駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『BARNUM』

2021年03月13日 | 観劇記/タイトルは行
 東京芸術劇場プレイハウス、2021年3月12日13時。

 バーナム(加藤和樹)の興行師としての人生は、ジョイス・ヘス(中尾ミエ)という女性を「世界最高齢の160歳」として売り出すことから始まる。彼の誇大広告や作り話によって見世物の興業は成功を収めるが、妻のチャイリー(朝夏まなと)は人々を騙すような仕事ではなく、社会的に尊敬されるような安定した職に就くことを望んでいた。しかし見世物こそが自分の世界に彩りを与えてくれるのだと考えているバーナムは、博物館を経営したり、世界で最も小さい男「親指トム将軍」(矢田悠祐)といった話題性のある見世物を手がけることによって、ますます有名になっていき…
 作曲/サイ・コールマン、作詞/マイケル・スチュワート、脚本/マーク・ブランブル、翻訳・訳詞/高橋亜子、演出/荻田浩一、音楽監督/荻野清子、振付/木下菜津子、松田尚子。1980年ブロードウェイ初演、翌年ロンドン初演。日本初演、全2幕。

 映画『グレイテスト・ショーマン』は映画館で観ましたが今やあまり覚えていなくて、『地上最大のショウ』は最近テレビで見たのでまだ記憶がありました。そんな程度の知識、かつ「史実に名高い興行師P.T.バーナムの半生を虚実綯い交ぜに描いたミュージカル」でまぁ様ご出演、ということで出かけてきました。
 私は現役時代もそんなにオギー作品をそれだと意識して観ていなくて、まったく信者ではないのですが、オギーっぽいミュージカルだな、と思いました。海外ミュージカルあるあるだけれど、ナンバーが多くて芝居パートはそんなにない、レビューに近いような作りの舞台だなと感じたからです。なのでもうちょっと、舞台に色彩が欲しかったかもしれません。バーナムは人生に彩りを求めていたのだし、プログラムのデザインにあるような、もっとサイケでキッチュな色構成がよかったのではないかしらん。ちょっとスマートかつスタイリッシュにすぎる気がしました。もちろん私はその方が好みなのですが、でも見世物とかサーカスとかの猥雑さ、胡散臭さ、インチキ感とそれでもワクワクする感じ、があまり醸し出されていなかった気がするのです。映像使いなんかもお洒落すぎた気がしました。イヤもしかしたらオギーのせいじゃなくて、元の舞台がそもそもそうなのかもしれませんが…せめてバーナムだけはもっと目がチカチカするような、ギラギラしたお衣装を着ていてもよかったのかもしれないな、とは思いました。
 一方、まぁ様はどのお衣装もお似合いで素敵でした。まあ団員役のストライプのシャツにチェックのパンツ、というのがスタイルの良さも際立たせて一番似合っていたかもしれない、というのはご愛敬。歌もとても良くて、苦しそうに歌わないとならないような音がまったくない楽曲で、キーが合っていてよかったです。
 そして、どちらかというとしょうもないと言ってしまえる、情熱だけで空回りしているような夫を、プンスコしながらも愛しほだされ支え導いちゃうキュートでチャーミングな妻役で、とてもとてもよかったです。
 藤岡正明の体調不良による降板で、リングマスター役も矢田くんがやっていましたが、これが達者で素晴らしかったです。すぐにもセンターがやれる華もありました。親指トム役だけだったなんてもったいない!
 そして「スウェーデンのナイチンゲール」オペラ歌手ジェニー・リンド役の綿引さやかがまた素晴らしい歌唱でした。ダブルキャストはもう一役、スカダー役の内海啓貴でこれも素敵でした。しかし劇場ロビーにこの日の公演のダブルキャストの配役掲示がなかったことには、私は劇場に苦言を呈したいです。探してもなくて、係員に聞いちゃいましたよ。私は今まで観てきた演目でダブルキャストの配役掲示がロビーになかった公演なんかありませんでした。天下の芸劇がなんたる不手際、不見識でしょう。ネットにあるじゃん、とかではない。張り紙一枚出しゃいいだけなんだから(藤岡正明の降板告知はあった)、やんなさいよ。役者軽視も甚だしい。
 ジャグリングなども披露するアンサンブルが歌もダンスも身体能力も高くて見事で、中尾ミエがさすがで、主役はもちろん自由自在に歌えていて素敵でした。
 あ、一点だけ。2幕最初のナンバー、手拍子を促されるんだけどそれが正拍で、でも歌が始まるとアンサンブルは裏拍で手拍子してるの、ナニ? 曲的には裏拍が正しい。こういう、客席に参加を求めるくせに客席を混乱させる事態が私は大嫌いです。作品に集中できなくなるし…手拍子くらい好きに、かつ気持ち良くさせてくれ。リードするならちゃんとしてくれ。わりとノリが悪いタイプの一観客からのお願いです。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ほんとうのハウンド警部』 | トップ | 宝塚歌劇雪組『fff/シル... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

観劇記/タイトルは行」カテゴリの最新記事