莫大な遺産を相続した美女リネット(ロイス・チャイルズ)の下へ、遠縁(?)のジャクリーン(ミア・ファロー)が訪ねて来て、「アタシぃ、婚約したんだけど、婚約者が一流大学で経営学を学んだ男なのにプーになっちゃってぇ、超ビンボーなもんだから、この家のコンサルとして雇ってあげてぇ~~」とあつかましい頼みごとをする。
そうして、ジャクリーンが婚約者であるサイモン(サイモン・マッコーキンデール)を連れて来てリネットに紹介した。が! なんと、サイモンはリネットに乗り換えて2人はとっとと結婚してしまうことに……!! ストーカーと化したジャクリーンは、サイモンとリネットのハネムーンを兼ねたエジプト旅行にまで着いてくる。そして、ナイル川下りの船に一緒に乗り込むことに、、、。
その船には、様々な客が乗っていたのだが、事情を聴いてみると、皆、何かしらリネットと因縁のある人ばかりらしい。しかし、そんなことは気にせず、愛するサイモンと旅行を楽しむリネット。
そして遂にそれは起きた。……リネットが頭を銃で撃ち抜かれた状態で死んでいたのである。果たして犯人は、、、?
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以下、ネタバレバレなので、あしからず。
◆ミステリーとしていかがなものか。
これは、私のような鈍くて推理力のない人間でも、序盤で犯人が分かってしまうという、お粗末極まりないオハナシなんですけれども、原作「ナイルに死す」もこうなんでしょうか? 原作は結構な長編で、そこそこ読ませる、と聞いたことがあるのですが。しかも、アガサ・クリスティ自身も、この原作が一番自著の中で気に入っていたらしいですし、、、。だとしたら、脚本化に難があったということになりますけれど。
ピラミッドにまでジャクリーンがストーカーしてきたのを見て、こりゃサイモンとグルだろう、、、って、私でも気付きましたもんねぇ。
それなら、倒叙ミステリーのように、いかにポワロが犯人にたどり着くか、その過程を見せてくれるのかと期待すると、それもかなり裏切られます。ポワロは、リネットが殺されて早いうちに犯人が分かったかのようなことを言っているのに、その後の連続殺人は防げないんですよねぇ。しかも、謎解きも、理詰めなわけではなくて、ほとんど勘であるところとか、うう~ん、という感じ。
もし○○が犯人だったら、というポワロの推理に併せて、それを画で見せてくれるんですけど、これが結構イチイチ鬱陶しい。ハッキリ言っていらんと思うなぁ。これでかなり間延びした感じになったと思う。
ミステリーの割に、全体に緊張感のない作品で、見ていて全然ドキドキしないのもね、、、。
大体、船の乗客がみんなリネットに大なり小なり恨みがあって殺しの動機がある、ってのも不自然過ぎでしょ。それが仕組まれたことならともかく、必然性がまったく分からないんですもん。
本作のストーリーというか、殺人の真相は、イロイロ無理がありすぎ、ツッコミどころが多過ぎな気がします。
最初の、リネットを殺す計画だけでも、1発無駄打ちした弾が発見されたらオジャンです。それに、サイモンが部屋に1人きりになれる保証などどこにもないわけで、計画としても杜撰としか言いようがない。
その後の、第二、第三の殺しに至ってはいわずもがな。特に、サロメ・オッタボーンが殺されるのなんて、いくらジャクリーンが射撃の腕前が良いからって、あれはないだろう、、、というテキトー(にしか思えない)な展開で、見ていてドン引きでした。あれも原作どおりなんでしょうか、、、?
