが、より詳しく観察しますと、国民に対しては雇用機会の流出による雇用不安をもたらし、企業に対しても技術流出が競争上の優位性を奪っています。短期的には成立していたウィン・ウィン関係も、時間の経過と共にウィン・ルーズ関係へと変化してゆくのです。ところが、ウィン・ルーズ関係に転じても、企業には、13億市場は魅力に映ります。規模こそ全てとするグローバリズムの考え方に基づけば、中国市場はビジネスチャンスに溢れているように見えるのです。

 しかしながら、中国のグローバリズム便乗政策の本質が覇権主義である限り、中国が、今後、海外からの輸入を積極的に拡大させるとは思えません(巨額の外貨準備は経済支配の源泉…)。また、先進国から先端技術を吸収し尽くし、科学技術のレベルが追い付けば、海外企業の進出に対しても消極的な姿勢に転じることでしょう。否、先進諸国の企業は、資金力に優る中国系企業に買収され、その傘下に組み込まれる運命が待っています。既に、その兆候は見えております。そして、最後の総仕上げこそ人民元の国際基軸通貨化であり、遂に外貨準備も不要となるのです。

 ”一帯一路構想”に含まれる地域のみならず、グローバリズムの寵児として全世界を中国経済圏に変貌させようとすることでしょう。”グローバリズムに乗じてグローバリズムを乗っ取る”、これこそが中国の野望であるならば、このまま、現行のグローバリズムの路線を邁進することは、他の諸国にとりましては”自殺行為”ともなります。人口13億の市場に惑わされますと、ギリシャ神話のイーカロスのように、自らが溶かされて墜落することにもなりかねないのではないかと思うのです。

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仮想通貨保険の吉凶

2016年11月24日 15時27分43秒 | 国際経済
 ビットコインとは、難問の解読という作業によって無から有を生み出す奇妙な仕組みの通貨です。いわば、他の一般的な法定通貨とは違い、政府による法的保障がないことから、一種の”偽造通貨”とも言うべき存在ですが、この”いかがわしい通貨”への不安を解消するためか、仮想通貨保険なる新たなビジネスも登場したようです。

 本日の日経新聞の一面に、三井住友海上が、仮想通貨の盗難補償という新たな保険サービスを開始するとする記事が掲載されていました。同保険の主たるターゲットは取引所の事業者ですが、取引所のみならず、口座を設けている利用者の被害をも補償の対象に含めるそうです。しかしながら、この仮想通貨保険、狙い通り、仮想通貨の普及を促すのでしょうか。確かに、保険サービスの登場によって、取引所を含めて仮想通貨を使用している人々にとりましては、安心感が広がるかもしれません。保険がない状態では、サイバー攻撃等によって盗難にあったり消滅したら最後、泣き寝入りするしかなかったからです。しかしながら、その一方で、保険サービスの登場は、リスクの裏返しでもあります。

 ビットコインは、そのマイニングの仕組みには疑問が呈される一方で、フィンテックの側面においては、所有者を正確に記録して把握できる点において、ブロック・チェーンの仕組みは大手金融機関が参考にするほどの評価を受けています。ところが、保険サービスの開始は、ブロック・チェーン方式を以ってしても、盗難や消滅があり得ることを示しています。

 また、一般の法定通貨では、為替取引の事業者や預金者が盗難や消滅に備えて保険会社に保険料を支払うことは殆どありません。この違いは、仮想通貨は、他の法定通貨と比較してコストが嵩むことを意味します。盗難・消滅リスクに比例して保険料も高くなりますので、保険料負担は、仮想通貨普及へのブレーキにもなるのです。利用者も、保険料の負担を求められるかもしれません。

 さらに最悪の場合には、保険サービスを提供する保険会社が甚大な損害を被るケースも想定されます。仮想通貨が生息するコンピューターの世界では、常にハッカーとそれを防ぐ側との”いたちごっこ”が続いています。仮に、高度なサイバー・テクニックを有するハッカーと取引所等が密かに結託し、大規模な仮想通貨の盗難・消滅捏造事件を起こすことに成功すれば、”保険金詐欺”と同様の被害が発生します。コンピューター上の操作に過ぎませんので、巨額の被害を偽装することも簡単です。


 このようなリスクを考慮すれば、仮想通貨保険サービスは、普及に一役買うよりも、仮想通貨、特に、ビットコインのリスクを改めて印象付けることになるのではないでしょうか。

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北方領土へのロシアのミサイル配備ー日ロ経済協力はストップでは?

