世界に先駆けてコロナワクチン「スプートニクV」を開発したロシアなのに、ワクチン接種が進んでいない、という「ロシア・ビヨンド」の記事を先日紹介しましたが、その出典を詳しく見てみました。
ロシアの非政府研究機関レバダセンターが、2021年5月12日に発表した新型コロナウイルスとワクチンに関する調査結果がこちらです。
●新型コロナウイルスに感染することに
危機感をもっていますか?
この問いに対し、なんと56%のロシア人が「ニェット(ノー)」と回答。「ダー、怖いです!」と答えたのは、42%。知人のロシア女性が「コロナにかかるのは怖くない」と言っていましたが、それを裏付ける数字です。
赤が「ニェット(怖くない)」、青が「ダー(怖い)」、下の濃紺は「どちらともいえない」。推移を見てみると、感染拡大前の2020年2月の時点では「怖い」と答えた人は30%。日本でも最初は他人事だったので、これは妥当な数字でしょう。その後、感染拡大とともに危機感を覚える人が増え、2020年10月には64%に達します。
2020年12月、ロシアは「スプートニクV」のワクチン接種を開始。「コロナは怖い」という人の割合は40%台まで下がっていきます。これは、「ワクチン接種が始まったから、もう怖くない」ということなのでしょうか?
ニェット、違います!
●あなたは「スプートニクⅤ」ワクチンを
接種するつもりですか?
この問いに対し、なんと62%ものロシア人が「ニェット」と回答。接種を希望する人は、26%。すでに接種を終えた人は、10%。合わせて36%しかワクチン肯定派がいないということになります。
赤が「ニェット(接種拒否)」、青が「ダー(接種希望)」、右下のオレンジが「接種済」、左下の濃紺は「いかなるワクチンも拒否」。接種拒否の割合は、調査開始の2020年8月時点で、すでに過半数を占めており、接種が始まっても接種希望に鞍替えするどころか、強い意志をもって拒否し続けているさまが、うかがい知れます。
これを年代別に見ると、次のような結果となりました。
接種する 接種しない 接種済 どちらともいえない
18~24歳 12% 75% 9% 4%
25~39歳 19% 72% 7% 2%
40~54歳 21% 69% 7% 3%
55歳以上 37% 47% 13% 3%
年齢が高くなるほど、接種希望者が増えていますが、55歳以上の高齢者でさえ、接種拒否派が47%を占めています。そして、接種開始から何カ月も経つのに、接種済の高齢者は、たったの13%です。諸外国に比べて、接種率が異常に低いのは、先日の記事でもご紹介した通りです。
さらに興味深いのは、2つの質問のクロス集計です。最初の質問で「コロナは怖くない」と答えた人のうち、「接種しない」と答えた人は、70%。「まあ打っておくか」という人が18%。これはわからなくもないのですが、「コロナは怖い」と答えた人も、過半数の53%が「接種しない」と答えているのです! これはいったいなぜでしょう?
●「スプートニクV」ワクチンを
接種したくない理由は?
こちらは少し前(2021年2月)の調査ですが、「スプートニクV」ワクチンを接種したくない人に理由を尋ねたところ、このような結果になりました。
1.十分な治験が終わるまで待つべき 30%
2.副作用が怖い 29%
3.アレルギーなどがあって接種できない 12%
4.接種しても意味がない 12%
5.あらゆるワクチンに反対 10%
6.その他 6%
「スプートニクV」の安全性は、英国の医学専門誌にも認められ、現在60ヵ国以上に輸出されています。それでもロシア国民は、ワクチン開発があまりに性急だったことに強い不信感をもっているようです。
西側メディアは、ワクチンへの不信感は、プーチン率いるロシア政府への不信感の表れ、とも解説しています。政府が配給するワクチンなど打ってたまるか!というわけです。確かにそれもあるかもしれません。前述の知人のロシア女性は、「コロナより、プーチンの行き過ぎた自粛要請のほうが怖い。あれはファシズムです!」と声を荒げておられましたし…。
しかし、こと健康に関わることを政府批判だけを理由に拒絶するとは考えにくく、ワクチン拒否の根本にあるのは、やはりロシア人がもつある種の健全性ではないかと思えてなりません。もともと体内に入れるものに対して敏感な人たちですし、基礎的な理系の知識を一般常識としてもっている人が多いことにも驚かされます。
ロシア人が危惧する「ワクチンの副作用」とは、接種直後の反応ではなく、何年も先に現れるかもしれない体内の変化。「今コロナに感染するリスク」と「誰も経験したことのない将来のリスク」を比較したとき、後者を重く見る人は、日本にも少なくないと思いますが、ロシアに目立って多いのは明らかです。現在、第三波の感染拡大が始まりつつあるとも指摘されているロシアですが、はたして今後どうなるのか…。
ロシアの非政府研究機関レバダセンターが、2021年5月12日に発表した新型コロナウイルスとワクチンに関する調査結果がこちらです。
●新型コロナウイルスに感染することに
危機感をもっていますか?
