映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

こちらあみ子(2022年)

2022-06-26 | 【こ】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv73461/


以下、公式HPよりあらすじのコピペです。

=====ここから。
 
 あみ子はちょっと風変わりな女の子。優しいお父さん、いっしょに遊んでくれるお兄ちゃん、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいるお母さん、憧れの同級生のり君、たくさんの人に見守られながら元気いっぱいに過ごしていた。

 だが、彼女のあまりに純粋無垢な行動は、周囲の人たちを否応なく変えていくことになる。

 誕生日にもらった電池切れのトランシーバーに話しかけるあみ子。「応答せよ、応答せよ。こちらあみ子」―――。奇妙で滑稽で、でもどこか愛おしい人間たちのありようが生き生きと描かれていく。

=====ここまで。

 今村夏子デビュー作「こちらあみ子」の映画化。

 
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆


 原作小説は、割と上梓されて間がない頃に一度図書館で借りて読んだのだが、あまりピンと来なかったのか忘れておりました。その後、巷で評判になり、文庫化されたのを機に、どれどれ、、、と思って購入して読んだところ、途中の“お墓のシーン”(後述)で「あれ、、、これ前に読んだのでは?」と思い、読書ノート(を一応つけているのです。忘れっぽいので)をめくったところ、やはり読んでおり、しかもちゃんと感想まで書いていた!! 我ながら茫然、、、。

 で、その2度目に文庫で読んだ際に、ものすごい衝撃を受けたのですよ。私には時々こういうことがあるんです。映画でも本でも、初めて見たり読んだりしたときは右から左にスルーしてしまったのに、2度目に見たり読んだりして、ガーーーン!!!ということが。その際、1度目に見たり読んだりしたことをちゃんと覚えていることもあれば、このあみ子のように全く記憶から消えている場合もあります。

 何で初回でスルーしてしまったのかが不思議なほど、2回目で衝撃を受けるわけですが、ホントに何でなんだろう、、、? 同じ経験がおありの方、いらっしゃいますかね?? こんなの私だけかなぁ? あまり身近な人には聞いていないので分からないのですが。


◆舞台挨拶付きの試写会なんて何年ぶりかしらん??

 映画好きを自任しているけれど、私はあんまし“舞台挨拶”ってのが好きじゃない。理由は、1つは“混む”からで、もう1つは“俳優さんをリアルで見たくない”から。

 やはり俳優さんたちが登壇するとなるとファンが集まって混雑するので、単純にその映画が見たい人にとっては嬉しいことではない。また、映画の中の登場人物が、俳優として別人格で作品を見る直前とか見た直後に目の前に現れてベラベラ喋っているのを見るのは興醒め、、、というふうに感じてしまう私は、舞台挨拶にはほぼ行かない。

 これまで行ったことがあるのは、大昔に仕事がらみで断れずに行った『新・極道の妻たち』(1991)だけかな、多分。岩下志麻さんがおキレイでした、、、くらいしか記憶にないが、あの時もすごい混雑っぷりでウンザリした。映画自体も、あんまし、、、って感じだったし。

 なのに、本作でわざわざ舞台挨拶付きの試写会に行く気になったのは、全席座席指定(ネット予約)だったから。しかも新宿武蔵野館というミニシアターで、混むと言っても知れているし、何より、原作が好きなので早く見てみたい、というのが大きかった。たまたまネット予約のサイトを見に行ったら、まだ空席があったので、だったら行ってみよう!と。

 登壇されたのは、井浦さん、尾野さん、大沢さん、監督の4名。こじんまりと節度のある進行で、良い舞台挨拶でした。本作の舞台となった広島の銘菓「桐葉菓」をいただき(まだ食べていない)、監督さんの本作に対する思い入れも聞けて良かった。……けど、まあ、やはりこれからも舞台挨拶に積極的には(上記理由により)行かないでしょう、、、。


◆本題~映画の感想

 で、ようやく映画の感想なのだが、原作未読の人が見ると、ものすごく不思議な、下手すると訳の分からない映画かも知れない。けれど、原作を知っている人が見ると、割と好感を抱けるのではないか。

 ただ、原作の雰囲気とはちょっと方向性が違うかな。でも、映画は映画で独立したものなので、本作はこれで十分良いと思う。そもそも原作と同じ雰囲気づくりを狙っていたのかは分からないし。あみ子の“悪意なきやらかし”が周囲に(悪い意味で)波及していってしまうところとか、実に上手く描いていると思う。

