映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

見知らぬ乗客(1951年)

2022-07-17 | 【み】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv8692/


以下、wikiよりあらすじのコピペです(青字は筆者加筆)。

=====ここから。
 
 アマチュアのテニス選手ガイ・ヘインズ(ファーリー・グレンジャー)は、浮気を繰り返す妻ミリアム(ケイシー・ロジャース)と離婚したがっていた。そうすれば上院議員の娘であるアンと再婚できる。

 ある日、ガイは列車の中でブルーノ(ロバート・ウォーカー)という男性に出会う。ブルーノはガイがミリアムと別れたがっていることをなぜか知っており、彼の父親を殺してくれるなら自分がミリアムを殺そうと交換殺人を持ちかける。そうすればお互いに動機がないので、捕まる心配もないという訳だ。ガイはブルーノが冗談を言っていると思い、取り合わなかった。

 しかし、ブルーノは勝手にミリアムを殺してしまう。

=====ここまで。

 パトリシア・ハイスミスの同名小説を映画化。レイモンド・チャンドラー脚色、ヒッチコック監督。

 
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 ヒッチ作品は当たり外れがあるし、これまでもあまり積極的には見ていないけど、本作は、大分前にある本で紹介されていたのを読んで、ちょっと気になっておりました。けど、何となく見ないまま時間が経っていて、少し前にBSでオンエアされる際に録画してようやく見た次第。


◆一枚の絵が物語る狂気

 何で本作が気になっていたかというと、紹介文の中で「母と息子の関係が異常」みたいなことが書いてあったから。親子モノはついアンテナが反応してしまう。

 で、この度鑑賞してみて、なるほど、、、と思った次第。

 ブルーノは、もう登場シーンからかなりヤバい人だと分かるのだが、もっとヤバい人がいて、それが彼の母親なんである。母と息子の関係が異常、というより、母親自身がもう壊れちゃっている人に見えた。具体的に彼女が壊れている描写があるわけではないし、もしかすると本作を見た人の多くは、彼女が壊れているとまでは認識しないかも知れない。けれど、あるシーンで私はギョッとなって、壊れている認定をした。

 ブルーノのセラピストに自分の息子がいかにおかしいかを話していて、その段階でも相当ヤバい。が、これくらいのオカシさは映画やドラマならありがちなレベルでしょ、、、と思っていたら、その後が凄かったのだ。

 この母親は油絵を描くことが趣味なのだが、「ブルーノはわたしの描いた絵を見て笑うんです」(セリフ正確じゃありません)と言いいながら、彼女の描いた絵がバーンと映る。その絵が、もう狂気そのものなんである。笑える絵では全くないし、このワンカットで、母親もブルーノも、もう救いようがないレベルであることが分かってしまうという、、、。これは怖ろしい。

 あの絵を描いた人はスゴいとしか言いようがない。だれが描いたのか、、、普通に考えれば小道具さんか、スタッフに依頼された美術家とかだろう。モノクロなのでまだ衝撃は抑え目かも知れないけど、カラーで見たかったなぁ、と思った次第。どんなセリフや行動よりも、破壊力と説得力のある一枚の絵。

 絵がキーになる映画というと、「ドリアン・グレイの肖像」がパッと思い浮かぶのだが、ヘルムート・バーガー版の方が、ベン・バーンズ版のよりも醜くなったドリアン・グレイの肖像画の気持ち悪さが圧倒的だったなぁ。でもあの肖像画の気持ち悪さと、本作のあの絵の異様さはまたゼンゼン別次元。

 こんな母親と、権威主義の塊みたいな父親の間に生まれたブルーノは、ただただ運が悪い。ブルーノのあのサイコパスっぷりは先天的なものなのかどうか分からないけど、あんな環境に居たら、マトモな人間もおかしくなるのは必定だろう、


◆その他もろもろ

 ヤバいブルーノを演じたロバート・ウォーカーだが、彼の来歴をwikiで見ると、ブルーノとはまた違った意味でかなり悲惨である。本作が公開された直後に亡くなっているという。

 ロバート・ウォーカー自身の風貌も相まって、ブルーノのKYっぷりや粘着質なキャラを、実に上手く演じている。絶賛されるのも納得だ。亡くならなければ、きっともっと面白いキャラを演じてくれていたに違いない。

 ファーリー・グレンジャー演ずるガイは、勝手に交換殺人を実行されてしまって気の毒には違いないのだが、どうも色々と間抜けで、あんまし同情できない。生真面目といえばそうなんだが、ちょっとね、、、。テニスの試合を終わらせてから、ブルーノが証拠の工作をするのを止めに行こうとする展開は、ちょっと??である。あれで観客をハラハラさせようってことかもだけど、ムダに長くなっているだけな気がするなぁ。

 ファーリー・グレンジャーといえば、ヒッチ作品では『ロープ』(1948)にも出ているが、本作同様、巻き込まれ加害者。『ロープ』の方が追い詰められた感はあったかなぁ。まあ、『ロープ』は構成がそもそも破綻しているから、映画としては全然良いと思わないが。

 ガイが離婚してまで結婚したがっている相手の女性・アンが、私にはあんまし魅力的に見えなかったのも、ガイに同情できなかった理由の一つ。殺されちゃった奥さんも結構ヘンだけど、眼鏡を外せばかなりの美人な気が、、、。

 疑問なのは、アンの父親(上院議員)が、娘の不倫を全面的にバックアップしてあげているところ。だって、不倫だよ?? いくら、ガイが好青年(とは思わないが)だとしても、親がそんな交際を応援するものかね? まあ、よく分からん設定だった。

 しかも、この女性の妹ってのがいちいち口を挟んでくるのだが、演じているのはヒッチの娘さんだそうで。ハッキリ言って、彼女のために無理やり作った登場人物じゃないのか? いなくても(というかいない方が)いいもんね。

 ……まあ、あの絵のインパクトは強烈だけど、映画自体は普通に面白い、、、という感じでありました。ちなみに、DVDでは米国版と英国版の2種類があって、結末が違うらしいです。知らなかった。私が見たBS放映のはどっちだろう?? もう1個の結末ってどんなだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 


交換殺人ってすぐバレそう。

 

 

 

 

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