北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

世界の構造変化と日本

2008-04-04 23:51:57 | Weblog
 国の中で行われている最新の情報を得ようと、ときどき内閣府のホームページを見ることにしているのですが、なかでも経済財政諮問会議での議論は面白いものです。

 我々はともすると新聞情報だけが頼りで、紙面だけを見ると、日本の舵取りが政治家の思いつきや財務省の独断で行われているのではないか、などと思いがちです。

 しかし第一線の経済人や学者先生たちが集まって、これまた第一線の官僚がまとめたデータを元に、これからのあるべき姿を語っているのを見ると、非常に高度な議論が行われていることがよく分かります。

 政権や官僚をただなんとなく批判する人はこういう資料を是非読んでから批判して欲しいものだ、とつくづく思います。

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 さて、今回見つけたのは経済財政諮問会議のなかの「構造変化と日本経済」専門調査会というものです。
 サイトはこちら→http://www.keizai-shimon.go.jp/special/economy/index.html


 これは今年の3月から始まって6月までに一定の方向を出すべく、著名な学者や研究者の皆さん14人が集結して議論を交わしているものです。

 テーマは文字通り、世界経済の構造が急激に変わっている中で日本はどういう道を選択して行くべきか、ということに尽きます。

 今はまだ三月末の第三回会議が開かれたところですが、配付された資料はもちろん、各委員の発言内容もしっかり公表されていますから、誰が何を言ったかもちゃんと分かるようになっています。

 情報公開はここまで進んでいるのです…が、実際は余程ここをねらって探り当てないとたどり着くことが出来ません。情報は出す量が多すぎると、すぐに紛れてしまうのです。

 さて、ここでの議論は、大国中国とインドが世界のグローバル経済の中に格安の労働力提供国として登場したことが、世界経済の大きな構造変化であると考えています。

 その結果、世界の労働力が余り気味になり単純な労働はこの二つの国に吸い寄せられるように集まります。日本からも単純な生産活動は奪われる道理です。

 そうした状況にありながら、なお日本は古い体質の国内生産活動を守ろうとする動きがあるために、ドラスティックな改革をしたアメリカやEU連合から大きく遅れを取っているという懸念が示されています。

 中国とインドの経済発展を世界経済のダイナミズムとしてこれに向かって船出をしてそこからリターンを得るような体質にして行かなくては、もうこれまで成功体験では生き延びることは出来ないという強い警鐘が鳴らされています。

 特に顕著なのは、先進諸外国に比べて日本ではIT化が国内総生産(=付加価値の総和)にあまり寄与できていないという指摘があります。今やGDPの7割がサービス産業となった日本において、金融サービス、医療サービス、教育サービスにおけるIT化による効率化をさらに進めない限り、人口減少を迎える我が国は世界から見向きもされない斜陽の国になってしまいます。

 会議の場では、これに対処する方法として参入と退出の障壁を取ることで衰退産業の早期撤退を図り、人材の水平移動を早期に行わなくてはならないと強調しています。

 しかしその狭間で起きていることは、そうした水平移動の動きに乗り切れずに、自分の能力が社会のニーズとミスマッチを起こしていて安定した収入の道が断たれてしまっている人たちで、そこにさく徒花(あだばな)が経済格差だというわけです。

 新しい産業を支える人材の育成は、今の子供達が大人になるのを待っている余裕はないと言います。現在の労働者がかなりの割合で水平移動をするためには、新しい産業への再教育やスキルアップを早急に行うべきだとも提言をしています。

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 しかし実際には、この激変の荒波の中で多くの労働者はとまどい、これまで乗ってきた船から降りようとはしていません。ここに今の日本の、いやこれからの日本の苦しみがあります。

 一方、幸い日本には1500兆円もの国民の財産がありますから、これを上手に運用することでそのリターンで将来に安心を求めるような生き方も必要だという提言もあります。

 資産の効率的な運用で経済を支えるような生き方ですが、ここにまだまだ株は賭けだというような忌み嫌う体質も残っています。ここにこそ、金融が確実性を高める運用コンサルタントとしての金融サービスを提供する余地があると言っているのです。

 世界の動きの早さに、自分たちも変化をして行かなくては滅亡の道をたどってしまう確率が高まっているようです。



 たまにはこうした真面目なレポートを読んで考え込むことも大事ですね。
コメント (2)
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