平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「壺石文」 上 25 (旧)七月廿四日(つづき)
ネットで息子に買わせた「例文仏教語大辞典」が送られてきた。ほとんど未使用に近いものが、消費税込みで3000円+送料だった。定価は5800円、良い買い物だった。早速、先日来、気になっている、「打給」という言葉を探してみた。
たきゅう「打給」 禅宗で、修行僧に食事を供給すること。
*禅林象器箋-一四雑行門「別処に於いて食を送る。打給と曰う」
想像した通りだった。この例文が付いているのが、この辞書の特徴なのだろう。なお例文は漢文で、自分で読み下した。
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「壺石文 上」の解読を続ける。
今日過ぎ越しわたりは、皆な田村の郡なりとぞいうなる。そも/\、陸奥五十四郡のうちに、田村の郡というは、いにしえ(古)には、おさ/\聞こえざるを、何時の頃よりか、何の郡を分かちたるぞと、問わまほしけれど、人影も見えず。
※ おさおさ -(あとに打消しの語を伴って)ほとんど。まったく。
さてこの浮金村というに、かくふりはえて訪い来たるは、菅雄が故郷、遠つあふみのもとの氏族(しぞく)なりける人、さすらい来て、こゝに縁(よすが)求めて住みけるよし、ほの聞きてありけり。
※ ふりはえて(振り延えて)- わざわざ。ことさらに。
※ 遠つあふみ(遠淡江)- 浜名湖のこと。遠江のこと。
※ ほの聞く(ほのきく)- ちらっと聞く。 かすかに聞く。
山の間に/\家居して、小家がちなる里になんありける。こゝかしこに立ち寄りて、しかじかの人なん、このわたりには侍らずやと、気色取りて懇(ねんご)ろに問えど、さる者ありとも聞こえず。え知らずかしなど答(いら)うなる。
※ 気色取る(けしきどる)- 機嫌を取る。
※ え~ず - 関西弁の「よう ~せん」と同じ。「~することができない」の意。
家毎に立ち寄りて、同じ様の事をつぶ/\と語りて、問いつゝくるに、とある野らの道のべに建てりける伏せ屋に、娘にや、うまごにや、乙女と翁と差し向い、あぐみ居て柴折り焚ける見つけて、同じ様に問えば、かの翁、頭(かしら)傾け、ためらいて、そは茂兵衛という男(おのこ)の事なめり。遠からぬ所に侍ればあない(案内)申さん。
※ つぶつぶと - こまごまと。
※ 伏せ屋(ふせや)- 屋根の低い小さい家。みすぼらしい家。
※ うまご(孫)- まご。(「むまご」ともいう)
※ あぐみ - 足を組んで座ること。あぐら。
※ 後拾遺集「わびぬれば 煙をだにも 絶たじとて 柴折り焚ける 冬の山里」
暮れ果てぬ間に、いざ疾(と)く/\と、そゝのかしつゝ、先に立ちて行けば、いと/\嬉しくなりて、尻に立ちて行く。野路を横切り渡り、山路をたゞ下りて、こゝよりは這い渡るほどにて侍れば、独り物し給いてよ。かしこの見ゆる木立の中ぞ、彼が家居なる、とおよび差し、教え置きて別れ帰りぬ。
※ そそのかす(唆す)- 早くそうするように 勧める。せきたてる。
※ 這い渡るほど(はいわたるほど)- 這って行けるほど。(近いことを示す)
※ 物す(ものす)-(ここでは)行く。
※ および(指)- ゆび。
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