万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

南シナ海問題が示す尖閣諸島が日本領である傍証

2016-07-31 15:28:56 | 国際政治
日本の経済成長に必要なのは中国との協力なのに!政治がぶちこわし=中国報道
 南シナ海とは、台湾海峡からカリマタ海峡、並びに、マラッカ海峡の間に広がる350万㎢もの広さを持つ世界最大の半閉鎖海です。近年、特にパラセル(西沙)諸島とスプラトリー(南沙)諸島が注目されていますが、中国は、これらの諸島の他に、フィリピン沖の中沙諸島、並びに、台湾寄りの東沙(プラタス)諸島の二つの区分を設けています。

 ところで、南シナ海について調べていますと、尖閣諸島とも関連する興味深い史実が見出されます。それは、東沙諸島の領有権をめぐる日清間の角逐です。同諸島は、現在、台湾の実効支配下にあり、中国もまた領有権を主張しています。両政府とも、当諸島に対して明代からの”歴史的権利”を根拠としており、1730年には清国が自国の版図に編入したとしてます。しかしながら、しばらく無人島となっていたため、1901年には、日本人の玉置半右衛門が探査船を派遣し、1907年には西澤吉次等が内務省に台湾への編入を求めると共に、同諸島でグアノ・リン鉱採掘の事業を開始してます。同諸島は、”西澤島”とも称されていましたが、こうした日本国側の動きに対して、事業開始から3年を経た1909年に至り、清国では、ナショナリズムの高まりから対日ボイコット運動が発生し、日本国政府に対して公式に抗議を行ます。当事の日本国政府は、同島を無所属と認識していたものの、清国との関係悪化を憂慮し、清国の領有が証明された場合にはそれを認める方針で交渉に臨みます。最終的には、日清間において、「プラタス島引渡ニ関スル取極(交還東沙島條款)」が締結され、清国側が賠償として、同島の西澤の資産を相当額で買い取るのと引き換えに、日本国側は、清国による同諸島の領有を認めるのです(ただし、当時の清国政府は、島の正確な地理的位置さえ把握していなかったらしい…)。

 東沙諸島をめぐる経緯から尖閣諸島について指摘できることは、(1)東沙諸島とは異なり、日本国が1895年に尖閣諸島を編入した際には、清国から全く抗議がなかったこと(2)1909年の清国民のナショナリズムは、領土回復運動があったにも拘わらず、尖閣諸島に対しては”返還”を求めていないこと、(3)当事の日本国政府は、領有の証明を条件として清国の領有を認めていたこと、(4)清国の領有権主張は、ナショナリズムと軌を一にしていること(季節的に中国漁民が渡海していた事実はあるものの、法的根拠は怪しい…)などです。こうした側面は、尖閣諸島が日本国領であることの傍証ともなるのではないでしょうか。

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サンフランシスコ講和条約放棄領土無主地化説が妥当では?

2016-07-30 14:16:25 | 国際政治
中露、9月に南シナ海で初の軍事演習 プーチン大統領の訪日控え日本側にシグナルか
 南シナ海問題をめぐっては、今般、仲裁裁判にて中国の「九段線」の主張を違法とする判断がくだされ、一先ずは、中国の法的根拠は否定されました。その一方で、南シナ海の領有権問題は積み残されており、根本的な解決には至っておりません。

 この問題の発端は、サンフランシスコ講和条約において、日本国がどの国に対して領土を放棄したのか、明記しなかったことにあります。放棄先不明の領土は、(1)台湾及び澎湖諸島(第2条(b))、(2)千島列島並びに樺太南部とその近接する諸島(第2条(c))、(3)新南群島及び西沙諸島(第2条(f))です。

 今般の南シナ海問題は、主として(3)の新南群島及び西沙諸島に関わりますが、この問題は、北方領土問題や国際法上の台湾の地位などとも深くかかわるのです。領有権問題の解決策としては、同条約第22条の手続きに従い、条約の解釈上の問題、即ち、割譲先不明の放棄領土を無主地と見なすのか、否かを、国際司法裁判所に判断を仰ぐ方法がありますが、仮に、同裁判所で受理され、無主地と判断された場合、南シナ海と北方領土の問題は解決に向けて大きく前進し、台湾の国際的地位も安定します。南シナ海に関しては、武力で現状を変更した中国を除いて、平和裏に実効支配した諸国の領有権が確定し、領土問題解決の目途が立ちます。北方領土問題については、条約の当事国である日本国が、北方四島の領土放棄を認めておらず、領有権を一貫して主張しているために、無主地とはなりませんが、その北方四島以北の千島列島と樺太南部は、ロシア領とする法的な線引きは可能となります。また、台湾に関しては、中国は、一度たりとも台湾に統治権を及ぼしたことはなく、中華民国により実効支配され、現在、政府は台湾に引き継がれているのですから、台湾の国際社会における独立主権国家としての地位が不動のものとなるのです。ロシア、中国、並びに台湾も同条約の締約国ではないものの、国際司法裁判所の判決となれば無視できないはずです。

 このように考えますと、サンフランシスコ講和条約第2条の解釈を明確にすることこそ、領土問題解決の近道であるかもしれません。日本国政府をはじめ、当事国となる各国政府には、是非、この方法を検討していただきたいと思うのです。

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EUは”パンとサーカス”になる?