2016年11月23日 14時04分26秒 | 国際政治
北方領土に最新鋭ミサイル=軍事化が一層鮮明―ロシア報道
 プーチン大統領の訪日を前にして、北方領土をめぐる動きも慌ただしくなってきました。こうした矢先、インタファクス通信の情報として、ロシアが択捉島と国後島の両頭に最新鋭ミサイルを配備したとする報道がありました。

 日本国内のマスコミの説明では、ロシアの狙いは北方領土の実効支配の強化にあるというものです。しかしながら、この見解、ロシア側のミサイルの使用目的を考慮しますと、あまりに表層的なように思えます。配備されたのは対艦ミサイルとされていますが、海上自衛隊を想定しての措置であることは一目瞭然です。実際に、APEC首脳会議が開催されたペルーのリマにおいて、プーチン大統領は北方領土全島のロシア帰属について明言し、経済協力を表明してきた日本国側の期待を裏切っております。北方領土については、ロシアの態度はむしろ硬化しているのです。しかも、北方領土がミサイル基地化するとしますと、近い将来、日本列島全域を射程距離に含める中距離核ミサイル、あるいは、大陸間弾道ミサイルが配備される可能性さえあります(それとも、ロシアは、今や、新自由主義の残された砦と化している日本国政府に対して圧力をかけているのでしょうか…)。ロシアによる実効支配の強化とは、アジア、否、全世界の軍事的パワー・バランスさえ崩しかねないのです。

 ロシアによる急速な北方領土の軍事基地化に対して、日本国政府の動きはあまりに鈍く、殆ど無反応です。アメリカのトランプ次期大統領が親ロ的であることから、対ロ関係については楽観視しているのかもしれませんが、最新鋭ミサイルの配備については、予定されている日ロ経済協力のプランの凍結や停止をも検討し、ロシアに対して抗議の意思を示すべきなのではないでしょうか。

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反TPP戦争誘発論のパラドクス

2016年11月22日 15時38分52秒 | 国際政治
トランプ次期米大統領、就任初日にTPP離脱指示へ
 トランプ次期大統領は、就任日の初日にTPPからの離脱を指示する方針を示したと報じられております。”米経済にとって大惨事となる可能性がある”として。

 ”大惨事”と表現するぐらいですから、TPPに対する相当の危機感が伺われます。その一方で、アメリカのTPPからの離脱方針に対しては、日本国をはじめTPP参加予定国からは落胆の声が上がっており、マスメディアなどでは、第二次世界大戦前夜の経済ブロック化を引き合いに出し、今般のアメリカの方針は、あたかも第三次世界大戦への道の如きに批判的論調が大多数を占めております。しかしながら、こうした反TPP戦争誘発論には、重大なパラドクスがあります。何故ならば、TPPへの加盟によって中間層の破壊がさらに進行し、国民の不満が高まれば高まるほど、それを吸収する形でアメリカに独裁者が現れないとも限らないからです。まさしく第一次世界大戦後のドイツのように…。トランプ氏の当選については、既にヒトラーの再来のように捉える向きもありますが、対外政策を見れば、トランプ氏は、ヒトラーのように領土拡張を訴えているわけではなく、逆に、アメリカの”引き籠り”が懸念されております。言い換えますと、TPPに参加した結果として、実際にアメリカに”大惨事”が起きれば、貧困層の爆発的増加がアメリカの衰退に拍車をかけ、精神面においても自由、民主主義、基本権の尊重、法の支配…といった、全人類に希望を与えてきた建国以来の諸価値までもが消え去るかもしれないのです。その政治的・経済的危機の余波は全世界の国々へと波及し、結局は、日本国をも危機に晒すことでしょう。

