駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『星ノ数ホド』

2014年12月21日 | 観劇記/タイトルは行
 新国立劇場、2014年12月15日マチネ。

 物理学者のマリアン(鈴木杏)と養蜂家のローランド(浦井健治)が出会ったのは晴れた日のバーベキュー場。そのとき彼には妻がいた。あるいは雨の日のバーベキュー場、そしてふたりは恋に落ちた。いつしか別れてしまったふたりが再会するとき、ローランドは別の誰かと婚約していた、あるいはマリアンが別の誰かと婚約していた。星の数ほどありえる可能性の中でふたりが迎える運命のときとは…
 作/ニック・ペイン、翻訳/浦辺千鶴、演出/小川絵梨子、美術/松岡泉。全1幕。

 多元宇宙をモチーフにしているふたり芝居で、ふたりが出会ってもそのときどちらかにパートナーがいるルートに進んでしまったら、それは捨てて元に戻って、何度でも戻って、フリーのふたりが恋に落ちつきあい始めるルートに進めたらそれを進めていって、でも別れて…みたいな、時を行ったり来たりするというかいろんな可能性のある分岐点のうちのひとつを選んで進んでいく物語というか、そんな不思議な構造の舞台でした。
 私は大学では一応、素粒子物理学を専攻していたので(きれいサッパリ忘れましたが)、不確定性原理なども勉強しましたし、SFファンとしてパラレルワールドは心躍るモチーフのひとつなので、楽しく観ました。
 ただ、途中のルートで、マリアンが脳に腫瘍か何かを患って言語障害を発症したり、尊厳死を検討したりするようなターンがあるのですが、それは結局どうなったのかな…という思いは残りました。
 物語はふたりの再会のとき、お互いにそのときどちらもフリーで、再会を嬉しく思う気持ちがあり、なんとなく誘い合って再びつきあいが始まりそうで、なんてことない話をしながら舞台の中心に据えられた木の周りを囲むように組まれた階段状の小道を一周して終わります。円環は閉じられた、という印象も残るし、永遠の輪廻みたいなことも思わせます。それはいいんだけれどでも、あそこまでマリアンの闘病を見せておいて、「健康なルートもあるからいいよね」というオチではちょっと納得しづらいというか…だってどんな未来を選び紡いでいこうと、ゴールが死であることは絶対の真実なんですからね。
 そういう意味ではちょっともの足りなかったかなー。でもとても美しいセットと、大変な台詞量とかなり変わった芝居をきちんとこなしていたふたりの若い役者が印象的で、スリリングな、おもしろい演目でした。




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