平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
秋葉街道似多栗毛6 太田川橋際
秋葉街道似多栗毛の解読を続ける。
北八「もし、おやぢさん、ここはお寒いに大きにごくろうだね」と、茶わんを出して注がせる。
弥二「これ/\、喜太八、おれも待ちかね山だ。早く差せ/\」と、弥二もまたぐっとひっ懸けて、
弥二「おやぢさん、もっとやってもいゝのか」
親父「ハイ/\、いくらでも御勝手にあがらしゃれませ」
弥二「そんなら、おじぎなしに重ねせら」
※ おじぎ(御辞儀)- 遠慮。
親父「もしなんぞ御肴あがりませぬか。こんにゃくのおでんと、ふきのとうの煮しめたが、ござります」
弥二「こんにゃくを一と皿くんなせい」
喜八「弥二さん、酒はいゝが肴はよしなせえ」
弥二「それでも」と目まぜをすると、弥次「貴公不人情な。それでも親父さんのほまれがないはさぁ。てめえもやらっし」と、一人合点で、また引き受け呑む。喜太八もしたたか引き受く。
※ 引き受け -(酒の)相手になる。応対する。
弥二「さあ、これでいゝ。もし親父さん、大きに御馳走。そして、こんにゃくはいくらだ」
親父「はい/\、こんにゃくが五十文、御酒代がお二人で百五拾文、みなで弐百になります」
弥二「なに、御酒代だぁ」
親父「あい、この茶わん一つが弐拾四文ずつで御座ります」
両人「こいつぁつまらぬ事を言う親父だ。
喜太「おらぁ無茶だと思ふが、この弥次さんなんたぁ、今の林大学なんたぁ、友だちで、時々聖堂へも出ちゃぁ、講釈もする。おいらだぁ、田舎の高札ぐらいは後ろ向きても読む男だ。ばか/\しい、親仁ぃ」
※ 林大学 - 林大学頭。々幕府朱子学者林家の当主。
※ 聖堂 - 湯島聖堂のこと。昌平坂学問所があった。
親仁「はい、お前様は後ろ向いてもなんでも、御酒代は御払いなされませ」
喜太「またしろ、あの高札に、太田川舟橋ともに無賃、酒手に及び申さず候とあらぁ。親父め、どうだ」
※ またしろ - 意味不明なるも、想像をたくましくすれば、「冗談はまたにしろ」を縮めた言い回しではないか。
親父「はい、船賃には酒手は構いませぬが、わしのは商売だから、酒手がいります」
弥二「そうか、とんだ算ちげいだ。喜八、喧嘩もなるめい。往生して出せ/\」
※ 算違い - 計算違い。
北八「弥二さん、おめえ聞いたふりをするから、こんな番くらわせに、あわぁ」それっと、銭を投げわたし、北八「さあ/\、弥次さん、早く宿を取ろうよ」と出て行く。
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