駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『花子について』

2014年02月15日 | 観劇記/タイトルは行
 シアタートラム、2014年2月12日ソワレ。

 古典の知恵や洗練を現代の舞台創造に還元する「現代能楽集」シリーズ第7弾。『葵上』は同名の能から、『花子』は同名の狂言から、『班女』は三島由紀夫「近代能楽集『班女』」を下敷きにそれぞれ脚色。
 作・演出/倉持裕。全3幕。

 能の『葵上』はコムちゃんの朗読を目当てに行ったことがありました。この舞台でも、近藤公園の夫や西田尚美の妻はいるけれど、主役は六条御息所にあたる「女」で、黒田育世と宮河愛一郎が、ふたり一役というかなんというか…で演じていました。
 舞台は現代に置き換えられているようで、要するに不倫の愛人の話なのだと思うのですが、情念を踊るモダンバレエのようで、装置や照明の効果が美しく、スリリングでした。

 『花子』はさすが狂言が元になっているだけあって、ソープオペラという感じに仕上がっていました。夫の小林高鹿の意外な(?)ショースターっぷりがすごかったです。妻は片桐はいり、風見が近藤公園。この苗字は風見鶏から来ているのかしら…
 このときの愛人の名前が「花子」だったのと、続く『班女』の花子(西田尚美)とは同じなのかな。待つ女、ということだったからやはり愛人だったのでしょうか。彼女を支える、というか囲う、というか、なまたない女・実子が片桐はいり。花子に待たれる男・吉雄は近藤公園。
 これまた現代に翻案してあって、SNS実況とかブログの使い方が怖いのなんのって…そしてまた最初の『葵上』に還っていく作りになっているようにも見えました。シュールで悲しくてせつなくて美しかったです。

 縁あって舞台制作のお話なんかが聞けたのもとても楽しかったです。
 私の本業は編集者で、著者と一緒に作品を作ることが仕事なのですが、一緒にと言うのはおこがましいな、作品を作るのはあくまで作者なので、そのサポートとかプロデュースが仕事、かな。
 で、環境的にとても恵まれているので、作品を作ってしまえば、宣伝したり販売したりは別のルートで別の担当者がやってくれるようなところがある。そして売れたか売れないかの結果は結局、作品ないし作家にかかって黒子の自分には影響がなかったりする。
 そういう自分からすると、ほぼゼロから企画して何もかも自分で揃えて舞台というひとつの形に仕上げていくようなお仕事は、魔法のようにも思えるのでした。
 でも私は漫画の次に舞台が好きだな。小説とか映画より好きです。その理由の一部が覗けた気がした語らいの場が持てました。

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