2016-07-29 15:12:08 | 国際政治
「EU(欧州連合)」のニュース
 国民投票によるイギリスのEU離脱の決定を受け、EU側においても、将来ヴィジョンに関する議論が起きてきているようです。その一つが、財政統合の強化なのですが、果たしてこの政策は、より善きEUを実現する処方箋となるのでしょうか。

 イギリスのEU離脱の要因として指摘されているのは、欧州市場の恩恵が一般国民が多数を占める中間層には及ばず、逆に、貧富の格差を拡大させているというものです。中間層からみますと、EUを枠組みとした”もの、人、サービス、資本”の自由移動は、大量の移民流入をもたらし、雇用機会を奪われる上に、賃金の低下をももたらすのですから、歓迎できたものではありませんでした。しかも、社会・文化面でも軋轢が生じ、治安も悪化するとなりますと、なおさらのことです。

 こうした問題を解決するために提案されているのが、富裕層に集中した富を、EUの財政統合を強化することで、中間層、否、今や中間層からも脱落しそうな層に広く再分配しようとする案です。これまで、EUの再分配政策は、主として財政状況が厳しい南欧や中東欧諸国に対して実施されてきましたが、今後は、EU内の”先進国”の中間層も対象となる可能性も浮上しているのです。しかしながら、この方法は、必ずしもEU経済の調和のとれた成長や真の豊かさを約束しないように思えます。何故ならば、今後とも、EUが、無制限な自由化一辺倒の原則を貫くならば、やがては為政者が貧困化した市民大衆に対して”パンとサーカス”を提供した古代ローマ帝国と同じ道を歩むと予測されるからです。古代ローマ帝国では、エジプトなど属州とした地域から大量に安価な穀物が流入したため、ローマ市民の中核であった自営農民層が壊滅してしまいました。

 ヨーロッパ統合の夢は、古代ローマ帝国へのノスタルジーとしても説明されますが、1600年余りの時を経て、ローマ帝国を腐敗と堕落へと導いたた、悪名高い”パンとサーカス”が再来するのでは、皮肉な結果としか言いようがありません。そしてこの憂慮は、EUに限らず、新自由主義が吹き荒れる全ての諸国に共通した問題ではないかと思うのです。

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南シナ海仲裁裁判の二つの側面ー違法性の審査と法の創造

2016-07-28 15:21:28 | 国際政治
ARFも仲裁判決に触れず=議長声明で―南シナ海問題
 今月12日に示された南シナ海問題に関する仲裁判決に対して、中国は、あくまでも拒否する姿勢を見せております。国際法秩序に対する重大な挑戦なのですが、南シナ海仲裁裁判には二つの側面が含まれており、両者の区別は、国際社会が一致して中国に法の順守を求める上でも重要です。

 第一の側面とは、法に照らした違法性の審査です。本件では、中国が一方的に主張するところの’歴史的権利’の違法性、即ち、「九段線」の違法性が国連海洋法条約に基づいて、審査されました。結果として、「九段線」は否定され、中国は、南シナ海全域に対する主権的権利を主張し得なくなったのです。この判断は、当然と言えば当然の事であり、国連海洋法条約では、領海、EEZ、大陸棚等の権利について詳細な規定を置いており、これらの規定に違反した権利を認めるはずがありません。中国は、国連海洋法条約の締約国となると同時に、同条約が定める範囲以上の権利を主張することは、違法行為となったのです。「九段線」に関する違法性の判断は、常設仲裁裁判所であれ、国際司法裁判所であれ、如何なる司法機関が判断しても、同一の結論に達することでしょう。

 それでは、第二の側面とは、どのようなものなのでしょうか。第二の側面とは、法の創造です。今般の仲裁判決では、島と岩の区別に関する判断も示されています。島と岩の区別については、国連海洋法条約では明記されておらず、各締約国がそれぞれの解釈の下で領海、EEZ、並びに大陸棚を設定してきました(ただし、大陸棚については、大陸棚限界委員会が設置されている…)。第一の側面とは違い、判断の基準となる法文が存在しておらず、こうした問題を司法判断に付す場合、仲裁裁判官の裁量の幅が広くなるという問題が生じます。仮に、今般の仲裁判決に先例拘束性が認められるとしますと、いわば、法の創造、即ち、立法行為としても理解されることとなるのです。

