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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

花全ツ『激情グラミラ』初日雑感

2023年11月20日 | 日記
 宝塚歌劇花組全国ツアー公演『激情/GRAND MIRAGE!』初日の梅田芸術劇場メインホール公演11月17日15時半回を、日帰りで観てきました。幕が上がり、チケットがあるなら私は行くスタンスです、ご容赦ください。
 星組博多座初日同様、開演前に理事長が緞帳前に出てきて挨拶するのに遭遇しました。この日は前日に開演時間の30分の後ろ倒しが発表されたので、そのお詫びと、劇団の今の事態が心配をかけていることへのお詫びがありました。が、全ツはこのあと開幕するし、全国に宝塚歌劇の魅力を伝えるべく出演者たちはがんばってきた、観客には芝居とショーのどちらも楽しんでほしい、といった旨のご挨拶でした。
 ただ、博多座初日ではあった生徒の急死に関しての言及はなく、哀悼表明もありませんでした。今日がたまたま四十九日でしたが、もちろん黙祷もありませんでした。最後に深々と頭を下げる理事長に客席から拍手が湧きましたが、私はそのとまどいにとても拍手する気にはなれず、ただそっと目を閉じて、自分なりに黙祷を捧げました。
 もうなかったことにしつつあるんですか? 次のフェーズに進んでいるんだからもういいだろう、ということなんですか? でも、そういうことではないですよね?
 折しも、劇団が調査を依頼した外部調査チームの「外部」ぶりのヌルさが明らかにされました。ご遺族側はもっとちゃんとした第三者委員会による再調査も求めていましたし、何より、報告書は私も読みましたが遺族側が提出した証拠・証言の不採用が多く、偏りがあることは普通に感じられました。きちんとしましょうよ、ごまかしたり隠したりしてもいいことしひとつもないですよ…
 雪組大劇場公演は12月1日を初日とする旨が発表になり、幕間には宙組の東京公演が大楽まで10日ほど残してとりあえず中止とすることが発表されました。私のチケットはまた3枚ほど飛びましたが、まあそれはいいです。引き続ききちんとした調査を続けて、ご遺族側との話し合いも続け、事実を解明し、果たすべき謝罪と補償をする良き着地点を見つけ、さらに改善計画を明示して、粛々と実行していっていただきたい、と思っています。
 あとは、調査範囲を広げるのはいいんですが、すでにやっていると思いますが現役生へのカウンセリングその他のケアをしっかりやってくださいね? ヒアリングに呼び出したあとは放置、お稽古も劇団レッスンも中止の宙ぶらりん、なんて何もなくても病みますよ。お願いしますよ…?
 そして、来年以降、予科生全員と音校全職員、劇団経営陣や幹部総出で、毎年お墓参りを必ずすべきだと思います。別に学校・劇団行事として公表、公開しなくていいので、やりましょう。小林一三翁のお墓参りより大事なことかもしれません。もちろんご遺族のご意向もあるかもしれませんが、そのころにはこうした弔意が受け入れられている関係改善ができていると信じます。
 それでも失われた命は戻りません。それは、この先ずっと負っていくしかない負債なのだと思います。
 ファンとしても、観劇することで犯罪に加担はしたくない。今、舞台で笑顔を振りまき耀いている現役生たちも、裏では非人間的な長時間労働や問題のある指導、強制に苦しめられているのだ、あるいはもしかしたらより下級生にはそれをやる側になっているかもしれないのだ、などと考えながら舞台を観るのは、つらすぎます。
 けれどここでしか観られないものがあるのも事実なので、単純に観るのをやめる、とは見限れないのです。アップデートと改革と、それでも残せる伝統というものを、真摯に探っていっていただきたいと願っています。

