駒子の備忘録

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凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)

2020年02月29日 | 乱読記/書名や・ら・わ行
 再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した傑作小説。

 あらすじはいつもカバーとか帯とかから流用しているのですが、なんかよくわからない説明文ですねコレ…でも他に特に内容がわかる宣伝文句がないのです。そして私は何故これでこの本をジャケ買いできたのだろう…不思議…
 もともとBL作家さんだそうですが、非情に繊細でていねいな筆致で、関係性を描くことに注力している印象なので、さもありなんと思いました。
 簡単に言ってしまうと、いっぷう変わった両親の元でのびのび育った少女が、親を失い、養い親の家にはなじめず、性的虐待を受けて、公園で出会った青年の家に庇護されて…という物語です。昨今の似たケースの犯罪事件なんかを嫌でも想起しますが、それを奨励したり憧れさせるような描き方はしていないとは思いました。
 でも、やはりこれはファンタジーだと思いました。こういうケースももちろんあるかもしれないしそれで彼らは幸せなのかもしれないけれど、それはあくまでとてもまれな可能性でしかないし、ヒロインにはもっと選択肢があったのではないか、もっと別のチャンスがあったのではないか…と私は思ってしまうのです。まあまあ安全に育ってこられた者の傲慢さなのかもしれませんが。でもこんなにも閉じていってしまうことが、私にはやはりあまり幸せなことには思えないし、逃避にすぎないとも思えてしまうのです。そして相手の青年の設定は、いかにも嘘くさいと私は思ってしまうのでした。
 でも、やはり、物語なので、そうとしか生きられなかった人々、それで幸せな人々を描いてみせることにも意義があるのだろうとは思います。もちろん読後感は決して悪くありませんでした。というかとてもきちんと書かれた小説だと思いました。ヘンなバズり方はしなくていいけれど、もっと何かで話題になってもいい本なのではないかなーとも思いました。いい出会いをしました。


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