 第一の側面として示された中国が設定した「九段線」に対する違法性の判断については、その結論は動かし難く、国際社会は、法の支配を確立する上でも、一致団結して中国に判決内容の誠実な履行を求めるべきです。その一方で、第二の側面については、議論の余地が残されています(ただし、仲裁判決は、将来、法改正が行われない限り、当事国に対しては法的拘束力あり…)。英米法系の諸国は判例に法創造力を認める傾向にありますが、大陸法系の諸国の多くは制定法主義を採用していますので、島と岩の区別については、立法による明確化を要するとする主張がなされる可能性があるからです(条約改正等…)。

 今般の仲裁判決では、区別の根拠として4つの基準が示されてはいますが、国際的なコンセンサスを要する問題ですので、後者の問題に関しては、今後、改めて国際社会全体で議論して然るべきではないかと思うのです。

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ASEAN外相会議共同声明は日本外交の敗北?

2016-07-27 15:20:51 | 国際政治
南シナ海判決で平行線=日米と中国―ラオスでARF
 ラオスの首都ビエンチャンで開催されていたASEAN外相会議では、中国の切り崩し工作の為に共同声明の取りまとめが難航し、南シナ海問題の仲裁裁判への言及や中国に対する名指しの非難も見送られたそうです。この結果を以って、日本外交の敗北とする見方も見受けられますが、この評価、いささか早すぎるのではないかと思うのです。

 共同声明の採択手続きに注目しますと、ASEANでは、共同声明の採択は全会一致を原則としておりますので、一国でも反対があれば採択を阻止することができます。この仕組みに目を付けたのが中国であり、ASEAN最大の親中国であるカンボジアを籠絡することで、対中包囲網の一角を切り崩したのです。確かに、結果だけを見れば、”中国の外交的勝利”にも見えます。しかしながら、この一件で浮き彫りとなったのは、ASEAN十カ国の間では反中派が多数を占めており、多数決制が採用されていれば、間違いなく対中批判の声明が採択されたという現実です。そして、ASEAN諸国の結束や協力よりも、中国に靡いたカンボジアは、一種の”裏切り者”と見なされかねず、今後は、同国に対する警戒感が高まることでしょう。

 また、共同声明には、”南シナ海情勢への「深刻な懸念」や「国連海洋法条約を含む法的平和的プロセスの尊重」”とする文言が見られ、間接的ながら、中国の仲裁判決無視の姿勢が批判されています。それでもなお中国が”外交的勝利”と言い募るとしますと、よほど、ASEANが中国批判で一致団結する展開を怖れていたのでしょう。

 たとえ中国が、仲裁裁判を過去のものとして消し去ろうとしても、この問題は、中国が違法行為を停止し、南シナ海の軍事拠点化を諦めるまで続くものと予測されます。仲裁判決は、国際社会における対中制裁の”お墨付き”に等しいのですから、出発点なのです。中国によるカンボジアの取り込みは一時的な”勝利”に過ぎず、大局から見れば、中国は、日米をはじめとした軍事、経済、司法…による多重包囲網によって、徐々に追い詰められてゆくのではないでしょうか。

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中国の選択肢は”戦わずして勝つ”か”戦って勝つ”?

2016-07-26 17:00:15 | 国際政治
判決順守、中国に求める=岸田外相―南シナ海問題、王氏は拒否
 中国の仲裁判決拒否については、不思議なことに、日本国のマスコミなどでは、評論家の意見として一定の理解を示す見解が掲載されることがあります。しかしながら、こうした擁護論は、仲裁判決の拒否が日本国の安全保障を著しく脅かすことに気が付いていないようなのです。

 南シナ海に対して、中国には主権を主張し得るほどの法的、並びに、歴史的根拠が欠けていることは、仲裁判決により明らかとなりました。そこで中国は、この判決には無視を決め込み、「九段線」の主張を維持したまま二国間協議による解決を訴えているのですが、”権利侵害問題”は、基本的には強行法規(ユース・コーゲンス)の性格を持ちますので、”示談”は馴染みません。仮に”示談”が許されるのであるならば、侵略も、被害国が合意すればお咎めなしとなるからです。

 その一方で、中国海軍の呉勝利司令官の発言を聞いておりますと、人民解放軍は、”示談による解決”どころか、あくまでも武力で南シナ海の軍事拠点化を貫く方針を示しており、こちらは、”暴力による解決”ということになります。何れにしましても、法の支配からはほど遠く、中国には、法的権利の保障に関する理解が抜け落ちているのです。そして、こうした行動原則に基づいて中国の対日方針を推測してみますと、憂慮すべきシナリオが見えてきます。それは、「九段線」の根拠としたように、日本国の尖閣諸島、さらには沖縄に対してまで”歴史的権利”を主張するというものです。

