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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

朝井リョウ『発注いただきました!』(集英社)

2020年04月15日 | 乱読記/書名は行
 有名企業からタイアップやコラボ企画の依頼を受けて執筆した二十作を、依頼の内容、本編、感想戦という名の解説、の順に並べて収録した、デビュー十周年記念本。

 『桐島、部活やめるってよ』『何者』『スペードの3』は読んだかな、『武道館』も読んだかもしれません。ものすごくファン、とかいうことはない作家さんです。帯のキャッチは「これが本当のお仕事小説だ!」ですが、まさにお仕事小説の短編集かと思って買いました。
 もちろん、おもしろくなかったわけでは全然ないです。コンセブトはおもしろいと思いましたし、そのとおりにおもしろく読みました。
 ただ、気がついたのですが、なんとなくどの話も主人公というか指点人物が、なんかあんまり感じがいい人間じゃないんですよ。少なくとも私は、読んでいてあまり好感が持てたり共感したりすることがなかったのです。それは、ここに収録された物語がいずれも依頼のお題に応えることに眼目が置かれていて、キャラクターはそれを展開する要素でしかないから、でもあるのでしょう。「自分から書き始めるような小説」とはキャラクターの重要度も違うのでしょうし、作品全体としてのノリも持ち味も違ってくるのでしょう。
 でも、逆に、作家の本質的な部分がにじみ出やすいところなのではないかしらん、とも思ってしまいました。それは、感想戦のいじましいほどのてれやっぷりとか言い訳がましいところとかからも感じました。なんかこう…人間性が出ますよね…あえて言いますが、残念なことに、です。
 別に比べるものでもないし年齢はまったくすべてではないのだけれど、著者は私より二十歳も若くて、要するにまだ小僧なんだろうなー、と思うのです。こんなに有名に、おそらくまあまあの小金持ちになっているだろうにね。それか、業界ではまだまだ小僧扱い、若者扱いされている、ということなのかな。それでこういう、やたら嘯いたりつっぱらかったりする仕草になるのかな、とか思うと、微笑ましいやら気の毒やら、です。
 でもまあこの本がちゃんと売れているのなら、ファンはいるということなのだから、それを支えにがんばっていっていただきたいです。あるいはファンがいまいが商売にならなかろうが書きたいものがあって書いてしまうのが作家なのだろうから、そうなのであればがんばってください、と祈るのみです。私は友達じゃないからさ、一読者にすぎないからさ…すまん、こんな言い種で。イヤおもしろく読んだんですよホントに…ただ、若者の韜晦にはつきあいきれないなーとちょっと思ったという、正直な感想を書いただけです。おしまい。





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