 さて、前回の月全ツ『激情』の感想はこちら、花『グラミラ』本公演の感想はこちら
 珠城さんとちゃぴの全ツにまあまあ楽しく通ったというのもありますが、私は『激情』ってかなり好きな演目なんだな、と改めて思いました。
 この演目が嫌い、苦手という方のマイナス意見としては、ホセが情けない、いい男に見えない、とかカルメンが宝塚歌劇のヒロイン役として逸脱気味で嫌、とかがあるのかな、と思いますが、私はそうした要素がむしろわりとツボなんですよね。まっすぐな、あるいは凡庸な男が何かのきっかけで転落していく…とか、狼のような強くて自由な女…とかのモチーフが、好みなのです。作品としても、メリメが全体を語る形になっているところとか(「私のホセ・ナヴァロ」!)、メリメとガルシアが二役であるところとか、アイディアがあって好きです。なのでワクテカで初日を手配しました。ホントはまどかカルメンが観たかったですけれどね…!
 スチールでわかっていましたが軍服のデザインが一新されていて、また吊り物含めたセットのデザインがけっこう変更になっていましたね。でも十字架型の台とか、「ジェラシー」でバックの壁面の模様がバッと変わるところなんかは健在でした。エスカミリオの試合でカルメンが立つ台は牛の角の形なはずだけれど、布を吊って表現されているようでしたがちょっと微妙だったかな…? あとはラストのひまわり畑みたいな黄金の、太陽の中で輝き微笑むカルメン…みたいなのは、本公演だった初演でしかもはやできていませんよね。今回もバックに一面、薔薇の花みたいな模様が描かれているだけでした。
 ホセとカルメンのお衣装も新調になった模様。まあカルメンのお衣装は、いわゆるロマの女の服装でそうそう代わり映えしないのですが…また、街に住む白人たちとロマたちの諍いの歌や、エスカミリオのソロも新しくなっていた気がします。
 が、脚本は基本的にママで、ミザンス含めて演出や振付も大きな変更はなかったかと思います。すでに完成された、クラシカルな古典の域に入りつつある演目なのかな、と思います。
 で、堪能しました。
 なんせ珠城さんホセがザッツ・ホセに思えただけに、ひとこだとどうかな?などとちょっと心配してもいたのですが、冒頭の真面目で不器用そうな青年士官っぷりがよかったし、そもそもアバンで登場する、メリメが語るホセとしての在り方がなんかもうすでに目が暗くて、それがあるからこそメリメもホセに惹かれたのでしょうが、カルメンとこうなることは彼の運命だったんだな、と思えました。
 みょんちゃんのミカエラがわりとさらりとしていたことも、このひとこホセとのバランスとしてよかった気がしました。あまりウェットに、もう婚約者同然の、なんなら嫁同然の幼馴染みで、めっちゃホセを想ってて…とかだと、このホセにはちょっと重い気もしたので。
 そして、何度も言っていますが、申し訳ありませんが私は星空ちゃんの特に顔が苦手なんですが、それはまあオペラで観なければいいのであって、低い声がいいし乱暴な口の利き方もいいし、歌も上手いしホント身体が利いてダンスも上手いので、とてもいいカルメンに見えました。私はとにかくこの役、このキャラが好きなんだなー、と感じ入ってしまいました。これからひとこともっと息が合ってくると、さらに良くなっていくのではないかしらん。ただ、デカいなーとは思いましたけどね…(カルメンではどうだったかチェックし忘れましたが、ショーではヒールが折れたのか?みたいな低い靴をずーっと履いていたので…(><))
 スニーガは今回から副組長のゆりちゃん(カテコでご紹介あり)、髭がヤラしくていい感じでした。あとほってぃーのダンカイレもよかった! あまりタッパはない方だけれど、ボス不在の間の現場をガッチリまとめている男、という大きさがありました。ほってぃーはホント貴重な上級生戦力になってきましたよねえぇ…!
 逆に娘役ちゃんはみんなコンサートに回っているのか、全然いないなという印象でした…いや琴美ちゃんとかみさことか七彩ちゃんとかちょいちょい起用されてはいるんですけどね。あと今回、咲良さきちゃんが可愛いなと発見しました。
 カチャは前回観たので、ホントはあかさんのメリメ/ガルシアが観たかったけどな…そしてあかさんのエスカミリオはなんか妙に脳天気で、この闘牛士、大丈夫…?って気がしましたが、どういう役作りだったんでしょう…
 はなこのレメンダートも、もうちょっと色が出てくるといいなと思いました。
 いやしかしひとこホセは黒いお衣装になってからがさらによかったなー! 「神よ!」もよかったし四重唱もよかった。カルメンにすがりつく感じの情けなさも、そういう愛し方しかできなかったところも…星空ちゃんカルメンがまだ若くて、「とにかくなんかヤなの!」って感じのつっぱらかり方なのも、とても合っていたと思いました。ホセのことはもちろん愛していた、でもそれ以上に自由でいることを愛していた女なんですよね…幼い、若い。でもそれがカルメンなのでした。
 だからラストはホセの幻想でしかないんだけれど、もしかしたらカルメンがそんな笑顔でホセを迎え入れて、ふたりが幸せに結ばれた未来も、どこかの並行世界にはあるのかもしれない…と思えるような、悲しく美しいラストシーンだと思いました。好き!