この問いに対し、なんと56%のロシア人が「ニェット(ノー)」と回答。「ダー、怖いです!」と答えたのは、42%。知人のロシア女性が「コロナにかかるのは怖くない」と言っていましたが、それを裏付ける数字です。
赤が「ニェット(怖くない)」、青が「ダー(怖い)」、下の濃紺は「どちらともいえない」。推移を見てみると、感染拡大前の2020年2月の時点では「怖い」と答えた人は30%。日本でも最初は他人事だったので、これは妥当な数字でしょう。その後、感染拡大とともに危機感を覚える人が増え、2020年10月には64%に達します。
2020年12月、ロシアは「スプートニクV」のワクチン接種を開始。「コロナは怖い」という人の割合は40%台まで下がっていきます。これは、「ワクチン接種が始まったから、もう怖くない」ということなのでしょうか?
ニェット、違います!
●あなたは「スプートニクⅤ」ワクチンを
接種するつもりですか?
この問いに対し、なんと62%ものロシア人が「ニェット」と回答。接種を希望する人は、26%。すでに接種を終えた人は、10%。合わせて36%しかワクチン肯定派がいないということになります。
赤が「ニェット(接種拒否)」、青が「ダー(接種希望)」、右下のオレンジが「接種済」、左下の濃紺は「いかなるワクチンも拒否」。接種拒否の割合は、調査開始の2020年8月時点で、すでに過半数を占めており、接種が始まっても接種希望に鞍替えするどころか、強い意志をもって拒否し続けているさまが、うかがい知れます。
これを年代別に見ると、次のような結果となりました。
接種する 接種しない 接種済 どちらともいえない
18~24歳 12% 75% 9% 4%
25~39歳 19% 72% 7% 2%
40~54歳 21% 69% 7% 3%
55歳以上 37% 47% 13% 3%
年齢が高くなるほど、接種希望者が増えていますが、55歳以上の高齢者でさえ、接種拒否派が47%を占めています。そして、接種開始から何カ月も経つのに、接種済の高齢者は、たったの13%です。諸外国に比べて、接種率が異常に低いのは、先日の記事でもご紹介した通りです。
さらに興味深いのは、2つの質問のクロス集計です。最初の質問で「コロナは怖くない」と答えた人のうち、「接種しない」と答えた人は、70%。「まあ打っておくか」という人が18%。これはわからなくもないのですが、「コロナは怖い」と答えた人も、過半数の53%が「接種しない」と答えているのです! これはいったいなぜでしょう?
●「スプートニクV」ワクチンを
接種したくない理由は?
こちらは少し前(2021年2月)の調査ですが、「スプートニクV」ワクチンを接種したくない人に理由を尋ねたところ、このような結果になりました。
1.十分な治験が終わるまで待つべき 30%
2.副作用が怖い 29%
3.アレルギーなどがあって接種できない 12%
4.接種しても意味がない 12%
5.あらゆるワクチンに反対 10%
6.その他 6%
「スプートニクV」の安全性は、英国の医学専門誌にも認められ、現在60ヵ国以上に輸出されています。それでもロシア国民は、ワクチン開発があまりに性急だったことに強い不信感をもっているようです。
西側メディアは、ワクチンへの不信感は、プーチン率いるロシア政府への不信感の表れ、とも解説しています。政府が配給するワクチンなど打ってたまるか!というわけです。確かにそれもあるかもしれません。前述の知人のロシア女性は、「コロナより、プーチンの行き過ぎた自粛要請のほうが怖い。あれはファシズムです!」と声を荒げておられましたし…。
しかし、こと健康に関わることを政府批判だけを理由に拒絶するとは考えにくく、ワクチン拒否の根本にあるのは、やはりロシア人がもつある種の健全性ではないかと思えてなりません。もともと体内に入れるものに対して敏感な人たちですし、基礎的な理系の知識を一般常識としてもっている人が多いことにも驚かされます。
ロシア人が危惧する「ワクチンの副作用」とは、接種直後の反応ではなく、何年も先に現れるかもしれない体内の変化。「今コロナに感染するリスク」と「誰も経験したことのない将来のリスク」を比較したとき、後者を重く見る人は、日本にも少なくないと思いますが、ロシアに目立って多いのは明らかです。現在、第三波の感染拡大が始まりつつあるとも指摘されているロシアですが、はたして今後どうなるのか…。