 このように考えますと、アメリカのTPPからの離脱は、将来に予測される戦争を含めたカオスを事前に防止したと言えるかもしれません。健全な中間層が再生され、国民生活の安定と共にアメリカ経済が活力を取り戻すことができれば、TPP参加による”手負いのアメリカ”よりも、TPP不参加による”健康なアメリカ”の方が、はるかに国際社会の安全と安定に貢献するのではないかと思うのです。

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グローバリズムの修正案ー企業の独立性の保障

2016年11月21日 14時50分41秒 | 国際政治
保護主義に対抗決意=安倍首相、TPP重要性訴え―APEC首脳宣言
 現代の国際社会では、主権平等の原則の下で国家の独立性は保障されており、国内でも、個人の基本的な権利は天賦のものとして手厚い保護の対象とされています。ところが、奇妙なことに、経済の世界では、企業の独立性が十分に保障されているとは言えない状況にあります。

 その理由は、株式会社という形態にあっては、株式の所有が企業経営と結び付いているため、過半数を超える株式を取得させすれば、他の会社を買収することができるからです。たとえ、経営陣を含めて買収先企業で働いている人の大多数が反対しても、大株主が譲渡に合意する、あるいは、公開株式買付け(TOB)を実施すれば、買収案件は成立します。もちろん、敵対的買収ばかりでもありませんが、買収された会社は市場において自らの独立的な法人格を失い、最早、自立的な決定を行うことはできなくなるのです。今日の市場経済とは、所有と経営(法人格)が分離しており、かつ、所有が経営(法人格)よりも上位に位置することで、企業が、自らの意思に拘わらず、常に”売り払われる”可能性がある制度であると言えます(個人に譬えれば”人身売買”となる…)。

 今日の企業における株主権の強さは、恐らく、その始まりとしての東インド会社の成り立ちに求めることができるかもしれません。当時の航海技術では、貿易船が難破すれば巨額の投資は戻ってこず、有限責任におけるリスクの分散は理に適っていたからです。リスク負担の高さが株主権を正当化したとも言えますが、しかしながら、今日の企業形態を考慮しますと、株主のリスク負担に対して権利が強すぎるようにも思えます。株主は、資金の提供者ではあっても、企業の業績は、経営者であれ、一般の社員であれ、そこで働く人々によってもたらされますので、責任と権利との間のバランスからすれば、権利が株主に偏り過ぎているのです(配当を受け取る権利程度が妥当では…)。

 株式取得が経営権の掌握手段となったことで、企業買収は頻発し、如何なる企業も企業買収に戦々恐々とせざるを得ません。しかも、今日のグローバリズムにあっては、外国企業によって買収される可能性も高くなり、実際に、中国系企業による企業の”爆買”は、全世界の企業、な並びに、その従業員をも恐怖に陥れています。グローバリズムの修正が、その基盤となる市場経済の修正をも意味するとしますと、株主権の適正化を伴う企業の独立性をいかに保障するのか、といった問題も、検討されて然るべき是正案ではないかと思うのです。

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グローバリズムの修正理由ー企業買収が”捕食行動”となるリスク

2016年11月20日 15時45分55秒 | 国際経済
 国民投票によるイギリスのEU離脱のみならず、アメリカの大統領選挙におけるトランプ氏の勝利は、現行のグローバリズムが曲がり角に来ていることを実感させる出来事でした。それでは、何故、現行のグローバリズムは、修正せざるを得なくなったのでしょうか。

 新自由主義とも称される現行のグローバリズムの主たる特徴は、飽くなき格差利用と規模の追求にあります。グローバル市場とは、人類史上最大の市場の誕生を意味しており、企業は、国家間の格差を利用した世界大の事業展開を実現すると共に、”企業買収”という手段を用いて、他企業を取り込むことで際限なく自己の規模を拡大することができるのです。その間、企業の数が減少すると共に、多様性もまた減少してゆきます。もちろん、起業によって新たな企業が生まれることもありますが、有望なベンチャー企業も、やがては大企業へと吸収されてゆく運命を辿るのです。グローバル市場では、買収資金力に優る企業のみが生き残り、その他の企業は、買収される側となるか、巨大企業からの発注に頼るしかなくなります。現行のグローバリズムとは、ジュラシック・エコノミーとも言える弱肉強食の世界であり、企業の買収行動は、どこか動物の”捕食行動”に似通ってくるのです。しかも、人間という同種の社会において…。ガリバニズムは禁忌ですが、野蛮性が薄らいだ今日にあって、行き過ぎたグローバリズムは、人間達を非人道的な'経済ガリバニズム'の行動に駆り立てているかもしれず、また、人間にとっては戦争に優るとも劣らない最大の脅威ともなりかねないのです。