 仲裁判決の拒否は、中国には、法の支配を無視して、恫喝や賄賂を用いて”戦わずして勝つ(示談)”か、ストレートに”戦って勝つ(戦争)”の二つしか選択肢がないことを意味しています。この二つに限定された選択肢は当然に対日政策にも当て嵌まるのですから、中国の行動原則は、日本国の安全保障上の危機として認識すべきと思うのです。

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南シナ海侵出ーユネスコを踏み台にした中国

2016-07-25 14:52:36 | 国際政治
共同声明合意へ妥協成立=「南シナ海」でASEAN外相―ラオス
 仲裁裁判により南シナ海全域に対する中国の歴史的権利は否定され、中国が作成した地図上の「九段線」も消えることとなりました。「九段線」の消滅は、同時に、中国の強引な南シナ海進出の経緯をも浮き上がらせています。

 日本国内では、1974年1月19日に、中国がベトナムが実効支配していたパラセル諸島西部のクレセント諸島に武力侵攻した際に、ベトナム側が、中国の侵略行為を安保理に提訴したものの、中国側の拒否権によって封じられた事実はあまり知られていません。そしてもう一つ、国連が関係する知られざるを事実があります。

 それは、中国が、スプラトリー諸島において、軍事拠点建設に向けて最初の橋頭保を築いた経緯です。どのような手法で中国がスプラトリー諸島に足掛かりを得たのかと申しますと、事は、1987年4月に、中国がフェアリー・クロス礁にユネスコの科学調査プロジェクトであるGLOSSの一環として、気象観測所の設置作業を建設したことから始まります。GLOSSは純粋に科学的調査のためのプロジェクトであり、元より政治性は考慮されていなかったのですが、中国はこれをチャンスと見て、気象観測所用とは言い難い大規模な工事を行うのです。この結果、ベトナムとの間に衝突が生じ、1988年3月には、遂にスプラトリー諸島の海戦に至り、中国は、ベトナムからジョンソン南礁、ヒューズ礁、クアテロン礁等をも奪取するのです。誰がどう見ましても武力による現状の変更なのですが、スプラトリー諸島をめぐっては、領有権やEEZが未確定の状態にあったため(ベトナムと台湾が全域の領有権を、フィリピンがEEZ内を主張…)、今日まで、中国の侵略性が糊塗されてきたのです。

 しかしながら、「九段線」が法的に否定された今、残された事実は、ユネスコを踏み台にしてスプラトリー諸島を侵略した中国の違法行為です。中国国内では、”スプラトリー諸島の海戦の勝利”を誇る一方で、南シナ海問題に対して”部外者”は干渉するな、と牽制していますが、少なくともスプラトリー諸島に関しては、根拠なく進出してきた”部外者”とは、中国自身ではなかったのかと思うのです。

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南シナ海問題解決の奥の手はサンフランシスコ講和条約にあり?

2016-07-24 15:10:23 | 国際政治
岸田文雄外相、米と南シナ海問題で対中包囲網強化目指す ASEAN関連会合出席へ
 南シナ海問題について仲裁判決が示されてから日が浅いため、いささか議論が先走っている観もありますが、南シナ海問題を根本的に解決するためには、何れは領有権問題へと歩を進める必要があります。その際、サンフランシスコ講和条約を利用するのも一案です。

 何故、サンフランシスコ講和条約が南シナ海問題と結びつくのかと申しますと、同条約第2条(c)こそ、日本国によるパラセル(西沙諸島)、並びに、スプラトリー(南沙)諸島の放棄を明記しているからです。講和条約によって領土を放棄する場合には、一般的には放棄先の相手国を明示します。しかしながら、同条約の条文には放棄先国が欠けており、ここから、”放棄された領土は無主地化された”とする解釈が成り立つのです。となりますと、南シナ海の領有権問題は、”両諸島は、日本国の一方的放棄により無主地化されたのか、否か”という問題として再設定し、同条約の解釈に関する紛争として扱うことが可能となります。

 幸いにして、同条約第22条には、「この条約のいずれかの当事国が特別請求権裁判所への付託又は他の合意された方法で解決されない条約の解釈又は実施に関する紛争が生じたと認められるときは、紛争は、いずれかの紛争当事国の要請により、国際司法裁判所に決定のため付託しなければならない。…」とあります。注目すべきは、”いずれかの紛争当事国の要請により”とされ、紛争の当事国であれば、一国のみでも国際司法裁判所に付託できることです。

 この条文に照らしますと、まずはフィリピンとベトナムは同条約の締約国であって、南シナ海問題の紛争当事国でもありますので、同条の手続きを利用する資格があります。無主地化されたと判断されれば、フィリピンやベトナム、並びに、その他の諸国も、現在実効支配している島や岩礁の領有権が事実上確定されますし(日本国が改めて法的に承認?)、一方、無主地化が否定されても、国際司法裁判所の解釈に沿った平和的解決を模索することができます。