 ショーは、ちょこちょこ変わっていてもやはりザッツ・ロマレビで、素敵でした。
 自分が主演で全ツを回っておきながら、下級生主演の二番手役に徹してくれるとは…と思っていたカチャですが、プログラムのショーお衣装でのひとこと同等写りみたいなのを見て「そこは譲ってね?」とか思いましたすみません。が、実際にはいい塩梅で場面のセンターを分散して担当してくれて、ひとこはだいぶ楽になれているのではないでしょうか。結果的に出番が減ろうとも、全国行脚はやはり大変だと思うので、これくらいでいいんだろうと私は思いました。
 ひとこは、プロローグはもちろんれいちゃんポジションで。まどかのターンにカチャが入って、星空ちゃんはふわっと加わってくる感じでしたが、もちろんまどかポジ。というか彼女はまどかのところを全部やったんだから、たいしたものです。しかもカチャのゴールデン・デイズ場面も相手役を務めましたしね…(ふうちゃんのあのブルーのドレス!)
 最初の間奏曲はあかさん、ほってぃー、はなこ、だいや。紫陽花カラーは二色ふたりずつになっていました。
 砂漠はひとこと星空ちゃんで、ひとこフィリップ中尉はれいちゃんがやっていた砂から足を引き抜く歩き方はしていませんでした(細かい)。
 カンツォーネのセンターはカチャになっていました。あかさんの鬘、変わった? 素敵でした。
 シボネーはひとこセンター、あかさんとほってぃー。はなこは星空ちゃんを担いできて、あわちゃんのところはみさこ、七彩ちゃん。花組全員で、いやー胸アツでしたね!
 カチャがオペレッタのソロでつないで、ゴールデン・デイズへ。かりんさんの士官ばっか観てたなー、などと思い出すなど…淑女は揃いの白いドレスになっていて、ややシンプルになっちゃいましたかね。
 そしてロケット。初音夢ちゃんばっか観てたな、と思い出すなど…
 ボレロ・ルージュもカチャからたっぷりやって、あかさんほってぃーに琴美ちゃん七彩ちゃんの組み合わせだったのも良き。そこへひとこと星空ちゃん参入。
「ジュテーム」だった第二の間奏曲は「ラ・ノスタルジー」になって、ここもカチャ、からのはなこだいや。
 デュエダンの歌手はあかさんになって、ひとこと星空ちゃんで綺麗に踊っていました。
 エトワールはみょんちゃん。
 縁がピンクの白い羽根をひとこ、星空ちゃん、カチャで背負って、銀橋はないけど会釈ターンは先にひとみさ、あとにことカチャでした。まあこれは星空ちゃんのポジションからして妥当かな。ラインナップはやや不規則で、センター3人の両脇にあかさんほってぃー、その両脇はもうあおいちゃんゆりちゃんで、その両脇にはなこだいやでした。
 カテコでは新副組長就任のゆりちゃんのご紹介もあり。ご当地出身者紹介は大阪だけでなく関西出身としたので、1/3くらいいましたかね? 舞台奥の下級生たちを見せてあげようと右往左往する前列上級生陣が可愛らしかったです。
 ひとこのご挨拶では、早くみなさまに観せたくてお稽古をがんばってきた…みたいな言葉があり、初日が予定どおり開かないかもしれない、という不安の中でお稽古してきたんだろうな、つらかったろうな、と思わせられました。ちょっと涙ぐみかけ、声が詰まりかけながらも、気丈に明るくご挨拶し続けていて、よかったです。スタオベにも喜んでいたようでした。

 月組東京公演が終わると、花組のもう一方のコンサートが始まるまでは、稼働しているのはしばらくはこの全ツ組だけになります。あまりプレッシャーに感じず、目の前の観客を大事に演じて、そして各地で少しは美味しいものなど食べてリフレッシュしてきてくれるといいな、と思います。
 どうぞ事故なく、心身ともに健康で、元気で、ハッピーでいてください。ファンが贔屓のスターに願うことって、究極そういうことだと思いますよ…
 なので劇団はがんばってください。






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