万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

弱者のモラル・ハザード

2007年11月30日 21時37分44秒 | 日本政治
生活保護の減額容認 厚労省検討会「低所得世帯上回る」(朝日新聞) - goo ニュース

 生活保護の減額に関しては、”政府は弱者に冷たい”、という反対意見と、”生活保護の実態は目に余る”とする賛成意見に分かれているようです。確かに、その日の食事にも事欠く生活を送らざるをえない人々から見ますと、反対意見はもっともなことでしょうし、弱者のモラルハザードを見てきた人々にとっては、減額は当然ということになりましょう。

 それでは、この生活保護削減案は、妥当な法案なのでしょうか。まず確認すべきことは、生活保護の給付額が、最低賃金を上回る状況は、やはり是正しなくてはならないということです。働いている人より働いていない人の所得が高くなりますと、敢えて働かないという”貧困の罠”が発生してしまいます。そうして、次にすべきことは、弱者のモラル・ハザードの退治です。弱者を批判することは、それなりに勇気のいることなのですが、モラル・ハザード(不正受給や遊びへの支出・・・)を放置しては、生活保護制度に対する国民の理解を得ることは難しくなります。助け合いの気持ちや慈悲の心は、偽りの弱者の前では消えうせてしまうのです。

 どんなに弱者に手厚い制度であっても、それを悪用されては、存在意義を失ってしまいます。生活保護についても、より透明性を高め、国民に説明できる制度となるよう努めることが大切であると思うのです。

 

 
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他人事ではないマフィアの経済支配

2007年11月29日 18時37分59秒 | 中近東
イラクでマフィア型犯罪増加=政府に浸透、経済支配目指す-米軍 (時事通信) - goo ニュース

 政府が、もし、マフィアの支配下に置かれてしまったら、どのようなことが起こるのでしょうか?

 マフィアが政府をターゲットにするのは、政府には、徴税権や予算配分権があるからです。民間にあって利益を上げるためには、企業を設立し、事業を展開し、販路を広げるなど、地道な努力が必要になります。しかしながら、莫大な歳入を持つ政府の権限を握れば、労せずして、不正な資金や利権が転がり込んでくるのです。このような状態に至りますと、国民は、政府ではなく、マフィアに納税するに等しくなり、国家再建のためのインフラの整備や国民の生活水準を向上させるための社会保障政策などには予算が回らなくなります。また、取り締まりを強化しようとしても、政府内にマフィアの協力者がいるのですから、妨害されてしまうことになりましょう。ようやくイラクの治安が回復してきたところに、こうしたマフィアの毒牙にかかられては、イラクの将来を案じずにはおられません。

 イラクで深刻さを増しているマフィアによる経済支配は、どの国でも起こり得ることです。国家権力は、犯罪者にとっても魅力なのです。こうした事態を防ぐために、各国政府は、マフィアの活動に対しては充分に注意を払い、政府が犯罪組織化しないための制度づくりを進めなくてはならないのです。

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EUは中国の民主化を

2007年11月28日 22時52分29秒 | ヨーロッパ
EUとの関係強化表明 胡主席、首脳会談で(共同通信) - goo ニュース

 1989年から始まる東欧革命の結果、旧社会・共産主義国が相次いで民主化の道を歩み始めた時、外部から率先して支援を行ったのがECそうしてEUでした。それでは、共産主義や軍事独裁の残存するアジアにおいて、EUは、どのような政策を追及しようとしているのでしょうか。

 確かに、中東欧諸国はヨーロッパの身内であって、アジアはそうではありません。しかしながら、もし、EUが、自由、民主主義、並びに、法の支配といった原則を基調とした国際秩序の構築を望むならば、アジアにおいても、独裁体制を敷く諸国の民主化の後押しをしていただきたいと思うのです。今回のEU・中国首脳会談では、EUは、貿易や環境分野における協力を約したようですが、どうやら、中国国内の民主化や自由化について、有意義な話し合いが持たれたようには見えないのです。

 EUが、中国との関係を経済や環境に絞り、アジア諸国の民主化に後ろ向きであるとしますと、これは、まことに残念なことです。しかも、中国への武器輸出を解禁することにでもなれば、アジアの軍事バランスを不安定化しかねません。本当のところは、EUは、何を望んでいるのでしょうか。EUが、偽善者でないことを切に願うのです。

