駒子の備忘録

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宝塚歌劇宙組『華やかなりし日々/クライマックス』

2012年07月07日 | 観劇記/タイトルは行
 東京宝塚劇場、2012年6月1日(初日)、2日マチネ、3日ソワレ、5日マチネ、10日マチネ、12日マチネ、14日ソワレ(新人公演)、16日ソワレ、17日マチネ、19日ソワレ、21日マチネ、22日マチネ、23日ソワレ、26日ソワレ、27日マチネ、28日マチネ、29日マチネ、30日マチネ、ソワレ(前楽)、7月1日(千秋楽)。

 感想については…初日雑感脚本つっこみなどでも書いてきましたし、ツイッターでもさんざんつぶやいてきましたので…もういいかな、と…(^^;)

 以下、そのあたりを編集して1000字に収めて「歌劇」の「高声低声」に投稿したものを置いておきます。
 不採用でしたが、今となってはよかったかな、とも思います。卒業の数日後に発売される号に何も載らなくても…という気もして(^^;)。
 この号はカイちゃんの「えと文」が素晴らしかったり、大劇場千秋楽レポがよかったりで、まだまだ目が離せませんね…

***

 『華やかなりし日々』東宝公演初日を観劇しました。大劇場公演から脚本が少し改定されましたが、ますます困惑しています。
 サヨナラ公演といえど湿っぽくせず、さらりと軽妙にしたかったという意図はわかりますし、だから「その後」に想像の余地が残されているのはいいと思うのです。残されたジュディをアーサーは親身になって支えただろう、ニックは更生してキャサリンと結婚したのかな、スポンサーがいなくなってもフローレンツはがんばって興行を続けたのかしら…というのは、なんとなく類推できるので、以後余白、でいいのです。
 でも、ロナウドとロイとの間にそもそも何があったのか、互いに支え合う親友同士だった彼らがどうして決別したのか、そして今はどういう関係でいるのか…それは作品の中できちんと明示してくれないと、観客は混乱します。現行の脚本からは過去の事実が上手く把握も類推もできません。その中途半端さは、観客が感情移入する主人公の人間性にもかかわってきてしまいます。
 ロナウドは、劇場の客に掏りを働こうとするロイを止めるような気性の少年でした。その後、彼は印刷所で働き始め、自立していった。逆に落ちていくばかりだったロイと決裂したということですか? 決定的な何かがあったからですか? それは何?
 それならロイがくれたコインを今なお大事にしているのはおかしくないですか? 「過去は捨てた」とも言っているのに。彼のことを今も案じているなら、彼が逮捕されたあとも何か行動を起こしてもよかったのでは? 今のままだと、ロナウドは親友を見捨てたひどい男に見えかねません。大空さんが緻密に繊細に演じて心優しいロナウドを作っても、脚本の整合性のなさは隠せないのです。
 むしろロイの役をもっと書き込み、北翔さんに演じさせてもよかったのかも…
 あとは、最後の銀橋で花束を見つけるのをジュディにしていただけるとなおよかった…!
 生徒さんがどんなに熱演しても、脚本が弱ければ演目はおもしろいものになりません。逆に、書かれた役がとてもよかったから、お話がとてもよかったから、それを演じる生徒さんのことも、その組のことも好きになっちゃった…観客にそう思わせるくらいの役を、作品を、座付きの先生方には書いていただきたいのです。
 原田先生、大劇場デビューおめでとうございます。ファンは生徒を見守るのと同じように先生方のことも見守っていて、育てる気満々なのです。がんばってください!

***

 『クライマックス』についても、三木先生の最近の作品という意味では『カノン』よりは私は楽しかったかなと思うし、最近のサヨナラ公演のショーという意味では『Misty Station』よりもよかったかなと思うので、これももはや特に言うこともなく…
 でも「ローズ・ラメント」の場面は私は着想として好きなのですが(萩尾望都『酔夢』を思い起こさせた)、やはりやや冗長だったとは思うし、運命の恋・関係の象徴としての行為だとしてもグサグサ殺し合うようなのはサヨナラ公演とかお披露目公演とかにはふさわしくなかったかもしれない、と思うと、別の通常公演のネタに取っておいて、その分スミカがメインの場面を作ったり、デュエットダンスの尺を長くしてくれてもよかったのよ、とは言っておきたい。
 特にスミカには歌もダンスももっと欲しかった。銀橋を渡って歌うソロがあってもよかったと思うし(まりもにはあったじゃん!)、男役を引き連れてセンターで踊り、娘役を引き連れてセンターで踊るスミカ、というかそういう場面、というものを観たかった。
 スミカはそれだけの力量が十分あるダンサーだったと思うもの。私は大空ファンとして大空さんの相手役のスミカも大好きだし大満足ですが、一娘役ファンとしてもっと輝き活躍する娘役が、トップ娘役への餞の場面が観たかった。
 それは書いておきたいです。



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4 コメント

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ローズ・ラメント雑感 (蝸牛)
2012-07-07 16:41:23
こんにちは。