 原作にない要素としては、過去の偉人(?)たちなどが行進したり、ボートにあみ子と一緒に乗ったり、、、というシーンがあるのだが、これはあみ子の部屋で妙な物音がするようになって、それをあみ子が“おばけ”だと認識し、おばけつながりで出てくる。♪おばけなんてないさ~、の歌が本作のテーマソングのようにもなっていて、それらの“おばけ”さんたちが出てくるシーンでもこの曲が流れる。

 この“おばけ”さんたちが、私にはちょっと??であった。これは、あみ子ワールドを描くものだったのだと思うが、学校の音楽室にある肖像(よくあるベートーベンとかのアレ)から、モーツァルトと思しきゾンビっぽいのがピアノ弾いているとか、ちょっとあみ子の脳内を描いたものとしては違う気がしてしまった。まあ、画的にはシュールで面白いのだが、、、。

 しかも、この“おばけ”さんたちが結構終盤で重要なファクターとなってくるのだ。だから余計に、うぅむ、、、となってしまった。下手に原作を読んでしまっているので、それが映画の世界に没入するのを妨げてしまった。

 あと、前歯がなくなった後の描写がないのは、かなりガッカリだったかな。あれが原作では相当なインパクト……というか、あみ子のキャラを決定づけているシーンともつながっているし。いつ出てくるかな~、と楽しみにしていたが、出て来ないまま終わってしまった。


◆父親が、、、

 原作を読んだときも感じたが、映像化されてますます強く感じたのは、あみ子の父親の最低っぷりである。この父親は、本当にもうどうしようもないくらいにクズである。原作では描写があまりない=影が薄い、、、で済んでいたけど、映像化されると描写が少なくても登場シーンはそれなりにあるので、最低っぷりが際立ってしまう。

 あみ子がああだからということで、父親は諦めているのか、なんのケアもせず放置なのだ。家の中は荒れ放題。一応、家事も最低限はしているのだろうが、あみ子と全く向き合おうとしない。食事を与えたり、怪我をしたら医者に連れて行ったりはするけれど、あみ子の内面は徹底的に無視する。

 あみ子の部屋のベランダで不可解な物音がして、あみ子が父親に「おばけかな?」と言うのだが、「おばけなんかおらん」(セリフ正確じゃありません)とか何とかいって、取り合わない。けれど、あみ子はおばけが怖いから大声で♪おばけなんてないさ~と歌って怖さを紛らわせていると、怖い顔をして部屋の扉を開け「もっと小さい声で歌え! お母さん寝てるんだぞ!」と怒鳴りつけるだけで、パッと扉を閉めて去っていく。これでは、幼いあみ子はどうしようもないではないか、、、。

 あみ子には、昔は優しかったけどグレちゃって、めったに家にも帰ってこなくなったお兄ちゃんがいる。久しぶりに帰って来て、あみ子がベランダにおばけがいると言って怖がっているのを見ると、靴のまま家に上がり、掃き出し窓をバッと開けてベランダへ出ると、ベランダの隅に置いてある物を乱暴にどかすお兄ちゃん。そこには鳩の巣が、、、。お兄ちゃんは言葉も少ないし、やり方も乱暴だけど、ちゃんとあみ子の恐怖感を払拭してくれている。もっと早く父親がこれをすべきなのではないか?

 ……という具合に、父親はとにかく現実に背を向け続ける。見ていて本当に憤りを覚える。親がケアしなければ、あみ子は誰がケアするのか。果ては、この父親、自身の母親、あみ子からすればおばあちゃんにあみ子を押し付けてしまうのだ。手に負えないのは分かるが、そこに行きつくまでの過程が無責任過ぎて全く同情できない。

 親も人間なので、放置したくなるだろうが、それが結果的に、あみ子だけでなく、お兄ちゃんをグレさせ、妻を鬱から回復させにくくし、あみ子は学校に行けなくなった。やはり、あの父親の罪は深いと言わざるを得ない。こういう話を見聞きしても、東浩紀は「親は子を選べない」って言うのかね? 言うんだろうな、こういう話があるからこそ、言うんだろう。

 そのムカつく父親を、井浦新が好演。継母は、尾野真千子が演じている。継母が死産した赤ちゃんの墓を、庭先の金魚の墓の隣にあみ子が作って継母に見せるシーンがあるが、そのときの尾野さんの号泣は、ちょっと演出的に違う気がした。いや、あれもアリだと思うけど。あまりにショックが大きいときって、人間、あんな風に声を張り上げる力さえないと思うんだよね、、、。