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ウィンブルドンになれなかった大相撲

2007年11月28日 18時21分14秒 | 社会
朝青龍戻っても逆風 巡業の席埋まらず(スポーツニッポン) - goo ニュース

 発祥を神事に遡り、国技と言われた大相撲にも、ここ数年、国際化の波が本格的に押し寄せてくるようになりました。当初は、テニスのウィンブルドンの如く、世界各国から力士を集め、国際スポーツとしての地位を築くことが大いに期待されたものですが、結局、大相撲は、ウィンブルドンになれなかったようなのです。

 テニスは、老若男女を問わず世界各地で親しまれており、既に十分に国際化したスポーツでしす。このため、テニス発祥の地であるイギリスの選手が活躍しなくとも、メディアを通じてウィンブルドンは、国際的な大スポーツイベントとなり得たのです。一方、大相撲には、こうしたバックグランドがありませんでした。これが、第一の理由です。

 第二に、大相撲を支えている精神は、元来神事であるが故に、極めて日本的であったことです。精神性の重視は日本の武道の特徴なのですが、国際化を目指すあまりに、この側面を薄めようとした結果、高い人格を備えた横綱がいなくなり、むしろ、大相撲の魅力が失われてしまいました。他の格闘技と同じでは、わざわざ土俵の前に足を運ぶ価値がなくなります。

 第三に、かつて、力士と地方との関係こそが、大相撲の全国的な人気を支えていました。地方は、自らを出身地とする力士を応援し、地方後援会は、力士の有力な後ろ盾となっていたのです。日本人力士が減り、地方との関係が希薄となっても、外国でのファンが増えるわけでもありませんので(わざわざ日本まで来て観戦するのも困難)、ファン総数の減少のみを帰結したことになります。

 はたして、こうした要因が積み重なった結果、大相撲人気は、著しく凋落することになりました。ウィンブルドンとなるための条件を見極めずに、ちぐはぐな国際化を安易に追求したことは、大相撲にとりまして大変不幸なことであったかもしれません。

 

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NHKのスリム化を

2007年11月27日 20時25分11秒 | 日本政治
 現代という時代におけるNHK=公共放送の存在意義とは、一体、何なのでしょうか?この”公共”とは、中立・公平性を意味するのでしょうか?もし、公共新聞というものがあれば、より多くの人々が疑問を持つことになるのでしょうが、公共放送に限っては、何故にか存在してしまっているのです。

 それでは、NHKには、どのような公共性に基づく存在理由があるのでしょうか。公共性を吟味してみますと、1.有事や災害時の情報提供、2.教養・教育番組の作成・提供、3.ニュース報道や国会中継などを挙げることができます。ただし、1については、有事や災害時に民間の電波を臨時に使用できる権限を政府に与えることで、この役割を果たすことができますし、3についてもニュースの選択や解説に偏向がある場合には公共性が欠けてしまいます。このように見てみますと、NHKの役割は、かなり絞り込むことができるのではないか、と思うのです。

 国民は、テレビ購入に付随して受信料を支払わねばならず、NHKの肥大化は、政府と同様の行政の無駄の問題を数多く抱えています。バラエティー、ドラマ、歌謡番組などの民放と競合し、かつ、国民の選好が分かれる部門は全く必要ありませんし、むしろ、特定の団体や集団の利権にさえなっていると言えましょう。常に、社会に対して手厳しい批判を加えているNHKこそ、率先して自らを改革すべきなのではないでしょうか。

  

 

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政府系ファンドが生む大問題

2007年11月26日 20時31分49秒 | 国際経済
日経平均は続伸、中国政府系ファンドへの期待で一時400円超える上昇(ロイター) - goo ニュース

 さてさて、本当に、市場は政府系ファンドの活躍に期待を寄せてもよいのでしょうか?この問題、実は、市場主義経済、ならびに、株式会社制度の根幹に関わる大問題を含んでいるのです。

 まず、市場経済における問題とは、政治と経済の分離の問題でもあります。80年代以降、急激に市場がグローバル化した理由の一つに、制度的な政経の分離がありました。この分離によって、ある国の企業が他の国において事業を展開しても、直接的には政治または国際問題化しない、という状況がもたらされたのです。しかしながら、政府自身が市場のアクターとなってファンドを運営するとなりますと、この前提が崩れてしまうことになります。