 もっとも、この手段には、(1)中国は、サンフランシスコ講和条約の当事国ではありませんので、中国に対して法的拘束力が及ばない、(2)先占の要件となる各国の実効支配の有効性については個別の裁判が必要となる…といった難点があります。しかしながら、国際司法裁判所によって同条約の解釈が確定すれば、それに反する中国の行動は間接的ながら”違法”と見なされることでしょう。軍事面に限らず、法によって中国を”雁字搦め”にすることも、対中包囲網の一環なのではないでしょうか。

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南シナ海問題―領有権問題は如何に

2016-07-23 13:51:46 | 国際政治
米補佐官が訪中へ=南シナ海問題も協議か
 今月12日に示された仲裁判決は、南シナ海における領有権問題には踏み込まず、あくまでも、国連海洋法条約に照らした合法性の問題について判定が下されました。このため、南シナ海問題が発生した根源が、領有権問題にあることは、しばしば忘れられがちです。

 南シナ海において、目下、”島”、あるいは、”岩”の領有を争っているのは、台湾、中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの5か国です。インドネシアについては、中国が、一先ずはナトゥナ島のインドネシア領有を認めているため、領土問題に発展するか否かは、今後の成り行き次第となります(ただし、EEZについては争っている…)。ところで、何故、かくも多くの諸国が南シナ海において領有権を主張しているのか、と申しますと、その背景には、この海域をめぐる複雑な歴史が隠されています。

 パラセル(西沙)諸島については、インドシナ半島を領有していたフランスと清国、その後は中華民国との間で摩擦がありましたが、フランスは、1933年12月21日に、スプラトリー(南沙)諸島と共に仏領インドシナに併合します。その後、日本軍が両諸島を占領し、1938年に領有を宣言して台湾の高雄に編入しました。第二次世界大戦が終結すると、ここで、一つの問題が発生します。日本軍は両諸島から撤退し、1952年のサンフランシスコ講和条約第2条(f)でこれらの領土放棄を再確認しますが、どの国に対して放棄したのか不明となったのです。

 この結果、南シナ海の”島”、あるいは”岩”は、どの国の領土であるのかをめぐって、およそ、三つの立場が生じました。(1)無主地となった、(2)フランス領に復帰した、(3)いずれかの国の歴史的権利が回復した、という立場です。もう一つあるといたしますと、(4)日本国から高雄市のある台湾(中華民国)に引き継がれた、という立場もあり得ますが、日華平和条約において日本国による両諸島の放棄は明記されてはいるものの、この条文にも台湾に向けて放棄したとは記されていないことに加えて、台湾自身は、中華民国時代の1947年に策定した「十一段線」の主張を維持しており、日本国から継承したとする立場にはないようです。

 これらの3つの立場を紛争当事国に当て嵌めてみると、台湾は、(3)の立場から「十一段線」を主張し、ベトナムは、1956年にフランスが南ベトナムに領土を委譲した際に、両諸島の領有権を継承したと主張しておりますので、(2)の立場にあります。一方、フィリピン、マレーシア並びにブルネイの基本的立場は(1)です。それでは、中国はどうかと申しますと、歴史的権利を根拠としてきた「九段線」は、台湾の「十一段線」を継承したものに過ぎず、仲裁裁判で違法と判定された以上、当事国の内で、最も根拠薄弱なのは中国ということになります。(3)は、既に仲裁裁判で否定されておりますし、西沙諸島の戦やスプラトリー諸島海戦などで他国に対する武力行使の末に島や岩礁を奪った以上、(1)の無主地先占は成立しません(フィリピンEEZ内の岩礁占領と人工島建設も同様…)。さらに、当然に(2)も主張し得えないのです。僅かに可能性があるとすれば、西沙諸島の東半分のアンフィトリテ諸島ですが、ここでも、台湾、並びに、ベトナムと競合します。

 南シナ海問題の最終的な解決には、やはり、領有権問題をめぐる複雑な歴史を理解し、国際法、並びに、国際社会の基本原則に照らして判断する必要がありそうです。仮に将来、国際司法裁判所にこの問題が付託された場合、果たして、どのような判断が下されるのでしょうか。何れにしても、中国による無理筋の”領土拡張主義”は否定されるものと予測されるのです。

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台湾の南シナ海仲裁判決に対する不支持問題への対応

2016-07-22 09:30:58 | 国際政治
【緊迫・南シナ海】台湾の立法委員団が太平島を視察 領有権をアピール
 今月12日に示された南シナ海問題に対する仲裁判決は、中国の「九段線」として知られる歴史的権利を完全に否定し、事実上、南シナ海からの撤退を迫ることとなりました。

