万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

親中政策と労働者の利益は両立しない

2007年11月25日 13時44分42秒 | オセアニア
豪総選挙は野党の労働党が勝利、約11年ぶりに政権交代(ロイター) - goo ニュース

 今回の豪総選挙における労働党の勝利を受けて新たに首相に就任するラッド氏は、歴代の首相の中でもひときわ親中派であると目されています。しかしながら、ラッド氏が親中政策を強めるほどに、支持母体である労働団体の利益との間に摩擦が生じるのではないか、と思うのです。

 それは、特に、通商政策において顕著となるかもしれません。何故ならば、FTAやEPTの締結などを通して対中貿易を更に促進するとしますと、安価な中国製品の輸入増大を招き、豪州国内の産業に損害を与えるかもしれませんし、また、中国からの移民労働者の増加は、豪州人の雇用機会を奪うことになるかもしれないからです。労働党が、労働者の所得と雇用を守ることを政策の基本に据えていることを考えますと、親中政策は、これらの利益と相反してしまうのです。

 豪州は、資源大国でもあり、また農業大国でもありますので、輸出先としての中国市場を高く評価いているのかもしれませんが、親中政策は、少なくとも、労働者の利益にはかないません。果たして、ラッド首相は、この問題にどのように対処してゆくのでしょうか?

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