万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日銀の金融緩和―中央銀行の債権買い取りは普通の手段

2012年12月03日 15時46分24秒 | 日本経済
脅かされる日銀の独立性 「安倍総理」で大丈夫か? 無制限の金融緩和を提唱(東洋経済オンライン) - goo ニュース
 日銀に対する安倍自民党総裁の金融緩和要求をめぐり、”日銀引き受けは禁じ手””日銀の独立性を脅かす””ハイパー・インフレーション”を起こす、といった反論の声が聞かれます。しかしながら、中央銀行の歴史を振り返りますと、債権の買い取りによる通貨の供給は、中央銀行の基本的な金融機能の一つでもあります。

 中世以来、金・銀・銅といった希少金属が不足していたヨーロッパでは、商人達が発行した為替手形が、紙幣の役割を果たしていました。為替手形が流通することで、硬貨が乏しくとも、活発な商取引が可能となったのです。発行された手形は、高い信用の下で、最後には、市場に店を構えた両替商が現金と引き換えられました。やがて、通貨供給の仕組みは、債権一般にも用いられるようになり、銀行は、市中から債権を買い取ることで、市場に通貨を供給する役割を果たすようになります。現在の中央銀行制度とは、中央銀行が、通貨発行権を独占した形態であり、当然に、債権買い取りによる通貨供給機能を備えているのです(政府紙幣の形態もありますが、現在では、殆ど用いられていない…)。金融政策の主要な手段の一つとされる公開オペレーションは、この伝統を引き継ぐものであり、中央銀行は、日常業務として、債権を市中の金融機関から買ったり売ったりすることで(買いオペと売りオペ)、通貨供給量を調整しています。際限なく債権買い取りを行いますと、もちろん、インフレが起きますが(インフレ抑制には売りオペ…)、債権の売買自体は、ごく普通の政策手段なのです。

 デフレ下では、中央銀行が買いオペを増やすことは当然の対応なのですから、日銀が、独立性を盾にしてデフレ対策や円高対策を怠り(デフレでは自国通貨高になる…)、金融緩和を渋るのは、独立性の濫用のようにも思えます。中央銀行による通貨供給機能が正常に働きませんと、経済もまた、不健康になってしまうのですから。

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コメント (2)
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