 そしてこの状況下では、14億市場と称される中国企業が、圧倒的に優位な立場にあることは疑い得ない事です。仮に、何らかの修正もなく、このままグローバリズムの道をまっしぐらに突き進みますと、あらゆる分野で、資金調達力に優る中国系企業が君臨することになりましょう。まさに、シナノザウルスの出現なのです。アメリカでは、中国の政府系企業による米企業の買収を禁じる法案が準備されておりますが、移民規制と共に、行き過ぎたグローバリズムの修正には、巨大企業の”捕食行動”に対する規制強化、即ち、競争政策の強化を要するのではないかと思うのです。

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TPPの無理強いは日米関係を損ねる

2016年11月19日 13時36分48秒 | 国際経済
APEC閣僚会議 共同声明を採択
 ペルーの首都リオでは、APECの首脳会議を前に日・ペルー首脳の間で会談の場が設けられ、TPPの早期発効に向けて連携してゆく方針で合意したと報じられております。両国とも、TPP発効に経済成長の原動力としての役割を期待しているのでしょうが、アメリカ以外の諸国が参加に積極的であればあるほど、アメリカの参加が遠のくのではないかと思うのです。

 TPP待望論の主張する人々は、広域的な市場の誕生による自国企業のビジネスチャンスの拡大を説いています。小さな国内市場に閉じ籠っていては事業を拡大することはできず、TPPによる広域市場の誕生こそ、世界へと飛躍する絶好のチャンスであると…。確かに、活動範囲が広がるのですから、それがチャンスであることには間違いありません。しかしながら、TPPもまた自由貿易圏の一種である限り、何れの国であれ、産業であれ、国民であれ、競争力に劣る分野の淘汰が発生します。

 大凡の構図としては、先進国は企業優位・労働者劣位の組合せである一方で、後進国では、労働者優位・企業劣位の逆のパターンとなります。加えて、人件費コストの格差が殆どなくなり、かつ、市場が既に飽和状態にある先進国間では、国境を超えた企業間の熾烈なシェア争いの開始を意味します。後進国間でも、域内先進国や域外国からの投資や誘致をめぐる競争が展開されることでしょう。

 こうした構図に照らしてアメリカの立場を見れば、TPPは、通信やIT関連の一部の巨大企業を除いて、何れも劣位に置かれる可能性がないわけではありません。国民の大多数が”負け組”になるかもしれないのです。一方、ペルーは、労働者優位ですので、TPPのメンバーであれば製造拠点の移転先としても有力視されるでしょうし、合わせて技術移転も期待できます。最も不可解なのが日本の立場であり、攻めの姿勢ばかりが目立ちますが、労働力において劣位にあることはアメリカと変わりはなく(中間層消滅の危機…)、期待される先進国企業間の競争でも、日本企業が必ずしも優位とは限りません。米国企業やTPP加盟国内に拠点を移した域外国企業によって、逆に自国市場が攻め込まれるシナリオもないわけではないのです。

 何れにしましても、日本国とペルーがTPPの成立を強く要請すればするほど、アメリカは、TPPは自国にとって不利な協定であると確信することでしょう。そして、仮にNAFTAで既に顕在化しているように、TPPの発効によってアメリカ国民の不満がさらに高まれば、日本国もペルーもバッシングの的となるかもしれません。18世紀初頭のメシュエン協定においても取り沙汰されたように、自由貿易には劣位部門の淘汰が伴いますので、TPPの無理強いは、長期的には、日米関係をも損ねかねないのではないかと思うのです。