 また、株式取得により、外国政府が企業の保有者となるという状況は、会社は誰のもの?の問題とも繋がります。純粋に株主のもの、ということになりますと、外国政府が持ち主となり、もちろん、経営権をも握ることになります。果たして、自国内に、他国の国家目的に従属する企業が続出することは、許されるのでしょうか?また、今回問題となっているファンドは、中国政府の外貨準備を基金に運営されると報じられていますが、ODA貸与国でありながら軍拡や宇宙開発を進める国に、自国の企業も莫大な配当を支払うという事態も発生してしまうのです。

 このように考えますと、中国系ファンドは必ずしも歓迎できませんし、以上の問題をきちんと議論しませんと、市場経済自体がつぶれてしまう恐れがあります。政府系ファンと民間ファンドとは、決して同じではないのですから。

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親中政策と労働者の利益は両立しない

2007年11月25日 13時44分42秒 | オセアニア
豪総選挙は野党の労働党が勝利、約11年ぶりに政権交代(ロイター) - goo ニュース

 今回の豪総選挙における労働党の勝利を受けて新たに首相に就任するラッド氏は、歴代の首相の中でもひときわ親中派であると目されています。しかしながら、ラッド氏が親中政策を強めるほどに、支持母体である労働団体の利益との間に摩擦が生じるのではないか、と思うのです。

 それは、特に、通商政策において顕著となるかもしれません。何故ならば、FTAやEPTの締結などを通して対中貿易を更に促進するとしますと、安価な中国製品の輸入増大を招き、豪州国内の産業に損害を与えるかもしれませんし、また、中国からの移民労働者の増加は、豪州人の雇用機会を奪うことになるかもしれないからです。労働党が、労働者の所得と雇用を守ることを政策の基本に据えていることを考えますと、親中政策は、これらの利益と相反してしまうのです。

 豪州は、資源大国でもあり、また農業大国でもありますので、輸出先としての中国市場を高く評価いているのかもしれませんが、親中政策は、少なくとも、労働者の利益にはかないません。果たして、ラッド首相は、この問題にどのように対処してゆくのでしょうか?

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知的財産権の保障は現代のたまもの

2007年11月24日 17時10分59秒 | 国際経済
白水徳彦の「世界自動車事情」 モノまね中国自動車産業が脱皮へ躍起 新開発手法で開発時間を数分の1に(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース

 知的財産権の保障の歴史は、西欧でもそう古いものではありません(近世の国王の特許状?)。しかも、市場経済に不可欠な法制度と見なされ、世界各地で定着してくるのは、市場経済が急速に発展した第二次世界大戦後であるとも言えます。

 統制経済から市場経済への転換を図った中国では、どうやら、現代の経済システムにおけるこの制度の重要性が、充分には理解されていないようです。モノまねに対する開き直った中国の弁明(火薬は中国の発明なのに西欧はまねをした・・・)は、この制度が、この制度が現代という時代の要請に応える形で発展してきた、という認識が欠けていることを現しています。しかしながら、時空を無視した言い訳をしても、それが現代に通用するはずもありません。例えば、戦争法のなかった時代を持ち出して、戦時における残虐行為を正当化しようとしても無理なことと同じです。

 まず第一に中国が行うべきことは、市場経済において、何故、知的財産権の保障が必要なのか、理解することなのではないでしょうか。表面的に市場経済を取り入れたところで、それを支える仕組みがわかっていなくては、独りよがりでピントはずれな反論にしかならないと思うのです。

 

 
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中国国民に初めて頼りにされた日本

2007年11月23日 19時20分38秒 | アジア
そんなのアリ? 中国の詐欺騒動、日本巻き添え(朝日新聞) - goo ニュース

 江沢民政権以来、国を挙げての徹底的な反日教育行ってきた中国においては、日本や日本人に対する感情は、決して芳しいものではないと考えられてきました。しかしながら、詐欺騒動をきっかけに日本国総領事館に押し掛けたという中国国民の行動は、根強い反日感情にも変化の兆しが見えてきたことの証でもあるかもしれません。

 そうして、中国国民が日本国に対して望んでいる役割もはっきりしてきました。それは、中国共産党政権に、外部圧力をかけて欲しいということです。中国では、法整備が進んでおらず、一党独裁下の官僚腐敗は目に余るものがあります。民主的な政治制度もありませんので、中国国民には、自らの不満を政府に伝える経路もないのです。

