映画 ご(誤)鑑賞日記

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ドリアン・グレイ 美しき肖像(1972年)

2016-01-04 | 【と】



 あのオスカー・ワイルドの唯一の長編小説といわれる「ドリアン・グレイの肖像」が原作。稀代の美青年ドリアン・グレイを、ヴィスコンティの肝いりヘルムート・バーガーが演じる。小説の舞台は19世紀末だが、本作は舞台を現代に設定している。

 ロンドンの中堅画家バジルは、自他ともに認める美しい青年ドリアン・グレイの肖像画を描く。以前から描きたいと思っていた彼の肖像をようやく描いたところへ、バジルの友人ヘンリー・ウォットンが妹と訪ねてきて、ドリアンとその肖像画を見る。ヘンリーたちがドリアンの美を讃え、美しさこそが芸術の真髄だなどと陳腐な芸術論をぶった挙句「この絵に君の美しさは永遠に残された」という。しかし、すっかりヘンリーの言葉に惑わされたドリアンは思わずつぶやく。「逆ならば良いのに。私の代わりにこの肖像画が老いて行けば良いのに……」と。

 それを聞いたヘンリーは、「ならばこの絵は私が君に贈ろう」と、バジルから買い取ってドリアンに贈られる。ドリアンの家に持ち込まれた絵は、まさにドリアンの美しさを写していた。

 ヘンリーは享楽的、退廃的な道へとドリアンを誘い、ドリアンがそれまで結婚をマジメに考えて付き合っていた駆け出しの女優シヴィルとの関係を破綻させ、さらにはシヴィルを絶望させ自殺へと追い込んでしまう。ドリアンは罪悪感を感じながらも必死で打消し帰宅すると、自分の肖像画を目にして恐怖に呆然となる。肖像画の顔が醜く変貌していたのである!!

 恐ろしくなったドリアンは肖像画に布を掛けて隠し、自分の気持ちを紛らわすかのように、ますますヘンリーの誘う退廃の道を突き進んで行くのだが、、、。

 ラストの肖像画が恐ろし過ぎ。終盤はちょっとホラーっぽいかも!? 
 
 
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 先日酷評してしまった『サンローラン』で、晩年のサンローランを演じたヘルムート・バーガーが、あまりにも、あまりにも、、、だったので、お口直し、というかお目直しのために、美しかったころの彼を見るべく本作を鑑賞いたしました。、、、が。

 あれを見た後にこれを見たのは、マズかったかも。なんか、見終わった後しばし落ち込みました、、、がーーーーーん

 本作でのヘルムート・バーガーは、なるほど美しいです。完璧な美、というより、ソソられる美、という感じでしょうか。いえ、私の好みではないんですけど。でも、一般論でいえば、人目をくぎ付けにする美しさであることは間違いないでしょう。

 もうね、シヴィルが可哀想で。原作を読んだ時もやっぱり可哀想だと思ったけど、突然の愛する人の心変わりほど辛いことはないでしょう。理由らしい理由もない、ただ飽きた、なんて。もちろん、ヘンリー卿が裏で糸を引いていた訳ですが。

 シヴィルの後にも、ヘンリー卿の妹グェンドリン(原作にはなかった存在だったはず)とか、ドリアンの友人の妻アリス・キャンベルとか、土地成金みたいな奥様ラクストン夫人とかと、ヤリまくります。本作は、もしかしたらヘルムート・バーガーをひたすら美しく見せることを第一義に作られた作品かも知れません。

 おまけに、ラクストン夫人以外の女優さんたちがもう、息を呑むほどの美女揃い。正直なところ、ヘルムートより、こちらの美女たちに目を奪われました、私。ホント、正統派のスゴイ美女!! こんな女優たちとの濡場シーンいっぱいでも、ヘルムートには大して有り難くもなかったんでしょうけれど。いやはや、、、これは凄いです。彼女たちを見るだけでも、一見の価値ある映画、とも言えるかも。言い過ぎかな。

 2009年に、ベン・バーンズがドリアンを演じた『ドリアン・グレイ』が制作されていますが、ベン版と比べると、本作の方がちょっと猥雑で淫靡な感じはありますね。舞台は、本作は現代(というか1970年代)ですが、退廃ムードは、原作どおりの19世紀末を舞台にしたベン版より出ている気がします。それは、やはりヘルムートの持つ妖しい雰囲気によるところ大でしょう。あと、前述の美女たちね。ベン版の女性陣は、もう、軒並み魅力ナシだったので。

 また、ヘンリー卿がベン版はコリン・ファースだったのですが、本作のヘンリー卿の方が原作にイメージは近いと、私は思いました。ベン版は、原作にないヘンリー卿の娘なんかを終盤に出してきて、ヘンリー卿のキャラがまるで違うものになっていたのが不満だったもので。本作のヘンリー卿は、ドリアンが堕ちるところまで堕ちていくのを、高みの見物している悪趣味なキャラがよく出ていてイイ感じでした。演じていたのはハーバート・ロム。元はハンガリーの人なのですね、、、。なかなか知的な感じのする悪人顔でハマっていました。

 そして、本作の見どころは、ラストのドリアンの肖像の変貌ぶりなわけですが、、、。ベン版のそれは、もう、CGを駆使したゾンビ映画みたいになっていてかなり興醒めでしたが、本作のなれの果ての肖像画は、、、、コワい!! というか、すんごい気持ち悪いです。ちょっと漫画チックな感じもするけれど、ベン版のよりは数段GOOD!! 

 ラスト、本作は原作と異なり、ドリアンは自分で自分の胸に刃を突き立てます。そしてその死顔は、醜くただれて、、、。私は原作の方が好きかな。やはり、あの絵が鍵な訳ですから、絵に刃を突き立てて欲しかった。それが本当の自分を殺すことなんですから。

 しかし、、、『サンローラン』で衰えたヘルムートをまじまじと見てしまっていたので、本作は、とてもじゃないけどただのちょっと不気味な作り話よね、などと流せる気分にはなれませんでした。

 人生の一時期、並はずれた美しさで世間を圧倒していた人は、老いるのが難しいのだなぁ~、と、ヘンに胸苦しくなったのです。容姿はどうしたって年月とともに衰えますから、美しければ美しいほど、衰えとの闘いになってしまうのでは、と。若い頃の美しさにしがみついているイタい大人は少なくないですから。

 、、、でも。本作と思わず重ね合わせて勝手に落ち込んでしまったけれど、そういう意味では、ヘルムートは衰えた自分を堂々と晒していて、むしろ、きちんと自分の老いと向き合えている人なのかも。ヘルムート自身、実人生とちゃんと折り合いをつけながら生きてきたんだろうなと思うと、何となく救われる気がします。

 、、、そうか、年齢を重ねるということは、見た目も含めて生き様が問われるのですね。

 駄文だけれど、レビューを書くことで、こういうもやもや感が整理できてイイこともあります。最後までお読みいただきありがとうございました。




美しい人って、大変。




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