駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『FLAMENCO 曾根崎心中』

2010年01月22日 | 観劇記/タイトルは行
 ル テアトル銀座、2006年12月1日ソワレ。

 醤油屋平野屋の手代・徳兵衛(佐藤浩希)と天満屋の女郎・お初(鎌田真由美)は将来を誓い合った恋仲。だが平野屋の主人は徳兵衛と姪の結婚話を、徳兵衛の継母に二貫目の金を渡してつけてしまう。継母から金を取り返した徳兵衛だが、帰り道に出会った親友の九平次(矢野吉峰)に金を貸してくれとせがまれて…プロデュース・作詞/阿木燿子、演出・構成・振付/鎌田真由美・佐藤浩希、音楽監修・作曲/宇崎竜童。フラメンコ発祥の地と言われるヘレスのフェスティバル・デ・ヘレスに海外から初の参加作品として公演されたこともある演目の、四度目の再演。

 フラメンコはそんなにたくさんは観ていませんが(セビリアで観たことはあります)、この情念の世界に確かに近松心中物はよく似合うのだなあ…と、その着想にいたく感心しました。
 睡眠不足気味の状態で観に行ったせいもあって、スローなパートはやや眠気を誘われましたが、やはりフラメンコは手拍子足拍子が出てからのダイナミックなパートが鮮やかです。日本語のカンテというのは不思議な感じがしましたが、すぐに慣れました。

 歌い手カンタオールやギタリストたちは、ずっと舞台の奥に歌舞伎の奏者たちのように光を当てられずにいて、最後に心中したふたりがセリ下がったあと、初めてライトを当てられ、それぞれに工夫を凝らした衣装を着て佇んでいたのがなんとも絵になっていました。土佐琵琶の黒田月水のすばらしかったこと!
 また、九平次を歌った「今、日本で最も人気のある若手実力派」石塚隆充がメガネでロンゲでいかにもアーティスティックな青年で素敵でした(^^)。また、アンコールで主題歌を歌った宇崎竜童のギターがすばらしかったです。

 主演のふたりはもちろんすごかったんだけれど、関係ないようですがお初に比べて徳兵衛がずいぶん若く見えた(というかお初が老けて見えた)のはやや気になったかな…実際にこのおふたりは夫婦だそうですが、絶対姉さん女房なんだろうなあ。
  佐藤浩希がクラシックバレエのダンスールノーブルもやれそうな、頭が小さくて背の高い甘いマスクの優男なのに対し、鎌田真由美は非常にクラシカルな日本女性の面差しなので…もちろん心中にビビるところもある徳兵衛よりお初の方がいくらか年上でもあったろう、という気はするのですが、ぶっちゃけ親子に見えなくもないとなると、なあ…
 席が近くてよく見えすぎたせいでしょうか。しかしハムレットとガートルートが似合いそうなカップルではありました。でももちろん踊りはすばらしかったです。

 本当を言えば心中というのは現代となってはなかなかに共感しづらいモチーフだと思うのですが、フラメンコの力技で上手く持っていった感はあります。スリリングでおもしろい舞台でした。

 余談ですが…映画館とか劇場は周りの客が選べないので仕方ないのですが、今回は久々に最悪でした…隣のマダムふたり組が、開演前のおしゃべりからすると映画やお芝居をたくさん観ている方のようで素敵だったのですが、舞台が始まってもいちいち感想をささやきあうので(ある年齢層の女性は、自分の感想を口に出したり反応を示したりして周りにアピールすることで自分の感覚を確認しないではいられない、そういう手段でしか自分の感覚に自信が持てない人がいるものですが、本当にうっとうしいです)、いつ「黙ってくれ」と言ってやろうかと思っていたら、本筋が始まったらひとりが見事に船漕ぎ出したのでもうひとりも黙るようになり、よかったと思っていたら大詰めのドライアイスの臭いに飛び起きて「臭い!」と騒ぎ、アンコールの間はやたらとハイに拍手も手拍子もして「よかったわねえ!」とのたまいましたよ…
 よっぽど
「寝てて観てないじゃないですか」
 と言ってやろうかと思いましたよ。勘弁してください…
 携帯鳴らしたバカもいたしなー…
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