 日本国は、中国の人々が初めて日本に寄せた期待を裏切ることがあってはなりません。現在、与党の谷垣氏らが訪中し、中国共産党幹部等と会見を行っていますが、中国国民から反発を買っている共産党政権にお追従を言うよりも、日本国は、中国国民の声にこそ誠実に応えるべきではないか、と思うのです。

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薬物は自己放棄を意味する

2007年11月22日 18時10分14秒 | アメリカ
米で大麻“合法化”の動き デンバーなど10市、採択(産経新聞) - goo ニュース

 民主主義の時代においては、原則として、投票権を持つ人々の多数決によって法律を制定できることになります。このことは、一つ間違えますと、このデンバーの大麻合法化のように、住民の多数が、犯罪を犯罪でなくしてしまうこと(非犯罪化)もでいることを示しているのです。それでは、本当に、大麻は、犯罪に当たらないのでしょうか?

 麻薬とは、確かに、使用した本人のみが快楽を得るのですから、仮にその結果として麻薬中毒になっても、さらには廃人となったとしても、それは個人の自由という主張もあるかもしれません。しかしながら、麻薬とは、それを使用した人から正常な判断力を奪い、まともな社会生活を送れなくするのです。このため、当然に、本人は社会的責任は負えなくなりますし、社会もまた、判断力を失った人々による予測不可能な行為に怯えることになるのです。

 このように考えますと、麻薬は、明らかに取り締まるべき”社会悪”と言えましょう。そうして、麻薬を資金源としている暴力団、マフィア、テロリスト、そうして悪徳国家が存在しているという事実は、薬物の禁止こそ、人間の精神の健全性を保つための正しい方法であることを示しているのです。住民の多くが快楽に負けるとしますと、その街は、ソドムとなるかもしれません。

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生命倫理が立法上の争点となる時

2007年11月21日 18時14分52秒 | アメリカ
米大統領、万能細胞研究を歓迎 再生医療へ倫理の壁回避(産経新聞) - goo ニュース

 しばしば、合理的で割り切った考え方の方が、新しくて進歩的であると見なされがちです。しかしながら、社会的ルールを決めるに際しては、そうとばかりは言えない場合があるのです。生命倫理もそうした問題のひとつです。

 リベラルな思想にあっては、受精卵を使った胚性幹細胞(ES細胞)研究は、再生医療の有効な手段であって、人工的に作られた胚性幹細胞が医療に役立つならば、倫理的な問題は脇に置かれることになります。しかしながら、この胚性幹細胞を生命が息づき始めた”人”と考えますと、胚性幹細胞を利用した医療行為は、イコール”殺人”と認識されることになります。つまり、ある人の病気を治すために、ある人の生命が犠牲になる、という図式となってしまうのです。リベラル派が、ここで、”生命の軽視”や”人権の侵害”として非難しないことは不思議なことなのですが・・・。

 生命倫理が関わる法律について是非を判断する場合には、やはり、生命とは何か、という根源に立ち返った議論も不可避となるものです(今回の研究は、この問題を根本的に解決した点でも快挙です!)。そうして、保守的な考え方が古いとは、決して言えないように思うのですが、いかがでしょうか。

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国の発展のために広く学問を世界に求めよう

2007年11月20日 18時34分31秒 | アジア
高村外相、ミャンマー外相と会談 民主化進展で支援(産経新聞) - goo ニュース

 ビルマ、北朝鮮、中国など国民弾圧を起こす国に共通する特徴は、学問の自由がなく、政治についても自由に学んだり研究することができない閉鎖的な体制を敷いていることです。このため、限られたイデオロギーや知識からしか自国の統治制度を論じることができず、より優れたシステムの導入や有益な知識の普及に対しては、自らの権力を危うくするものとして忌避しているのです。

 こうした閉鎖的な体制を続けている限り、国の発展は望めませんし、国民も自らの力を発揮することはできません。広く学問を世界各国に求めなくては、国は衰えてゆくか、はたまた、弾圧国家になり下がるしかないのです。

 諸外国の知識を学び取り入れようとする考え方は、決して新しいものではなく、明治時代を迎えるに先立つ慶応4年(1868)3月に公布された「五箇条の御誓文」のなかには、「知識を世界に求め大いに皇基を振起すべし」という一条が見られます。学問に対する誠実さと寛容さがあれば、多くの国の国民が救われるのではないか、と思うのです。

