駒子の備忘録

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こまつ座『どうぶつ会議』

2019年01月27日 | 観劇記/タイトルた行
 新国立劇場、2019年1月25日19時。

 世界中のどうぶつたちが子どもたちのために立ち上がりました。「どうぶつ会議」の始まりです。だから人間の大人のみなさま、子どもの心になってご観劇ください…作/井上ひさし、演出/田中麻衣子、音楽・歌唱指導/国広和毅、美術・どうぶつ造形デザイン/香坂奈奈。エーリッヒ・ケストナーの児童文学を原作にした、3歳から100歳まで楽しめる音楽劇。48年ぶりの上演。全一幕。

 大空さん会のお取り次ぎのおかげでステージシートでの観劇でした。舞台全方の客席を一段低く囲って、役者が扮する動物たちがバンバン降りてくるスペースにして、この席に座った観客は舞台と一体になり、お話の中で動物たちが人間の大人たちへの交渉の人質にする「人間の子どもたち」の役になることを求められます。それはプログラムでも観客全員に対して求められていることですし、お話の始まりかたといい展開といい、ものすごく絶妙にそれはそうなされていました。
 …でも、私はダメなんです。童心がないタイプなんです。なんなら子供時代にすでに子供らしくない子供でした。そうは言っても子供にすぎなかった私の自意識にすぎないのかもしれませんが…少なくとも今はダメなんです、テレちゃうんです、アタマ固いんです。最前列だけど一番端っこだったので役者さんたちの目は意外と素通りで、子供になれていないことがバレずにすんだようで助かりました。最後の最後にサル(田中利花)に頭を捕まれてかまわれたけど(笑)。嫌な気はしませんでした、笑ってしまった。そして向こうもたまたま私の頭をつかんだだけで、私がノっていないからかまったとか揶揄したとかはなかってたかと思います。
 楽しくは観たのです、本当に。ただ、私は、ああいう場では歌えないタイプなのです。
 でも歌は覚えましたし(あれだけ繰り返されればね!)、むしろ動物たちと約束する側の大人でいたい、ならねば、と思いました。そういう大人になるという約束なら動物たちとできると思うのです。不甲斐なくてすまん。

 さて、やたら美声のネコ(池谷のぶえ)とかいろいろ印象的な役も役者もたくさんいましたが、大空さんはお兄さんライオンのアロイス役(大空ゆうひ)です。アフリカの王様で、どうぶつ会議の議長です。似合うわー(笑)。
 東京會舘のDSで客席降りをしなかった脚の怪我はまだ悪いのか、ライオンの脚に上手くカモフラージュした杖をついていましたが、たてがみも素敵、剥き出しになった二の腕はもっと素敵で見とれました。性別は特に意味はなかったのかなあ、立派なたてがみがあるから雄、程度だったのかも。大空さんの声ってまあまあ低いですしね。
 とにかくおおらかな王者の風格があって、正しい配役だと思いました。こういう作品を好んで選ぶのも大空さんらしいと思いました。
 美術や衣装も素敵な、いい舞台でした。
 この作品が上演されなかった半世紀の間に比べて、この作品がまた再演される意義があるとなってしまった今の世の中に、絶望しかないのが残念なところです。今の為政者たちは半世紀前にこの作品を観て育った世代であるはずなのになあ…悲しいです。
 だから、子供たちに負担をかけるのは申し訳ないけれど、でも、これを今観た子供たちに立ち上がってもらうしかありません。子供になってこれを観た大人の観客たちもまた同様に、立ち上がり、歌い、為政者たちに平和への要求を突きつけていくしかありません。私たちはみんな、地球に暮らす同じ仲間なのですから。別に私たちがみんないなくなっても地球はまったく困らないのだけれど、それでも。
 私たちはもと愛せるはず、戦えるはず、がんばれるはずなのです。そんな勇気を、もらいました。


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