 日米をはじめとして、多くの諸国が本判決に支持を表明したのですが、残念なことに台湾は、歩調を合わせることはありませんでした。その理由は、中国に与したからではなく、スプラトリー諸島で台湾が実効支配している太平島(イツ・アバ島)への影響を懸念したからです。台湾(中華民国)は、戦後の1946年11月24に軍艦を派遣し、同島を占領しています(その後、サンフランシスコ講和条約で日本国が新南群島(スプラトリー諸島)を正式に放棄…)。以後、台湾は、太平島を自国の領土としてきましたが(ただしベトナムも領有権を主張…)、今般の判決では、太平島を含め、スプラトリー諸島にはEEZを設定し得る”島”は存在しないと判断されたのです。現段階では、台湾は、EEZを太平島には設定していないそうですが、台湾にとりましては、当判決は、海洋に関する権利の潜在的な喪失を意味しかねない事態を意味していたのです。

 この権利喪失のリスクは、日本国も同様であり、沖ノ鳥島問題は既に指摘されています。日本国の場合には、このリスクを承知の上で仲裁判決を支持したのですが、台湾の場合、判決の文中で太平島の名が明示されたため、そのショックは日本国の比ではなかったのでしょう。そして、この国連海洋法条約上の島の地位をめぐる問題は、日台のみのEEZ問題では留まらないものとなるかもしれません。満潮時に海面に沈まない礁を領土とし、EEZを設定している、あるいは、設定を予定している国は他にもあるからです。本判決は、当事国以外には法的拘束力は及ばないものの、島の地位をめぐり不安定化する海域が、全海洋で出現する可能性があります。

 仲裁裁判は、提訴の都度に仲裁官が選任されますので、他の満潮時に水没しない礁に関する判定は、ケース・バイ・ケースとなる可能性もありますが、如何なる判決であっても、当事国には、その判断に誠実に従う義務があります。

 その一方で、今般の判断に先例拘束性が認められる可能性もありますので、日本国政府は、台湾やベトナムを含め、同様の立場にある諸国との間で何らかの協議を行う、あるいは、国際社会に問題提起を行う必要はありましょう。例えば、今般の仲裁裁判では、島の判定に関する4つの大まかな基準が示されましたが、判定基準のさらなる精緻化や島と岩の区別の明文化…など、様々な論点があります(ガイドラインの作成も一案…)。国連海洋法条約では改正手続きも定めていますので、この際、紛争の平和的解決、並びに、紛争化の予防を促進すべく、島の認定に限らず、同条約の整備を進めてはどうかと思うのです。

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中国は”中国版大陸逆封鎖”を怖れないのか?

2016-07-21 16:25:02 | 国際政治
中国の「憤青」の暴走が止まらない!ボイコットで墓穴、日本人に難癖
 今月12日の仲裁裁判における”全面敗訴”を受けて、中国では、ケンタッキーフライドチキンをはじめとした米国系製品の不買運動が起きているそうです。尖閣諸島の国有化に際しては、日本製品不買運動に留まらず、反日暴動にまで発展しましたが、中国は、その先の展開を読んでいるのでしょうか。

 かつてナポレオンは、イギリスを屈服させることができない焦りから、ロシア遠征の切っ掛けとなった「大陸封鎖令(ベルリン勅令)」を発し、対英経済封鎖を実施します。武力でだめなら経済力を削ぐことでイギリスを支配下に置こうとしたのですが、この時ナポレオンは、致命的な読み間違いをしています。”世界の工場”であり、”世界の銀行”であり、かつ、”世界の市場”でもあった”大英帝国”が、経済力において抜きん出ていたため、対英依存度の高い大陸諸国が”逆封鎖”される形となったからです。

 翻って現在を見ますと、北京政府は沈静化に乗り出してはいますが、外国製品の不買運動は、中国側としては、輸入面のみではあれ、自らが大陸封鎖令を発しているつもりなのでしょう。しかしながら、現在の中国は、産業革命で技術大国でもあった当時のイギリスとは異なり、競争力において抜きん出ているわけではなく、むしろ、技術面では劣位にある上に、貿易や投資面での対外依存度の高い国です。”世界の市場”と言えるほどまで消費市場が成長しているわけでもありません。

 しかも、仲裁判決に無視を決め込み、断固として南シナ海の軍事拠点化を進めるならば、国際社会による対中経済制裁は現実のものとなることでしょう。つまり中国は、大陸封鎖したつもりが、逆封鎖さされることとなるのです(中国は頼みの輸出ができなくなる…)。果たして、中国は、国際社会の制裁としての”大陸逆封鎖”に耐えられるのでしょうか。

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南シナ海問題と日本国の集団的自衛権

2016-07-20 08:23:06 | 国際政治
フィリピン、中国の二国間協議打診を拒否 南シナ海問題
米比相互防衛条約の存在は、南シナ海問題が、日本国の集団的自衛権発動の問題に発展する可能性をも示しています。