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本人証明は自らを守る

2007年11月19日 18時07分17秒 | 社会
法相、指紋システムを視察 「テロ防ぐため我慢を」(共同通信) - goo ニュース

 外国人に対する指紋押捺制度については、以前から外国人の人権を侵害しているとの批判がありました。これは、指紋の採取が犯罪者を対象に行われることから、あたかも外国人を”犯罪者扱い”と受け取られたからでもあります。しかしながら、少しばかり発想を転換してみますと、指紋の押捺といったアイデンティティーの確認制度は、自らの安全を守ることにも繋がると思うのです。

 たとえば、金融機関では顧客サービスとして本人確認制度を設けている場合もありますし、パソコンの中にも、指紋システムを導入している機種もあります。何か事件に巻き込まれたり、被害者としての本人確認が必要な場合でも、こうしたシステムが存在していれば、すぐに被害者の確認ができます。つまり、本人証明制度あればは、身の安全が確保されやすくなり、かつ、本人になりすました詐欺事件を防ぐことにもなるのです。

 諸外国では、外国人のみならず、国民に対しても本人証明を発行している事例もあります。現在、一般的に行われている健康保険証や運転免許証よりも本人確認が確実であり、参考にすべき点は多いように思うのです。もちろん、官僚組織による悪用を防ぐ仕組みは必要となりましょうが、上手に運営すれば、国民の安全確保や犯罪捜査には貢献するかもしれないのです。
 

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一党独裁は官僚腐敗を止められない

2007年11月18日 17時35分54秒 | アジア
中国政府ぐるみで日系企業乗っ取り?現地社長が8億円横領(読売新聞) - goo ニュース

 現在では、中国政府の官僚腐敗は、前近代的な現象として見なされがちですが、歴史を紐解きますと、政府が腐敗した事例は枚挙に遑がありません。そうして、近代の政治システムは、こうした人間の悪い側面、つまり、公人の立場を利用して私益を追求する人が存在するという側面を克服するために構築されてきた、という一面もあるのです。

 言わずもがな、それは、権力分立であり、多党制であり、民主主義でもあります。例えば、議会は、官僚組織を含めた行政組織に対してチェックを行う権限を持ちますし、国民が、政党を選ぶことによって政権交代が可能であれば、腐敗した行政部門を排除することができます。また、実際に被害が発生した場合には、被害者は、司法に訴えることもできるのです。もちろん、日本国を見ても分かりますように、政府は交代できても、官僚組織の腐敗にメスを入れることはなかなか難しいのですが・・・(今後、官僚腐敗を排除する方法を考案しなくてはならないかもしれません)。

 共産党一党独裁制を維持している中国では、この意味において、政府の腐敗を排除するシステムが欠落しているのです。中国に進出している外資系の企業は、本国の支援なくして腐敗と孤立無縁で闘うことになりかねませんので、一党独裁のリスクへの備えを急ぐ必要があるように思うのです。

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現代国家は現実と理想の間で苦しむ

2007年11月17日 18時09分50秒 | アメリカ
LA警察、イスラム教徒のコミュニティー示す地図の作成を中止(ロイター) - goo ニュース

 現代国家は、法の前の平等の原則を尊重し、宗教、民族、人種などによって差別をしてはならないことになっています。多くの国では、この原則は憲法においても明記されており、国民は、法的な側面から見ますと、いわば抽象的な個人に還元されているとも言えましょう。しかしながら、その一方で、この理想が現実と食い違う時、現代国家は、解決の難しい問題に直面することになるのです。

 現代国家の多くは、移民を受け入れており、出身国を同じくする人々が独自のコミュニティーを形成している場合は少なくありません。このことが、何らかの治安や社会上の問題を起こさない場合には、表だって問題化することはないのですが、現実には、そうとばかりは言えないのです。例えば、本記事にあるように、イスラム教徒のコミュニティーがテロリストを生む土壌となったり、犯人の潜伏先となるような場合には、安全な社会を求める他の住民側から取り締まり強化の要望が寄せられることになるのです。

 個人ではなく、集団が問題となる場合、現代国家は、理想と現実との間で苦しむことになります。理想を追求すると有効な手段をとれなくなり、現実に対処しようとすると、今度は、法律上の原則とぶつかることになるからです。誰もが安心して生活できる社会を築くためには、もう一度、集団(コミュニティー)と個人、そうして、集団(国、地方自治体、都市・・・)の中の集団(コミュニティー)の問題を考えてみる必要がありそうです。

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