終盤、乗客を一堂に集めてポワロが謎解きをするシーンでは、サイモンとグルであることを暴かれたジャクリーンがサイモンを殺して自殺しちゃうのを、ポワロが止められないところなんか、金田一耕助かよ、と思っちゃいました。
まあ、そんなわけで、ミステリーとしてはダメダメと言っても怒られることはないでしょう。
◆アガサ・クリスティとポワロ
もともと読書量も多くないけど、ミステリーはさらに読む機会が少ないもので、アガサ・クリスティの推理小説で読んだ作品、多分、ないと思います。
彼女がメアリ・ウェストマコット名義で書いた作品(そもそも多くないけど)は全部読んでいますが、こっちはどれもかなり好きです。「春にして君を離れ」を読んだときの衝撃は忘れられません。
アガサ・クリスティ原作の映画は、相性が悪いというか、、、。といっても本作で見たのは4本目なんですけど、『華麗なるアリバイ』『オリエント急行殺人事件』はまるでダメでした。『華麗なるアリバイ』は、ミステリーとしても映画としても見どころがないし、『オリエント急行殺人事件』は、トリックはともかく、ポワロを演じたアルバート・フィニーの演技がダメでした。
唯一、『情婦』はまぎれもない名作だと思いますけれど。
本作でポワロを演じたピーター・ユスティノフですが、アルバート・フィニーとは違う意味で、ちょっとダメだった、、、。フィニーのポワロは、なんというか、騒々しくて下品という印象を受けたのですが、ピーター・ユスティノフは愚鈍という印象で、見ていてどちらも嫌悪感を抱いてしまいます。これのどこが名探偵なのさ、とツッコミを入れたくなってしまう。
私の中では、ポワロ=デヴィッド・スーシェなんですよねぇ。デヴィッド・スーシェのポワロは、性格は確かに嫌味なところもあるしステキとは言えないけど、何より知性があるし騒々しくもないし品がある。見ていて、この人なら難事件でも解決しそう、と思わせる説得力がある。
でも、ピーター・ユスティノフにはそれが感じられない。人は良さそうだけど、それだけ。そもそも太り過ぎじゃない?
◆豪華キャストは楽しい
このキャスティングでなければ、の数があと2つくらい少なかったかも。
ベティ・デイヴィスとマギー・スミスとアンジェラ・ランズベリーが同じ画面にいるなんて、それだけでもスゴイ迫力!
マギー・スミスがお若い。役柄のせいもあるけど、この頃の彼女は、こういう働く女性、強い女性、という感じの方が合うような。今、ドラマ「ダウントン・アビー」で貴族のおば様を演じていらっしゃいますけど、あれはあれですごいハマっているんですけど、本作の頃の彼女もキリッとしていて素敵です。
ベティ・デイヴィスは、いるだけで怖い! あの顔のせいもあるけど、彼女がいると、それだけで何か事件が起きそうな気がしてしまう。本作では、最初から最後まで明らかに犯人圏外だったけど、それでも十分怪しかった!!
何といっても食い入るように見てしまったのは、オリヴィア・ハッセーですねぇ。やはり美しい。アンジェラ・ランズベリーから、オリヴィア・ハッセーは生まれんだろ! とか内心ツッコミ入れて見ていましたけれど。彼女が演じるロザリーは、母親が殺されたってのに、ケロッとして男とラブラブで下船するという強者でした。いくらなんでもそらないだろ! と、これもまたツッコミどころですね。
あと、本作のイマイチな原因の一つが、肝心のサイモンを演じたサイモン・マッコーキンデールがイケてない、ってこと。好青年な感じではあるけど、せっかくなら目を見張るような美青年が良かった。金はないけど頭は良くて野心家な男、、、というと『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンみたいですが、まあ、アラン・ドロンとは言いませんが、せめて美しくていかにも腹に一物ありそうなジェレミー・アイアンズくらいは起用して欲しかったところです、、、。
そうそう、犯人のミア・ファーローは、相変わらずエキセントリックな役がハマっていてgooでした!
私でも先が読める推理モノって、、、
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ナイル殺人事件!子どもの頃これとオリエント急行殺人事件をTVで観て、アガサ・クリスティのファンになりました。
確かにこの映画の殺人、犯行手段も動機も結構メチャクチャですよね~。第2、第3の殺人とか、おいおい~?!でしたし。
でも、エジプトロケと豪華キャストは、見応えありますよね。私もベティ&マギーのコンビが好き!いい味出してましたよね。マギーが使用人なのにめっちゃエラそうなのが笑えた。ベティ婆さまも食えないババアだけどオチャメで素敵でした。ミア・ファローだけ何か大真面目に熱演してましたね。
こないだTV版のナイルに死すを観たのですが、サイモン役の俳優は結構イケメンでした。ちなみにリネット役は、有名になる前のエミリー・ブラントでした~。
2、3日前に、「世界街歩き」でまさしくヤンゴンをオンエアしていて、現地の人たちが皆、とても良さげな感じだったので、たけ子さん、満喫しているといいなー、と思いながら見ていたところです。
旅行記、楽しみにしていますね~~!
おっしゃるとおり、ベティ&マギー、サイコーでしたね。そうそう、マギーの態度のデカさがウケた!
TV版のナイルに死す、BSで3月に放送するみたいなので見てみます。デヴィッド・スーシェのポワロ、好きなんです。