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”TPPは中国のため論”の信憑性

2016年11月18日 10時05分32秒 | 国際政治
ベトナム、TPP批准案の国会提出見送り
 TPPの意義については、経済大国化のみならず、軍事的にも脅威を増している中国に対し、日米を軸とした地域経済圏を形成して対抗することにあるとしばしば説明されています。その一方で、表向きの中国包囲網論とは逆に、TPPこそ中国を利するための枠組みであるとする見方もあります。

 それでは、”TPPは中国のため論”には、どれ程の信憑性があるのでしょうか。地域経済圏が成立すれば、非加盟国がその枠組みを利用するのは、企業にとりましては、合理的な行動となります。トランプ氏当選の要因の一つとして、既に発行しているNAFTAへの米国民の不満が指摘されていますが、このNAFTAの現状を見ましても、米国企業のみならず、日本企業をはじめ外国企業の多くがメキシコに製造拠点を設け、同地での安価な労働力のメリットを享受しつつ、無関税で米国やカナダ市場に輸出する戦略を採っています。企業戦略としての地域経済圏利用は、イギリスのEUからの離脱決定に際して、欧州市場への輸出を目的に英国に拠点を設けてきた域外企業の困惑ぶりからも伺えます。

 こうした企業行動から推測しますと、仮にTPPが成立すれば、中国企業、否、中国政府は、自国の利益のために当枠組みを最大限に利用しようとするはずです。基本戦略としては、最も労働コストの低い加盟国に製造拠点を設け(現地企業への間接的な投資もあり得る…)、無関税で先進国諸国への輸出拡大を図ることでしょう。例えば、陸続きのベトナムであれば、日本市場向けの拠点としては絶好の立地条件となりますし、ペルーは、北米市場向けとなります。そして、オーストラリア市場攻略の拠点には、マレーシアが選ばれるかもしれません。原料や部品等を中国から輸入するとなれば、製造拠点国との貿易決済は人民元となる可能性もあります。現地の中国系工場が、中国人労働者を本国から呼び寄せて雇用すれば、ゾンビ企業の整理によって生じる中国国内の失業問題への対策ともなります。その一方で、先進国に対しても、企業買収や中国人実業家の起業、あるいは、金融市場での活動等を通して内国化し、先端技術力を吸収しつつ、市場支配力を高めようとすることでしょう。さらに”一帯一路構想”と結びつければ、中国が、自国を中心とした経済網にTPPを組み込むこともあり得ないシナリオではないのです。仮に米国抜きのTPPともなれば、中国の独断場ともなりかねません。

 今日の行き過ぎたグローバル経済、否、弱肉強食のジュラシック・エコノミーにあって、その獰猛さにおいて最強の”シナノザウルス”と化している中国であれば、TPPの成立は願ったりなはずです。”部外者”であっても、自由に目的を追求できる空間が広がるのですから。となりますと、他の諸国にとりましては、真にTPPの成立が望ましいのか疑問となります。先進国では中国に自国市場を蝕まれ、中間層の破壊に拍車がかかる一方で、後進国でも、中間層が育つ前に、中国系、あるいは、華僑系企業に自国経済を握られないとも限らないからです。冷静に考えてみますと、TPPの消滅によって、TPP参加予定国は、九死に一生を得た可能性もなきにしもあらずと思うのです。

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グローバリズムの修正は民主主義が機能した証

2016年11月17日 15時34分30秒 | 国際政治
【米大統領にトランプ氏】オバマ氏演説「米国の民主主義は一個人よりも偉大」
 アメリカのオバマ大統領は、任期終了を前に最後の訪問地として民主主義の発祥の地であるギリシャを選び、首都アテネにて民主主義を高く評価する演説を行ったと報じられております。

