駒子の備忘録

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『トップ・ガールズ』

2011年04月17日 | 観劇記/タイトルた行
 シアターコクーン、2011年4月7日マチネ。

 ロンドンに暮らすキャリアウーマンのマーリーン(寺島しのぶ)は男性社員との熾烈な出世競争の末、ついに重要ポストを勝ち取った。彼女の昇進を祝って、古今東西のトップ・ガールたちが集まってくる。ヴィクトリア朝時代に世界中を旅した女性探検家イザベラ・バード(麻実れい)、日本の帝の寵愛を受けて日記文学に名を残す二条(小泉今日子)、女性であることを隠して法王になったヨハンナ(神野三鈴)…史上最強のガールズトークの一方で、現実社会では…
 作/キャリル・チャーチル、演出/鈴木裕美、翻訳/徐賀世子、美術/松井るみ。1982年ロンドン初演、7人の女優が16役を演じる舞台、全2幕。

 第一幕第一場、いわゆる「史上最強のガールズトーク」場面が意外に冗長に感じられてどうなることかと思ったのですが、その後は各女優の圧巻の豹変ぶりと演技力に魅せられてあっという間でした。
 二条ともども現代でもややうざいウィンを演じた小泉今日子は的確な演技。
 女傑フリートを豪快に演じるとともに、もしかしたら多少知恵が遅れている、でも繊細で天才肌なのかもしれない少女アンジーを演じてみせた渡辺えりの凄み。
 「忍耐強き」っていうよりどこかネジが外れてるんじゃないかっていうグリゼルダをいい感じにKYでほわほわと演じた鈴木杏は、未来が上手く描けないでいるジニーンと、もしかしたら無自覚だけれどレズビアンなのかも、とも思わせられるくらい逆にミソジニーっぽいネルをも演じて変幻自在。この人、かつてのジュリエットなんかもよかったけれど、若くて可愛いだけの女優さんじゃないよねホント。
 ウエートレスとしてはひっそりと、子役キットは憎々しげな子供らしく、そして疲れたOLショーナは圧倒的なリアリティをもって演じた池谷のぶえも鳥肌もの。
 浮世離れしたヨハンナといかにも現代的な女性ルイーズを演じた神野三鈴。
 そして豪快なイザベラ、過保護で過干渉な妻キッド夫人、マーリーンの姉ジョイスを演じた麻実れい、さすがの声、態度、芝居…
 マーリーンの寺島しのぶだけが一役ですが、時間を遡る形で芝居をするのでこれも大変な役だったでしょう。
 このキャストなしではなかなか成立し難い演目かもしれませんねえ。

 ただ…初演当時も、今再演される意味も、あるとは思うのだけれど、基本的には救いがない、というかオチがない話でした。
 古今東西のトップガールたちのシルエットに囲まれて怯えるマーリーンとアンジーの姿に、ほんとにぞっとしたもん。そんでそれで終わりなんだもん。ええええ!?ってなもんです。
 トップガールたちは「私たちの高みにまで上がってこられるかしら?」と挑発しているのかもしれません。そしてマーリーンは確かにそこに挑んでいるのかもしれない。しかしどうもトップガールたちがみんな幸せではなかったようだとも見えているので、じゃ、なんのためにそんなことをしようとしているの?ってなっちゃうわけですよ。
 ことさらに男が悪いとか恋愛は不毛だとか社会が悪いとか言っているわけではないんですが、能力は高いのに幸せになり方が下手な女たちの話、ということなのかと思うとちょっとしょんぼりしてしまうのでした。
 もうちょっとだけ、何かを提示してくれると、うれしかったかなあ、私は、ね。
 人は幸せになるために生きているのだと思う。その人にとって何が幸せかは、人それぞれだけれど。そして何かを得れば何かを失うものかもしれないけれど、まったく何もなしでゼロで人生虚しいばかり、ということはありえないと思っている、信じている、から。
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