 あと、あみ子を演じた大沢一菜ちゃんは、原作から私が抱いたあみ子のイメージとは違ったけど、素晴らしかった。中学生の役はちょっと無理があったかもね。とはいえ、中学生時代のあみ子を探すのも難しいだろうし、仕方ないか。

 とりあえず、原作を再読してみようと思っている。公開後の再見は、、、ないかな。

 

 

 


 
 

 

 

 

劇場公開は7月8日。

 

 

 

 

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4 コメント

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つゆなしの夏・・・ (フキン)
2022-06-29 09:18:39
もう毎日、ちべたいそーめんをズンズン食べたい気持ちになるつゆなし夏ですね!!
あっつい!!!(=゚ω゚)ノ苦笑

「こちらあみ子」の試写、舞台挨拶をご覧になったとは!!!
私、舞台挨拶を見たことない!!
岩下志麻!!生でなんて…きっとものすごいオーラだったでしょう??

「こちらあみ子」の小説の世界観がどんなふうに調理されているのか気になるけど、やっぱ小説とは別物でしたか。
予告映像であみ子を見ましたがあの子役はなかなかの逸材やな、と思いました。(えらそう)
でも、やっぱ前歯を好きな男にけられて飛んだ?
(でしたっけ??)ってところで私は心つかまれたんで、映画にその描写がないって言うのは残念。

すねこすりさんの仰ってる、一度目はスルーで二度目に開眼!!ってやつですが。
私はなんか悩み事とか心配事のある中で観た映画が完全に記憶からすっぽり抜け落ちてることがよくあります。そんなんとはまた違うんですよね?
Unknown (すねこすり)
2022-06-29 23:01:50
フキンさん、こんばんは〜☆
暑くてヘロヘロです。
舞台挨拶、ホントに久しぶりでした。あみ子役の大沢さん、演技もだけど、登壇時の振舞いもなかなかのもんで、小学生とは思えなかったです。
あの原作をかなり巧みに映像化していると思いました。あとは見る人の好みですかねぇ。
二度目開眼パターンは、あんまし精神状態とは関係ないんですよ。自分でもホントに不思議です。
二度目ガックシパターンもありますけど、そっちの方がまだ分かります。
今日は、映画にもなったMバタフライの舞台を見に行って来たんですが、内野聖陽氏、上手いのだけどやっぱフランス人にはどうしたって見えないのが辛かったです(^^;;
結構そこがポイントになる戯曲なので…。
アイアンズとジョンローンの映画がまた見たくなりましたわ。フキンさん、ご覧になりました?
ジョン・ローン!! (フキン)
2022-06-30 14:37:09
こんにちは!!
「Ⅿバタフライ」舞台やってるんですね!
知らなかったです。
内野さんでなくてもやっぱフランス人を舞台で演じるのは・・・・。
脳内でチャンネル切り替えるっきゃないんでしょうね。
ジョン・ローンが懐かしいっ。
どうしてるんでしょ??

映画「Ⅿバタフライ」は昔むかしに観てます!
あの時でもジョン・ローンにさえ「んんん・・」と思ったのですが…。さきほど当時の写真見たら意外に記憶とは裏腹に美しいな・・と思ったり。笑

それにしても!!!
あの映画観た時にいろいろ思ったのを思い出しました!!
実際にソン・リリンはどうやって・・・その・・なにを「うまいこと」してたんでしょうかね??
世の中には想像を超えた必殺技でもあるんでしょうか??笑
Unknown (すねこすり)
2022-06-30 22:41:45
フキンさん、こんばんは。
舞台があるの、私も最近知って、チケット残ってないかもなー、、、と思って覗きに行ったら、まだあったのでした。
ソン・リリン役の岡本君も頑張っていました。全裸になるシーンもあって。
まあ、さすがに客席には背中向けてますけど(^^;
遠目だと、お父さんに面差しが似てるなぁ、、、とちょっとだけ感じました。
ジョン・ローンはすごい美男ですけど、やっぱ女というにはかなりゴツいですよね。私にはどう見ても「男」でしたわ。
もっぱらガリマールを悦ばせてあげてたと。「いつもうつ伏せでヘンだと思わなかった?」みたいなセリフもありましたね、昨日は。
結構18禁なセリフ満載でしたよ。舞台だからこそ、ですかね。

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