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「壺石文」 下 19 (旧)二月五日、六日

(庭のシュモクレン狂い咲き一輪)

どこでもへそ曲がりはいるもので、庭のシュモクレンも、毎年一輪だけ、真夏の今の時期に花を咲かせる。もちろん早春と違って、その肉厚の花びらは暑そうだ。

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「壺石文 下」の解読を続ける。

五日、六日、嫌が上に降り積もりて、寒さこよなし、夜となく、昼となく、埋め火に添い臥して歌詠む。その歌は、白石の城(キ)の主、片倉主の請わせ給うなる、その隠れ家、常盤崎の十景、一樹の岳の晩風、
※ 白石の城(しらいしのき)- 宮城県白石市にあった日本の城である。別名益岡城。仙台藩伊達氏の支城として用いられ、片倉氏が代々居住した。
※ 片倉主(かたくらぬし)- 白石片倉家第11代当主、片倉宗景。伊達家家臣。
※ 常盤崎(ときわざき)- 片倉家第10代当主、片倉景貞の隠居所。常盤崎の別邸があった。


   丘の名の 一木の蔭に 葉隠れて
        忍び/\に 宿る夕風


不忘の峰余雪

   春霞 かゝれど冬は 忘れずの
        峰ども寒き 雪の白妙

※ 白妙(しろたえ)- 白い衣。

桝崎花

   春の色の 昨日に今日は ます崎の
        花の白波 咲き数うらん


田中鳴蛙

   春深き 小田の蛙(かわず)の あしでがき
        詠みつゝ遊ぶ 水の泡沫
(うたかた)
※ あしでがき(葦手書き)- 平安時代に行われた書体の一つ。水辺の光景を描いた絵に文字を葦・鳥・石などに絵画化して散らし書きにする書き方。
※ 泡沫(うたかた)- 水面に浮かぶ泡。(はかなく消えやすいもののたとえ)


後圃牡丹

   おばしまに 寄りて愛(め)ずらん 貴人(あてびと)
        富みて尊
(とうと)き 春の花園
※ おばしま(欄)- てすり。欄干。
※ 貴人(あてびと)- れい。


楼月
※ 邨(むら)- 村。

   錦敷く 十邨(とむら)の木々の 色見えて
        月澄み昇る 秋の高殿

※ 高殿(たかどの)- 高くつくった建物。高楼。

前川遊漁

   前川は 水の民さえ 楽しげに
        遊ぶ心の 底も見えつゝ


不老園古松
   千代経ても 松の老いせぬ 園のうちは
        死なぬ薬の 有りもこそすれ


北村樵路
※ 樵路(しょうろ)- きこり道。

   (こ) 外面(そとも)の村の 夕煙(けぶ)
        絶え絶えかかる (そわ)の通い路
※ 伐る(こる)- 立ち木を切り倒す。伐採する。
※ 外面(そとも)- 山の、日の当たらない面。物の背面。裏手。また、北。れい。
※ 絶え絶え(たえだえ)- 今にもとぎれそうでいながら、やっと続いていること。
※ 岨(そわ)- 山の斜面の険しい所。がけ。


来迎朝暉
※ 壑(がく)- 谷。

   客人(まらうど)と 見たにもせげに 玉敷て
        朝日峰
(ね)向かう 露の笹原


読書:「ご隠居さん」野口卓 著
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