平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「壺石文」 下 19 (旧)二月五日、六日
どこでもへそ曲がりはいるもので、庭のシュモクレンも、毎年一輪だけ、真夏の今の時期に花を咲かせる。もちろん早春と違って、その肉厚の花びらは暑そうだ。
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「壺石文 下」の解読を続ける。
五日、六日、嫌が上に降り積もりて、寒さこよなし、夜となく、昼となく、埋め火に添い臥して歌詠む。その歌は、白石の城(キ)の主、片倉主の請わせ給うなる、その隠れ家、常盤崎の十景、一樹の岳の晩風、
※ 白石の城(しらいしのき)- 宮城県白石市にあった日本の城である。別名益岡城。仙台藩伊達氏の支城として用いられ、片倉氏が代々居住した。
※ 片倉主(かたくらぬし)- 白石片倉家第11代当主、片倉宗景。伊達家家臣。
※ 常盤崎(ときわざき)- 片倉家第10代当主、片倉景貞の隠居所。常盤崎の別邸があった。
丘の名の 一木の蔭に 葉隠れて
忍び/\に 宿る夕風
不忘の峰余雪
春霞 かゝれど冬は 忘れずの
峰ども寒き 雪の白妙
※ 白妙(しろたえ)- 白い衣。
桝崎花
春の色の 昨日に今日は ます崎の
花の白波 咲き数うらん
田中鳴蛙
春深き 小田の蛙(かわず)の あしでがき
詠みつゝ遊ぶ 水の泡沫(うたかた)
※ あしでがき(葦手書き)- 平安時代に行われた書体の一つ。水辺の光景を描いた絵に文字を葦・鳥・石などに絵画化して散らし書きにする書き方。
※ 泡沫(うたかた)- 水面に浮かぶ泡。(はかなく消えやすいもののたとえ)
後圃牡丹
おばしまに 寄りて愛(め)ずらん 貴人(あてびと)の
富みて尊(とうと)き 春の花園
※ おばしま(欄)- てすり。欄干。
※ 貴人(あてびと)- れい。
十邨楼月
※ 邨(むら)- 村。
錦敷く 十邨(とむら)の木々の 色見えて
月澄み昇る 秋の高殿
※ 高殿(たかどの)- 高くつくった建物。高楼。
前川遊漁
前川は 水の民さえ 楽しげに
遊ぶ心の 底も見えつゝ
不老園古松
千代経ても 松の老いせぬ 園のうちは
死なぬ薬の 有りもこそすれ
北村樵路
※ 樵路(しょうろ)- きこり道。
薪伐(こ)る 外面(そとも)の村の 夕煙(けぶ)り
絶え絶えかかる 岨(そわ)の通い路
※ 伐る(こる)- 立ち木を切り倒す。伐採する。
※ 外面(そとも)- 山の、日の当たらない面。物の背面。裏手。また、北。れい。
※ 絶え絶え(たえだえ)- 今にもとぎれそうでいながら、やっと続いていること。
※ 岨(そわ)- 山の斜面の険しい所。がけ。
来迎壑朝暉
※ 壑(がく)- 谷。
客人(まらうど)と 見たにもせげに 玉敷て
朝日峰(ね)向かう 露の笹原
読書:「ご隠居さん」野口卓 著
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