 イギリスのEU離脱やアメリカでのドナルド・トランプ氏の大統領当選については、マスメディア等は、政治の衆愚化の証として民主主義を否定的に捉える向きがありました。愚かな国民が感情から投票したため、重大な選択を間違えたと…。民主党の候補者であったヒラリー・クリントン氏の敗北を受け、同党のオバマ大統領も同様の見解を語るものと予測されたのですが、報道によりますと、同大統領は、今般の結果については、民主主義が行き過ぎたグローバリズムを修正する機能を果たしたとする認識を示しているようなのです。つまり、これらの現象については、民主主義の結果として、肯定的な評価を与えているのです。

 実のところ、仮に、イギリスであれ、アメリカであれ、選挙結果が反対であったとしますと、行き過ぎたグローバリズムがもたらす負のメカニズムについては相変わらず無視され続け、さらなる貧富の格差や中間層の破壊をもたらしたかもしれません。富は”1%”どころか”0.1%”に集中し、固有の文化や伝統を失った人々は地球上を流転し、グローバル市場では合併を繰り返して巨大化した少数の企業のみが恐竜の如くにのし歩いていたかもしれないのです。

 直面する問題に苦しむ国民の声を政治に届けた制度こそ、自由な選挙に他なりません。オバマ大統領が自らの政権ではなし得なかった行き過ぎたグローバリズムの修正を、如何にしてトランプ次期大統領が実現するのか、それは、選挙のみならず、政治の実践においても民主主義が試されているとも言えるのではないでしょうか。

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TPPからRCEPへの乗り換え論のリスクー日本の中間層の破壊

2016年11月16日 09時53分47秒 | 国際経済
TPP停滞ならアジアに軸足=安倍首相見通し、中国に懸念も―参院特別委
 トランプ政権の誕生により、TPPの行方が危うくなってきたことから、早くもTPPからRCEPへの乗り換え論が唱えられています。しかしながら、その先には、日本国の中間層の破壊が待っているのではないでしょうか。

 アメリカ国民の多くがトランプ氏に投票した背景には、自由貿易協定の締結が一般のアメリカ国民にはメリットをもたらすどころか、中間層を破壊したところにあります。既にアメリカ国民は、カナダ、並びに、メキシコと共に設立したNAFTAを通して、貿易自由圏がもたらす結果を知っています。特に、加盟国間において格差が著しい国に弊害が顕著に表れ、中間層が崩壊したアメリカのみならず、外国企業の製造拠点となったメキシコも、農業への打撃が麻薬栽培を促し、深刻な麻薬戦争の名で知られるように、国民はマフィア支配の恐怖に慄いています。また、合法であれ、不法であれ、メキシコからアメリカに流れ込む大量の移民も、結局、メキシコには十分な雇用が生まれなかったことを示しています。一方、日本国は、二国間の自由貿易協定や経済連携協定の締結例はありますが、地域的枠組みへの本格的参加はなく、TPPであれ、RCEPであれ、未知の世界です。

 TPPでは、日米間の経済格差がそれ程にはないものの、それでも、他の諸国との間には著しい格差がありますので、日本国の中間層への皺寄せが懸念されています。一方、TPPに代わってRCEPともなりますと、13億の人口を擁する中国が参加するわけですから、その破壊的な影響は計り知れません。中国企業や中国系金融機関が日本市場を席巻するでしょうし、元安傾向が続けば、日本市場は、過剰生産に苦しむ中国製品の格好の輸出先となることでしょう。また、日本国内に進出した中国系企業は、積極的に中国人移民を雇用するかもしれません。しかも、TPPには、公平・公正なルールの下での通商を目指していますが、RCEPでは、中国がルールを順守するとは思えませんし、自国市場だけは保護しようとすることでしょう。

 日本国内では、地域的経済圏の形成に関しては、参加経験がない故に夢を見がちですが、先行して経験しているイギリスやアメリカでは、マイナス面の深刻化から既に見直しの段階に入っています。行き過ぎたグローバリズムに修正を加えつつ、先進国であれ、後進国であれ、各国が、自らの強みを磨き、内需主導で経済成長、否、豊かな国民生活を実現するための包括的経済モデルこそ、今日、求められているモデルなのではないでしょうか。量から質への転換は、規模の経済や広域的な格差利用に軸足を置くグローバリズムに歯止めをかけ、国内経済と調和した豊かな世界へと人類を導くのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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