 昨年、安保関連法案が審議された際に、近い将来に起き得る“重要影響事態”、あるいは、“存立危機事態”とは、第二次朝鮮戦争を想定した人も少なくなかったそうです。ところが、日本国を取り巻く今日の国際情勢を見ますと、最初の集団的自衛権の発動は、対フィリピン支援となる可能性も否定できなくなりました。仮に、アメリカとフィリピンが、南シナ海におけるフィリピンに対する侵害行為を理由として、米比相互防衛条約に基づいて中国と開戦した場合、アメリカの同盟国である日本国は、同盟国支援に動くことが予測されるからです。「重要影響事態安全確保法」上の“重要影響事態”と判断された場合には、日本国は、米軍の後方支援を実施すると同時に、フィリピン軍をも支援することができます。また、“存立危機事態”、さらには、”武力攻撃事態”に判断される事態にまで発展すれば、同地への自衛隊の防衛出動もあり得るのです。南シナ海は日本国のシーレーンに位置しておりますし、かつ、尖閣諸島や沖縄等をめぐり、中国は、日本国にも攻撃を仕掛ける可能性もあるからです。国内に米軍基地があることをも考慮しますと、国家存亡の危機と認識される可能性は決して低くはないのです。

 そして、米比相互防衛条約の発動が、仲裁判決の強制履行として行われるとするならば、日本国の支援は、国際法の執行手続きへの協力であり、国際法秩序を維持する役割を担うことでもあります。南シナ海の現実は、容赦なく、日本国に覚悟を迫っているのです。それでも、左派の人々は、“戦争法廃案”を訴えるのでしょうか。

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南シナ海問題ー米比相互防衛条約の発動対象となるのか?

2016-07-19 17:07:25 | 国際政治
フィリピン、中国側の条件付き対話要請を拒否 南シナ海問題で
 中国は、今月12日に常設仲裁裁判所で示された判決を拒絶し、あくまでも”武力による解決”を目指しているように見えます。ドゥテルテ大統領の下で親中路線への転換が懸念されていたフィリピンの態度も硬化し、当判決を無視した中国側の条件付対話要請を拒否したとも報じられております(なお、中国が判決履行を拒否する場合、仲裁手続き上、フィリピンには、常設仲裁裁判所に対して履行を訴える権利がある…)

 それでは、中国が、仲裁判決を無視したまま人工島の建設を続行した場合、何が起きるのでしょうか。何れのルートであれ、まずは、国連安保理での解決が模索されるのでしょうが、その一方で、米比相互防衛条約が発動される可能性も否定はできません。何故ならば、当条約の第4条には、「各締約国は、太平洋地域におけるいずれか一方の締約国に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」とあるからです。中国海軍の呉勝利司令官は、人工島の建設続行を明言しており、「南シナ海は中国の核心的利益だ。領土の主権で、我々の譲歩を期待するべきではない」と述べております。仮に、スカボロー礁での人工島建設を継続するとしますと、中国は、「九段線」が完全に否定された以上、フィリピンの領土を侵略したに等しくなります。

 第一に、中国は、1994年にミスチーフ礁に建造物を建設し占領しますが、同礁は、フィリピンのEEZ内にあります。国際法上、他国のEEZ内に人工島を勝手に建設することはできず、中国は、違法にフィリピンの権利を侵害していることになるのです。第二に、中国がスカボロー礁に人工島を建設し始めるのは2013年頃ですが、フィリピンは、それ以前の1998年8月に、憲法を改正して同礁を正式に自国の領土としています。スカボロー礁は、ミスチーフ礁とは違い、満潮時にも水没しない岩礁であり、領海を設定することができる領土です。「九段線」が否定された以上、中国によるスカボロー礁の人工島を埋め立てて軍事基地化するとしますと、フィリピンの領土を侵略していることになるのです。

 同条約の発動条件として、”武力攻撃(armed attack)”とありますが、武装漁民による占領、人工島の建設、軍用施設の設置、並びに、海軍艦船や空軍機の運用は人民解放軍による軍事活動であり、両国の判断次第では、”武力攻撃”とみなされる可能性もあります。南シナ海での緊張は高まりを見せておりますが、何れにせよ、平和を望むならば、中国には仲裁判決に従うしか道はないと思うのです。

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中国の仲裁判決無視ー常設仲裁裁判所が令状を発行すれば?