「スミカにもっと輝く活躍の場を与えて欲しかった」
と言ってくださって、とてもとても嬉しいです。

ただ、私は、個人的にはあのショーに満足しております。
音楽学校の文化祭で、すみ花ちゃん演じる「魔物」を見て、
「この子は舞台荒らし」と見抜いた手練の三木先生が、
男役主体、娘役は添え物のタカラヅカで、
「娘役・野々すみ花」に可能なかぎりの餞を送るべく、
「クライマックス」の各場面を作られたようにと思うからです。

ラストワルツの相手、不倫の人妻、陽気なアメリカ娘、
聖母のようなレディまで、すみ花ちゃんは、
娘役に求められるさまざまな顔を見せてくれました。
その真骨頂がローズ・ラメント。

あの場の主役は、男を翻弄する魔性の女、カルメンと、私は思っています。
銀橋で刺殺される最初のシーンから、
復活・浄化された最後の総踊りまで、
すみ花ちゃんの卓越したダンス力、表現力が、
人の業の深さと、その救済について、
心の深いところで考えさせてくれました。

あの8分間こそ、宝塚で最も好きな舞台として「激情」を挙げながら、
ついに演じる機会がなかったすみ花ちゃんへのオマージュと、勝手に思っています。

「クライマックス」のすべての場面で、
魂をこめ、全身全霊で踊りぬくすみ花ちゃんを見、
千秋楽で、もう十分、燃え尽きたと確信し、
「思い残すことはござらん」心境になった1ファンが、私なんです。
ごくごく少数派かもしれませんけどね(笑)
返信する
駒子より (蝸牛さんへ)
2012-07-14 00:09:28
あああ、またも浅薄な意見を並べてすみません…
満足なさっているところに水を指しましたでしょうか(><)。
もちろん私もあの場面が決して嫌いではないし、スミカちゃんのダンス力と演技力が遺憾なく発揮されてシーンだと思っています。
何より一番上手かった!(爆)

でも私はベタとか様式美とかをけっこう愛しているので、ホントにわかりやすくど真ん中にピンで歌い踊るスミカちゃんが見たかったの…!という、
子供か!とつっこまれても仕方ないのですが、そんなわがままな望みを抱いてしまったのでした。

梅芸所属がやっと正式な発表されたようで、
今後の活躍にマジで期待しています!!!
返信する
長コメすいません・・・ (coto)
2012-07-23 09:19:17
はじめまして!
夜野さんのブログコメからすっ飛んでまいりました。
初心者宝塚ファン(宝塚歴半年!)かつ
世界で一番新しい祐飛さんファン(華やかなりし日々でファンになってしまった・・・)です。

祐飛さんや宙組の皆さまは大変素晴らしかったものの
どうもお芝居の内容に違和感を覚えておりまして
おかしいなぁ、私が宝塚初心者だから面白いと思えないのかなぁ、と
考えていたところに夜野さんのブログと出会い、
そしてまた駒子さんの感想を拝見することができ、
とーーってもスッキリしております!!
感想をしっかり的確に文章にされるお二方には
感服いたします!

歌劇に投稿されたのですね。
ぜひ掲載してほしかった・・・。
こういう冷静な意見も絶対に必要ですよね。
脚本家の方にも意見を送られたということですが
良いことだと思います。
宝塚は素晴らしい舞台です。
だからこそ芝居のクオリティはもっと高めてほしい!
と、まだまだ宝塚を知らないからこそ、
ファンになってのめりこんで
「なんでもOK]「良い部分しか観ない」
という状態になる前だからこそ
そう思うのです。
宝塚、もったいなさすぎます~~!!

ということで←???
これからも駒子さんのブログを楽しみに
読ませていただきますので
どうぞよろしくお願いいたします。

ちなみに
クライマックスのショーは私は素直に楽しめてしまいました。
ローズラメントは実は最初観たときは
「.....」
となってしまったんですがww
2回目3回目と観るうちに味が出てきましたw
特に祐飛さんの「コノヒトなんてナイフが似合うの!」
と意味不明な萌えを見つけて楽しんでしまいました・・・。
返信する
駒子より (cotoさんへ)
2012-07-23 19:10:02
コメントありがとうございました!
読んでいただけて嬉しいです。
このブログはカテゴリー分けに失敗していてとても検索しづらいのですが、
過去10年の観劇記が入ってますので『血と砂』以降の感想は読めますよ~(^^;)。
最近のものは「大空日記」のカテゴリーに入っています。

ハマったときが退団公演、というのはツラいですね(ToT)。
でもこれからも宝塚歌劇自体を熱く厳しく見守っていきましょう!

生徒さんにお手紙を書く文化があるため、
ついつい脚本家にもホイホイお手紙を書いてしまい…(^^;)
リターンアドレスを書いておいたからかお返事をくださる方もいます。
まあ出すからには匿名ってのもなんですしね…
脚本はどうもチェックシステムがないようで、
そのあとりもクオリティに響いてくるんじゃないの?と心配しています…

これからも、さすがに遠征はしないかなという感じなのですが
(『フットルース』は泣く泣く見送り予定)
東宝、青年館、全ツは必ず観たいと思っていますので、
また覗きにいらしてくださいませ!
返信する

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