2016-07-18 14:26:48 | 国際政治
南シナ海裁定で完敗した中国、世界の「判決を支持」反応に逆ギレ
 南シナ海問題に関する仲裁裁判は、国際法秩序の行方をも左右する重大事件であり、人類の運命をも決定づけると言っても過言ではありません。中国が不履行を貫くとしますと、国際法秩序が根底から崩壊するからです。

 中国不履行のリスクは相当に高く、その根拠として、仲裁裁判の判決には執行力が備わっていないことが指摘されています。しかしながら、仲裁手続は、当事者の一方による不履行のケースを想定していないのでしょうか。本仲裁裁判は、国連海洋法条約の第287条(c)に基づいて設置されており、同条約の付属書Ⅶにおいて、手続きの詳細が記されています。その第12条には、「仲裁判断の解釈又は履行の方法に関し紛争当事者間で生じる争いについては、いずれの紛争当事者も、当該裁判判断を行った仲裁裁判所の決定を求めるため当該裁判所に付託できる…」とあります。つまり、仲裁手続きでは不履行のケースを想定外とはしておらず、紛争当事者が求めれば、仲裁裁判所が何らかの対処をすることができるのです。本ケースは常設仲裁裁判所が管轄しましたので、紛争当事者の一方が当裁判所に申し出た場合、執行を命じる令状を発行することができるはずです。そして、この令状の手渡し先の最有力候補は、国連安保理となるのではないでしょうか。

 現在中国は、フィリピンに対して積極的に懐柔策を弄していますが、もしかしますと、フィリピンによる中国の不履行の常設仲裁裁判所への付託を阻止するためかもしれません。仮に、フィリピンが中国に籠絡され、令状の発行が困難であるならば、他の諸国が(公海が侵害されている場合には全諸国が提訴可能では?)、再度、中国を相手に仲裁裁判を起こす方法もあります。また、この問題は、本質において中国による南シナ海の違法な軍事基地化なのですから、安保理、あるいは、総会が、中国の不履行を独自に平和と安全の維持に関わる問題として扱うことも一案です。国際法秩序の崩壊を防ぐべく、国際社会は、知恵を絞るべきではないかと思うのです。

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中国の常設仲裁裁判所否定論への反論

2016-07-17 15:01:22 | 国際政治
中国軍高官「軍事力を強化」表明 南シナ海判決に不満
 先日、常設仲裁裁判所で示された南シナ海問題に対する仲裁判決は、同海域で”海洋侵出”ための軍事拠点化に邁進してきた中国にとりましては痛手となりました。何としても仲裁判決から正当性を奪うべく、中国は、様々な無理筋の反論を繰り出しています。

 その一つが、中国の欠席による今般の仲裁手続きは違法であるとする反論です。しかしながら、国連海洋法条約第287条、並びに、同条約付属書Ⅶにおいて、当事国の一方b訴えによる仲裁は認められており、中国欠席の仲裁に違法性はないことは明白です(むしろ、当事国の一方が平和的解決を拒絶する場合を想定した規程…)。

 この点では勝ち目がないと見たのか、昨今、中国が特に強調し始めたのが、常設仲裁裁判所(the Permanent Court of Arbitration)、即ち、仲裁判決を下した仲裁裁判所自体に対する”攻撃”です。国連海洋法条約第287条(c)では、「付属書Ⅶによって組織される仲裁裁判」を紛争解決手段の一つとして挙げており、実際に、フィリピンの訴えを受理したのが、常設仲裁裁判所でした。本仲裁裁判所は、1899年のハーグ平和会議において正式に発足が決定された機関であり、紛争の平和的解決を目的としています。しかしながら、中国は、当裁判所は、アド・ホックな存在であり(確かに、仲裁では仲裁人がリストから選定される…)、国連の主要な司法機関でもないとして、仲裁判決の不当化を試みています。常設仲裁裁判所自体の存在を低レベルに貶めし、判決の有効性を弱めようとしているようなのです。

 実際に、その名称によって、「permanent」、すなわち、「常設」であることが示されているにもかかわらず、日本の各紙では、「常設仲裁裁判所」の名称はあまり使われておらず、筆者自身もこれまで仲裁裁判所の表記を多用してきました(国連海洋法条約を基準とすれば仲裁裁判所でも間違いではないかも…)。しかしながら、もしかしますと、こうしたマスコミの表記にも、中国の主張が反映されているのかもしれません。さらにネット上では、今般、国際司法裁判所(ICJ)が、そのホームページにおいて、同裁判所が国連の機関とは別物であり、混同を避けるよう注意を促すコメントを掲載したことを挙げ、国連が今般の仲裁判決とは無関係であると印象付けようとする中国擁護論も見受けられるようになりました。

 常設仲裁裁判所の設立を定めた「国際紛争平和処理条約」には、現在、96カ国が加盟しており、中国も締約国リストにその名を連ねています。国際社会の司法制度では、国連の主要機関である国際司法裁判所(ICJ)に全司法権が集権化されているわけではなく、管轄権の分散が見られます。一党独裁の下で全ての権力を集中させてきた中国には、司法の独立や権力分立さえも理解の枠を越えているのかもしれませんが、何れにしましても、常設仲裁裁判所も、紛争の平和的な解決を担う正式な国際司法機関の一つなのですから、中国の反論は無意味であると思うのです。

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